本作品の著作権は全てCC、1013、FOXに続します。 この小説は私の片寄った趣味により書かれたものなので、気を悪くさせたら申し訳ありません。 なので、一切の責任は負いません(笑) ======================================      『 bond − 消えない傷 − 』(3)                             from  涼夜 25歳の彼は、深い傷を心と体に刻み込まれていた。 逃げるように家を後にし、イギリスで勉強に打ち込んだ。 むちゃもしたし、はめも外した。 一通りの経験を積み、過去のしがらみを逃れようとしたが、それでも彼の心をいつも深い暗闇が覆っていた。 ただ一つの彼の『後悔』 あまりに幼すぎた彼が失った、たった1人の『妹』と両親からの『愛情』 その二つは、彼が成長すると共にさらに大きくなり、心の痛みに変わった。 救う事ので出来なかった愛しい妹。そしてそれが原因で離婚した両親。 誰にも愛される事の無かった青年期。いつの間にか・・・回りに壁を作り心を閉ざしはじめた。 そして彼は諦めてしまった。 誰かに・・・本気で愛される事、誰かを・・・本気で求める事を・・・・。 そう『彼女』に出会うまでは・・・・。 信じる事も、愛する意味も『彼女』に出会えたから・・・・・。   『 カノジョ 』 「誰・・・・?」 暗闇の中を手探り状態でさまよっていた彼は、目を覚ました。 そして汗でしっとりと濡れた自分の額を両手で覆う。 今まで何を思い何の夢を見ていたかさえ思い出せない彼は、残された頭の痛みからそれがなくした記憶だと実感する。 「一体・・・・なんなんだ・・・・」 苛つくように吐き捨てると同時に、病室のドアがノックされた。 部屋に入ってきた女性を見て、彼はここ数日でもう何十回も顔を合わせた彼女の名前を思い出す。 仕事の相棒だと言っていた・・・・。 「やぁ・・・・」 モルダーはつとめて明るい声を出すと、さっきの自分を知られないようにいつも通りに振る舞う。 それでも医者であり、長年彼と過ごしてきたスカリーはモルダーの異変に気付く。 「顔色が悪いわ・・・・」 「大丈夫だよ」 口数少なくそう答えるモルダーの横顔は青白く、額が汗で濡れてる事からスカリーは彼が悪夢を見たのだと分かった。 「本当に、顔色が悪いわ。ちゃんと眠らないと・・・・」 「うるさいな!」 モルダーは苛ついたように声を荒げる。 けれどすぐに自分が口にした言葉になはっとすると、小さく呟いた。 「ごめん・・・でも、大丈夫だから・・本当に・・・」 傷付いたように自分を見るモルダーに、今度はスカリーが言葉を失う。 この頃、記憶を失う前にモルダーは自分が25歳ぐらいの時が一番酷かったと言っていた。 それはFBIへの道を決めた時で、妹を探し出そうと決意した頃だったと。 けれどそれは両親に愛されなかった日々の思い出と隣合わせで、まともに眠る事もままならかったと・・・。 毎夜見る妹を失った悪夢と、両親に愛される事のなかった少年時代。 そして、失ってしまった"今"の記憶。 スカリーには痛いほど分かっていた。モルダーが酷く混乱し、心を閉ざし始めている事を・・・。 「モルダー・・・・」 頬に触れたスカリーの手にモルダーは体をびくりと震わせると、曖昧に微笑んだ。 「本当に、大丈夫だから」 そう言って自分を拒絶するモルダーに、スカリーはかける言葉が見つからずにただ黙って彼を見つめた。 やがて病室を包む小さな沈黙を破ったのは、モルダーの方だった。 「どんな・・・だったのかな」 「えっ?」 「どんな風に、今を過ごしてたのかな・・・家族に仕事に・・・何も思い出せないんだ・・・」 「モルダー・・・・」 「今はまだ・・・何も思い出せないし、分からない・・・・」 「きっと思い出せるわ」 「そう・・・思う?」 