本作品の著作権は全てCC、1013、FOXに続します。 この小説は私の片寄った趣味により書かれたものなので、気を悪くさせたら申し訳ありません。 ======================================     『 bond − 記憶の喪失 − 』(2)                             from  涼夜 人は生きて行く中で色んな人間に出会う。 それは尊敬する相手だったり、愛しいと思う存在だったり、心を許せる友人だったり・・・。 スカリーにとって、モルダーとの出会いは彼女の人生を大きく変えた。 それこそ、彼女の生き方さえも・・・。 モルダ−の真っ直ぐな情熱に、強い信念。 自分にはないその"強さ"はスカリーにとって、見つめる事しか出来ない物だった。 それでも7年と言う時間をかけて、彼女は彼を理解し支えれる存在にまでなった。 たとえこの先、何があっても・・・いつかモルダーが自分から離れる事になっても 彼女は彼と過ごした日々の思い出、それだけで生きていけると思っていた。 何があっても二人で過ごした時間を忘れる日だけは来ないと・・・・スカリーは『信じて』いた。 「記憶障害?」 脳のCT写真の前で腕を組んだスカリーは、信じられないと言った顔で聞き返してきた上司のスキナーに深く頷いた。 「それは・・・つまり、記憶喪失と言う事か?」 「・・・・そうです・・・見て下さい」 スカリーはモルダーのCT写真を指差すと、震える声を押えて極めて冷静に説明しだした。 「モルダーは階段の手すりに後頭部を何度か強く強打し、その衝撃とショックから記憶を覚える 機能が一瞬麻痺してしまって、脳に強い圧迫が生じたんです。結果・・・記憶障害に・・・・」 「・・・・それで、モルダーは?」 「こう行ったケースは珍しくはないし、過去に記憶を戻したと言う報告の方が多いので治るはずです」 「スカリー、私が言ってるのは・・・・」 そう言ってスキナーが彼女を見た瞬間、彼は言葉を止めた。 自分の唇を噛み、必死で溢れでそうになる涙を耐える彼女に言葉を失ったのだ。 「・・・・・モルダーの記憶は戻るのか?」 「・・・・」 「スカリー・・・?」 彼女の沈黙をスキナーは酷く重く感じた。 そして彼女に質問の答えを言わせなければいけない自分を残酷に思う。 それでも彼は聞かなければならなかった。 医者としての、ダナ・スカリーの意見を彼等の上司として。 「ええ・・・いつかは・・・・」 「本当か?」 「治ります!!」 「スカリー・・・・」 「いつかは分からないけど、絶対に治ります!治してみせます!!今日か明日か、いつかは 分からないけど絶対に彼を治してみせます!!!」 火を切ったように顔を上げて叫ぶ彼女を見て、スキナーの心は痛んだ。 そして彼はそれだけで十分だった。 「そうか・・・・暫くモルダーは入院か?」 「・・・・ええ」 「休暇が余ってたな、モルダーは・・・暫くは仕事上での入院にしたら、休暇を使え。 それでも足りない時は特別有給休暇を申請しなさい」 「・・・・・ありがとうございます・・・・」 「スカリー・・・しっかりな・・・」 スキナーは彼女の肩を強く掴むと、それ以上は何も言わずに部屋を後にした。 それでも触れた瞬間に震えていた彼女の肩と、さっきの絞り出すような声でスキナーに十分分かった。 モルダーが、彼女を覚えていない事を・・・。 そして部屋に1人残してしまったスカリーが今、ドアの向こうで声を上げずに泣いている事が・・・・。 病院のベットの上で横たわる彼は、消毒液の臭いや白い天井に対して違和感を覚えていない自分に苦笑した。 「記憶はなくとも体は覚えてるか・・・・」 皮肉まじりの呟きを自分に言うと、その顔を両手で覆う。 そしてここ数日の出来事と、彼女−・・・自分の相棒だったと言う女性から聞かされた話を思い出す。 今は1985年ではなく2000年だと言う事、そして自分はFBIの捜査官で、事件解決後に人を かばって階段から落下し記憶喪失、記憶障害にかかり1985年から2000年の今までの15年分の 記憶を一時的に喪失してしまったのだと言われた事を・・・・。 「15年分か・・・・・」 広い病室でモルダーは小さく呟いた。 そう、今の彼の記憶は25歳まで戻ってしまっていたのだ。 そしてそこから先がどうしても思い出せない。 記憶喪失と言う物が世にある事はもちろん知ってはいたが、それでも最初は受け入れなかった。 でもスカリーと名乗った女性の真剣な口調とその話し方が、彼に事実だと言う事を認めさせた。 