本作品の著作権は全てCC、1013、FOXに続します。 この小説は私の片寄った趣味により書かれたものなので、気を悪くさせたら申し訳ありません。 なので、一切の責任は負いません(笑) ======================================      『 bond − 最後の抱擁 − 』(7)                             from  涼夜 頭を割るような頭痛と吐き気が治まってる事に彼が薄目をあけると、そこには暗闇の 中どこか一点を見つめたまま外を見ている相棒の姿があった。 その横顔は酷く悲しそうで、掴みようのないせつなさを感じる。 きっとそんな表情より、彼女には笑顔がとても似合うだろうと、彼は思った。 そっと体を起そうとしたモルダーの着ずれの音で、スカリーは彼へと振り返る。 「モルダー・・・!大丈夫?」 「・・・ごめん、僕あのまま倒れたんだね」 「そんな事より体は?もう頭痛はしない?」 心配そうに自分の頬や額に触れるスカリーの手を自分の手で包み込んでモルダーは微笑んだ。 「もう大丈夫だよ。さっきの頭痛が嘘みたいだ」 「モルダー・・・お願いだから無理しないで」 「本当に大丈夫だよ、かなり楽になったんだから」 モルダーはスカリーの手をやんわりと外すと、彼女の腕時計を覗き込んだ。 「今何時?」 「今?今は・・・夜中の1時半よ」 「そう・・・」 少し考え込んだ後にモルダーは決心したようにスカリーを見つめる。 「・・・モルダー?」 スカリーは彼の意図が掴めず、真意を確かめるように首を傾げた。 「外に行きたい」 「!!」 短く言い放ったモルダーに、スカリーの目は丸くなる。 ついさっき意識を失って倒れて今覚醒したと言うのに、いきなりのモルダーの言動に言葉を失ったのだ。 「駄目かな?」 「・・・何言ってるの!!そんなの駄目に決まってるでしょ!あなたさっき倒れたのよ!?」 「しっー・・・静かに」 モルダーが人さし指を立てて唇を押さえたので、スカリーは今が真夜中でここが病室だと言う事に我に返った。 「とにかく駄目よモルダー、安静にしてないと」 「どうしても?」 「どうしてもよ、絶対駄目よ」 「じゃあいいよ。もう頼まない」 「えっ?」 言うや否やモルダーは起き上がると、そのまま立ち上がってベットから抜け出した。 「ち、ちょっとモルダー!!」 スカリーの制止する声も聞こえないようにモルダーはそのまま歩き出す。 「モルダー!!」 病室のドアを開けようとする彼の前にスカリーはさっそうと立ちふさがった。 暫くそのまま無言の見つめ合いが続いたが、先に折れたのは彼女を見下ろしていたモルダーの方だった。 「行かせてくれ、外が無理なら屋上でもいい。とにかく外に出たいんだよ。風にあたりたいんだ」 「それは明日でもいいでしょう?空気が悪いなら入れ替えるからベットへ・・・・」 モルダーの体をベットへと戻そうと彼に触れた瞬間、スカリーの両手首は強い力に引き寄せられる。 「モル・・・!」 「思い出せそうなんだ!!」 スカリーの口から出そうになった講議の言葉は、モルダーのその一言で力を失う。 「えっ・・・・」 驚いたように自分を見つめるスカリーを、モルダーは真剣な表情で見つめ返す。 「今なら思い出せる気がするんだ・・・今外に出たら、何か・・・なにか思い出せる気がする」 「・・・・・でも・・・・」 「今行かないと一生後悔する!もう二度と思い出せないかもしれない・・・後悔するのは嫌なんだ」 「モルダー・・・・」 「君の事も・・・思い出せるかもしれない」 モルダーの真剣なその言葉に、スカリーは目を大きく開いた。 そう、無理はして欲しくはない、体を大切にして欲しい。でも・・・思い出して欲しい。 二人で過ごした日々を、乗り越えて来た試練を・・・そして誰よりも強い絆を・・・・。 思い出して欲しい、たとえそこから自分達が動き出せなくても・・・自分の存在を思い出して欲しい。 