*本文の著作権は1013、c・カーター氏及び 20thFoxに帰属します。 〜〜〜〜〜〜ATTENTION〜〜〜〜〜〜〜 *この作品は、以下の条件を満たしている方にのみ読んでいただけます。     ・18歳以上である。     ・モルスカの物理的ロマンスに耐えられる。      *この作品は、本編「ミラグロ」において「スカリーとパジェットに既成事実ができていた」  ことを前提とした上で、本編の一部との”差し替え”を目的として書かれています。従って  作中にはスカリー/パジェットの絡みもあります。それを了解いただいた上でお読みになる  よう、お願い申し上げます。  ・・・これらのうちひとつでも満たさない方は、即刻”戻る”をクリック  してください。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   <Miragro(another)>     Spoiler:「Miragro」      by akko 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  パジェットは自分の部屋の鍵を開けようとして、動きを止めた。    留置場から開放されたその足で帰路につき、重い原稿の束を抱えながらポケットの鍵を探り当て たときだった。  鍵穴に、何か特殊な道具でこじ開けた後がある。  予想していなかった展開と、想像に難くないその犯人に、彼の手が震えた。  彼は意を決してノブを回した。  そして居間へ向かうとそこには――――彼女がいた。    スカリーはパジェットのタイプライターを目の前に、呆然と立ちすくんでいた。  その周りは原稿用紙で埋め尽くされていた。机の上も床も、辛くも押収を逃れたものや書きかけ のもの、まだ何も書いてない真っ白なもので散乱している。  彼女はそんな無秩序な部屋に立っていた。  窓からさし込んでくる憂鬱な夕日が、その表情を隠していた。  「ダナ・・・」  そんな彼女にやはり呆然としながら、彼はかろうじて声をかけた。  が、彼女の返事は返ってこない。  まるでブロンスの彫刻か何かになってしまったかのように、動こうとすらしない。  パジェットは変わり果てた自分の部屋と、ベッドを共にしたのとは全く別人のような彼女を目の 前に、言葉を失った。  西日に隠された彼女の顔が、陶磁器のように青白かった。  「・・・どこにも、ないの・・・」  しばらく凍りついたような沈黙が続いた後、彼女はうめくように言った。  「あの続きが・・・」  そして彼女は、初めて彼に目を向けた。  パジェットは息をのんだ。  彼の愛する彼女が、その青い顔に恨みの仮面を貼り付け、冷たい視線を投げかけてくる。  心が痛い・・・  「あの話は、もう終わりってことなの?」  「いや・・・」  今度は彼がうつむいた。  「書き直したんだ。」  「どうして?」  「あまりにも滑稽過ぎたからさ。」  彼は自嘲した。  「あの塗りつぶした部分には、まるで君らしくない君が書かれていた。作家として、主人公に偽   りの振るまいをさせるわけにはいかない。だから・・・」  二人の間に、再び沈黙が流れた。  スカリーは苦しそうにうつむくパジェットに、自らも心を痛めた。  彼をこんなに苦しめているのは他でもない、この私だ。自分のあまりにも身勝手な願望を満たそ うとしている、この私だ・・・  「読ませてよ。」  やがて、重い沈黙に耐えられくなった彼女は口を開いた。  「え・・・?」  パジェットは驚いて顔を上げた。  「私、あの続きを読むためにここに来たの。」  「でもダナ・・・」  「読ませてよ。」  凍りついた表情のまま繰り返し強要する彼女に、彼は折れた。  彼は溜め息を一つすると、手の中にあった原稿から一つの束を取り出し、彼女に差し出した。  今までとは違い、その束だけはタイプ打ちではなく、彼の手書きとなっている。  彼女はそれを受け取ると、静かに読み出した。 ============================================  「・・・抱いて・・・」  彼女の哀願はどこから来てるのか?  それを知ることはできなかった。   しかし、そう言いながら涙で瞳を歪める彼女は、あまりにも官能的すぎた。  そうして自分を求める彼女の、なんと愛らしいことか――――彼の中に、新たな欲求が生れた。  彼はそれに突き動かされるように、ただ泣きじゃくる彼女の唇を、自分の唇で封じた。  そして彼女の中に侵入すると、優しく、宥めるように彼女を味わう。ほんの少しだけしょっぱい 彼女の唇。涙の味だ。  彼女は積極的に彼に絡んだ。自分の中の空虚を、無理矢理埋め尽くすように。貪欲に。彼は彼女 を求めた。  彼が体重をかけてくるのを感じた。彼は彼女の豊かな赤毛を激しく弄りながら、彼女の頭をクッ ションの上に優しく置く。その極上の奉仕に、彼女はいっそう貪欲になった。  それに答えるかのように激しくなる、彼の侵入。じっくり味わってたかと思うと、次の瞬間には 狂ったように彼女を掻きまわす。彼女は息苦しくなりながらも、その感覚に悦んだ。  彼の手が、腰からわき腹へと探りを入れ始めた。上質のシルクを扱うような手つき。こそばゆく てたまらなく気持ちがいい。彼女は呻き声をあげそうになったが、激しいキスをやめない彼が、そ れを許してはくれない。その息苦しさ、こそばゆさ。ああ。もう気が変になりそう――――  それらに耐えられなくなった彼女は、うっすらと目を開けた。  その時彼女の視界に飛びこんできたのは――――  自分を愛撫する彼の顔、  そして、  ベッドルームのそのまた向こう、自分たちの情事の現場と、その隣の部屋をかろうじて隔てる、 一枚のうすっぺらな壁――――。  彼女の、感じ始めていた快楽が、一瞬にして吹き飛んだ。  彼女は彼を、勢いよく押しのけた。  ”反射的“というのにふさわしい素早さで。  壁を見たその瞬間、彼を手の動きが与える快感が不快なくすぐったさになリ、息苦しくなるほど 夢中にさせてくれた彼の舌は、ただの異物となっていた。  彼女はそれらを排するために、渾身の力を振り絞った。  自分の上にいた男が、引き裂かれるように後退する。  彼から解放されると、彼女は上半身を起した。さっきまでの興奮が、荒々しい息遣いとなって残 っている。  呼吸を落ちつけようと努力しながら彼を見やると、彼は突然の拒絶に驚き、ダークブルーの瞳を 責めるように突きつけていた。  自分と同じように、かすかに息を切らしながら。  彼女にはしかし、そんな彼の非難も目には入らなかった。やがて呼吸が落ちつくと、今度は混乱 した頭を落ち着けるために、改めて自分の状況に目を向けてみる。  シーツの下の自分は裸。目の前には見知らぬ男。そしてあの壁の隣の部屋には・・・  彼女の顔が、見る見るうちに紅潮した。  「私・・・帰るわ。」  言うが早いか彼女はベッドから飛び起きると、床の上に脱ぎ捨ててあった下着を着け始めた。  