************************************** *************  DISCLAIMER// The characters and situations of the television program  "The X-Files" are the creations and property of Chris Carter,  Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions.  No copyright infringement is intended.  おことわり//この作品はMulderとScullyのLoveComedyです。  作者の悪い癖により、実際のMulderよりもかなりおバカに、Scullyは怒りっぽく仕 上がっております。  それでも、許せる・怖いモノ見たさで読んでもイイとお考えの方のみお読み下さ い。  あくまでもこの作品は作者の趣味です。よって苦情Mailなどに関しては一切無視さ せて頂きます。  また、読んで頂いた方で感想を送ってやろう!という方は記述してますMailアドに お願い致します。 ************************************** ************* = 寝不足 〜Scullyの弱点〜 = Written By AKUA Rating:PG-13 e-Mail:akua@mail2.dddd.ne.jp ********************* 「お疲れさま!」 Scullyはそう言いながらドアの前に急いだ。 パソコンに向かっていたMulderは、驚いた様子で。 「えっ、Scullyもう帰るのか?」 「ええ、何?」 「いや、ちょっと気になる事件があっ・・・」 「明日にして頂戴・・・今日はこれから予定があるの。」 Mulderが言うのも聞かず彼女は言った。 「・・・予定?」 「そう、予定。」 Scullyは(それが何か?)と言いたそうな顔をして見せた。 mulderは・・・ 「どんな?」 彼は彼女の隠しても隠しきれない嬉しそうな様子が非常に気になっていた。 「どんなって何?あなたの許可が必要ナノかしら?」 「いやぁ・・・そう言う訳じゃないけど・・・男?」 Scullyは何も言わず、にっこり微笑んで地下室から出ていった。 Mulderは眼鏡を外し、パソコンのキーボードを前にやると、その空いたスペースに顔 を突っ伏した。 そして、暫く苛立たしそうに右手の指でデスクを叩いて、大きなため息をついた。 「はぁ〜・・・俺も帰ろう・・・」 彼はパソコンの電源を落とすと、地下室の電気を消しドアの外に出て鍵を掛けた。 ====================================== ============ 午前2時を過ぎようとする頃、部屋の扉が激しくノックされた。 寝室で1人眠りについていたScullyは、怖々扉に近づいていく。 こんな時間に・・・そう考えながら扉の覗き穴を覗いた。 「やぁ、しゅかりぃ〜」 扉の外に立つ男は陽気そうに右手を挙げ声をかけた。 (や、やっぱり・・・寝不足のモトだ・・・) Scullyはこの現実を直視したくないのか、眉をへの字に下げ、今にも「No〜」と叫び だしそうな顔で頭を小刻みに振ってみせた。 (このまま気付かないフリをしてやり過ごしてしまおうか?) そう思いながら、ジッと息を潜めて外の様子うかがう。 しかし、案の定、彼は彼女の名前を叫び続けた。 「しゅっかりぃ〜!しゅ・か・り・い!!」 Scullyはご近所のてまえ、慌てて扉の鍵を開けた。 「(もう、お願いよ・・・)静かにして頂戴!Mulder・・・あなた飲んでる・・・」 Scullyがそう言うと彼は彼女の肩に頭を埋め、ダラリと身体をあずけてきた。 「ちょっと、あぶないでしょ。」 彼女は小さな身体で彼の全体重を必死に支えながら、仕方なく彼を部屋の中へ招き入 れた。 「ほら!Mulder、しっかりして!」 「ヒッ!しゅかり〜、このまま寝かしぇて・・・」 「ちょっと、Mulder?」 「お願いだよぅ〜」 何を甘えているか、酔いながらもお得意の子犬顔をちらつかせた。 「ふぅ〜分かったから、し、しっかり立って。」 「・・・・しゅかりぃ〜君はいつもいい匂いがする。ヒック!」 