作品を読む前のご注意: この小説の登場人物・設定等の著作権は、全てクリス・カーター、1013、20世紀フ ォックス社に帰属します。 また、この作品は作者個人の趣味によって創造されたものであり、他のいかなる作品・作 者様の著作権等を侵害するものではありません。 なお、この作品はモルダーとスカリーをメインとしたラブ・ストーリーです。こういう主 旨を受け入れられない方は読まずに引き返してください。 この作品について否定的・不愉快な思いを抱く方がおられましても、どうか個々の趣味と いうことでご理解下さいますようお願いいたします。 以上、全ての件で了解を得られる方のみ、この先へお進みください。 注)「one mirage〜後編α」のもう一つの結末です。 Title:「Prayer for the rainyday」 Auther:Aya ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 雨の日ばかりが続いていて、久しぶりに太陽が姿を見せた日。 今日、私はMulderに会った。 心臓が止まるかと思った。 Mulder……懐かしい響き。 どんなに歳月が過ぎて行ったとしても、忘れられない。 私の想い出と共に在る人。 もしかしたら、私は、この日をずっと待っていたのかもしれない。 雨雲が晴れる日を。 私が変われる時を。 **************************************** 緑の葉から雨名残の雫が落ちる。 人はしばらく会わないうちにこんなに変わるものなのか。 Mulderは驚いていた。 2年ぶりに出会ったかつてのpartnerが、あまりに綺麗で。 周りの水滴が光を反射して、彼女を照らし出しているようだった。 辺りを支配する不思議な静寂をかき消すようにMulderは口を開いた。 「Scully、僕は君を待っているよ。いつまでも。」 「Mulder………」 Scullyは瞳を伏せた。 それは、聞きたくて聞きたくなかった、最愛の人の最愛の言葉。 思わず、彼女の口から予期せぬ言葉が綴られた。 「Mulder、どうして2年前に言ってくれなかったの?」 砕け散る、時間のガラス。 Mulderの瞳が見開かれる。驚愕の色を湛えて。 もう戻れない。口に出してしまった言葉は。 「Scully………」 誰も決して気づかないけれど、それは歴史が変わる瞬間。 「私だって、私は貴方を………」 最後まで言わせずに、MulderはScullyに歩み寄ると、しっかりとその小さな体を両腕に 抱きしめた。 Scullyが泣いている。 いつでも決して人前で涙を見せようとはしなかった彼女が。 「それ以上言わないでくれ、Scully。」 そっと頭を引き寄せる。 ScullyはMulderの肩に顔を付けて、体を震わせている。 Mulderの両腕の間に簡単に収まってしまう小さい肩。 こんなに繊細な彼女を、僕は置き去りにしていた。 追い駆けもしなかった。 “君のため”などと言う大義名分の影に隠れて、僕は自分の狡さから目を背けていたに過 ぎないんだ。 すまない、Scully。 もう一度、言ってもいいだろうか? 今からでも遅くは無いだろうか? 君は、僕を、まだ必要としてくれるだろうか? 「Scully、もし……もし、君が……君さえよければ、また僕のアパートに来てくれないか?」 Mulderにとって、その言葉は人生最大の賭け。 もし負ければ……永久に手に入らない大きなものを失う賭け。 でも、いま勝負しなければ、永遠にチャンスを失う賭け。 僕は、君に、僕の全ての人生と真実の心を捧げる。 “yes” 風に運び去られてしまいそうなくらいの小声で、しかしMulderの耳にははっきりと届く 音色で、返答はもたらされた。 Mulderはありったけの力を込めて、Scullyを抱きしめた。 この力で少しでも2年分の二人の距離を縮めようとするかのように。 もう二度と、離さなくても済む様に。 <Mulder's apartment 6/14 10:00am> もしかしたら、また同じ事の繰り返しになるのじゃないかしら? 私と彼は付かず離れずの関係のままの方がいいんじゃない? Scullyは実は、少し後悔もしていた。 でも、その感情を心のどこかで否定する自分も存在する。 恐れていては、前には進めない。 これはPapaからもMelissaからも……Mulderからも教わったこと。 MulderはそんなScullyの後悔を感じとっていた。 でも、もう遠慮するつもりは毛頭なかった。 後悔の日々を送るのは、もう疲れたから。 手を伸ばせば届くところに在る果実を、どうしてもいではいけないのか? 「Scully」 ビクッとScullyの体が跳ねる。 ひしひしと伝わってくる緊張。 「君を………」 「待ってMulder。」 「嫌だ、もう待たない。僕は2年も待ったんだ。」 「Mul………」 しょうがない、子犬。昔とちっとも変わってないじゃない。 そう、ちっとも。 でも、それってすごく……なんだか……嬉しいわ。 Scullyは観念したように、瞳を閉じた。 それは承諾の印。 Mulderは滑らかであくまでも白い頬にkissをする。 そのまま唇を少しづつずらして、Scullyの唇を静かに奪った。 まるでそこだけ、音の無くなった映画のone sceneのように。 Scullyはおずおずと少しだけ唇を開いた。 まるで熱を持ったみたいに、熱い。 「Scully、もっと開けて。」 Mulderは顔を傾けると、わざと乱暴に舌を挿し入れた。 