DISCLAIMER// The characters and situations of the television program"The X-Files" are the creations and property of Chris Carter,Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended. =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= おことわり:ぴぎーちゃんのお誕生日に捧げます。 18歳おめでとう!       リクエストに答えてみました。       ・・・でも、イメージくずしちゃったらごめんね。(苦笑)              e-mail  creoblue@ymail.plala.or.jp   =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-= 「Happy Birthday!」  by Hiyo Date 99/09/07 「じゃあ、Scully。あとは頼んだから!」とMulderはオフィスで大きな荷物を抱えて、私に告げた。 「本当に私も行かなくて大丈夫なの?」私が聞くと彼はあきらめたように笑って答える。 「僕もそう進言したんだけど、Skinnerが一人で充分だって言い張るんだ。確かに今回はプロファイ リングの手伝いだけだからね。捜査の方は地元の警察にまかせることにするよ。」そう言ってMulder はコートを着ていなかった事に気付き、手にしていたチケットを口に加えて、荷物を置いた。 私は、コートを着ようとするMulderを手伝いながら、小さくため息をついた。 それを耳聡く聞き取ったMulderがにやりと笑う。 「なんふぁい?ふぁみひいのふぁい?」語感からなにを言っているのかは簡単に察しがついたが、 私は聞こえない振りをして、彼の口からチケットを取り上げた。 ぱらぱらっと捲ってみる。 「アラスカね。おみやげはキングサーモンで良いわ。」 「やっぱり一緒に行きたいんだろ?Scully。」 「…遠慮しておくわ。いつ戻ってくるのかしら?」 「3月までかからない事を願うよ。」 「そんなに?!」思わず心で思った事が言葉にでてしまった。 だって今はまだ2月の始め… 「淋しい?Scully。」と彼は満足そうに笑う。 私はできるだけ自分の感情を表情に出さないように努力しながら答えた。 「そんなことあるわけないでしょ。たまには外の大自然を楽しんでくるのもいいんじゃない?」 するとMulderはふいにまじめな顔になって言う。 「僕は淋しいよ、Scully。」 「今生の別れでもないでしょ?」と私がピシャリと言い放つとMulderはしばらく私を見つめてため息 をついた。 「…それがこれから遠くに向かう無事に帰ってこれるかどうかもわからない相棒への言葉かな?」 その言葉に私はにっこりと笑って答えた。 「あら、これが最後だと思ったらこんな事は言わないわ。」 するとMulderはにやりと笑って私の腕を軽く叩く。 「まあ、僕がいない時間をゆっくりと楽しんでおきなよ。帰ってきたらまた君を引きずりまわすのは 目に見えてるからね。」 「もちろん、そのつもりだわ。」 私が腕を組んで顎を突き出して答えると、Mulderはさらに笑い、"じゃあ!"と言って迎えの車の待つ 玄関へと向かった。 Mulderのいなくなった日から2週間。 夜中にたたき起こされることもなければ、夜通しの捜査も無い。 バートナーがいないということもあってか、外にだされる事もなく、応援に行かされる事もなかったの で、私はたまりきっていた事務処理に専念していた。 彼がいなくなって今更ながら身にしみたのは…あの人に本当に事務処理能力が無いと言う事。 机の中からびっくりするほど出てくる未清算の領収書の山、書きかけの報告書の束… 思わずうんざりして天を仰げば、鉛筆がたくさん突き刺さっている。 