「・・・・」 彼女は目をクルッと一周させながら、ズルズルと男をリビングの方に引きずった。 「それにぃ〜ヒクッ!君に〜*こう*するのは〜凄く気持ちいい!!」 「・・・・」 「ぼかぁ〜君と*こう*するのが一番好きだ!」 「こっちはたまったもんじゃないわよ・・・」Scullyは小声で囁いた。 「なにぃ〜?」男は相も変わらず陽気な声で聞いた。 「ほら!分かったから。」 リビングのソファーに彼を座らせようと試みる。しかし、その瞬間、バランスを崩し 彼が彼女の上に覆い被さる形になった。 「痛い!ちょっ!Mul・・・」 「ふふふ、やっぱり気持ちいい!!」 彼女が頭を上げると、ちょうど彼の顔が胸の辺りにあった。 彼は彼女の胸の上で嬉しそうに、それは愛おしそうに顔を動かし続けていた。 「ちょっ!Mulder・・・くすぐったい!!」 「ふふふふふ・・・しゅかりぃ〜!」 Scullyはなんとか彼をはね除けようと試みたが、彼の体は全く動じない。 それどころか、突然動かなくなりこのままの姿勢で眠りについてしまった。 酔って意識のなくなった人間は、必要以上に重量が増す。 「もうっ・・・動けないじゃない・・・」 彼女は文句を言ってみたが、彼があまりにも気持ちよさそうに眠っているので、起こ すのが忍びなくなった。 (もう・・・子供見たい・・・) (ベットでゆっくり眠れないMulder・・・今夜は何を思って眠るの?) Scullyは子供を寝かしつけるように、そっとやわらかなブラウンの髪に指を通しそん な事を考えていた。 ====================================== ============ 窓から入り込む眩しい光に目を覚まし、身体の自由が利かない事に気が付いた。 (イタタタタッ・・・何?・・・) そして、ゆっくりと部屋の中を目で見回し、壁にある大きな時計に目を奪われた。 時計の短針が9の文字近くにある。  *8:50* 「えっ!ウソっ!」 Scullyは慌てふためいた。そして、彼の身体をバンッ!と叩くと自身の身体を必死で 動かした。 「ほら!Mulder、起きて!」 「何だよ・・・全く・・・イテテテ。」 「それは、こっちのセリフよ!ほら!早くして。」 「Scully?何でボクの部屋・・・」 「何言ってんのよ!ここは私の部屋よ。ほら、早くどいて!!」 彼女の大声に2日酔いの彼はこめかみを押さえた。 そして、部屋を見回し自分のいる所を確認している。 (何でこんな所にいるんだ?Scullyと何があった?!) Scullyはバタバタと寝室に戻り着替え始めた。 彼の方は、状況が理解できずにソファーに座ったままぼぉーっとしている。 寝室からScullyが叫んだ。 「Mulder、早くしなさい!完全に遅刻よ!!」 「遅刻〜?」 「そうよ、遅刻。分かったら車を表に回して!キーは扉の横のキーボックスの中!」 Mulderは自分の腕時計を確認し、改めて遅刻の事実を認めた。 「ふぁ〜あ」 緩んだタイにシャツははだけたまま、他の誰かに見られたら間違いなく勘違いされる 状況だ。 そんな事を考えながら、頭をぽりぽりと掻き扉の近くまで進んだ。 「Scully、今日は休もう!」 「へ?何言ってるのよ〜私は行くわよ!」 「えぇ・・・ふぁ〜」 ====================================== ============= Mulderは仕方なく彼女の車をアパートの前に廻した。 2分後、すっかり身支度を終えた彼女が車に近づき、何も言わずに助手席のドアを空 けるとスルッと乗り込む。 Mulderは彼女がドアを閉めるのを確認すると、イグニッションをひねりアクセルを踏 み込んだ。 その瞬間Scullyは(しまった!)と思った。彼は2日酔いでまだ意識がはっきりして いないのだ。 そんな人間に車の運転をさせてしまった事を深く後悔していた。 「Mulder、大丈夫?」 「うん?ああ、平気だ。」 「ホントに・・・?」 彼女が疑わしそうな目で尋ねた。 「ああ、ボクは帰ってじっくり休むから。」 「私は遅刻した上、あなたは欠勤?Skinnerは何て言うかしら?」 「少なくとも彼にとっては、*怒鳴る*相手が1人減るだろ?血圧が上がらなくてイイ よ。」 「・・・・Mulder・・・誰のせいだと思ってるの?」 「ボクのせい?僕が休めば遅刻の原因はバレないよ。」 