本作品の著作権は全てCC、1013、FOXに続します。 この小説は私の片寄った趣味により書かれたものなので、気を悪くさせたら申し訳あ りません。 なので、一切の責任は負いません(笑) ======================================      『 bond − 儚い想い − 』(4)                             from  涼夜 ノックをしようと振り上げた手をスカリーが止めたのは、中から聞こえてきた女性の 声だった。 それでもドア越しに少し考えると、とまどいながらもその扉をノックする。 モルダ−の「どうぞ」の一言でスカリーが病室に一歩踏み込むと、そこには1人の女 性が立っていた。 彼女はスカリーに向って微笑むと、軽く頭をさげる。 その女性をどこかで見た事のあるスカリーは、あいさつを交わしながらも思い出して いた。 ストレートのハニ−ブロンドに、ダーク・アイ・・・。 それは一週間前、モルダ−の病室の前で中に入る事が出来ずに外でただ心配そうに立 ち尽くしいた相手であり この一週間、彼の病室に花束だけを置いて行く女性がいるとナースが話していた人相 と同じだった。 そして事故にあった時、最後にモルダーと一緒にいて、彼がかばった相手だったのを 思い出す。 スカリーの驚いたような表情に、モルダーが先に口を開いた。 「あの、こちらジル・バレンタインさん。僕と事故に時に一緒にいたって・・・知っ てるかな?」 モルダーが首を傾げたので、スカリーは小さく頷いた 「あなたの意識が戻る前に、何度か病室の前で会った事は・・・確か同じFBIの・・ ・」 「そうなんだ。あっ、こっちは僕の仕事のパートナーで、ダナ・スカリーさん」 モルダーがスカリーを紹介したので、ジルがもう一度頭を下げたその時、赤く晴れた 目にスカリーが気付いた。 泣いていたのだろうか?彼女の目じりの横には涙をぬぐった後が見える。 スカリーはそこまで考えて、やっとジルがモルダーに謝罪に来たのだと分かった。 何度も謝り、そして深く謝罪した彼女を彼は責める事すらせず簡単に許して笑顔で向 えたのだろう・・・。 モルダーはそういう人間だ。 「あ・・・・じゃ、私は後で・・・」 スカリーは小さな居心地の悪さを感じると、来たドアを引き返そうとモルダー達に背 を向けた。 「あの!!」 ジルによって引き止められたスカリーは、少しとまどったように振り返る。 「何?」 「あの・・・モルダー捜査官のリハビリ、私手伝ってもいいですか?」 「・・・えっ」 「やらして下さい。やるべきなんです、だって私のせいで・・・モルダー捜査官けが して、そして記憶まで・・・」 口ごもった彼女の瞳からは、また涙が溢れて来る。 スカリーがモルダーを見たが、彼は困ったように微笑んだ。 「僕は、後少しで退院だし別にこうなった事は気にしないで欲しいって何度も言った んだけど・・・ でも彼女こういいはっちゃって。だから、主治医である君の許可が降りたらっていっ たんだ」 モルダーは本気で困ったようにスカリーを見ると、全てを彼女に託すように両手を広 げた。 「いいですか??スカリー捜査官!」 自分に詰め寄って、許しを願う彼女に、スカリーは一瞬言葉に詰まる。 それでも、医者としての意見を求められているなら彼女が出す答えは一つだった。 「・・・・・そうね。そっちの方が・・いいかもしれないわ」 軽く微笑んだスカリーにジルは涙で「はい!」と嬉しそうに叫ぶと、モルダーに向き なおった。 「でも・・・」 「モルダー、お願い!私にやらさせて、本当にこんな事しか出来ないけど・・・」 あまりに真剣なジルの表情にモルダーもこれ以上彼女の好意を断れない事を感じると、 小さく頷いた。 「じゃあ・・・よろしく」 「私こそ、本当に・・・毎日来るから」 「それは・・・」 「いいの、やらせて!来たいの・・・・迷惑じゃなければ」 ジルはモルダーの両手を自分の手で包み込むと、何度も頷いた。 「そこまで・・言ってくれるなら」 モルダーは少し遠慮したように微笑んだが、あまりにほっとしてるジルの顔に、彼女 の気持ちも少しは理解した。 閉まる扉の反対側で、小さくなって行く二人の声を聞きながらも、スカリーは何も言 わずに部屋を後にした。 震える心を、どこか痛む自分を押えながら・・・・。 一時間後、スカリーが病室に戻るとモルダーの部屋にはもうジルの姿はなかった。 少しだけほっとしている事に気付きながらも、自分が入って来た事で嬉しそうに顔を 上げる彼を見て、スカリーも微笑み返した。 