震える手で衣服を拾いながら、彼女は彼の反応を恐れた。あまりのことに、逆上して自分に襲い かからないとも限らない。が、振り返ってみて、それを確認するだけの勇気はなかった。  しかし彼は、何もしてこない。  彼女はそのすきにブーツまで履き終え、ここに来たときと全く違わない姿になった。  そして寝乱れた髪を手櫛でそっと整えると、彼のほうには目をくれることもせず、そのままベッ ドルームを去っていった。  彼の部屋のドアが、自分の後ろでばたんと閉まった。  あまりにも軽々しい、軽薄な音――――彼女はそれに、自分の大胆さを思い知った。  たった一枚壁を隔てただけの、こんな、いつでも破ることのできるドアしかない部屋で、さっき まで一体何をしていた?  喘ぎ、悶え、イカれた顔をさらけ出し、男と裸で絡み合い、情けない格好で大きく足を広げて・・・  彼女の全身の血液が凍りついた。  そんなことをしたのか?   ここで。  軽くドアを蹴破れば、自分の中心に顔をうずめる彼を見ることのできるこの場所で。壁の向こう から聞き耳を立てれば「お願いもっと」などと激しくよがる自分の声を聞くことのできるこの場所 で。   いや、もしかしたらそんなことをしなくても・・・  ――――そんなの、馬鹿げた妄想だ。彼女は自分に言い聞かせた。あの程度の情事を、当人たち だけの秘め事にできないほど、このアパートがもろいはずはない。考えすぎだ。  しかし――――彼女は自問した――――それならどうして、この足は動かないのか?  折角彼から解放されたのに、どうして当初の予定通り、隣の部屋に向かおうとしないのか?  彼女はたった今出てきた部屋を背中に、自分の膝ががくがく震え始めるのを感じた。自分自身へ の恐怖に支配され、上手く考えをまとめることができなかった。  一体これからどうするべきなのか?  何事もなかったかのように隣の部屋に向かい、仕事の話をするべきなのか。それとも、始めから ここにはいなかったかのように、エレベーターに乗ってここから立ち去るべきなのか・・・?  そんな彼女の物思いを、勢いよくドアが開く音が立ち切った。  彼女の心臓が、一瞬停止した。  驚きざまに音のするほうを振り向くと、開いたのは、彼女の立ってる隣の部屋のドアだった。  そしてそこから――――スミスを片手に握った――――彼女の相棒が、血相を変えて出てきた。 ============================================  モニターの中にスカリーの姿を認め、モルダーは愕然とした。  ”共犯者“とパジェットが連絡を取り合うだろうと読んで、監視カメラとマイクを設置した矢先 の出来事だった。  しかし、本局の資材部から担ぎ込んできたそれに映ったのは、彼の相棒。  最後に会った時、不自然なほどパジェットを擁護していた、そして逮捕の直前、理由も判らない まま奴の部屋で呆然としていた彼女だ。  一体何をしに・・・?  モニターの中のスカリーは、タイプライターの横に積まれてある原稿を、荒らすように読み始め た。まるで、飢えた野獣のような貪欲さを見せる彼女に、彼は嫌悪感を覚えた。  彼女は何を探しているのか、何を求めているのか?  再びパジェットの部屋に舞い戻ってまでも見つけなければならない何が、そこにあるのか―――?  モルダーは自分の中に、薄汚い疑念が生れるのを感じた。  まさか彼女が探しているのは、証拠、もしくは確信なのでは?  あれが事前告知だったという――――。  スカリーに荒らされた部屋は、瞬く間に原稿の白一色になった。  荒らす原稿がなくなると、彼女は丁度モルダーに背を向けるよう状態で立ちすくんだ。彼は内心、 スカリーの表情を見なくても済むことに感謝した。  窓から差し込む憂鬱な西日が、モニターを満たし始めた頃だった。    読み終えた原稿を手に、スカリーは言葉をなくした。磁器のように白かった顔が、なおのこと青 くなる。  読まれた者と読んだ者。お互いに全く相容れぬ根拠を持つ気まずさが、沈黙をいっそう重くした。  「・・・よければ、感想を聞かせてくれないか?」  先に沈黙を破ったのはパジェットだった。  「僕には、聞く権利がある。」  それはスカリーにも判ってることだった。読ませることを強要した時点で、自分には感想を言う 義務が生じていたことを。暗にそれについて触れる彼に、彼女も重い唇を動かした。   「・・・これは、いつ書いたものなの?」  「君が寝てる間に――――」  「見え透いた嘘ね。」  彼の答えに、彼女は嘲るような笑みを浮かべた。  「ここに書かれてるのはフィクションじゃないわ。これは全て、私のとった行動そのものよ。私   があなたのベッドで居眠りしてる最中にこれを書くことなんて、絶対不可能だわ。」  「嘘じゃないよ。」  彼は彼女のなじりに耐えた。  「君の全てを知った後、どうしても書きなおす必要があるってことに気がついたんだ。それも早   急に。だから僕は君が眠った後、ベッドを出てペンを取ったんだ。タイプする音で君を起した   くなかったから・・・」  「それはご親切に。」  彼女は皮肉を込めていった。  「そして書き終わると、私がこの部屋から出ていくことを望みながら、再び私に触れてきたって   言うの? よくできた冗談だわ。」  「信じられないことを責める気はないよ。」  彼は静かに言った。  「でも・・・一つだけ訂正させてくれないか。僕は決して、君がそうすることを望んでたわけ   じゃない。僕の望みはもっと――――別のところにあった。」  スカリーはその言葉に、あの真っ黒い原稿を思い出した。  彼の望み。消された望み。おそらくは今手にしている原稿とは――――自分の実際の行動とは、 正反対の、彼の願望。  彼女はそれを聞いて、自分の欲求の一つが満たされたことを――――恥じた。  「あなたはなぜ・・・」  彼女はおそるおそる彼に視線を向けながら言った。  彼の瞳がかすかに歪んでいるのを、彼女は見ないように努めた。  「・・・それを望むのをやめたの?」  「やめてなんかないよ。」  彼は自嘲した。  「やめてなんか・・・でも、さっきも言ったじゃないか。あり得ないことを書くわけにはいかな   いって。それで、あの部分を自分にも読めないくらい塗りつぶすと、あの後君ならどうするか、   思い付くまま書いてみたんだ。」  「おかしな小説家ね。」  彼女は優しい口調に聞こえることを願いながら言った。  「私はあなたの小説の主人公の一人にすぎないはずよ。自分のキャラクターを、自分の望むまま   に書くのは、あなたの権利の一つじゃないの?」  パジェットは首を振った。  「違うよダナ。少なくとも、必ずしもそうとは限らないよ。作家は時に、キャラクターの心を代    弁することしかできないんだ。『キャラクターが作家に書かせてる』瞬間だよ。そしてこの場   合、君が僕に、それを望むのを許してはくれなかったんだ。」  