「そんな遊んでいる暇があったら、ちょっとは仕事をかたづけなさい。」 主のいない机に向かって思わず言ってしまう。 当然反応が返ってくるわけもなく、私はため息をついた。 よっぽど、出張から帰ってきた後にお尻をたたいてやろうかしら?とも思ったが、きっと帰ってくれば すぐまた新しい捜査が始まって、これは埋もれてしまうのだ。 そう思い至って私は結局、それに手をつけることにした… でもそれが間違いだった。 捜査をして走りまわっている時間より、じっと報告書と向き合っている時間の方がはるかに長く感じる。 その時間の長さだけで疲れてしまって、本当は彼がいないしばらくの間は友達とご飯も食べに行ってなど と計画していたが、家に直行してしまう。 仕事の合間に入るアカデミーでの講義やその下準備などがある日はいいが、そうでない日はなかなか進ま ない報告書の為に記憶をたどりつつ、地下のオフィスにじっとしていて誰とも会わない1日もあった。 「ねぇ、Dana?久しぶりじゃない?」 やっと半分くらい終わった報告書をA.Dに提出し終わった時、彼の秘書に声をかけられた。 「久しぶり?そうだったかしら?」 私は足を止めて彼女に向き直った。 「Mulder捜査官が出張したらご飯でも食べに行きましょうね、って言ってたのにあなたってば、ちっとも 姿を見せなくなってしまったんだもの。」 …忘れていた。 そんな話もしていたっけ? 「ねぇ、Dana。あなたなんだか表情が暗くなってるわよ。気付いてる?」 「え?そう?」思わずそばにあった鏡に自分の顔を写す。 すると後から覗きこむようにして、耳元で囁かれた。 「最近、笑った事ある?」 その言葉に思わず"ドキッ"っとしてしまう。 笑うどころか冷静に考えてみればアカデミーでの講義以外では、人と話をした事がないかもしれない。 そこで、苦笑いを浮かべてみたが、なんだかひきつったような笑い方しかできなかった。 それを見て彼女は私の手をとって優しく言った。 「Mulder捜査官がいなくてさみしいのね。」 「ばっ…な、なにを言い出すの?!」思わず大きな声をあげてしまう。 すると彼女は、けたけたと笑った。 「ふふふ、図星ね。顔が赤いわよ、Dana。」 「な、なにを言ってるの?あなたがあまりにも突飛な事を言うから…」 「あら、違うの?」 「あ、当たり前でしょ?」どもりながらも軽く睨みつけて答えると、彼女はさらににんまりと笑う。 「そう?じゃあ、こういうのはどう?今日、実は私の大学の友達と飲み会があるの。いい男つきよ。 あなたも一緒に行かない?」 「飲み会?」 「そう、定時後すぐに出発よ。」 定時…少し考える。 手をつけて2週間も経っているのにまだかたづかない報告書が頭をよぎった。 「あ、ごめんなさい。とても行きたいのだけれど、Mulderの残した報告書まだ残ってて…」 そこまで言いかけて彼女を見ると、なんと今にも吹き出しそうな顔をしている。 「べ、別にMulderの仕事だからって断るわけじゃないのよ。彼の不始末はそのまま私にも影響が…」 そこまで言った瞬間、とうとう笑い出されてしまった。 「分かったわ、Dana。またの機会にしましょう。Mulder捜査官が早く帰ってくるといいわね。」 すっかり決めつけている彼女に思わず反論しようと口を開きかけたが、これ以上何を言ってもドツボに はまるだけだと思った私は、あえてなにも言わずに持っていた書類をひらひらと彼女に振って、部屋を 後にすることにした。 廊下に出ると「Dana!」と後から呼ぶ声がする。 すると彼女が手招きをしていた。 私は気付かなかった振りをしようかとも思ったが、あまりの大きなジェスチャーに、結局あきらめて 彼女の元へ戻る。 すると彼女は私の耳元に口を近づけて内緒話をするように言った。 「Sirもあなたの様子を心配していたわ。それにラボでももっぱらの噂よ。」 「……」 私は返事をする気力もなく、天を仰いだ。 …いったいそんな無責任な噂がいつの間にどのくらい広がってるのかしら? 