この物語はフィクションであり、「XF」の著作権等を侵害する つもりではないことをここにおことわりしておきます。 また、「XF」に関するすべての権利は、クリス・カーター氏 及び20世紀FOX社に帰属します。 モルがひとりぶつぶつ言ってるだけのficです。 ちょっぴり大人場面を匂わせる描写もございます。 それでもよい方だけ先にお進みください。 筆者個人はDD自身がナレーションやってる声を 思い浮かべて陶酔して書いております。(笑) /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/- 『惑う』 夢の君とうつつの君・・・。 あの日の君は一体どちらの君だったのか。 僕は今だにそのことを考える。 あの夜・・・。 月も星も見えなかったあの夜だ・・・。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ あの夜の僕らは、いや、少なくとも僕は、 時空にぽっかり開いた穴ぐらのような場所にいた。 地下鉄工事が途中で頓挫したような。 入口はあるが出口のない。 僕らはそれを絶望と呼ぶ。 いや、僕ら以外の誰もがそう呼ぶ、そんな穴ぐらだ。 君はそこにランプを1つ持って現れた。 突然、何の前触れもなく。 「何に使うんだい?」 そう僕が尋ねると、君は言った。 「破片を拾うの。」 「破片?何の?」 僕の問いには答えないまま、君は足下の何かを捜し始める。 そうしてわずかな灯りで、何かをたどるようにして、 僕の方へと近づいた。 そして、僕の靴をランプで照らすと、 「見つけたわ。」 君が言った。 「ここに。」 僕の瞳を照らそうとランプを掲げて背伸びをする。 「ほら。砕けて粉々になった、あなた。」 君はそう言うと、僕の頬にそっと手を伸ばす。 その手は柔らかく、心地よかった。 僕は一瞬目を閉じた。 灯りがまぶしかったわけでなく。 もう一度君を見つめるために。 そして、その通りに目を開けて。 僕は君を抱きしめた。 コトリ。 君の手のランプが地面に落とされる音。 その音が僕の耳に届いた。 それがはじまり。 すべての、そしてただ一つの。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 気が付くと。 僕は自分の部屋にいた。 いつもと同じカウチに腰掛けて。 僕の他には誰もおらず、聞こえるのは 水槽のポンプの音。 だが僕の指先は、 君の背のゆるやかなカーブとか、 少しずつ上がる君の体温を 確実に記憶していた。 まるで、さっきまで君を抱いていたかのように。 僕は立ち上がって、窓を開ける。 夜は濃紺の気体のように重く漂い、  僕はそれを吸い込んだ。 そうしている僕さえも 夢なのか、 それとも現実なのか。 君の甘い香りさえ こうやって思い出せるというのに。 そう、君の。 僕の名を呼ぶその甘い囁きさえも こうやって思い出せるというのに。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 月も星も見えない夜。 僕はあの夜のことを考える。 そして。 君が傍らにいないこと。 夢であれ、うつつであれ。 僕はその痛みを持て余すのだ。 end /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ 最後までおつきあい頂きまして有り難うございました。 書きかけのFICがどうもできあがらず、 こんな時には!(なぜそうなる?)と直球ど真ん中!の 「甘々大人FIC」を書くはずが なぜかこうなってしまいました。(汗) 何だか暗くてすみません。 ご意見(ご指導も含めて)、ご感想などがございましたら 下記アドレスまで頂けると幸いです。 亜里 knd-mh@pop07.odn.ne.jp