「私が・・・?」  彼は頷いた。  「だって、できるわけないだろ?」  そして声を高めると、こう言い放った。  「心に別の男を住まわせてる君を、あれ以上求めることなんて・・・」    『・・・ければ・・・そう・・・、・・・ないか・・・』  『こ・・・いつか・・・』  『きみ・・・てるとき・・・』  「クソッ!」  モルダーはイヤホンをモニターに叩きつけた。  資材部の奴ら、こんなぼろくそな盗聴マイク貸し出しやがって!  彼は百通りもの罵り文句を頭の中で呟くと、苛立たしげに腕を組んだ。  モニターの中では、スカリーとパジェットのやり取りが続いている。たった一枚壁を隔てた向こ うだというのに、二人が何を話してるのかさっぱり判らないことが、彼をいっそう苛立たせた。  ここはパジェットの部屋だ。ここで奴が――――奴と彼女が何をしようと、自分には関与する権  利は全くない。それは判ってる。ああ判ってるとも。  しかしながら気に入らない。  今のこの状況の全てが。  スカリーが自分の意思であそこへ出向いたことも、自分の知らぬところでパジェットと密談を設 けていることも、それをこそこそ盗み見している自分自身も何もかも。  ・・・落ちつけよ。俺はFBI捜査官だ。  今はそんなことより、彼女が奴から手渡された原稿を読んでいることに注目するべきだろう。も しかしたら、自分とはまた別の方法で何か事件の手がかりをつかんで、その証拠を差し出すように、 パジェットに強要していたのかもしれない。  だがもしそうなら、何故一言も言ってくれないんだ?  FBIの捜査は二人一組が鉄則。今までそれを、ただの一度も軽んじたことのない彼女が何故・・?  その問いに手を伸ばした瞬間、彼の、捜査官としての限界が訪れた。  何か、言えない理由でもあるのか・・・?  彼の中に黒い疑念と共に、スカリーとパジェットの『濃厚なラブシーン』が蘇った。  『”スカリー捜査官”の仮面を剥ぎ取った無防備な女の顔が、そこにはある――――』    スカリーとパジェットの間が、沈黙で埋められた。  彼女は彼から目をそらした。彼の、どことなく恨むようなまなざしを、これ以上受けとめられる 自信はなかった。  「・・・またもや図星だろ?」  パジェットはやがて、努めて静かな口調で語りかけてきた。  「君の心には”彼”が住んでいる。」  スカリーの心に、鈍い痛みが走った。  彼・・・彼・・・心の奥にこびりつく、正体不明の黒い影。その正体を暴くことすら、今まで避 け続けてきた、小さなくびき・・・  「・・・心当たりがないわ・・・」  彼女の絞り出すような答えに、彼は苦笑を浮かべた。  「今度は認めないんだね。あの時とは大違いだ。」  彼の言葉に、彼女の頬が紅潮した。孤独を認めてしまった時の屈辱が、つかの間蘇る。  「認めることができないほど、君にとって彼は大きな存在――――」  「やめて。」  スカリーは遮った。  「あなたが何を妄想しようと勝手だけど、それを私に押し付けるようなまねはしないで頂戴。」  彼女は威厳を保ちながら言ったつもりだった。が、その声が震えているのは、自分で聞いていて も明らかだった。  「だってそれじゃ私・・・別の男を愛しながらもあなたに抱かれたってことになるじゃない。私   は・・・」  「判ってるよ。」  今度はパジェットが遮る番だった。  「君は単なる好奇心で男と寝ることができるような女じゃないことは。――――でも、それなら   聞くけど、君は僕に、ほんの少しでも好意を持ってくれてたかい?」  ・・・彼女は言葉を詰らせた。  それは、彼女が恐れていた質問――――真実を、彼に告げなければならない問い――――  彼女は、罪悪感から来る胃の痛みと闘いながら、首を横に振った。  「――――私があなたに持っているのは興味よ。好意じゃないわ――――」  冷たく、残酷な告白。  もしも私が彼ならば、こんな言葉を突き付けられて、正気でいられる自信はない・・・  しかし彼は、苦しそうな自嘲を浮かべただけだった。  彼女は、今の自分の告白を、彼がそのまま受け入れたことに、いっそう罪を意識した。  「――――もっと早くに気付くべきだった。」  やがて彼は、呟き始めた。  「僕はずっと、君に惹かれてた。君に僕の存在を気付かせたい。君の心に僕を住まわせたい。君   と身体を重ねてみたい――――でも、それを正面から表現する勇気がなかったんだ。」  「だから小説を・・・?」  彼女の問いに、彼は頷いた。  「小説に君を登場させることでしか、僕は自分の気持ちを表現できなかったんだ。そうすること   でしか僕は・・・・でも、そんなことしなければよかった。」  「どうして・・・?」  「君を抱いたことで、はっきり気付いたからだよ。君が誰を想ってるのか。本当は、誰に抱かれ   たいと思ってるのか――――」  「やめてってば。」  スカリーは彼を制した。その時は彼女は自分の瞳が涙で潤み始めていることに、気付いていなか った。  「これ以上、好き勝手なこと言わないで。」  しかしパジェットは、言葉を続けた。  「僕の腕の中で君が常にどこを見ていたか、教えてあげるよ――――ここだ。」  彼はそう言うと、自分の部屋の壁を指した。  その指は、彼女の心をも突き刺し、鋭い痛みだけを残して通り去った。その壁の向こうは―――  「僕に身を委ねながらも、君の意識はこの壁の向こうにあった。僕の腕に、君は”彼“を求めて   いた。それを知ってすごく・・・辛かったよ。でも、それでも僕は欲しかったんだ。君が。た   とえ”彼“の身代わりでも構わないと、その時は思った・・・」  スカリーはその言葉に、息苦しくなった。  あまりにも苦しい、切ない想い。胸が締め付けられる・・・  「・・・そんなこと、ないわ・・・」  彼女の涙声に、彼は首を横に振った。  「ダナ、それはもう、君自身が認めたことだよ。」  そしてそう言うと、彼女の手から手書きの原稿をそっと取り上げ、かざしながら言った。  「君、さっき言ったじゃないか。”ここに書いてあるのは私の行動そのもの”だって。」  ――――馬鹿げてる!!  モルダーは自分を叱咤した。  何を考えてるんだ、俺は。彼女ははっきり否定したじゃないか。それを信じられないのか?俺は いつからそんな疑り深い、情けない男になったんだ?!  ・・・いや、彼女のことは信じてる、ああ信じてるとも。この画面の向こうの出来事だって、必 要さえあれば彼女は包み隠さず話してくれるだろう。  でも・・・何故か苛立つ。  彼は自問したが、答えるまでもなかった。彼には、自分の苛立ちがどこから来るのか判っていた。  仮にパジェットの小説が事実だったとしても、自分には彼女を責める権利が全くないこと。そして そのことを理解しながらも、彼女の行動に固執してしまう自分がいること。それらがたまらなく苛立 たしい。  ”スカリー捜査官”の仮面を剥ぎ取った無防備な女の顔・・・・  再び彼の頭の中を、その一文が横切った。  