最悪の誕生日を迎えたのかもしれないわ! 私は彼女の部屋の奥にかけてあるカレンダーを恨めしげに見つめた。 やっと1日が終わり、家路についた。 自分の誕生日でも良い事ないわね…と思いつつ、ふと目をやるととてもかわいらしいお店があった。 通り道なのに気がつかなかったのかしら? 温かみのある色の照明に照らし出された、淡いオレンジ色の壁。 無機質なまわりの建物からそれは浮き立って見える。 玄関にしつらえてあるプランターでは細かいピンクの花が咲いていた。 思わずそれに引き寄せられるように、私の歩いていた道の反対側にも関わらず、そちらへと歩き出す。 ふとショーウィンドウを覗いてみて、私は思わず釘付けになった。 とても素敵なダイヤのピアスが置いてある。 シンプルだけど、その品のよいデザインはきっと着ける者に飽きさせる事はないだろう。 深い赤のビロードで包まれた箱で、上蓋の裏には白地に金文字でブランド名らしきものが書いてあったが、 聞いたことはなかった。 "高いのかしら?"そう思いつつ私の足はそこから動かない。 欲しいけど…でも、高そう。 しばらくじっとにらめっこして、ふと思いつく。 今日は私の誕生日だわ。 せめて自分にお祝いしてもいいんじゃない? そう思い至って私はその店に入ることにした。 ドアを開ける…すると中からなにやらとても楽しげな笑い声が響いてきた。 …でも、この声…まさか? 私はそっと目の前にあった棚の影に隠れて奥をうかがった。 …Mulder? 出張帰りらしい大きな荷物をレジの下に置いて、お店の人らしき女の子と話をしている。 帰っていたの?そして、なぜこんなところに? 「…でね、彼女はとてもきれいなんだけど、妙に可愛いところもあるんだよ。おまけに知的なんだよなぁ。 だから、いろんな色に変わるみたいなカッティングのしてあるこれがイメージに合うんじゃないかと…」 「あら?とうとう彼女だって認めましたわね。さっきまではのらりくらりと交わしていたのに…」 …彼女? 私は思わずDianaの顔を浮かべて不機嫌になる。 そお?出張から帰ってきた日にさっそくプレゼントを買うのね。 踵を返して外に出ようかと思いもしたけど、Mulderがなにを買おうとしているのかが気になり、出ること ができない。 「お客様、お目が高いですわ。このブランドはまだ無名ですけど、これからどんどん伸びて行きそうな勢 いですのよ。だんだん雑誌とかでも紹介されるようになってきましたが…」 「いや、僕はただショーウィンドウに飾ってあったのを見て気に入っただけだよ。」とモルダーは苦笑 した。 それでもそう言われて満更でもなさそうな様子だ。 「うん、やっぱりこれに決めるよ。」 「わかりました。こちらですね?カードはおつけします?」 「ああ、中に入れたいからここで書いていいかな?」 「もちろんですわ。どうぞ…」と、Mulderに店員はペンを差し出した。 さっそく何かを書き始めるMulderの手元をみながら、店員は言った。 「あら、Danaさんっていう方なんですね。うちの姪と同じ名前だわ。」 "え?"思わず手にしていたブリーフケースを取り落としそうになって慌ててしまう。 「へぇ、同じ名前ならきっと頭の良い美人になるよ。」 すると店員は、一瞬唖然とした顔を見せたが、そこはプロ。 すぐさまにっこりと笑ってMulderの相手をする。 「お客様、本当に愛してらっしゃるのね?」 「もう、長い出張でかれこれ半月会ってないから、気が狂いそうなくらいだよ。今晩は久々に2人きり でゆっくり過ごせそうだから楽しみなんだ。」 Mulderは本気で言っているのかしら? それとも私と同じ名前の別人? 「はい、カードは終了。ちょっとそれを貸してくれないかい?」そう言ってモルダーは箱を手に取った。 「…あら?それは…」 「ちょっとね、意味のあるものなんだよ。」 彼が何をしたのかはよくわからなかったが、手に取った箱をもう1度店員に渡す。 そして、包装もし終わったみたいだった。 店員にお礼を言ってこちらに近づいてこようとする。 