「な〜るほど・・・って納得すると思っているの?ったく!!」 「分かった、君の遅刻の理由は体調不良だ!それで昼から早退すれば問題なしだろ? Scully」 「・・・・」 「どうせ今のところ、大した仕事はないんだし。」 彼は楽しそうに話を続けた。Scullyは呆れて何の反論も出来なくなっていた。 「ところでMulder?昨夜は何があったの?」 「・・・・」 「話せないの?」 「ん?と言うか覚えてないなぁ。何でボクは君の部屋に行ったのかなぁ。」 「あなたが来たのは午前2時過ぎ。その後は・・・*あの*通りよ。」 「*あの*通り?まさか・・・君が・・・OH my!!酔ったボクを誘惑したな?」 Mulderは軽く戯けて、彼女の様子をうかがった。 「・・・・バカじゃないの!誰があなたなんかと・・・」 「お、ボクじゃ不満かい?Scully」 「ええ、すご〜〜〜く不満よ!!」 Scullyがそう言うと見慣れた局のビルが見えてきた。 Mulderはスピードを緩めると地下の駐車場に車を進めた。 「さあ、着きましたよ。」 「・・・・Mulder?ホントに休むつもり?」 「もちろん!」 「・・・・」 Scullyは何を言ってもダメだと言うように肩を少し上げ、助手席のドアを開けて車の 外に出た。 彼女がドアを閉めると、Mulderは窓を開けて言った。 「Scully・・・すご〜〜〜く不満だ!なんて、試してないのに言わないで欲しいな!」 「・・・・」 「ボクは君を充分満足させられると思うけど〜?」 Mulderは悪戯っぽくニヤリと笑って言った。 「あらそ!」 Scullyはそれだけ言うと後は何も言わずに歩き出した。 「Scully〜!迎えに来ようか〜?!」 彼女は(結構よ)と言うように後ろ手に手を振って見せた。 彼はそれを見届けると車をゆっくりと発進させ、地下駐車場から車を地上へと進め た。 ====================================== ============= Scullyが地下室に着くとすぐ電話のベルが鳴り響いた。 慌ててゴミ箱を蹴散らしながら受話器に飛びつく。 「(痛い!!)・・・Yes・・・(イタタタッ)・・・Yes・・・Yes」 やはり、Skinnerからだった。 「Mulderはどうした?」 「彼は・・・今日は休みです。」 彼女が言いにくそうにしているのが分かったのか、電話の相手が更に尋ねた。 「Scully・・・理由はなんだ?」 「あ、はい。風邪の様ですが(あちゃっ・・・ウソついた)・・・」 「風邪?ホントだろうな?」 「ええ、今朝自宅に電話がありましたので、彼の部屋に寄ってから・・・」 「そうか・・・それで先程連絡した時は誰も出なかったんだな?」 「(やっぱりバレてる!!)・・・遅れて申し訳ありません。」 「いや、そんな事はいいんだが・・・参ったな・・・」 「何か?」 「ああ、今日中に報告書を提出してもらう事に・・・」 Scullyはこの一言を聞いて、(やられた!!)と思った。 「・・・分かりました。今日中ですね。」 「ああ、悪いが宜しく頼む。」 電話を置いた途端に彼女は叫んだ。 「もう、バカモル!!何が昼から早退よ!全くいい加減にして!!  結局私は彼にいいように扱われてるのよ!」 ぶつぶつ言いながら、コンピュータの前に座り報告書をまとめ始めた。 Mulderが殆ど手を付けていなかったため、漸くまとめ上げたのは定時を迎える1時間 程前だった。 急いでSkinnerに提出に行く。 「ご苦労だった。Scully」 「・・・・」 「質問があるのだが?」 「何でしょう?」 「Mulderは風邪で休みだと言ったな?」 「・・・Yes・・・」 「今朝、奴を見かけたと言う者がいたが?」 「み、見間違いでは?」 「しかも、君を送って来たようだが?」 「・・・・」 「まあ、いいだろ。ご苦労だった。」 そう言ったSkinnerの顔色には、(また何かやらかしたのではないのか?)というの がありありと表れていた。 しかし、そんなSkinnerの納得のいかない様子にも、彼女はあくまでも冷静さを装っ た。 ====================================== ============= 漸く定時を迎え、早々に帰宅することにした。 車はMulderが乗って帰ってしまっているので、バスで自宅近くに向かうことになる。 (はぁ〜今日は散々だったわ・・・) バスを20分程乗るとアパート近くのバス停に到着した。 彼女は降りると、そのままアパートに向かって歩き始める。 「ふぅ・・・疲れた。」 声を出して呟くつもりはなかったが、自然と声が出てしまっていた。 5分程歩いてやっとアパートに到着し、部屋に入るとそのまま寝室へと急いだ。 そして、暗い寝室に入ると急いでスーツのジャケットを脱ぎ、インナーを脱ぎかけた その時、 「いいね〜!(注:ラララ無人くん)FBIの捜査官にしておくのは勿体ないな!」 Scullyはギョッとして声の方を振り返った。 「(まさか・・・?!)Mulder?な、何してるの?」 「君を待ってたんだ。」 Mulderは部屋の電気をつけるとニコッと微笑んだ。 「・・・・」 「昼には帰る予定だったろ?」 「誰もそんな約束はしてません!それに・・・どちらにしてもあなたのせいで帰れな かったのよ!」 「ボクのせい?」 「そうよ、報告書!!お陰で私はクタクタよ!」 「Ohh・・・Scully・・・悪かったよ。」 彼はそう言いながら彼女の両肩に手を置き、ゆっくりとマッサージしだした。 「(コイツ・・・)Mulderありがと。でも、ここから出てくれるかしら?」 「え?何で?」 「・・・着替えたいのよ。」 「ああ、手伝おうか?」 「いいえ!1人で出来るわ。」 「残念・・・君に満足して貰えるか、試してもらお・・・」 「ほら!早く出て。」 Scullyは彼の背中を押しながら寝室の外に追い出した。 (全く・・・なんでウチに居るのよ?帰ってきてまで・・・  最近、私は*全く*って言葉を使いすぎだわ・・・それに怒鳴ってばかり・・・  何だか段々嫌な女になっていく気がする・・・) ゆっくり洋服を着替えるとベットの端に腰をかけ、向こうで待つ彼の事を考えて 「ふぅー」と大きなため息をついた。 (彼は一体何を考えているの?) (でも、彼が居て少しは嬉しかったくせに・・・) Scullyの中では二人のDanaちゃんの声がこだましていた。 寝室から出るとリビングにいるMulderの姿が目に入った。 1人で退屈そうにしているのかと思えば、ソファーでヒマワリの種を食べながらTVに 見入っている。 Scullyは呆れて何も言えなくなったが、なんとなくその光景が微笑ましくも感じられ た。 いつも1人で過ごすこの部屋も、自分以外の誰かがいるのとでは大きく違って見え る。 そこだけほんわかとした空気が漂っている様に思えた。 「Mulder、夕食は食べたの?」 「うん?まだだ!わっはははー」 「(何笑ってんだか・・・)大した物は作れないけど、何か食べる?」 「ああ。わっはははー」 (あんたは、私のダンナか?!) そんな彼女の心の声が聞こえそうなMulderのくつろぎ様である。 Scullyは冷蔵庫の中を覗きながら、あれこれと材料を探し出し何やら料理を作り出し た。 流し台で調理していると、Mulderが彼女をジッと見つめ続けている。 その視線が何だかあまりにも嫌らしい・・・ Scullyは全てを覗かれている気がして、体中がモゾモゾ・ドキドキしていた。 しかし、ここは冷静に対応しようと考えた。 「Mulder・・・何?」 「透視」 Mulderはエスパーの様に、両の手をScullyの方にかざして見せた。 「バカじゃないの!あなたの頭の中は、エイリアンとそんな事しかないの?」 「あははははー 冗談だよ!でも、結構ドキッとしただろう!!」 Mulderは、それはそれは楽しそうに喜んでいる。 「(子供じゃないんだから・・・)Mulder、あなたみたいな人を日本では、*エロがっぱ *って言うのよ!」 Scullyはにっこりと微笑みながら言い放った。 「かっぱ?」 「そう、かっぱ。日本の迷信だと思うけど、昔から川に住んでいると言われる怪物な のよ。」 「おお〜XFだな?」 「あ、そう言えば日本の映画で、かっぱは宇宙から来たという内容のものがあった わ。」 するとMulderは真剣な顔つきで言った。 「Scully・・・Marry m・・・」 「さあ、出来た!」 Scullyは聞こえないフリと言うよりも、全く相手にせず料理を差し出した。 「食べましょ!」 「・・・・」 (なんだよ・・・ちょっとくらい何か言ってくれても・・・) Mulderは冗談で言ったにしても、Scullyが全く相手にしてくれないことがかなり寂し かった。 