この物語はフィクションであり、「XF」の著作権等を侵害するつもりではない ことをここにおことわりしておきます。 また、「XF」に関するすべての権利は、クリス・カーター氏及び20世紀FOX社に 帰属します。 作者本人が、突如「とんでもなく甘い」ものを書きたくなり、超スピード(自分と しては…)で出来上がったficです。 本文中に性描写を含む表現があります。 18才未満の方や、そういう関係の二人を好ましく思わない方にはお勧め致しません。 お読み頂いた後、御不満な点も多くあるかと存じますが、罵声、中傷等のメールは御容赦 下さいますよう心よりお願い申し上げます。 /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ 「One Night」                  蛇口からシンクに滴が落ちる音で、スカリーは目を覚ました。 冷蔵庫のモーターが低い音を立てている。 彼女は少し足をのばして、シーツの冷たい部分の温度を確かめた。 そうして、そっと起き上がる。 毛布の中の温度が変わらないように、注意しながら。 ベッドに腰掛けて、ひんやりとした床に足を着く。 すると、今まで彼女がいた場所の空気を抱きかかえるように、 彼が寝返りを打った。 そう、ここで彼が眠っている…。 スカリーは、もう一度確認した。 体にではなく、自分の心に。 私はモルダーと寝たのだ…と。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ ここ2週間、文字通り不眠不休であたった捜査だったのに、結果は私達にとっても 最悪なものとなった。探していた少女は遺体で発見され、モルダーのプロファイ リングで絞られた容疑者は証拠不十分のまま、不起訴となった。 彼が訴えた、容疑者の予知能力、透視能力については、また始まったとばかり 捜査班内では一笑に付され、私が解剖所見を伝えようとした少女の遺族、特に 既に理性を失っているであろう母親から、私の女性としての身体的、精神的 機能についてのかなり厳しい指摘が飛んできた。 彼女に言わせれば、私は殺された少女を更にメスで切り刻めるという、 かなり冷酷な人間だそうで、私が子供を産んで、育てるのは社会悪とのことらしい。 何があろうとも自分の仕事に誇りを持つこと。 私達はアカデミー時代から、徹底的にこの種の訓練を受けている。 だから、大丈夫。 私は自分にそう言い聞かせた。 挙げ句の果てには、御丁寧にも彼が発砲した薬莢が鑑識から届き、 本件での発砲の必然性について、当時彼がどの程度理解していたかというレポート、 必要添付書類には局内での専門医とのカウンセリング所見、というおまけまで 付いてきた。 とにかく、すべては明日から。 やりきれない思いをどうにか殺しながら、私は支局長に丁重に申請し、ひいては それは懇願の域まで達し、一旦DCに戻る許可を得て、怒りを通り越してすっかり 冷静になっているモルダーの運転で、ようやく夜、戻ってきたのだった。 車の中では2人とも殆どしゃべらなかった。 とにかく…。 こんな日はとりあえず、眠ること。 お互いそう思いながら帰ってきたはずだった。 「君の部屋に行ってもかまわない?」 モルダーがそう聞くまでは。 「何か食べる?って言っても冷凍のベーグルぐらいしかないけど。」 部屋に辿り着くと、ボストンバッグを床に置くなり、私は後の彼に言った。 「君を。」 モルダーはそう言うと、私を引き寄せてキスをした。 「食べる。」 抵抗するまでの時間を読んだ、ほんのわずかな間のキスだった。 「だめよ。モルダー。」 「何が?」 「私達…。」 「僕達の何が?」 そう言って彼はまた、私にキスをする。 でも、私はそれを抗わなかった。 車の中で、眠気覚ましに食べたミントキャンデーの味がした。 通常なら、この時点で彼に確認している筈だった。 「考えてみて。モルダー。私達、今こうなるべきだと思う?」 彼のヘーゼルの瞳を真直ぐに見て、そう尋ねている筈だ。 ただ、この現状を、今の心境を、痛いほどわかってくれているのも彼だけなのだ。 自分一人だけで支えられる気力はもう残っていなかった。 私の右手が自然とモルダーの背中へ回った。 何のためらいもなく、自分の手がそうしたことに、私は少し驚いていた。 抱きしめる彼の腕に、力が入る。 その腕の力を感じて、 やはり彼は男なのだ。 私は頭の片隅でそう思った。 何かに急かされているように、ベッドに倒れこんで、 私達はお互いの肌に触れようと、躍起になっているようだった。 