さすがにここで会うのはまずいと思い、私は慌ててドアに向かおうとしたが運悪く人が入ってこようと して道を塞がれてしまった。 仕方なくモルダーの方へ向き直ると… 「ス、ス、ス…」私の顔を認めたモルダーは、目を大きく見開き、驚きのあまりに声も出ないようだった。 私の名前すらまともに呼べないらしい。 「Mulder、お久しぶりね。」ととりあえず、挨拶をしてみる。 ただ私の方こそ、彼を妙に意識してしまって、月並みなセリフしか出てこない。 「Scully…」Mulderはきれいにラッピングされた箱を手に、ただただ私を見つめていた。 「Scully…?ああ、こちらの方が恋人のDana.Scullyさんなのですね。あら?プレゼント見つかっちゃいま したわね!」と店員さんはコロコロと笑う。 そのセリフにわれに帰ったのか、ようやくMulderが言葉を紡ぎ出した。 「Scully、いつからここに?」 「え?5分前くらいだったかしら?」そう答えておきながら、「しまった」と心の中で思う。 "今入ってきたばかりよ"って言えばよかったのかも? Mulderは情けなさそうな仔犬の顔で、当惑気味の私とにこにこしている店員さんを交互に見て、やがてあき らめたように小さくため息をついた。 「誕生日おめでとう、Scully。」と言って手の中の箱を私に差し出した。 「あ、ありがとう、Mulder。」とかろうじてそう答えた私の頭の中はかなりパニクっている。 ずっとDianaへのプレゼントだと思いこみ腹立たしかった気分が、一気にひっくりかえされてしまい、自分 で自分の感情がよくわからない。 「開けてみてよ、Scully。」Mulderの方がいつもの調子を取り戻すのが早かった。 私は彼の顔をちらりと見てから、その包みを開けてみた。 中から現われたのは深い赤のビロードで包まれた箱。 …もしかしてこれは? どきどきしながら蓋を開けると、上蓋の裏に白地で金の文字で縫い取りがしてあるのを見て取れた。 「Miss Piggy…」思わずブランド名を口にしてしまった。 外で見ていたショーウィンドウにディスプレイされていたダイヤのピアス… でも、外にあったものよりもなお、私好みのカッティングが施されていて、さらに素敵に見えた。 「あら、お客様、このブランドをご存知ですの?」 「いえ、ここの外のショーウィンドウで見かけて、これに惹かれて入ったから…」 するとMulderはみるみるうれしそうな顔つきになった。 「これに惹かれて?」と確認をされてしまう。 私はただただ頷いた。 「すごいな!Scully!!!僕の勘が捜査以外で働くことがあってすごくうれしいよ!」 「あっ。」ぎゅっとMulderに抱きすくめられる。 そして、次の瞬間耳元で囁かれた。 「おめでとう、Scully。」 彼の声をこんな間近で聞いたのはとにかく久しぶりで、おまけに妙にしっくりとくる彼の胸の中を実感 しながら私はただただ頷いていたが、彼の腕の力がようやく緩んだ所でやっと「ありがとう。」と言えた。 にこやかに見送ってくれた店員さんに別れを告げて店の外に出た。 「あのさ、Scully。実はもうひとつプレゼントがあるんだけど。」とMulderはにんまりと笑った。 なにか含みがありそうな… 「な、なによ。」 「そのプレゼントはさ、僕の部屋に置いてあるんだけどよかったらとりに来ない?」 「え?」時計を見るともう10時をまわっていた。 どうしようかと彼の顔を見返すと、にっこりと笑われた。 「なんだい?Scully。来てくれないのかい?半月ぶりじゃないか。」 確かにこれだけ長い間、この人と離れていたのは初めてだった。 一緒にいたいという気持ちが湧き上がる。 「がっかりさせるものじゃないって保証があるなら。」ついかわいくない答え方をしてしまって、はっと したがMulderは気を悪くした様子もなく、ただ意味ありげに微笑んでいた。 半月ぶりに主を迎えた部屋は、なんだかさすがに埃っぽかった。 とりあえず、窓を全開にして空気を入れ替えてから暖房をつける。 