「ええ」 「でも僕は・・・君さえ分からないんだよ?」 真っ直ぐ自分を見つめるモルダーを、スカリーも真剣に見つめ返した。 「私は知ってるわ」 照れたように微笑んだ見せたスカリーに、モルダーは小さく微笑み返した。 そして消えそうな声で小さく囁いた・・・「ありがとう」と・・・・。 スカリーがモルダーと過ごした7年間、過去にあった様々な事を話す内に、モルダーは少しずつ明るくなりだした。 時には記憶を失う前のモルダーと同じようなジョークを言い、スカリーをドキリとさせた物だった。 それでもまだサマンサと母親の死を告げる事の出来なかったスカリーは、彼が悪夢を見てると分かっても言い出せずにいた。 それは記憶を失った彼には酷だと思ったからだ。 さいわいモルダーも母親には連絡しないで欲しいと頼み、妹の事を知っていると話した スカリーにもサンマンサの安否だけを聞くと、見つからなかったと答えた彼女にそれ以上は聞いてはこなかった。 きっとモルダーも自分で思い出さなければいけないと感じていたからだろう。 それでも、毎日病室に行くスカリーにとって、眠れずに過ごすモルダーの姿は痛々しいかった。 けれどモルダーは決して助けを求めてこようとはしない。 眠れないとぼやく事も、悪夢を見ると呟くことすらなかった。 どこかでまだ、モルダーはスカリーから壁を作っていた。 最初にの頃にくらべればましになったが、それはスカリーも感じていた。 「Xーファイル課?」 やはり彼の興味を一番に引いたのは、この話題だった。 「ええ」 「変わった課だね・・・いい所なの?」 「私とあなただけよ。しかも地下室」 肩をすくめて見せるスカリーに、モルダーは驚いたように目を開いた。 さすがの彼も自分が15年後、アカデミーを卒業してから地下室にこもっていたとは思わなかったのだろう。 「どうして、そんな所に?」 「・・・・妹さんを見つけるためよ」 スカリーの言葉に一瞬モルダーは真顔になるが、それでも少しだけ嬉しそうに微笑んだ。 自分が妹を探す熱意が続いてのを知って、嬉しかったのだろう。 ましてやそれが、約束された出世への道を捨てる事になろうとも・・・。 「今度、事件の資料見せてくれるかな?今の状態が続けば、やっぱりいつかは仕事に戻らないといけないし 早く思い出したいからさ。後・・・アカデミーの時の成績表なんかも出来たら・・・」 遠慮がちに話すモルダーを見て、スカリーは今、自分が知る事のなかった彼に出会っているのだと思った。 儚く繊細な心を持っている、傷付く事に怯えてる小さな少年に・・・。 自分の知る事のない、見た事のない彼に・・・・。 でも記憶を持たないモルダーの些細な一言は、軽くスカリーの心に何度も針を刺した。 彼女が一番困った質問はこれだった。 誰もが知りたい思う、当り前の疑問にスカリーは言葉に詰まった。 それでもモルダーは彼女に訪ねた。 「僕には・・・恋人ととか、いなかったのかな・・・?」 「えっ?」 ふと漏らしたモルダーの言葉に、スカリーは驚いたように彼を見つめる。 「あっ・・・でも、いたら会いに来てくれるか・・・」 自嘲気味に微笑むモルダーは、どこか寂しそうに感じた。 「毎日来てくれるのは君だしね。あっ、感謝してるよ!本当に!!迷惑かけて、ごめん」 「もう慣れたわ」 「僕ってそんなに・・・・」 自分自信に呆れたようにモルダーは呟いたが、それでもひらめいたように顔を上げた。 「じゃ・・・好きな人は、いなかったのかな?」 「えっ?」 「知ってる??聞いた事ない?」 純粋に自分を見つめるモルダーに、どう答えていいのか分からないスカリーは目をそらした。 「知ってる?」 「・・・・・私が知ってるかぎりでは、聞いた事はないわ」 スカリーは立場が逆だったら、モルダーが言うであろう答えを探した。 