「さっきはごめん、わざわざ来てくれたのに」 モルダーは本を閉じて座りなおすと、スカリーに近くにある椅子を進める。 「そんな事・・・」 「でも助かったよ、ああ言ってくれて。そうしないと・・・彼女自殺する勢いだった からさ」 「医者としては当り前の事よ、モルダー。それに・・・もし私が彼女だったら同じ事 を言うと思うわ」 「・・・確かにそうだね、きっと僕も同じだろうな」 「じゃあ、どうして私にまかせたの?」 「僕は女性じゃないからね、分からないんだ。どう感じるのか・・・」 「ああ・・・そうね」 スカリーは小さく微笑むと、さっきのジルの事を思った。 確かに胸に言葉に出来ない思いが湧いたが、それでもスカリーには彼女の気持ちも分 かった。 きっと自分でも、自分の責で誰かが記憶喪失になったら一生をかけて償いたいと思う だろう。 ジルのそんな気持ちが分かるからこそ、スカリーは反対しなかった。 そして彼女の罪の意識を少しでも軽くするために、モルダーもジルの申し出を受けた のだ。 何より自分には、反対する権利など無いスカリーは思っていた。 「あっ!そうだ、聞きたい事があったんだ。これ見てくれるかな?」 モルダーは思い出したようにスカリーを見ると、本棚用の小さなボックスの中から一 枚のハンカチを取り出だした。 「何か分かる?」 彼がハンカチの包みを開くと、そこには鎖の切れた小さなシルバーのクロスが置かれ ていた。 「・・・モルダー・・・これ・・・」 「うん、階段から落ちた時にそれを拾らおうとしてたんだって。途中で気を失ったん だけど・・・」 「・・・あなたのなの?」 「違うと思うよ、僕はクリスチャンじゃないし・・・・けどそれを見てると、酷く懐 かしくて・・・」 「モルダー・・・・」 「なんだかとても・・・・大切な事を、忘れてる気がするんだ・・・本当に、大切な 事を・・・」 大切そうにそのクロスに触れるモルダーに、スカリーは彼の手の中にいるのは自分だ と感じる。 たとえ言葉に出来なくても、その記憶に残らなくとも、確かに心にまだ自分はいるの だと・・・。 彼の、遠い意識の中で自分の存在が息づいているのだと・・・。 「見たことない?」 ふと顔を覗きこんできたモルダーに、スカリーは慌てて笑顔を作った。 「見た事ないわ。私が知ってるあなたは、本当に・・・無論信者と言うか」 「やっぱり?それはかわらないんだな」 おかしそうにモルダーは笑うと、そのクロスを大事そうにハンカチ包みこんだ。 昔とも違う、この間までとも違う今の二人の関係に、スカリーは穏やかな空気が流れ ているのを感じた。 どこか心地よく、優しい空間。 それは決して、記憶を失う彼とは共有できなかった時間。 決して、二人の間に流れる事のなかった暖かい気持ち。 それでも・・・スカリーが愛したモルダーが記憶を失う前の彼だと言うことは、まぎ れもない事実だった。 「どうしたの?急にだまりこんで」 「・・ああ・・・」 言葉をつなげようとする彼女より早く、モルダーが口を開いた。 「あの、今日までありがとう。毎日、毎日」 「えっ・・・」 「来週からはさ、ジルが来てくれるって言ってたから・・・・その、ずっとつき合っ てくれて本当に感謝してる」 「モルダー・・・」 「本当にすまなかった。君の大切な時間を、仕事のパートナーと主治医としてまでつ き合ってくれて。 ここまで今笑えるのも君のおかげだよ、本当にありがとう。君がいなかったから、もっ て卑屈になってたはず」 モルダーは少し照れたように微笑むと、スカリーに軽く頭を下げた。 「本当、ありがとう。今は早く体治してお思いだそうと考えられるしね。 スカリーは胸が熱くなるのを感じながらも、その感情を必死で押し止めた。 今、モルダーを混乱させる事は出来ない。 無意識の内でも、微かに彼の手の中には自分の存在はあるのだから・・・。 「記憶が戻ったら何して欲しい?お礼になんでも君の好きな物奢るよ!」 無邪気に笑う彼を前に、スカリーは顔を下に向けてしまった。 「大丈夫、絶対に守るよ。本当だよ、言って何がいい?なんでもいいからさ」 「・・・・・・一つだけ」 「何?」 「もし記憶が戻ったら、モルダー・・・一度でいいのよ。私の質問に、一度だけ素直 に答えて。 過去も未来も関係なく、ただ素直に・・・話して欲しい・・・」 それは彼女の最後の賭だった。 そして記憶が戻ると信じていたかった。 モルダーは暫く間、少し潤んでいるスカリーのグリーンの瞳を見つめ、彼女に何も聞 かず優しく微笑んだ。 「約束する。