良い感じにあったまってくる前に、私はお茶を入れ、Mulderは着替えをした。 お茶を机の上に置いた私の前に、グレーのセーターにジーンズというラフなかっこうで隣の部屋から現わ れる。 私がカウチに腰をかけると、彼も隣にどっかりと座った。 「さて、プレゼントだけど…」 「な、何かしら?」 思わぬ近い距離にいるMulderから、反射的に身を引きながら聞いて見る。 すると、そんな私の努力も虚しく、彼はさらににじりよってきた。 「僕なんていうのはどう?」 「えっ?」思わず自分で自分を抱きしめた。 さっきの店でのMulderの言葉が頭をよぎる。 …な、なに考えてるの?この人! あまりにいきなりの展開に私は思わず握った拳の行き先を考えた。 するとMulderはにんまりと笑って続ける。 「僕ね、帰ってくる前に1度局へ戻ったんだよ。君がいるんじゃないかと思ってさ。」 「?」 「そしたら、君はいなかったけどSkinnerの所に行こうとしたらえらく着飾った彼の秘書に会ってさ。 なんでも忘れ物をとりにきたとか…名前は忘れたけどね。少し話をしたんだよ。」 いやーぁな予感がする… するとMulderはさらにうれしそうな顔をして続けた。 「僕がいない間、随分と暗かったらしいじゃないか、Scully。」 …やっぱり…あることないこと吹きこんだわね! 「誰とも会わずにオフィスで仕事してたんだって?彼女の食事の誘いも、今日のコンパも断ってさ。」 しっかり誤解している…私はあまりのことに二の句も継げない。 「あと、ラボの連中にも言われたよ。君の元気の無さの素は…」 そこまで言われた時、思わず怒鳴っていた。 「なにをいってるのよ、Mulder!私がずっと地下で仕事をしなければ行けない羽目になったのは誰の せいだと思ってるの?!よくもあれだけの書類をためていたわね!なにが"ゆっくり楽しんで"よ! そういうセリフはやることをちゃんとやってから言ってよね!!!!!」 …一気にまくしたててしまった… 思わず肩で息をしていた。 Mulderは私に怒鳴られてしゅんとするかと思ったら、ますます楽しそうな顔をして私を見つめている。 そしておもむろに言った。 「それでこそScullyだよ。君へのプレゼントは君の怒りを思いっきりぶつけられる僕さ。どうだい? このアイデア!」 「……」怒ったのとかその前にちらっと考えた別のプレゼントの意味とかで、頭の中がごちゃごちゃ になる。 しばらく、何も言えずに彼を見つめていたが、だんだんそんな自分に笑えてきた。 私がこらえきれずに吹き出すとMulderも楽しそうに続ける。 「Scully、もう食事は済ませたのかい?」 「いいえ、まだだけど…」 する彼は、にっこり笑って電話へと向かった。 「ピザでいいかな?Scully。君の誕生日だ。好きなトッピングを好きなだけつけてあげるよ。」 くすくすくす…なんだか笑いが止まらない。 気取りの無い彼の顔を見ているだけで、こんなに楽しくなってくるなんて… 「あ、ピザ屋にシャンペンなんてあったかな?」 「そんなものあるわけ無いでしょ?ダイエットコークをお願い。それからピザにはシーフードを たっぷりと。あ、ローマトマトも忘れないで。」と、私は遠慮なく注文した。 お待ちかねのピザが来て、久しぶりにたくさん話をした。 彼がアラスカで見たと主張する「雪男もどき」の話に私は激しいツッコミを入れながらも、大いに笑った。 気がつくとしゃべり疲れた子供のように二人してカウチで眠っていた。 私は彼の肩を借りて寝ていたみたいだった。 Mulderはさすがに私がいるせいで、カウチに寝転ぶわけにはいかなかったようで背もたれに仰向けになり、 口を開けて寝ている。 そんなだらしのない表情を見ても、なんだかあったかい気持ちがこみ上げてくる。 彼の第二のプレゼントは見事に私の心を軽くしてくれた。 ただ、Mulderが2週間いないだけでこんなに自分の気持ちが沈んでいたのだと気付いたのはある意味 ショックだったけれど。 