あの男、やはり気がおかしいとしか思えない。あの女から”スカリー捜査官”を奪うことを、本気 で考えていたとしたら。彼女にとって、その仮面はすでに素顔だ。それをあえて剥ぎ取る方法などあ るわけが――――  ――――最低だ、俺は――――  突然彼は、自分への失望に肩を落とした。  パジェットをこんな風になじることで、自分の興味を別の方向に向けさせるなんて・・・  彼の興味・・・・”無防備な女の顔”。  今まで自分の中で押し殺しつづけてきた、自分自身にすら認めなかった本心。  活字でそれを見ることによって、掘り起こされてしまった渇望――――。  ――――気がおかしいのは俺のほうだ。  彼は自分を嘲った。  そんなに気になるのか?あの”事前告知“が。  彼女が文章の中で他の男にそれを見せたからって、それが一体なんだというのか・・・  しかし、そんな彼の自嘲は次の瞬間、完全に吹き飛んでいた。  彼がふとモニターに目を戻すとそこには――――スカリーの頬に手を伸ばし、愛おしそうにそれを 撫でまわすパジェットと、その彼の行為に甘んじているスカリーがいた。  刹那、彼女の”無防備な顔”が脳裏に映し出され、  その直後、  モルダーの目の前が、真っ白になった。  この場を立ち去りたい――――彼女は彼のベッドにいたときと、全く同じことを考えていた。  この男は一体どこまで私の中に入りこめば気が済むの? どこまで私の壁を壊せば気が済むの? どうして私が今まで――――自分自身にもひた隠しにしてきたことを、あっさりと掘り起こしてし まうの――――?  帰りたい。この部屋から出ていきたい。  彼女は自分の意思でここへ来た。勿論、出て行くのも彼女の自由だ。  しかし体が動かない。動こうともしない。  彼女はそんな自分に、小説の中に描かれていた自分自身を見出した。  『身体を固くしながらも、彼が与えるぬくもりから逃れることができない――――』  「フィリップ・・・」  彼女は、自分でも気がつかないうちに、彼の名前を呼んでいた。  「・・・あなた、一つ間違えてるわ。」  「何を・・・?}  「あなたはまるで、私があたを”彼“の代用品にしたかのように言ったけど、でも私、あの時は   本当に、あなたが欲しかったの・・・」  自分ですら予想していなかった、思いがけない告白だった。  パジェットはそれに、苦笑を見せた。  「無理にそんなこと言わなくていいよ、ダナ。」  「無理なんかしてないわ。」  スカリーははっきりと言い返した。思いがけない言葉ではあったが、それが自分の偽らざる本心 であることは間違いなかった。  「あなたは私に―――好意を持ってると言ってくれたわ。私はその、”好意を持たれてる”とい   う特権に甘んじてしまった。甘んじることを許してしまった。そしてその結果が・・・。」  彼女はそこで言葉を切ると、かぶりを振ってうつむいた。  「――――恐ろしく傲慢な女ね。自分でも嫌になるわ。でも、そこまで傲慢になれるほどの特権   を持たせてくれたのは、あなただけよ。・・・・私は、そんなあなたがたまらなく欲しかった   の・・・・」  これがスカリーの、精一杯の答えだった。  『君の心には彼が住んでるね』――――パジェットの、この問いに対する。  しかし彼は、その答えだけでは満足しなかった。  「――――本当はその特権は、”彼”から欲しいの?」  「いいえ。」  彼女は否定しながらも、僅かに上を向き、涙が頬を伝わりそうになるのを制した。  「”彼”からの好意が、特権になるとは思えないわ。」  「好意を特権にすることができないほど、”彼”は君にとって重い存在。そいういことだね。」  彼女はかすかに頷いた。  「おそらく・・・きっと・・」  「彼に抱かれたいと思ったことは?」  「ないわ。」  「彼との情事を想像したことは?」  「ないわ。」  「彼に触れて欲しいと思ったことは?」  「ないわ。」  「ダナ、それは本当?」  突然、パジェットは優しい、慈愛に満ちたまなざしを彼女に向けた。  スカリーはとっさにそれから目をそらした。そして彼が自分の心にこれ以上侵入するにを阻止し ようと身構えた。  しかし、それは遅すぎた。  「私に、嘘をつく理由なんか・・・」  「そうなの?」  彼は、彼女の抵抗をあっさり破ると、深いブルーの瞳でうつむく彼女を覗きこんだ。  まるで泣き止まない幼い少女を慰めるようかのように。  「ダナ、」  そして青白い彼女の頬にそっと手を置くと、優しくそれを撫で始めた。  「僕は君の全てを知っている。だからもう、僕には嘘をつかなくていいんだよ。」  彼女の顔が、かあっと紅くなった。  彼の手・・・私の身体を駆け巡った彼の手。私を心から悦ばせた、大きな彼の手・・・  負けてしまう・・・  「嘘なんか・・・」  彼女の頬に、涙の跡が一筋ついた。  パジェットはベッドの中の時と同様、慈しむようにその跡を指で拭う。  彼のその仕草は、彼女の熱い記憶を更に呼び覚ました。    『今までこれほど、もっと欲しいと思えるほど優しくされたことはない』――――    「僕に認めるのが嫌なの?」  彼は再び語り始めた。  「いや、僕だけじゃないね。自分自身にも認めたくないんだね。認めてしまったら、本当に求め   てしまうかもしれない。それが怖いんだね。」  そして彼は、そこに棒きれのように立ちすくむ彼女をそっと抱き寄せた。  「可哀相に、辛かったろう? 自分を騙すことは、他人を欺くのより辛いことだから・・・」  「辛いのは、私じゃなくてあなたのはずよ。」  スカリーは身体を固くしたまま答えた。  彼の腕は胸板は、あの時と全く変わらずあたたかい。彼女はそれに包まれながら、心までは許 すまいと必死になった。  でも・・・これ以上彼のいたわりを、拒むことができない・・・  「ああ、辛いよ。」  彼はあっさり認めた。  「”彼”がいる限り、僕は君に愛されることはない。そしてそんな君を、僕は求めることができ   ない。でも・・・」  彼はふと、彼女を自分の胸から引き離すと、その頬を両の手で包み、彼女の顔を自分のほうに向 けさせた。  彼のダークブルーの瞳は、涙でかすかに歪んでいた。  「・・・僕は思ってたよりプライドのない男だったみたいだ。もし君が僕に”彼”を求めるなら、   僕はきっと、喜んで君にそれを与えてしまうだろう・・・」  彼がそう語りかけた瞬間、  彼女は自分に負けた。  愛される優越感を、恥も外聞もなく振りかざしていた、あの時の自分に・・・  彼が額に接吻するのを、彼女は感じた。  痛いほどのいたわり。相手に自分のぬくもりを与えようとすればするほど、お互いを傷つけてし まう類の優しさ。そしてそれを理解しながらも、刹那的になってしまう愚かさ・・・・  彼が与える感覚に、彼女の意識が遠くなった。  「私・・・私は・・・」  「何も言わなくていいよ。」  彼の接吻は、額から頬、そして耳朶へと移った。  「君は壁の向こうを見てればいい。」  