彼女から聞く事は全てがおとぎ話のようで、ただ未来を予想視されてるいるとだけ感じた物の 鏡に写った成長した自分の顔と、見なれない体に残る傷が何よりも証拠だった。 何があったのか、何度考えてもどうしても思い出せない。 そしてその考えに意識が集中すると、酷い吐き気と頭痛が彼の脳を襲った。 医者の資格も保持していると言ったスカリーは、無理に思い出さない方がいいと言ったが それでも事実を認めたモルダーには不思議だった。 なぜ自分の記憶は15年分だけ消えてしまったのか。 聞いてみても彼女は多くは語らなかったが、それでも困惑する自分に彼女が上げた説は消えてしまった微かな記憶を感じさせた。 「人は誰だって人生の分岐点があるわ、モルダー。あなたにとって、今がそうなんじゃない?」 「分岐点・・・つまり、将来を決めるって事かな?」 「それは分からないわ、何が分岐点になるかなんて人によって様々だもの・・・・あなたにとって、今はどんな時の?」 「今・・・・?FBIに入る事を決めた時だけど・・・・」 その言葉に、一瞬彼女の表情は深い悲しみのような目に変わった。 「僕にとってはこれが人生の分岐点だよ。他の可能性を切ったんだから。はっきり言ってくれ」 「・・・今のあなたは過去を振り返ったりする?」 その言葉に今度はモルダーの表情が曇った。 「・・・・・あるよ・・・一つだけ・・・・」 苦痛に満ちたその表情から彼がなんの事を言っているのかが、スカリーにはすぐに分かった。 妹・・・モルダーのたった1人の妹、サマンサの事だ。 「その瞬間に戻れたらと思った事は?」 「・・・・何度もある・・・でも時間は戻せない」 「そうよ、そう・・・時間や日々は取り戻せないわ。でも、もし・・・探し出していた物に答えが出たら? 自分が求めていた物に答えが出たら?あなたはそれでも、過去を振り返る?」 一瞬モルダーは、彼女が妹との事を知っているのかと思ったが、その質問はまだ彼女の事を何も知らない 自分によって押しとどめられた。 「・・・・たぶん、もう振り返りはしない。他に後悔しているものがないなら・・・・でも・・・」 「でも?」 「自分が通ってきた来た道、人生を振り返るかもしれない」 「・・・・・なぜ?」 「求めた物の答えが出た時が・・・またそこが僕の人生の分岐点なんだよ、分かるんだ」 自分をまっすぐ見つめる彼が、たとえ記憶を失っても共に過ごしてきたモルダーと何も変わらないのだとスカリーは感じた。 けれど同時に、激しい刹那さが胸を走る。 「なら・・・・それが、15年分の記憶を喪失させた答えなんじゃない・・・?」 モルダーは眉をひそめたが、彼女の言う意味をすぐに理解した。 「・・・つまり記憶を失う前の僕が、今の僕のを思い返した・・・・?」 「もしFBIに入らなかったら・・・あなたの人生は大きく変わったでしょうね・・・」 確信づけるようなスカリーの言葉に彼は自分がFBIに入ってから、厳しい思いをして来たのだと悟った。 「・・・・・・そうかもしれない・・・・・」 暫くしてスカリーは何もいわずその場から立ち去ったが、モルダーには気付くはずもなかった。 彼女の瞳から、涙が溢れ出そうになった事を・・・・。 ありのままのモルダーの言葉は、スカリーの心をたやすく傷つけた。 そう、それは彼の本心だったのだ。 少なくとも今の記憶を持たない彼が嘘をつく必要はない。 ただ純真な答え。 それだけでモルダーはあっさりとスカリーを気付かない内に傷つけた。 サマンサ以外で彼がした後悔・・・・。 記憶を失う数日前に呟いたモルダーの一言・・・。    『 デアワナヶレバ・・・・ 』 あれはスカリーにとって、感情を表に出さないモルダーの愛の告白のように心が縛られた。 そう、あれは自分にも言えた言葉だからだ。 もしモルダーと出会わなければ今の自分は存在しなかっただろう。 もっと違う人生を歩いていたはず。 厳しい事がたくさんあった。昔の自分が考えていたより辛い事も・・・・。 それでも、スカリーは思ってきた。 彼と出会わなければ、こんなにも人を信じる事も想うだけで満たされる愛も知らず、涙が出そうになる自分に気付く事もなかった。 出会わなければ、知る事は決してできなかった・・・・。 1人の人を愛する想いの強さを、自分が知る事はなかったと・・・・。 それをモルダーはあの時、自分も同じだと言ってくれたのだ。 二人の間にあった様々な試練が、お互いの距離を引き離してしまったのだとスカリーはもうずっと分かっていた。 だからモルダーが自分に対して持ってくれている気持ちに、彼女は答えを見つけられず耐えていた。 