「……う……んっ…」 Scullyが驚いたように一瞬瞳を開けかけたが、Mulderと目が合うとまたキツク閉じてし まった。 それを見てMulderは何だか嬉しくなってくる。 Scullyが照れている。 きつく閉じられた瞼の縁はほんのりとピンク色に染まって、長くて柔らかい睫毛が微かに 震えているのがわかる。 「力を抜いて、Scully。」 Scullyは唇を動かして何かを言いかけたが、次の瞬間、がくっと前のめりになってMulder に全体重を預けてきた。 「おい、Scully……」 Mulderはその体を抱きとめる。 勿論、Scully程度の体重でよろめくようなヤワな体では無いが、流石に突然だったので驚 いた。 そして次の瞬間、Scullyの腕がMulderの首に回される。 ScullyはMulderの耳元に唇を近づけて、その髪の毛に顔を埋めた。 「……どう?驚いた?」 Mulderは笑って、Scullyの華奢でしかし柔らかさを失わない体を、折れそうなくらい強 く抱きしめた。 「痛いわ……Mulder……」 「僕の痛みだよ………君が居なくなった後の。」 君が何をしているのか。 気が狂いそうに、君を想った。 いっそ、気が狂ってしまえばこの痛みも終わるのに。 そう思って毎日を過ごしていた。 君でなければダメなんだ、Scully。 君がいないと。 「だから、僕の頼みを聞いてくれないか?」 “だから”ってどういう意味なのかしら。 いつも強引で我侭で自分勝手で……でもなぜか許せてしまうのは私が甘いせい? 「私に出来ることならね。」 Mulderは最上の微笑みを見せた。 Scullyが目の前に居る。 Scullyは僕の腕の中にいる。 これは真夏の幻じゃない。 そして彼女の心も、ここに、ある。 「……君になら、出来るよ。」 君じゃなければ、出来ないんだよ。 ゆっくりとMulderはScullyの体を横たえた。 ScullyはMulderの体の重さを感じる。 彼女はMulderの頬に手をやって軽く撫でた。 彼はその手にそっと唇をつけた。 今、変わるんだわ。 そうよね? 私達の関係が変わるのよね、Mulder? Scullyは遠くでさざ波の音を聞いたような気が、した。 寄せては返し、彼女を遠くへと運ぶ優しい波…………… **************************************** Scully、僕は約束する。 この命にかけて。……いや、僕の追及する真実にかけて。 君と共に歩くことを。君を二度と離さないことを。 君を失うことに比べたら、この世界に堪えられないことは無い。 たとえ死が二人を別つとも、 この誓いは、永遠。 **************************************** <2years later> 郊外の住宅地。 つい昨日までの雨が嘘のように、空は澄み渡っていた。 「Will、別にWashingtonでも良かったのに………」 「君がAgentの時ならともかく、僕がFBIに勤めてるとちっとも君との時間が持てない  だろ?それでも良いのかい、Dana?」 かつての言葉。 “僕は田舎の保安官になりたいんだ” 覚えているかい? その約束を、やっと実現できたよDana。 ええ、勿論覚えているわWill。 Scullyは柔らかい微笑を唇の端に浮かべた。 彼らの薬指に煌く、おそろいのMarridge ring。 二人の宝物。 二人は顔を見合わせて、笑った。 そしてMulderが、Scullyに手を差し出した。 昔ダンスに誘った時のように、やっぱり照れながら。 「行こうか、Dana=Scully?」 Scullyはもう雨の日が来る毎に祈らなくて良い。 Mulderは二度と、彼女の傍から離れないのだから。 Scullyは最高の笑顔を持って、問いかけに応えるべくそっと手を重ねた。 貴方と過ごせる時間。貴方が与えてくれた日々。 私は幸せだわ。 きっと、これからもずっと。 「Yes,my dear,Will…………Mulder.」                                       Fin Afterword〜いわゆる後書きその10.5〜 急にモルダーとスカリーがMulderとScullyになっていますね〜。 改めて読み返してみてびっくり。忘れてるなよ、自分……。 いい加減しつこい。 性懲りもなく、また別の結末を作ってみました。(単にネタが思いつかないとも言う?) one mirage〜はこれで完結…にするつもりなので許してください(苦笑) 「one mirage〜後編」をUPして頂いた後に感想を頂いたりしまして、 そのほとんどの方から、 「ハッピーエンドの方が好みだけど、αの方が本物っぽい」 とのご意見を頂きました。 やはり皆様、本家の方ではくっつかないだろうと思ってらっしゃるようですね(笑) だからこそこんなFicを作ってみたりするわけですけど……うふ。 リクエストして下さったAmandaさん、有難うございました。 貴女のおかげで、この作品は生まれたも同然です。 そしてこの3部作をまとめてひよしゃんにプレゼント♪ 返品OKです。いらなきゃゴミ箱行きにしといて下さい(笑) ご意見、ご感想、リクエストは danafox@geocities.co.jp(ポスペOK) mulderscully@mail.goo.ne.jp http://www.geocities.co.jp/Hollywood/7095 にお寄せ頂けると幸いです。 / Aya