ブラウスのボタンをせわしくはずしながら、彼は私にキスをするのを やめようとしなかった。 甘いキス。 それはミントキャンデーの甘さではなく。 今から過ごす時間を永遠に感じるための媚薬の甘さ。 彼の手がスカートのホックにのびる。 私は、無意識のうちに腰を浮かせた。 私は彼のベルトをはずす。 一枚一枚そうやって、剥ぎ取られていく私達の服は、 無造作に床に落とされ、私と彼の間には何も邪魔するものがなくなっていく。 何を急いでいるの? 私は誰に確認するでもなく、頭の中でそれを問う。 私の背中に手を入れて、下着のホックを片手で器用にはずしながら、 彼が聞いた。 「君を抱いても?」 今聞くこと? と笑いそうになりながら、私は返事のかわりにひとつだけ頷いた。 彼の唇を、私の右のくるぶしで感じた時、私は声をあげまいと耐えるのを あきらめた。 彼は内側のくるぶしからふくらはぎ、そして膝へとキスを続ける。 私はどうしていいか、わからなくなって、彼の名前を呼んだ。 「モルダー…。」 私の中に変化が起きる。 それは、理性では止められない変化だ。 彼にすべてを委ねよう、そう決心したのを感づいたように、 彼が私の源を探しあてた。 声にならない私の声を聞いて彼が囁く。 「愛してる…。ダナ…。」 彼の甘い声に包まれて、私は少し我に返った。 「私もよ。フォックス…。」 でも次の瞬間、私は彼を感じて、また気が遠くなる。 彼を受け入れるには十分すぎる程の、私の中の変化。 彼の動きに、私は自分がどうにかなるのではと不安になった。 「お願い。」 何をどうお願いするのか自分でもわからないまま、言葉が出た。 彼は私の耳もとで囁いた。 私が何処かへ行かないための呪文のように。 「ずっと、愛してた。」 私は、答えようとする。 「知ってたわ。」 でも、声にならない。 私は小さな悲鳴をあげる。彼の背に爪跡を残す言い訳のように。 +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 蛇口を閉め直して、ベッドルームに戻ったスカリーは 部屋の入り口からぼんやりと彼を見つめていた。 彼は丸くなって眠っていた。 ブラインドから漏れる、街灯の明かりが毛布から出た彼の腕を白く 浮かび上がらせていた。 さっきまで、この腕に抱かれていたことを思い出して、スカリーは自分の中に 持っていた熱を、また思い出した。 音を立てないようにそうっと歩く。 でも、彼を起こさないようにベッドに戻るのは難しそうで、ベッドの脇で また躊躇する。 「お帰り。ダナ」 彼が目を閉じたままそう言ったので、スカリーは飛び上がるほどびっくりした。 「モルダー…。起きてたの?」 彼が目を開けてこちらを見つめる。 「どんな顔してここにもぐりこんで来るのかと、楽しみしてたんだけど…。  ずいぶん迷ってるみたいだったから。」 そう言って笑った彼は、体をずらして毛布を上げる。 「ほら。風邪ひくよ。」 スカリーは何も言わず、作られた空間に身体を沈める。 後ろから抱きしめられる格好で、スカリーは彼に背中を預けた。 「眠れないの?」 彼に尋ねた。 「もったいなくて、眠れる訳ないだろ。」 彼が答える。 「明日から大変なのに。」 「明日は明日さ。  それより、朝になって君に置き去りにされた時のことの方が、  僕にとっては大変だよ。」 「ちゃんと起きれる?」 「おはようのキスで起こしてくれるなら。」 彼は彼女の手首を握りながらそう答えた。 「じゃあ眠れる?」 「君が眠ったらね。」 彼がそう囁いた。 スカリーが身体の向きを変えて彼と向き合う。 「ほら、眠らなきゃ。」 彼が諭すようにそう言った。 「おやすみなさい。」 おとなしく彼に従い、彼の胸に頭をつけて、彼女が言う。 「おやすみ…ダナ…。愛してる…。」 彼が囁く。 彼女はその声を胸に抱く。 彼の声、彼の言葉。 明日からの現実も、彼がいれば乗り越えられる。 彼女はそう思いながら、眠りに落ちる。 おやすみ…。ダナ。 彼の声が心の中でもう一度響いた。 end /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ このような拙作におつき合い頂きましてありがとうございました。 とんでもなく甘いモノを書きたくなったのはよいのですが。 やっぱり、難しかったです。(汗) それにしても、3人称で書き続けるのって何故か難しいです。(ネタのせい?) で、途中で挫折してます。御了承下さいませ。 もし、御意見(御指導も含めて)、御感想などを頂戴できるのであれば 下記アドレスまでお送り頂けると幸いです。 亜里 knd-mh@pop07.odn.ne.jp