「・・・・・体調が悪くなったら、すぐ中に入るって約束してくれる?」 「もちろんだよ」 モルダーは安心したような満面の笑みを浮かべると、スカリーに支えられゆっくりと歩き出した。 夜の病室を抜け出し、二人は誰もいない廊下を進んで行く。 スカリーはエレベーターのボタンを押してモルダーと乗り込んだが、暗闇で彼の表情を読み取る事は出来なかった。 それでも・・・支えた腕から感じる確かな温もり、これはモルダーなのだと実感する。 ため息が出るくらい、優しい安心感を持っている相手・・・・。 屋上へと続く階段を登り終えて、ドアをあけるとモルダーとスカリーの二人をひんやりとした空気が包んだ。 モルダーは一瞬身震いをした物の、そのままスカリーの手をとって外一面が見える手すりへと向った。 「・・・綺麗だね」 「モルダー体調は?」 外の景色よりも自分の体を心配する彼女にモルダーは苦笑すると、スカリーの体を前に寄せて後ろから包み込む体制をとった。 「ちょっ・・・モルダー!?」 「いいから、見てみなよ。綺麗じゃない?」 モルダーはからかうように笑うが、抜け出そうとするスカリーの間に置かれた手を放しはしなかった。 「ほら・・・・」 暫く抵抗しようとしていたスカリーも、穏やかなモルダーの瞳と口調によって目線を広がる夜景の光りに向ける。 「・・・・・綺麗だろ?」 「・・・・そうね」 スカリーの口から出た同意の一言にモルダーは満足したように微笑むと、彼女の肩に手を置いて上を指差した。 「星も凄く出てる」 「本当だわ・・・それだけ気温が低くて寒いって事なのよ。モルダー、もう戻りましょう」 心配そうな顔を向けたスカリーとは反対に、モルダーはおもしろそうに彼女を見つめていた。 「何?」 「いや・・・君ってやっぱり化学者なんだって思って」 楽しそうに笑う彼に要領をえないスカリーは、さらに「何」と目線を向ける。 「だってさ気温が低いから星が出てる、それって化学者としての意見が第一に来てるんだろ? そうじゃなくて純粋に夜景は綺麗、星が綺麗って言葉は出て来ないのかなって思って」 「・・・それは・・・・!」 スカリーは講議をしようと顔を上げたがモルダーはまだ楽しそうに微笑んでいる。 「きっと君の事だから、星なんて宇宙のゴミって言いたいんだろうな」 「・・・・・・!!」 " 君の事だから星なんか宇宙のゴミって言いたいんだろ?" 彼女の脳裏に、いつか彼が言った言葉が蘇る。 あの時も、こんな風に二人で夜空を見上げて星を見ていた。 まだお互いに傷が生まれる前・・・彼がその想いを表に優しくだしてくれていた頃・・・・。 そう、今の彼のように・・・・。 「・・・・どうかしたのかい?」 「えっ?」 自分を驚いたように見つめるモルダーに、スカリーは始めて自分の瞳に涙がたまっている事に気がつく。 「ごめん、僕何か・・・気に触る事言ったかな?」 さっきとは打って変わって自分を心配するモルダーにスカリーは微笑んだ。 「大丈夫、違うのよ・・・・思い出してたの」 「何を?」 聞き返して来たモルダーにスカリーは一瞬言うべきかどうか考えたが、それでも彼をまっすぐに見つめた。 「・・・・こんな風に、もうずっと昔にあなたと星を見た事をよ・・・・」 「一緒に?」 「ええ、そう・・・一緒に・・・・」 「僕と一緒で嫌じゃなかった?」 「まさか・・・!何言い出すの?モルダー・・・」 驚いた顔をしたスカリーに、モルダーがそっとその頬を包み込んだ。 「じゃあどうして・・そんなのに辛そうなんだ?」 「・・・・!」 スカリーはモルダーの言葉に彼を見る事が出来ず、顔をそらしてしまった。 「ごめん・・・・」 モルダーの謝罪の言葉にスカリーは小さく首を振る。 「あなたのせいじゃないわ、私こそ・・・・」 モルダーは顔を上げないスカリーをそのままそっと引き寄せた。 「今は無理で・・・何も分からないけど、でも絶対に思い出すよ」 「モルダー・・・・」 「仕事の事、生活の事、そして君の事・・・絶対に思い出すから・・・」 モルダーの腕の中から顔を上げると、スカリーはモルダーを見つめた。 