記憶が戻ったら、君の質問に嘘をつかずに自分の本心を言うよ」 「・・・・・ありがとう」 見た事のないほどのモルダーの優しい微笑みに、スカリーも微笑んだ。 見つめ合った少しの沈黙の中で、モルダーは彼女の頬にそっと触れた。 指先から伝わる彼女の温もり、自分を見つめる美しいグリーンの瞳、微かに心が覚え ている。 自分にとって、彼女は一体どういう存在だったのだろう。 なぜこんなにも、側にいると心が落ち着くんだろう。 心が透明に、優しくなれる・・・・。 「・・・君と話していると・・・気持ちが落ち着くんだ・・・不思議だね・・」 「モルダー・・・・」 「きっと、とても大切な人だったんだ。それは・・・分かるよ」 モルダーのあどけないその微笑みは、スカリーの知る事のない彼の笑顔だった。 少しずつ、モルダーが失ってしまった物。 優しさと、笑顔と、誰かを想う気持ち。そして暖かさ・・・・。 「きっと、君の恋人は怒ってるんだろうな」 「えっ?」 「ずっと、僕に付き合わせちゃったからさ。本当にありがとう」 「モルダー・・・私は・・・!」 「君の恋人は、きっと幸せだね」 そう言って嬉しそうに微笑む彼の横顔は、スカリーにはどこか遠く思えた。 "孤独" 癒される事のない、彼の深い悲しみ・・・。 次ぎの週からは毎日、約束した通りにジルはモルダーの元へ訪れた。 自分に一生懸命になってくれる彼女は、モルダーにとってなくした記憶に対するいら 立ちを和らげていた。 ジルの明るさと優しさは、確かに彼の心に響いていたのだ。 「モルダー!再来週の頭には退院できるって」 花を持って、笑顔で病室に入ってきたジルの第一声にモルダーは顔を上げた。 「本当に?」 「ええ」 嬉しそうに自分を見つめるモルダーに、ジルは大きく頷く。 「そうか、良かった。もう車椅子なしでも歩けるし・・・・」 「後は・・・あなたの記憶が戻るだけね・・・」 自分の言葉に目を伏せたジルに、モルダーは優しく微笑んだ。 「今日はなんの花?」 「えっ?ああ・・・病室に花は持ってきちゃ行けないってのは分かってるだけど・・・ 」 ジルは右手に持っていた、小さなブーケの形に包装された紫色の花を持ち上げた。 「それ・・・もしかしてSiran?」 「えっ?知ってるの??」 「うん、でもこれ・・・ここら辺じゃ売って無いんじゃないのかい」 「えっ・・・ああっ・・・」 「もしかして、わざわざ買いに?」 驚いたように自分を見つめるモルダーに、ジルは視線をそらすと曖昧に微笑んだ。 「・・・・ありがとう」 モルダーは嬉しそうに彼女に笑いかけると、にっこりと微笑んだ。 「私があなたにしてもらった事に比べたら、全然足りないわ」 「そんな事ないよ」 「でも、私が階段から落ちたりしなければ、あなたの記憶は・・・・!」 「それは何度も言うけど、僕が勝手に君をかばったんだよ。だから君のせいじゃない よ」 「でも・・・・」 「君は十分してくれたよ。毎日お見舞いに来てくれる、リハビリも手伝ってくれる。 本当に・・・」 モルダーは彼女の頬を伝う涙を指先で拭って、言葉を続けた。 「本当に感謝してるんだ。だから・・・君がそんなに責任を感じる必要はないんだよ」 「モルダー・・・・」 「だから僕が退院したら、君も普通の生活に戻ってくれ。ずっとこんな事に巻き込む わけにはいかないし それに、何かのはずみだったり時間がたてば記憶は戻るって医者達も言ってたから」 その言葉にジルは顔を上げると暫くモルダーを見つめた後、力強く首を振った。 「あなたさえ良ければ、側にいさせて欲しい・・・これからも」 「・・・・ジル?」 「あなたの事が好きなの・・・」 「・・・・・!!」 ジルの突然の告白にモルダーは言葉を失い、ただ驚いた表情で大きく瞳を開いて彼女 を見つめた。 それでも真剣な彼女に、モルダーはその言葉が嘘や冗談ではないだと感じる。 「モルダー・・・私は・・・」 次の言葉を続けようとしたジルの唇を、モルダーが手を当てて止めた。 そして不思議そうに自分を見つめる彼女に、モルダーは首を振った。 「それ以上言わないでくれ」 「モルダー・・・!私は本気で・・・!!」 「本気?・・・君、本気って今いったのかい?」 「ええ」 「こんな・・・記憶もない人間を?君の事を何も知らないのに?」 「私達が出会ったのは一日だわ。私は前から、あなたの話しは聞いていたけど・・・」 「ジル、君はとてもいい人だよ。感謝もしてる。けど・・・君は、聞いた話の中の僕 に好意を持ってるんだろ? あの日、一緒に過ごした時間の僕に。でもそれは今の僕じゃない」 「モルダー・・・!!」 