本作品の著作権は全てCC、1013、FOXに続します。 この小説は私の片寄った趣味により書かれたものなので、気を悪くさせたら申し訳ありません。 なので、一切の責任は負いません(笑) ======================================      『 bond − 向い合う時 − 』(13)                             from  涼夜 永遠とも感じられる長い階段をナースが止めるのも聞かずに、 ストレートヘアーをなびかせて、ジル・バレンタインは走り抜けていた。 目的のネーム・プレートが飾られた部屋を見つけた瞬間、彼女は勢いをつけて扉を開け放つ。 「モルダー!!」 ほとんど叫ぶのと同時に部屋に飛び込んだジルは、ベットの上から自分を驚いたように見つめるモルダーの姿に、体中の力が抜けていくのを感じた。 「君が一番乗りだ」 目が点、状態のジルにモルダーは微笑んでみせる。 「撃たれたって聞いて・・・・・・」 「この通り、大丈夫だよ。まだ少し痛むけど・・・」 モルダーは痛みを隠しながら、起き上がると、手前の椅子を引き出した。 まるで撃たれた所がないように、少年のように微笑むモルダーに、ジルも命の別状ではないのだと悟り、安堵のため息をつく。 「大丈夫なの?」 ジルはベットの横の椅子に座ると、モルダーの顔を覗き込んだ。 モルダーは頷いてみせたが、やはりその表情からは、血の気がない。 「僕の身体はいずれ穴だらけになるよ。ここ1〜2年で何度撃たれた事か。そのうち家が病院になるかもしれない」 「連絡を受けて、心臓が止まるかと思ったわ。でもそれだけの事がいえるなら、大丈夫ね」 ジルは小さく笑うと、モルダーの手をとった。 「心配かけてゴメン」 モルダーもそっと彼女の手を握り返す。 「・・・・いいのよ。あなたが無事で良かった。あんな別れ方のままじゃ・・・辛いもの」 「ぇ・・・・あっ・・・」 ジルの言葉に、モルダーは二人が最後に交わした会話を思い出す。 口論ながらに、公園で別れた事を・・・・・。 「だから、あなたが無事で良かった」 「ジル・・・・その、ゴメン」 ジルは小さく首を振った。 「いいえ、私も言い過ぎたらから・・・・謝りたかったの」 「違う、君は悪くない」 彼女が謝罪の言葉を口にする前に、モルダーがかぶりを振った。 「君が言った事は正しい。今回の事件で・・・やっとそれに気付いたんだ」 「・・・・モルダー?」 「僕は決めたよ、ジル。自分の気持ちからも、心の中の怯えからも恐怖からも逃げないって」 「モルダー・・・・・・」 自分を見つけるモルダーの瞳からは、今まで見た事のない強い決意が生まれていた。 それだけでジルには十分理解出来た。 彼が"覚悟"を決めたのだと・・・・・。 「じゃあ・・・もう、私があなたを心配する必要はないわね?」 ジルは優しく微笑むと、モルダーの頬を両手でそっと包み込んだ。 「私がこの部屋に入って来た時に、あなた驚いた顔をしたでしょ?それは・・・入って来たのが私だったからでしょ」 モルダーは何も答えずに、彼女を見つめかえした。 「あなたは私が入ってくるとは思わなかった。ここに真っ先に入ってくるのは・・・私じゃなく、彼女だと思ってたんじゃない?」 ジルの口から伝えられる言葉は全てがモルダーの心の真実に触れていた。 それゆえに、モルダーは何も答える事ができず、ただ黙っていた。 「捜査官たるもの・・・・そんなんじゃすぐにばれるわよ?」 子供のようにジルは微笑むと、モルダーの身体を抱き締める。 「あなたに会えて良かった」 「僕もだよ、君に会えて良かった」 「私の責で記憶を失って・・・・傷を負わせて、本当にごめんなさい」 「いや・・・その事もあったから、僕は自分の気持ちをもう一度見つめる事ができたんだ」 「だけど・・・・」 「もう、いいから」 モルダーは人さし指をジルの赤い唇に軽くあてると、微笑んだ。 