「そんな・・・私、そんな・・・」  お願いやめて。  その一言が、どうして出てこないの・・・?  彼の唇が項へと移った。  彼女はそれで、自分の身体に火がついたのを知った。    『もう一度この人に愛されたい。まさぐられたい。――――そしてもっと、情けなくなりたい。』  もう、後戻りはできない・・・・  背後からの大きな音に、パジェットの動きが止まった。  自分の部屋のドアが激しく蹴破られる音。――――彼はそれに振りかえった。  そこには彼の隣人が、真っ青な顔を、険しく歪ませて立っている――――  「モルダー捜査官――――」  彼は穏やかに言った。  「――――何かご用でも?」  モルダーは、まるで自分の乱入を予測していたかのような彼の様子に、拍子を抜かれた。  「そ、その・・・」  彼は言葉を探しながら、右手のスミスを腰のベルトに押しこんだ。今までの緊張とうって代わった 戸惑いに視線を泳がせる。  そしてその行きつく先は――――パジェットに、人形のように寄り添っている彼の相棒――――  彼の頭に、再び血が上った。  モルダーはスミスを振っていた指で彼女を指し示すと、台詞をひねり出した。  「・・・彼女を、迎えに来た。」  そして居間につかつかと入りこむと、パジェットの傍のスカリーの腕を強引に掴み、部屋から連れ 去った。  二人の後ろで、パジェットの部屋のドアが鈍い音を立てて閉まった。    スカリーは何の抵抗もせず、一言の非難も発せず、モルダーに従った。  その空気のような従順さに、モルダーは内心腹を立てた。  彼は自分の部屋にまずスカリーを押し込むと、荒々しくドアを閉めた。  そして成す術もなくその場に立ちすくむスカリーの正面で、威圧的に言った。  「スカリー、説明は?」  「・・・説明?」  彼女はしかし、まるで夢の中にいるかのような反応しか見せない。  「奴は今回の事件の重要参考人・・・いや、容疑者だ。そんな奴に一人で会いに行くなんて、あま   りにも軽率だと思わないか?」  「・・・事件?」  寝言のような、彼女の言葉。  彼は怒りに自制心を失いそうになる自分を、必死になって理性につなぎとめた。  「――――スカリー、あそこで何をしてたんだ?」   「何って・・・?」  「いつも、規則やら冷静な判断やらを振りまわしてる君が、容疑者の部屋に一人で乗りこむなんて   それなりの理由があるからとしか思えないだろ? コンビを組んで捜査をしている以上、君には   それを言う義務があるし、僕にはそれを聞く権利がある。」  「・・・義務・・・?」  「ああ、そうとも。」  彼は胸に収めて有り余る怒りと闘った。  「それとも捜査の関係上、まだ話せないとでもいうのかい?」  しかし、彼女は何も言わなかった。  ただ、彼の目の前で言葉なくうなだれるだけ。  その危うげな態度に、彼の怒りが爆発した。  「スカリー!」  顔を真っ赤にしたモルダーは、スカリーの肩を激しく揺すった。  「一体奴と何があったんだ?!答えろ!」  「私・・・私は・・・」  彼の一喝に、彼女はかろうじて口を開いた。  「私はただ・・・」  そしてそう言いながら、言葉と同じくらい空ろに顔を上げた。    それが視界にはいった時、  彼の時間が止まった。  豊かな赤毛の中から現れたのは、『”スカリー捜査官”の仮面を剥いだ、無防備な女の顔』だった。    彼女の瞳は唇は、今まで見たこともないような妖しげな光を放ってた。  男を欲する女の顔。愛されることを願って輝く女の顔。それらはまさしく、パジェットの小説で彼 女が見せたものだ。彼が知らずのうちに殺していた、欲求のひとつだ。  それらが今、活字から抜け出し現実のものとなって、目の前にある――――    彼は彼女の肩に手を置いたまま、吸い寄せられるように彼女に顔を近づけた。  彼女は抵抗しなかった。それどころか、そうとは気付かないほど小さく唇を開け、彼を待っていた。  二人の唇がそっと重なった。本当に、ただ振れてるだけの接吻。お互いの唇の、盾の皺を感じられ る程度の触れ合い。それは、興味が生んだだけの行為だった。  しかし、唇一枚一枚のふんわりした感触とそこから伝わる体温は、興味を欲望へと変えていった。  彼はかすかに開かれた彼女の唇を、そっと吸ってみた。  彼女はそれにも抵抗せず、ただひたすら彼に自分を差し出しつづける。  あまりにも従順な女。彼は今度は、それに貪欲になった。  彼は彼女に更に深く吸いつき、彼女の柔らかさを充分に味わった後、それを丁寧に舐めまわし、そ こから彼女の中に侵入した。彼女がそれに、微かに息を荒げる。それを感じた彼の行為は、おのずと 激しくなっていった。  唇を半ば強引に大きくこじ開け、彼は彼女の中に入りこんできた。そしてそして彼女を絡め取ると いっそう激しく彼女をかきまわした。  彼女の声にならない声は、行動になって現れた。  今まで彼にしたいようにさせてきた彼女は、突然、彼を貪り返してきた。彼の行動に苦しそうに息 を荒げながら、必死になって彼に彼に絡みつき、彼を味わう。  彼に負けない貪欲に、そして驚くほど素直に。  彼女が求めてくる・・・・  彼の全てが、それで狂った。  彼は彼女の肩にあった自分の手を、彼女のジャケットの下に滑り込ませた。  彼女と絡み合いながらボタンを外し、それを剥ぎ落とす。  主を失ったジャケットが、すとんと力なく彼女の足元に横たわった。  そして次に彼女の背中に手を回すと、ブラウスごしに彼女を撫でまわす。それに彼女が悦び始め ているのが、唇ごしに伝わってきた。彼を味わいながらも、時に彼の中で動きを止める彼女。  彼女は震える手を、彼の項にかけた。  それを合図にしたかのように、彼は彼女のブラウスを手繰り寄せ始めた。始めは静かに、そして 段々荒っぽく。  彼女の白いブラウスの裾が、パンツの中からだらしなく引きずり出された。  彼は彼女の腰に手を回すと、その裾の中へと侵入した。  彼女の肌。白くてすべやかで、炎のように熱い・・・  彼の指がわき腹から背中の筋へと探りを入れ始めると、彼女は低くうめき始めた。彼はそれを聞 くと、彼女から離れ、今度は項へと唇を這わせた。  彼女の甘い吐息が声にならない喘ぎが、彼の耳に直接吹きかけられる・・・  彼の太い指が、背中の一番敏感な線を刺激し始めた。  それと同時に、彼女は自分の口から悦びの声が微かに漏れるのを聞いた。  彼がそれをなぞる度に自分を襲う、気が狂う一歩手前のような感覚。それは項を責められ始め、 なお大きく膨らんでいく。それらに耐えられなくなった彼女は彼の背中にきつく抱きついた。  彼の指が、ブラジャーのホックにかかった。  そして何かにせかさせるようにそれを弄ると、あっさりと外した。彼女を守る覆いの一つが、彼 女から剥がれていく。  彼はそれを確認すると、再びブラウスの裾を手繰り寄せ始めた。もう、君から一つ一つ剥がして いくなんてまどろっこしいことはしない。したくない。