でもモルダーは悲しそうな瞳をしながらも、優しく言った。  『 出会わなければ ・・・ 』と 出会わなければ良かったと何度も彼は本当に思ったのだろう。 出会わなければ、こんなにも辛い目に私をあわせる事はなかったと。 けれどあの時までは、モルダーは一度もその事を直接言葉出した事はなかった。 だからスカリーには分かった。 言葉に出来ない、口に出す事の出来ないモルダーの想いに。 彼も、自分と同じ想いでいてくれてたのだと・・・・。 そう、出会わなければ・・・自分達はこんなに風に傷付く事はなかった。 けれど、隠された言葉の意味は一つ。 出会わなければと良かった思った事があっても、出会った事は後悔していないと・・・。 出会わなければ、お互いに抱いている誰にも感じた事のないこの想いさえ知る事は出来なかったのだから・・・・。 だから傷つけた事にいつも責任を感じていても、それでもこの出会いを後悔していない。 それほどに愛していると、彼はあの言葉にこめたのだ。 決して触れ合う事ができなくとも、たとえ抱き締める日が訪れなくても、それでもただ純粋に愛してると・・・。 どんな時も、この想いは永遠に変わらないと・・・・。 だから、一度はスカリーはモルダーの答えを受け入れた。 離れていても想っていると言う彼の心を。 けれど三日間、モルダーと離れていた彼女の心は彼の事だけに支配された。 モルダーの答えを受け入れた方が、お互いが幸せになれると分かっいる。 でもいつか二人が離れて、自分が過去を振り返った時、後悔しなかったと言えるだろうか? 送りだしたモルダーの瞳に後悔は感じられなかった。 でもそれはモルダーの今の想いであって決して、10年先の彼の気持ちではない。 心を永遠にくれても、それ以上の気持ちを知る事は出来ないのだから。 二人の間にあった辛さよりも、出会った事を後悔していないと言うなら、その先きにある いつかは答えをだなければいけない、お互いの関係に後悔したくはないと・・・彼女は決意した。 そして全てをモルダーに伝えようと心に決めた瞬間だった。 痛い現実は容赦なくスカリーに降りかかる。堅い決意は、音を立てて崩れて行く。 それほどに想っていてくれていた彼の想いが、彼の記憶からスカリーを消してしまったのだ。 ただ彼女を想いすぎて・・・・。 だからモルダーの記憶は25歳にまで舞い戻った。 それはモルダーはスカリーと出会う日が来る時の可能性を選んだ時。 もしこの時、彼がFBIを選ばなければ、スカリーと出会う事は決して無かった。 そうすれば傷つけあう事も、それでも出会った事を後悔しないほど相手を想う気持ちも知る事はなかった。 まだ悲しみも愛しさも知らなかった時。 ただ相手の鼓動だけを望む事も、純粋な想いをさえも知る事は無かった頃。 『永遠』の意味すら理解出来なかった幼く未発達な心の歳。 彼の中で、15年とも言える時間を一瞬で消してしまった彼女の存在の大きさ。 出会わなければと良かったと思った事があっても、出会った事を後悔していないと言った彼の深い想い。 そしてそれが・・・モルダーの中からスカリーの記憶を連れて行った。 まだ二人が出会う前の、その可能性を握った25歳の頃の彼へと・・・・                                      to be continued・・・ ====================================== あー・・・もしかして、私って鬼・・・・?←(自分で思うやつ) なんだかなぁ。。。。本当、鬼かも(爆) でも幸せに苦労はつきものです!(本当に?)乗り越えるには勇気が必要です!(本当に?) すごい、一つの想いにこんなに複雑に考えんでも。。。って呆れる方がいらっしゃると 思います(汗)でもそれでも・・・私が伝えていきたいと思うのは『大切』さです。 誰かを好きになったら好きーwとつっぱしるのではなく(それももちろんありです)w でも想う相手、想える相手がいるその存在の大きさ、大切さを感じて頂けたなって思いますw もちろん、このモルはもっと手を出した方がいいですね(笑) これじゃあ、スカの事好きw好きって言ってるだけの奴なんで、行動が必要です(笑) (ってか、作者あんただろ?) 。。。。。。。。。。。。。。。。爆死。 そんなこんなで感想を→ rilyouya.ouri@k6.dion.ne.jp ってか、調子に乗って書き過ぎ・・・? <今ごろ気付いたのか?(汗)> 。。。。。。。。。。。。。。。。再び爆死