彼女を安心させるようにモルダーは優しく微笑む。 「だから・・・・笑って」 「えっ?」 「笑ってくれよ、笑って欲しいんだ、君には笑顔の方が絶対に似合ってる」 「急に何・・・」 「君が笑った所、まだ一度も見た事ないんだよ」 モルダーの真剣な瞳と、優しい笑顔にスカリーの心は暖かくなる。 でも彼の言う通り、自分が一度も彼の前で笑っていなかった事を思い出して自分の表情に困惑してしまう。 困っているスカリーの様子にモルダーは、微笑み彼女の体を引き寄せ、その細い腰に腕を回す。 「踊ろう!」 「えっ!?」 さすがにこれには驚いたスカリーだったが、モルダーに体を固定されふりほどく事さえ出来ない。 「ちょっ・・・モルダー、音楽も何もないのよ!?」 「だから?」 「だからって・・・・」 彼女の講議も意とせずモルダーは華奢なスカリーの体を、力づよい腕で抱き寄せる。 「音楽がなくたって踊れるよ」 モルダーは楽しそうに笑い声を上げると、そのまま強引にステップを踏みはじめる。 あまりのバラバラなステップに最初は戸惑っていたスカリーもその行動がモルダーらしいと感じ、だんだんおかしくなってきた。 「モルダー!ちょっと・・・バラバラよ!モルダーったら!!」 楽しそうに自分の腕の中で笑い声を上げるスカリーに、モルダーは嬉しくなる。 そして彼女の笑顔や笑い声を聞けただけで、彼の心は喜びに満ちていた。 白く淡いような想い。溶けて消えてしまいそうなこの優しさ。 胸を合わせて踊る星の下で、モルダーはずっと彼女の笑顔を見ていたいと想った。 この想いをなんて呼ぶのかは分からない。呼び方があるのかさえ分からない。 それでも・・・・かけがえない物。それだけは痛いほどに記憶がなくても理解できる。 この女性の存在が・・・自分にとっては全てだったのだと・・・・・。 そう・・・とても大切だった・・・・。 「・・・・・!」 「・・・・・モルダー?」 不意に足を止めたモルダーへとスカリーは顔を上げる。 そこには、自分をまっすぐに見つめるモルダーの顔があった。 真剣なその眼差し、それはいつも側で感じていた物。 「モルダー・・・?」 スカリーは確認するように彼の名を囁く。 それでもモルダーの表情は変わらない。 信じられない物を見つめるような、愛しい物を見つめるようなその瞳。 「モルダー?」 スカリーは期待と不安が入り交じったような声でモルダーを見つめる。 その瞳の奥に感じる情熱は、いつも側で感じていた。 言葉よりも、心が知っている。その情熱の全てを・・・・。 「モルダー・・・・」 頬に触れようとしたスカリーの腕を、モルダーはそっと自分に触れる前に掴んだ。 「君・・・・・」 「モルダー・・・・」 「君・・・・君か、スカリー・・・・・」 自分を見つめたまま小さく" スカリー "と呼ばれた事に、彼女の心臓は波打った。 記憶を失ってから、モルダーに呼ばれなくなったその名前。 ずっと他人のように距離を作るように" 君 "と呼ばれていた。 「モルダー・・・・・あなた記憶が・・・・・?」 震える声でスカリーはモルダーのヘイゼルの瞳を見つめた。 溢れだしそうな涙を押さえて・・・・。                      to be continued・・・。 ====================================== とうとうパート7まで来てしまいましたねー(他人事) これからどうなるのか・・・。 ぇ ジルが一回も出て無いじゃないかって?(汗) いや・・・後でだしますよ(滝汗) そんなこんなで今度こそ本当にファイナルまじかですw いや、次ぎで終わったりはしないけど(笑)半分は来たって事で・・・。 思い起こせば夏から投稿させて頂きもうすぐ秋の終わり・・・時間がたつのは早いですねぇ。 そんなこんなでよければ感想をw→ rilyouya.ouri@k6.dion.ne.jp