もう待てない――――彼の狂ったような指 は、そう語っていた。  彼女の同じように、彼に語り返した。  私ももう、待てない――――  彼女は彼に習うように彼のシャツを掴むと、不器用な手つきでそれをたくし上げ始めた。    彼女の悦びが大きくなったのを、彼はその声から知った。今まで聞いたことのない、彼女の声。 淫らで淫靡で艶っぽい、彼の欲求を大きくする彼女の喘ぎ。  君はこんな声を出すのか。こんな風に悦ぶのか・・・・  そして耳元の熱い吐息への想いは、彼を一つの疑問に導いた。  そしてそれを、奴にも聞かせてやったのか――――?  それは始め、彼の心に微かにつけられた、小さなしみでしかなかった。  しかし彼女が彼を求めてシャツをたくし上げ、彼の肌を指で貪る始めたとたん、それは黒い感情 に変化し、大きく膨らみ始めた。  彼の脳裏に、パジェットの小説の一部が蘇る――――    『自分の中の空所を無理矢理うめ尽くすように。貪欲に。彼女は彼を求めた。』  彼の中に、怒りが轟いた。    突然彼女の背中から、彼の指が離れた。  そして次の瞬間、彼女は宙に浮いていた。  再び荒々しいキスをしてくる彼が、両腕で彼女を抱きかかえ、持ち上げたのだ。  彼は無表情のまま彼女を抱きかかえると、足早のベッドルームへと向かった。  彼女はその腕の中で、彼のキスが明らかに変わったのを感じた。  味わってるのでも、貪ってるのでもない、何の感情も感じない侵入。今まで彼女が経験してきた 中で、一番辛い略奪。  彼女の身体が、彼のベッドの上に放り投げられた。  その上で彼女は体制を立て直そうとしたが、彼がそれを許さない。彼はそこで再び彼女のブラウ スに手をかけると、下着ごとそれを一気に剥ぎ取った。  それを真似て、彼女も彼のシャツを脱がせようとするが、その手を彼がねじ伏せる。まるで彼女 が求めることを、許さないかのように。  彼の手が、パンツのファスナーにかかった。そしてそれを下ろすと、ブラウスの時と同じく、そ の下のストッキングや下着ごと勢いよく脱がせる。ブーツも同様に、彼によって投げ捨てられた。  彼女は、突然一糸まとわぬ姿にさせられたことに、羞恥心を覚え、彼の性急な行動に恐怖した。  ベッドに横たわり、男の前に裸体を広げてる恥辱。そして、何の感情もないまま、ただ闇雲に自 分に突き進んでくる者への恐れ。  しかしそれらは、彼女の子宮についた灯を、一層明るくした。  彼は最後のブーツを放り投げると、自分のシャツも捨て去った。そして、羞恥心に身を縮ませる 彼女の両足を掴むと、強引にそれを引き裂き、彼女の中心に顔をうずめた。  彼の行為に、裸で居ることへの恥じらいが消えた。その代わりに生れる、溶けるような快感。彼 は彼女の一番敏感な場所から彼女の入り口へと、彼女を溶かすのにいい場所を探りながら激しく愛 撫する。彼女はやがて、それに素直な喘ぎ声を出し始めた。  が、それが指にとって代えられた時、全てが変わった。  彼は彼女の中をかき乱しながら少し上ると、彼女の胸の突起に噛みついた。  そのとき彼女か感じたのは、悦びではなく、痛み――――彼は歯を立てて、本当に彼女に噛り付 いてきたのだ。  彼女の喘ぎに、苦痛の色が混ざった。しかしそれでも彼は彼女を噛むのをやめなかった。彼女が 苦しそうにすればするほど、いっそう歯を立ててくる。彼女の中を責める指も、それに合わせて激 しくなり、快楽を通り越して痛みしか感じられないほどになった。  彼女は、顔と声を歪ませた。  そして彼を押しのけると、その耐えがたい痛みから逃れるため、ベッドから這い出ようとした。  しかし彼はすぐに彼女を捕まえ、虜にする。  ベッドの外へと手を伸ばし、身体をよじらせる彼女の背中に抱きつき、胸へと手を伸ばし、再び 突起を愛撫する。  今度は痛みではなく、彼女に快感を与えるように。  彼女の神経が、再び溶け始めた。  彼のその手つきは驚くほど優しく、彼女はそれに甘んじ、再び彼に身を委ねた。彼に後ろから抱 かれながら、彼の胸の中で悦びに瞳を潤ませ、大きな声で喘いだ。  だがそれもまた、彼が項を責めじ始めると同時に変化した。  彼女の細い項を丁寧に舐めていた彼が、突然彼女の肩に噛みついた。彼女はその刺激に悲鳴にも 似た声を上げるが、彼はそれでも傷つけるのをやめようとしない。そして再び彼女が彼から逃れよ うともがき始めると、彼女に更なる快感を与え、その場に留まらせる。  果てしない、いつ終わるとも知れない行為の輪。それは次第にエスカレートし、彼女が快楽の頂 点に達そうとする度に苦痛が襲ってくるように、彼は仕向け始めた。  行為が繰り返されるたびに、彼女の中に溜まり込む悦び。そして溢れそうになるたびに奪われる 快楽の吐き出し場所と、与えられる新たな痛み。彼女はそれらに苦しんだ。そして苦しみながらも それに溺れ、虜になった。傷つけられるのを知りながらも、彼の愛撫が一時与えてくれる快感を信 じろと、子宮が命じてくる。  これは責めではなくて、咎め――――  彼女はほとんど理性を失い、ただの雌となって喘ぐ自分と闘いながら思い始めた。  彼の行為からは、いたわりはおろか、欲情すら感じない・・・  なぜ? どうして? この人から、こんな酷い拷問を受けなければならない何をしたというの? こんなに咎められるような何を・・・?    『相棒はどう思うだろうか・・・?』    彼女の脳裏に、あの小説の一文が蘇った。  そしてそれと共に、あの男に抱かれているとき、快楽と共に感じた葛藤も。  自分が一体、どこを見ながらあの男と情事を重ねたのかを・・・  「お、お願い・・・」  彼女は、彼に囁いた。  ・・・もう、許して・・・  彼は突然、全ての行為に終止符を打った。  彼女を悦ばせることも傷つけることもやめ、その場に静止する。  彼女はそれに、彼の惑いを感じた。   やがて彼は、ゆっくりと身体を動かし始めた。彼女を自分と向き合わせるような位置に移動させ、  そっと背中に手を回し、彼女を白いシーツに優しく押し倒した。  彼のクッションの上に、自分の頭がそっと乗った。その態度の変わりように、今度は彼女が戸惑 った。  彼は戸惑いと疑問に閉ざされた彼女の膝にそっと手をかけると、うっとりするような手つきでそ れを割った。そして彼女の入り口をそっと撫でると、その中に、一気に自分自信を差し込んだ。  彼女の子宮から脳髄にかけて、新しい衝撃が走った。  そしてその時、  彼の視線と彼女の視線が、始めて交差した。    二人の間の時間が永遠とも思えるほどの間、止まった。  お互いのグリーンの瞳に、自分自身が映っているのが見える・・・  興味と、欲求と、戸惑い――――見つめあう二組の瞳にあるのは、それだけだった。  まるで、見たこともない他人、否、全く別の生き物を見るような、好奇なまなざし。  二人はお互いを突き刺すその瞳に、語る言葉も、成すべき行動も奪われた。  先にその金縛りから解放されたのは、彼のほうだった。  