「美味しい?」 「ああ。」 「ところでMulder?あなた、今朝局から戻ってずっとここに居たの?」 「うん、そうだよ!君を待ってた。」 「・・・あのねMulder?ここはあなたの家?」 「いや、違うよScully。」 Mulderは(何言ってるんだよ?)と言うように目を大きくしてみせた。 Scullyの頭の中には色々な妄想が駆け巡る・・・洋服ダンスの中は?洗濯物は? あれこれ考えてみた。 (はぁ・・・こいつって・・・) 「で、何でここに居るの?」 「ああ、今朝からアパートが害虫駆除でね!」 「害虫駆除・・・?なら、Dr.Bambiの所へ行けば良かったのに。」 Scullyがにっこり微笑み、(どうなの?)という顔をしてみせると、Mulderがぼそっ と言った。 「・・・君も根に持つタイプだな。それに彼女は・・・」 「あら、ごめんなさ〜い。彼女オヤジ好みだったわね・・・あ、でもあなたも最近オヤ ジ・・・」 「Scully、君のそう言う所がボクは大好きだよ!!」 「ありがとう、Mulder。」 彼女はそう言うとニヤリと笑って見せた。 「Ohh、Scully・・・君の意地悪な顔もそそるね〜」 「えっ・・・Mul・・・der・・・?」 彼の顔がScullyの方へとゆっくり、ゆっくり近づいてくる。彼女はどうすることも出 来ず、ただ近づく彼の唇をじっと見つめ続けた。 彼の顔が角度を変え、もう後何ミリか近づくと・・・というその時、電話のベルが鳴っ た。 "プルルル・・・プルルル・・・プルルル・・・" 近づいて止まったままの姿勢でMulderが言った。 「出ないのか?Scully」 Scullyはパッと、今目覚めたかの様に目を見開き、 「で、出るわよ・・・」 頬を染めながらリビングへと走った。 Mulderはテーブルに肘をついた姿勢で、そんなScullyの様子をニヤニヤしながら見つ め続けている。 「Hello、Scully・・・Yes」 Scullyが電話に出ると・・・ 「僕たちの邪魔をするのは誰だ〜〜〜!!もう少しだったのにぃ〜〜!!」 Mulderは電話口に聞こえる程の大声で叫んだ。 そんな彼をScullyはキッと睨み付け、口をパクパクしながら言った。 (静かにして!!Skinnerよ!) 電話の相手は、Skinnerだった。 「(Scully?お邪魔だったかな?)」 受話器の向こう側の彼は笑いながら言った。 「あ、いえ・・・TVです。TV。で、ご用件は?」 「(ああ、Mulderの事だ。連絡がつかないか?)」 「え!Mu、Mulderですか?」 Scullyの声は一瞬ひっくり返ってしまった。 「(彼は確か風邪のはずだな?)」 「あ、え、はい、風邪で休みでした。」 「(まさかとは思うが、また何かやらかしたのではないだろうな?)」 「えっとそれは・・・大丈夫です。」 Scullyがそう言うと、Mulderが近づき彼女の耳元に唇を寄せ囁いた。 「ボクは風邪なのかい?Dana?」 Mulderの鼻に掛かる甘い声と吐息を感じ、一瞬、膝から崩れ落ちそうになっる。 そんな彼女の様子を見てMulderはある事を閃いた。 (はっはぁ〜ん。彼女の弱点はココかぁ〜彼女の困った顔が見たい!) Mulderは、直ぐさま彼女の耳にふーっと息を吹きかけてみる。 そして、空いた両手は彼女の身体をくすぐり続けた。 「あっ・・・」 彼女は笑い声とも吐息ともとれない声を漏らしてしまった。 (No〜〜〜!!!) 彼女は心の中で叫んでいた。 なんとかSkinnerに気づかれないよう、必死でMulderを引き離そうとしている。 そして、受話器に手を置き言った。 (「や、やめて!あっちに行ってよ!Mulder!!」) 「(Scully?何かあったのか?)」 「いえ・・・な、何も・・・」 「(そうか?ならいい・・・それで、Mulderから君の所にも連絡はないのか?)」 ScullyはMulderの攻めに堪えつつ、必死に引き離しに掛かった。 この間も彼は彼女の身体を・・・ (「いい加減にして!!」) 彼女がありったけの力で彼を押すと、そのもの凄い勢いにMulderは後ろ向きに倒れ た。 「うっ・・・・」 Mulderはそれ以上声を出さずそのまま動かなくなった。 「M、Mulder!!」 慌てたScullyは大声でMulderの名を叫んでしまった。 