「ありがとう・・・・・」 一筋の涙が彼女の頬を伝い、ジルは身をかがめて短いキスを彼に送った。 唇が離れるの同時にモルダーの肩から両手を外し、ジルは扉へと向う。 「お大事にね」 「ありがとう・・・・」 扉を開いて、出て行こうした瞬間、ジルが思い出したようにモルダーを振り返った。 「モルダー・・・自信を持っていいと思うわ、彼女もあなたの事を想ってる。 私ね彼女にあなたの記憶を思い出せたくなくて、あなたの身体を言い訳して、彼女に頼んだのよ」 「えっ・・・・」 「そうしたら彼女、私に言ったわ。それであなたの身体に何の以上もないなら、苦しまないなら、何も言わないって」 「・・・・・それっ・・・・」 「たとえ自分を思い出してくれなくても、あなたの身体の方が、彼女は大切だったのね」 ジルは微笑むと、それ以上何も言わずに開いた扉の向こう側に消えた。 そしていつまでもモルダーは、閉まった扉を見つめ続けていた。 ここにはいない女性の事を考えながら・・・・・。 「行かないのか?」 事件の処理に回っていたスカリーは、その声で報告書を書く手を止めた。 デスクに伸びる影に顔を上げると、そこには見なれた上司のスキナーが自分を見つめていた。 「副長官」 「こんな所にいないで、病院に戻らなくていいのか?」 「まだ報告書も書き上げていないし、犯人も捕まっていないのに・・・・」 スカリーはなんとか言い訳できるもっともらしい言葉を並べてみたが、どれも気持ちが心の底から入っていない事に気付いていた。 「その犯人の事なんだが・・・モルダーは明日にでも話しを聞けそうか?」 「・・・怪我の具合からも、たぶんもう意識は戻っているはずですが・・・何か?」 スカリーは訝し気な表情でスキナーを見つめた。 「専門科達がもう数時間も議論してるんだが・・・・・」 「何です?」 「あの事件現場の銀行内で、四方をFBIに囲まれたにも関わらず、犯人が逃げた・・・君はどう思う?」 「・・・・考えられない事はありません、過去にもいくつか、そういうケースがありますし」 「それだけだといいんだがな・・・・」 「まさか・・・・モルダーがわざと逃がしたと?」 「それも考えられなくもない」 「まさか!」 スカリーは両手を広げて、考えられないと言った態度を示した。 「第一理由がありません。撃たれて逃がすなんて・・・・」 「私もそう思うが・・・・」 「一緒にいた少女はなんて?」 「何も覚えていないそうだ」 「だったら・・・・・」 「けれど説明出来ない事が多すぎる」 スキナーは言葉は、スカリー自信も感じていた疑問にぶつかった。 答えられないでいる彼女の前でスキナーは一つせき払いをすると、言葉を選んで慎重に続けた。 「・・・モルダーに何かあったのかもしれん」 「えっ・・・・」 「もしかしたら・・・・記憶の混濁を起した可能性は考えられんだろうか」 「・・・・モルダーの記憶が戻ったと・・・?」 「どうだ?」 「そんな・・・まさか・・・」 小さな沈黙が二人の間に流れたが、先に口を開いたのはスキナーの方だった。 「明日の昼頃に捜査官二人が彼の元へ行く。それまでにモルダーと話してみてくれんか?」 「・・・・・今すぐ行きます」 スカリーはブリーフケースを手にとると、スキナーの横をすり抜けてオフィスを後にした。 − 1時間後 − 静まり返った廊下に規則正しい足音が響いていた。 何人かのナースとすれ違いながら、ゆっくりと目的の場所へと歩いていく。 やがてその足音は"フォックス・モルダー"と書かれたネーム・プレートの前で立ち止まる。 微かな窓際から漏れる光に一瞬躊躇してから、彼女はそっと目の前のドアを押した。 一歩を踏むこんでも、相手から何の反応もない。 彼女はベットに横たわる相手に近付くと、近くの椅子に腰を落とした。 「モルダー・・・・・」 スカリーはその名を囁いてみるが、モルダーからは何の反応もない。 むしろ彼の目はしっかりと閉ざされ安らかな寝息だけが聞こえて来た。 柔らかいブラウンの髪をそっとかきあげてやる。 