彼は、戸惑いの表情を内に抱えながらも、ゆっくりと腰を動かし始めた。  その動きに、彼女も次第に戸惑いから開放される。彼の一突き一突きが、彼女の身体を素直にし ていく。彼女が悦びの声を取り戻すに、時間はかからなかった。  そこから先は、本物の愛の行為だった。  二人は自分たちの快感を相手に上乗せするかのように激しく突きあう。気が狂わんばかりに宙を つかもうとする彼女の腕を、彼の大きな手が強く掴んで受けとめる。そしてその状態でいっそう強 く彼女を突き、快楽に歪む彼女の表情を見下ろす。見られていることに、彼女はいっそう興奮し、 彼を求める気持ちを強くした。  やがて彼女が頂点を迎えようとすると、彼は彼女に覆い被さり、きつく彼女を抱きしめた。彼の その時も近いことを、彼女は彼の腰の動きから知った。彼女は彼を抱き返すと、昇りつめる準備を 始めた。  苦しい、熱い、何も見えない、お願い、ああ・・・  彼女が昇りきった直後、  彼の快楽も終わりを告げた。  彼女の肩にしがみつき、彼が全身を痙攣させる―――――。  部屋中に、抱き合う二人の荒い息遣いがこだました。  彼女は自らも息を切らしながら、自分の上に重なる彼の息遣いを聞いていた。  行為の後独特の脱力感に意識がおぼろげになり、自分の息切れも、彼のそれも、どこか遠くで鳴 ってるようにしか聞こえない。彼の背中がうっすらと汗ばんでるのすら、自分の掌で感じてる気が しなかった。  彼は彼女の上からどこうともしなければ、彼女から我が身を引きぬこうとすらしなかった。が、 彼女はそれに何も言わなかった。何をするのも億劫で、指一本動かすことさえ、酷く面倒なことの ように思われた。  そして彼女は遠い意識の中で、彼が息を切らしながらこうささやくのを、かろうじて聞き取った。    ・・・何を・・・・  彼がまどろんでいたのはほんの2.3分のことだったが、その間に、彼の隣のシーツは、主を失い 冷たくなっていた。  彼に視界に、傍らの真っ白なシーツが飛びこむ。  刹那、彼は今の自分を取り囲む状況の全てに戸惑った。が、さっきまで自分がどこで誰と何をして いたのかを思い出すと、辺りに脱ぎ捨てられた自分の服を拾い集め、それを身に着けた。  そして慌ててベッドルームを飛び出すと、そこには――――彼女が立っていた。  彼女はここへ来たときと全く同じ、黒いスーツをすきなく着こなしていた。ブーツを履いていない 脚からだけ、かろうじて彼女の肌が白いことを知ることが出来た。  その赤毛には、指で髪を梳った跡が、僅かに残っていた。  彼は目の前の情景に愕然とした。腕を組み、真っ青な顔をしている彼女が、何の表情もなく、カウ チの前にあるものを見下ろしている。  監視用のモニターと、それに映し出される、隣の部屋の様子・・・・  彼女は何も言わず、また彼のほうを振りかえろうともしなかった。  その無言の圧力は、彼を罪人にした。  「・・・ずっと、見てたのね。」  しばらくの思い沈黙を挟んで、彼女は抑揚のない声で言った。  「・・・取り付けたのは今日だよ。」  彼もそれに、言い訳がましく口を開いた。  「昨日までのことは何も知らない。」  「そう・・・」  彼女の答えに、彼は再び押し黙った。無意識に彼を非難する彼女を、直視することさえ出来なかっ た。  モニターの中では男が一人、机に向かってタイプライターを打ち続けていた。  「・・・事前告知じゃ、なかったな・・・?」  今度は彼が、疑問を発した。  彼は彼女を非難しているように聞こえないよう、言葉と口調を選んで言った。  「・・・判らないわ・・・」  彼女は嘘をつかず、正直なところを素直に告白した。  その蒼い表情は、感情を排することにより他人の――――彼の侵入を、拒んでるようにも見えた。  彼は突然、彼女の背中に抱きついた。そして彼女の項に頬を当て、うめくように言った。  「・・・ダナ、教えてよ。僕と奴と、どっちがよかった?」  その質問に、彼女の心は鋭く痛んだ。  それから感じるのは、彼の絶望。  あのパジェットが、ベッドの中で彼女の涙を拭いながら感じたのと全く同種の想い。  彼女は切なさのあまり、彼の抱擁を、拒むことも受け入れることも出来なかった。  「――――奴はどんな風に君を抱いたんだ? どんな風に君を噛んだんだ? 君は奴に、どんな風   に感じて見せたんだ? 頼むよ、教えてよ・・・」  たたみかけるような彼の言葉に、痘痕のような影のできた彼女の瞳に、涙が浮かんだ。  「・・・そんなこと聞いて、一体どうするつもりなの・・・?」  「・・・多分、優越感をもちたいんだと思う・・・」  一瞬、考え込むように押し黙った後、彼は力なく答えた。  「僕の方が・・・て言ってもらって、奴に勝った気になりになりたいんだと・・・」  「いいえ、違うわ。」  突然彼女は彼の腕を振りほどくと、彼のほうに向き直った。  その落ち窪んだ瞳に、彼もまた、彼女の絶望を見出した。  「あなたは私を責めてるのよ。彼と寝た私を。」  そして彼女は頬に一筋の涙を走らせると、叫んだ。  「私だって、後悔してるのよ・・・!!」  誰へのものなのか判らない怒り。何に対するものなのか知る由もない絶望。  そのありったけを彼にぶつけると、彼女は力なくカウチに座り込み、やがて声を上げて泣き始めた。  モルダーはそんな彼女から、そっと目をそらした。  肩を落とし、片方の手だけで顔を覆って泣く彼女にどんな感情を抱くべきなのか、彼は決めかねた。  スカリー・・・僕には判らないよ。  君の肩を抱いて慰めてやるべきなのか。  それとも、  今この場で、君を絞め殺すべきなのか・・・    「どうして書きなおしを?」  ”謎の男“は読み終えた原稿をパジェットの戻した。  パジェットはそれを受け取りながら、質問の答えを探した。  「・・・彼女が僕に好意を抱くはずがない。彼女の心にはすでに、重いくびきが・・・」  そうして出てきた言葉には、抑揚がなかった。  彼は自嘲すると、続けた。  「気付くのが遅すぎたんだ。もっと早くに気付いていれば、あんなに彼女を苦しめることにはなら   なかった・・・」  「気付く? 何にだ?」  「真理だよ。」  パジェットは男を見上げた。  男の黒いフードの中では、ぎらぎらと鈍く光る両の目が、彼を見返していた。  「たとえ何人であれ、他人の愛を奪うことは出来ない。そしてまた、他人に愛を与えることも・・」  「それが、お前の見つけた真理か?」  男の問いに、彼は力なく頷いた。  男はそんな彼をただ見下ろしていたが、やがて口を開いた。  「――――お前は一つ、重要なことを見落としてる。お前は今、あの二人に何を想っている?」  男の問いに、彼は窮した。  「何って・・・?」  「彼女を彼に渡してしまって、お前は今、心安らかか?」  「突然何を・・・?」  「私が心臓を取る出しているのはなぜだ?」  新たなる問いかけに、パジェットはひるんだ。  そして不安げに男を見上げるが、それを受けつけるようなそぶりと、男は見せなかった。  