「(Scully?奴はそこに居るのか?!)」 「と、とにかく私が探します。では!」 言うが早いか、勢い良く電話を切るとMulderに近づいた。 「M、Mulder・・・大丈夫?」 「・・・・」 打ち所が悪かったのか、Mulderは何も応えない。 「Mulder!Mulder!!」 「・・・・」 「Mulder〜〜!!」 いつもの、「I'm a doctor」の彼女は存在せず、医者として冷静な判断が出来ないの か、激しく彼を揺さぶり続けた。 「お願い・・・返事して・・・」 Scullyは必死な声で彼を抱きしめて言った。 「ぶははははー」 彼はScullyを驚かせようと倒れたフリをしていたが、あまりにも彼女の慌てようがお かしくて声を出して笑ってしまった。 「Mulder〜!!」 「Scully、医者の君が、頭を打っているかも知れない人をあんなに揺さぶっていいの ?」 「もう!!」 Scullyは彼の身体をバンッと叩いた。 「イッテー!だってさぁ〜あのままじゃいつ電話を切るか分からないから・・・」 Mulderはまたまた子犬顔でScullyを見つめて言った。 「それにしても、君に膝枕してもらえるなんて。これなら何度倒れてもいいな〜」 「・・・バカ・・・」 (もうイヤ・・・コイツ・・・マジで頭を打ったら、もう少しマシになるかも・・・) 「Skinner・・・心配してたかい?」 「ええ、連絡入れなさいよ。また、あなたが失踪したんじゃないかって・・・」 「分かった・・・なぁ、Scully・・・もし、本当に僕が倒れたらあんなに心配してくれる ?」 「な、何よ突然・・・そりゃ・・・」 Scullyは口ごもってしまった。 Mulderの身に何かが起こると、彼女の中ではいい知れない不安と悲しみが襲う。 その事実は彼女自身も認めては居るのだが、こんなに率直に質問されると何と応えて よいか分からない。 「そりゃ何?」 「昨日といい、今日といい、何だかあなた変よ?」 「変かなぁ?ボクは素直になっただけだよ。昨夜だって君が他の人と・・・って考える と・・・」 「えっ」 「君とゆっくり過ごしたいと思ったのも事実だし、それから・・・  昨夜の様に君を抱きしめて眠りたいと思ったのも事実だよ。」 「あ、あなたやっぱり頭を打ったのよ。」 Scullyは目をパチクリさせている。 「まあ、昨夜の事は酔っていて、あまり覚えてないけどさ・・・ちょっと惜しいよ。」 「・・・・」 「そうだ!今夜もう一度お願いします。」 Mulderは(にひゃ〜)と笑って、Scullyを見上げている。 「い、イヤよ!誰があなたなんかと・・・」 「そんなこと言って・・・昨日だって、ホントは結構その気だったんじゃ・・・」 Mulderがそう言うと、彼女は彼の頭の下から自分の両膝をスッと抜いた。 その瞬間、Mulderの頭は、*ゴン!*と言う鈍い音を立てて滑り落ちる。 「つっ・・・」 「Mulder心配させた罰よ!反省しなさい!」 Scullyは、少し怒った顔で寝室へ向かう。 するとMulderは、ばつが悪そうに後頭部を押さえ、一人でどうしていいのか分からず リビングを行ったり来たりしている。そして、情けない声で彼女の名を呼んだ。 「Scully〜」 Scullyは寝室の扉の陰から、そんな彼の様子をうかがっていた。 もう、彼の様子が可笑しくて堪らない。 (いい薬だわ・・・ふふふ。でも、少し可哀相かしら?) 「Scully・・・ごめんよ〜もう困らせない・・・」 「ホントに?」 「ああ、今後、報告書は僕が纏める。」 「ホントにホント?」 「うん、レンタカーも壊さない。それから、失踪もしないし、それから・・・それから ・・・」 Mulderは過去の自分の悪い癖を並べ立てて許しを乞う。 (しょうがないわね・・・許してあげよう!) Scullyはそう考えて、寝室から出てきた。 それを見るとMulderはニヤリと笑って、彼女をぎゅっと抱きしめ耳元で囁いた。 「の、*つもり*だから宜しく・・・」 Scullyは、「あっ・・・」と吐息を漏らして膝からガクッと崩れ落ちた。 その様子を見てMulderは、してやったりと満足げな顔をして見せた。 こうして、また、今夜から新たな寝不足の日々が続くのでした・・・。 おしまい ************************************** *************