「そう・・・でも、君と組んで7年だから・・・よっぽど仕事が好きだったのかな」 「ええ、よく分かってるのね。あなたは休暇を取らないと減俸にされるくらい仕事魔なのよ」 おかしそうに笑うスカリーに、モルダーはますます自分に行動に呆れたようだった。 「仕事もいいけど・・・でもなぁ・・・せめて好きな人ぐらい・・・」 「・・・・いた方が良かったの・・・?」 静かに問いかけるような口調に、モルダーは困ったように笑った。 「・・・うーん・・やっぱり、そんな事ないかな?想うだけって言うのは・・・辛いしね」 その一言には彼の多くの想いが込められているようだった。 愛して欲しいとすがった小さな少年の頃。 もっと大切にし愛してやりたかった、たった1人の幼い妹。 そして心に残った深い傷。愛情を求め続けた彼・・・。 決して求めるだけで返される事の無かった彼の想い・・・。 それは彼の孤独を広げ、癒し切れない所まで進んでいた。 スカリーの中に小さな悲しみが広がって行く。 なぜあんなにも彼が『永遠』を望んだのか、彼女はやっと理解した。 なぜモルダーがあの日、自分を抱き締める腕を離したのか・・・・。 自分と出会う前からもう彼は愛情を諦めていたのだ。 そして、二人の間にあった様々試練はモルダーに『永遠』を決意させるきっかけを与えてしまった。 それでも・・・一体いつからだろう。 モルダーが自分を見つめる瞳が優しくなったのは・・・。 確信を持つ事はできなかったが、少しだけ自惚れる事は出来た。 滅多に見せない柔らかい微笑みを自分だけに向けてくれた時、彼が信じてるのが自分だけなのだと分かった時。 何気ない日常で大切にされていた自分。今なら分かる。後ろに立っていた彼の存在の大きさを・・・。 ただ側にいるだけで、強くなれた・・・・。 それはモルダーも同じだったのだろうか? それほどに彼も自分を想ってくれていたのだろうか? 心の底からたった1人信じあえて、誰よりも愛してくれていたのだろうか・・・? だからこそ『永遠』を望み諦めたのだろうか? それほどまでに・・・? それでもモルダーの心を知る事の出来ないスカリーはそれ以上の考えを止めた。 誰も自分以外の心の中を知る事は出来ない。 たとえ自分の想いがそうだったとしても、モルダーは違ったのかもしれない。 理性と冷静が共存する彼女の心には、自分にいいようには考えられなかった。 期待して裏切られれば壊れてしまう。信じているがそれは愛情を前提にはしていなかった。 彼自信の、その人間性と情熱を信じたのだ。 だから自信を持つことなど出来ない。 ましてや、それを・・・今のモルダーに伝える事など・・・。 彼をこれ以上混乱に導く事だけは、スカリーには出来なかった。 自分が彼をどうしようもないくらに『愛している』事も、自分達の想いが一つだったかもしれない事も 彼女にはいう事は出来なかった・・・。 スカリーがこの事を後になって酷く後悔する日は、もうそこまで来ていた。 翌日、モルダーの病室から聞こえて来た、見知らぬ女性とモルダーの楽しそうな笑い声を聞くまでは・・・。                                     to be continued・・・。 ====================================== きたぁぁぁぁーーーー(汗) ス、スカいぢめが本格的に発動(爆死) 私って本当に鬼だぁぁぁーー(涙) いじめて×いじめて・・・きっと最後は幸せにして見せる!と堅い決意を胸に抱きつつ 本当になれるのだろうか?という一抹の不安が頭をよぎる(たんに文集能力のなさ) そしてモルの部屋から笑い声が聞こえてきた『女性』の声・・・。 別名;これからの『悪魔の使い』爆死w よければ感想を→ rilyouya.ouri@k6.dion.ne.jp