そして、ふと思いついてさっきもらったプレゼントをポケットから取り出した。 外から入ってくるわずかな明かりを受けて、きらりと光る。 私はそれを大切にそっと撫でてもう1度、ポケットにしまおうとした。 その時、箱の中でなにかが動いた感覚が手に伝わった。 少し振ってみると"カタカタ"と音がする。 私は、ピアスの台になっていた下の部分の箱をそっと取り除いた。 出てきたものは…指輪? 外灯の光にかざすとそれはどうやら、立爪リングのように見える。 …ただ、そこにあるべき石ははまっていなかった。 これは何を意味するのか? さっきのお店でMulderが何かを箱に入れていたのを思い出したが、これのことだったみたいだ。 でも… 私はちょっといろいろ楽しい想像をした後、リングにそっとくちづけて、それを元に戻した。 これは未来への約束なのかもしれない。 まだ、石がはまっていないけど、いずれはこれに石を入れてくれるつもりがあるのかしら? 彼がいなかった間に私の気持ちの中でいろいろと発見があった。 そして、この未完成のリングがさらなる事実を導いて、うれしい予感を残してくれた。 けれど、いまはまだ… ポケットに大切に箱をしまって、楽しい夢をみられるような気分でもう1度Mulderの肩に頭を預ける。 すると、突然私の頭の上にMulderの頭がのっかった。 低くて優しい声が頭上から降りてくる。 「見つけたからには、いつかはしてもらうからね。」 その息のくすぐったさに、私は思わず目を細めながら答えた。 「まだ、中に石が入っていなかったわ。」 するとMulderは言葉を続ける。 「あのピアスのふたつの内の一つを入れてくれよ。もう、君にすべてが渡してあるから僕はいつでも 待ってるよ。」 「ピアスはどうなるのよ。ひとつだけ残っていても…」 「それはね。」 Mulderはおもむろに私の頭をきゅっと抱きしめて耳元で囁いた。 「ベビーリングにして僕たちの娘にプレゼントしよう。君に似たら可愛い娘になるよね。」 「娘?息子だったらどうするのよ。」 するとしばらく声が止まり…やがてため息混じりに答えた。 「鼻ピアスにでもしてもらうさ。それなら一つで充分だろう?」 あまりの奇想天外な答えに思わず笑えたが、私は頭にのせかけてきた彼の頭をぴしゃりと叩いて言った。 「あくまでもリサイクルで済まそうと思ってもだめよ。ちゃんと、これには別に石を入れてね。このピア スはとても気に入ってるのだから。それまではベビーリングの似合う可愛い娘も鼻ピアスの息子もお預け だわ。」 その言葉にMulderは私の頭から離れて最初のようにカウチの背もたれにもたれかけて情けなさそうに 呟いた。 「僕の薄給は君が一番よく知っているくせに…」 その様子を見ているとなんだかとても愛しくなってしまい、私は思わず言ってしまった。 「がんばってね、ダディ。しっかりと働くように。」 びっくりした顔で私を見返したMulderの額に、そっとキスをしてにっこりと笑ってみせる。 そしてその後、もう1度彼の肩を借りて眠る事にした。 -=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=- あー、せっかくのお誕生日なのにこんなんでよかったのかしら?(汗) 最初の部分とぴぎーちゃんに教えてもらったエピソードの部分はわりと早くできたのだけれど、 途中と最後がなかなかまとまりませんでした。 そして、いよいよ今晩には仕上げなければっと思い、会社から帰って一気に4時間くらいで書き上げ てしまった即席Ficです。 可愛いくて短い話にまとめたいなと思いつつも、つい長くて訳のわからない話になってしまいました。 ストーリーってものをどこかに置き忘れたようで・・・(苦笑) まあ、私の他にもあのシーンを使って書いてくださるという方もみえるので、とりあえずはこれでって ところで・・・(←言い訳中) えーっと、とにかく・・・ ぴぎーちゃん、お誕生日おめでとう! 素敵な18歳の年となるようお祈りしています!!!