男の視線に強要されて、彼は仕方なく口を開いた。  「――――多分、愛を指し示す為に・・・」  「それは違うな。」  男はパジェットを遮った。 「人間は神のように、心臓を手にとって愛を表現することは出来ない。そして愛を手にとって見る  ことが出来ないが故、人は愛で心安らかになることはない。お前は隣の部屋にいる二人が今、心  に平安を保っているとでも思うのか?」  パジェットは長いこと黙り込んでいたが、しばらくすると、首を横に振ってうつむいた。  男はそれを見て、言葉を続けた。  「自分自身を欺いたまま、愛に気づかないほうがいいこともある。――――お前自身を含めて。」  「―――それは何故―――?」   「人は愛を破壊することしか出来ない。それが真理だからだ。」   男は冷たく言い放った。  「気付かないふりさえしていれば、愛を破壊することもない。」  その言葉に、パジェットは再び男を見上げ、すがるように言った。  「では、この小説の終わりはどうすれば・・・?」  「ここまで言えば、判るだろう?」  パジェットの顔色が、青く変わった。  「・・・彼女が死ぬと・・・?」  男は黒いフードの中で、うっすらと笑みを見せた。  「これで完璧だ。」                                                                     (以降は本編「ミラグロ」に続きます。)   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  ・・・以降はAmanda嬢による巻末スペシャルをお楽しみください。          =巻末スペシャルドキュメンタリー in LA= お久しぶりです、皆さん、お元気ですか? 新米フィルム編集係、Amandaです。 XF界の鬼才「あっこ監督」のシゴキのもと、フィルム編集係として新たな人生をスタートした私。 あっこ監督がメガホンを取った前回の「最終回前夜」では、予告編を作るのに一週間も時間を費や し、「あんたね〜....(額に青筋)」と、今にも噛み付かれそうになった私でしたが、それも今とな っては微笑ましい思い出。最近ではようやく本編の編集作業も手伝えるようになり、あっこ監督に 人間扱い....もとい、正式なXFスタッフとして扱っていただけるようになりました。 ちょっとだけ、だけど(^^;) そんなある日。 「これ、読んどいて」 そう言って、あっこ監督は私の元へ、一冊の脚本を投げよこしてきた。 「なんですか?」 「新しい脚本。今度はアンタに専任で編集してもらうから」 「マジっすか!?」 「ちゃんと作んなさいよ、本編なんだからね。またいつかみたいな駄作作ったら、今度こそ太平洋 に死体が浮かぶと思いなさい!!」 「はいっ!!」 嬉々として、私は早速脚本を読み始めた。「Miragro(another)」とタイトリングされたそれを膝に 置き、私は夢中でページを繰っていった。 のだが... 「....これ、マジで撮るの??」 ********** 数日後、あっこ監督が撮影済みのフィルムを持って、編集室へ乗り込んできた。 「はいこれ、頼むわ」 「....できたんですか?」 「厳戒体制の中だったから、今回はてこずったわ〜。でも、デビッドとジリアンもなんとか頑張っ てくれたし。スタッフが何人か失神したけど、ま、こんなもんでしょ」 やっぱり....そりゃもっともな事だ と言うのも、今回は「おとな描写」が含まれた作品なのである。それもかなり濃厚に。厳戒体制が 敷かれたのも、そんな理由があったからなのだ。他のディレクターから聞いた話によると、撮影中 に鼻血を出したスタッフが数名、担架で担ぎ出されたとか。 私は恐る恐るフィルムをセットし、モニターにその映像を映し始めた。私はこの山と積まれた全て のフィルムを見なくてはならない。様々なアングル、数台のキャメラで撮られたカットの中からベ ストショットを選び出し、それを一本の作品としてつなげるのが私の役目だからだ。 ********** 「あど〜、あっごがんどぐ?」 「あ〜ん、何なの!?」 スタジオで別のエピソードを撮影中のあっこ監督を、私は恐る恐る呼び止めた。 「あら、どした? 鼻にティッシュなんか詰めて」 「ずびばぜん、編集中でぃ、はだでぃだしちゃっで....」 (すみません、編集中に鼻血出しちゃって....) 「え、アンタも?」 「あど〜、ちょっどごどうだんが....」 (あの〜、ちょっとご相談が....) 私は手についた血を拭き拭き、あっこ監督と二人っきりで編集室にこもった。 「あど〜、こどでぃーんはかっどでぃだおうが良いがど....」 (あの〜、このシーンはカットした方が良いかと....) 「はぁ? あ〜んでよ!?」 明らかに監督は不満そうである。 「だっでこで、デエビゴード越えちゃっでばずよ」 (だってこれ、テレビコード越えちゃってますよ) 「そっかぁ?」 「だどえばこどでぃーん、すかでぃーの○○を、ぼるだーが××するどはちょっど....」 (例えばこのシーン、スカリーの○○を、モルダーが××するのはちょっと....) 「う〜ん....」 まどろっこしくなった私は、両鼻に詰めていたティッシュを引き抜いた。 「あと、スカリーがここでバジェットに△△しますよねぇ。これも余裕でコード越えですよ」 「え!? この△△シーンをカットしたら意味ないじゃ〜ん!!」 「でもこの△△シーンをカットしないと放送できないんですよ!! 放送できない事こそ意味な いじゃ〜んっ!!」 「(あっこ監督、絶句)」 「それからもう一つ、モルスカの『※☆≦∞■♂♀シーン』もカットした方が....」 ********** ....という訳で、あまりにも激しすぎて公共の電波を通しては公開できそうにない数々のシーン を無難にカットしまくって完成したのが、皆さんがお読みになった「Miragro(another)」なのです。 え? 無修正バージョンがご覧になりたいですって? スミマセン、もう処分しちゃったんです(ニヤリ) それじゃ、私は次の作品の編集がありますので... <おわり> あっこちゃん、ゴメ〜ン!! めちゃ長すぎるぅぅぅぅ〜〜〜〜っ(大汗) 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜   ==あっこ’S Word==  あーっはっはっはっは――――!!  Amandaちゃん、いつもながらありがとうございました!  でもさ〜、駄目じゃん。ばらしちゃったら――。  パジェット君の@@で●●なテクとか、  モルスカの¥¥¥なシーンや○□で△△△で&%$#*なシーンがあったことや  スカちゃんの××が◎◎◎◎だったとか〜〜〜〜  はっ! いけない! 私ったら・・・!!  感想、ご意見、ご批判(共に好意的なもの)をお待ちしています。  atreyu@jupiter.interq.or.jp