「僕じゃないんだ。分からないし思い出せない!悪いけど、そんな事言われても答え られない」 「モル・・・」 「悪いけど、やめてくれ」 モルダーはそのままジルから目を離すと、それ以上何も言わずに口を閉ざした。 病院の廊下で沈んだ表所のジルとスカリーがすれ違ったのは、そのすぐ後だった。 声をかけずにその後ろ姿を見送ったスカリーだったが、モルダーに何かあったのかと、 急いで病室へ向かう。 「モルダー・・・!」 ノックもせずに飛び込んで来たスカリーに、モルダーは目を丸くする。 それは彼にとって、できれば今一番会いたくない人間だったのだ。 「何かあったのかい?」 それでもスカリーの様子を変に思ったモルダーは、自分を見つめるスカリーに首を傾 げた。 「あなたに何かあったのかと・・・」 「・・・とくに何もないけど」 モルダーは少しだけぶっきらぼうに答えると、スカリーから視線を外した。 「・・・どうしたの?」 「別に」 「モルダー?」 自分の事を心配してくれているスカリーの声だと、モルダーには分かっていた。 自分の事を気づかってくれているのだと。 それでもさっきのジルとの会話と「モルダー」と慣れない相手から呼ばわれる違和感 は、彼の苛つきに 引き金をかけるきっかけとなって、その部分に触れた。 「いい加減にしてくれよ!モルダー、モルダーって・・・何度呼ばれても言われても、 思い出せないんだ!!」 「モルダー・・・!?」 「思い出せないんだよ!!」 「モルダーあなた・・・」 「頼むから、少し1人にしてくれ・・・・」 吐き捨てるような口調とは裏腹に、両手で顔を覆ったモルダーのその姿は、スカリー には酷く小さく写った。 繊細で、心に触れられる事に酷く怯えている姿。 内面の見えない恐怖と苦しみを決して表には出さず、自分の弱さに1人耐え他人を拒 絶してきたモルダー。 人との間に壁を作り・・・裏切られる事を避けて誰も信じずに生きて来た孤独感。 スカリーはモルダーに近付くと、そっと彼の体を包み込んだ。 「やめ・・・・」 モルダーが振りほどこうとする力にさえ、スカリーは腕の力を緩めず強く抱き締めた。 「大丈夫よ・・・モルダー・・・大丈夫」 「っつ・・・・・」 「あなたは1人じゃない・・・・私を信じて・・・・」     『 私を信じて 』 どこかで聞いた事のある響き。感じた事のある温もり。 体よりも早く、安らかな心地よさを心が覚えている。 波打つ自分の激しさが少しずつ落ち着いて行くのが分かる。 不安や痛みが引いて行く・・・・。 なぜ・・・・?どうしてこんなにも・・・。 どれくらいそうしていたのだろうか。 数分かそれとも数十分か、それでも彼には抱き締められる腕の中を永遠にも感じてい た。 やがて自分の腕の中から小さな寝息が聞こえて来た事をスカリーは確認すると、そっ とモルダーの髪に触れた。 精神的な物だろう。 まだ見続ける悪夢と記憶喪失と言う現実の精神的プレッシャー。 思えばモルダーは、記憶喪失になってから一度も感情を吐き出していなかった。 ずっと我慢して・・・。 心は彼本人が思っているより疲労しているのだ。 思い出せない不安に、空回りする苛つき・・・・。 話すべきだろうか? 母親の死と、妹の死を・・・。 でも今のモルダーに、その事実が受け止められるだろうか? 彼が全てを犠牲にして来たのに・・・・。                      to be continued・・・。 ====================================== さてさてやってきました後書きですw 一体モルはどうなるんでしょうね〜。。。えっ?その前にジルは一体なんなんだって? いや・・・私にもよくわからんです(曝) それと・・・メールを頂いた方達の質問にこの場をかりてお答えしたいと思いますw 『fou you』を書く時に何か音楽を聞いていたのか? 「はい(^^)聞いていましたよぉ。言っても大丈夫なんでしょうかね?? 1〜4ぐらいまでが『夢みたあとで』と5〜8までは『Sincerly yours』 と最近の曲とちょっと昔の曲です。とくにアイウチさんはなぜか聞きまくりました (笑) 渋い系で行くと『黄昏れのワルツ』なんかも聞きましたw←これは音楽は音楽でも ガンガン系ではないのでwまぁ、知っている人は分かると思いますww ficを書く時はほとんど聞いております☆ よければ感想なんかをww→ rilyouya.ouri@k6.dion.ne.jp まだ続きますがおつきあい下さいませ☆ませ☆