その指先から感じた彼の温かい体温に、彼女の気持ちが熱くなる。 一体何度こんな思いをして来ただろうか? 無茶ばかりするこの人を止める事ができず、何度その命を必死で助けて来たことか。 スカリーはモルダーの大きな手の平を自分の頬にあてた。 「モルダー・・・・・」 もう一度その名を囁く。 たとえ聞こえていなくとも、囁くだけでいい・・・。 そう、その名を口にするだけで・・・・。 「フォックス・・・・」 スカリーは小さく呟くと、自分の目をそっと閉じた。 手の平から伝わるモルダーの暖かさと波打つ彼の鼓動が、彼女をここちよい安心感で包んで行く。 やがて彼女の張り詰めた物はゆっくりと溶け去り、その瞳から涙が頬を伝った。 「ん・・・・」 温かい彼女の涙がモルダーの手の平に落ちた瞬間、その腕がピクリと動いた。 「・・・・モルダー・・・?」 スカリーは驚いたように顔をあげる。 「っ・・・・ん・・・・」 ゆっくりと閉じられていた瞼が開かれる。 スカリーは強くモルダーの手を握りしめた。 「・・・・・スカリー・・・・・?」 「・・・・モルダー!・・・よかった」 「やっぱり・・・君でないと・・・・」 「え・・・・?」 不思議そうな顔をするスカリーに、モルダーは小さく微笑んでみせると首を振った。 「とにかく副長官と他の医者にも連絡を・・・」 「僕の担当医は君だろ?」 立ち上がろうとした彼女を手首を、しっかりとモルダーは掴んだ。 「ずっと君だったろ?他の医者に連絡なんてしなくていいよ」 「・・・・・モルダー?」 「君の診断しか信じない。スカリー、ずっと君だけを信じてきたんだ」 余りに真剣なモルダーの口調にスカリーは言葉を失う。 ただ微かに困惑した表情を彼に向ける事で、彼女は答えを求めた。 モルダーは強く頷いてみせると、大切な事を話すように、ゆっくりと口を開いた。 「・・・そう、ずっと君だけを・・・・"7年間"君だけを信じてきたんだ」 「・・・!!」 「7年間、君の事だけを・・・・」 「・・・・あなた・・・記憶が・・・・?」 信じられないといった表情のスカリーの頬に、モルダーはそっと触れる。 「はじめて出会ったのは今から7年前、ひっそりと存在してる地下のオフィスで」 モルダーは目を閉じると、懐かしい過去を振り返る。 「扉が開いた向こうには赤毛の女性が立っていて・・・それが君だった。 僕らはお互いに自己紹介をしあい・・・それから7年・・・お互いだけを信じてきた」 「モルダー・・・・」 「辛い事も、厳しい事も、君がいたから乗り越えれたんだ」 スカリーの青い瞳から涙が流れた瞬間、モルダーはそっと彼女を抱き寄せた。 その細い両肩に、モルダーは身を預け、彼女が生きているという確かな鼓動を感じる。 「ずっと君に・・・逢いたかった」 「モルダー・・・・」 「記憶がなかった間、心に穴が開いたようで、ずっと探してたんだ・・・・」 傷が痛むのもかまわず、モルダーは抱き締める腕に力を込めた。 「ずっと・・・・君を・・・・」 思い出せない喪失の恐怖を振り払うように、強く。 自分を抱き締めるモルダーの手が震えている事に気付いたスカリーは、安心させてやるように彼を抱き締め返す。 「あなたはもう・・・思い出さないかと・・・・・」 肩ごしの彼女の言葉に、モルダーは目を細めた。 心の中の、崩した想いが蘇る。 本当に・・・・これで良かったのだろうか? 記憶を失った振りを続けたままの方が・・・・。 ・・・・いや・・・その答えを見つけるには話し合わなければいけない。 モルダーは小さく息をつくと、スカリーから体を離した。 でも目を彼女を見つめたまま、視線を外そうとはせずに、両手でスカリーの頬を包み込む。 「・・・聞いてくれ。僕は僕等の関係に、二人の問題に君と話し合わなかった。 許してもらえるとは思ってない。君を傷つけたんだから・・・だけど・・・・・」 モルダーは一瞬スカリーから瞳をそらしてから、また彼女を見つめた。 その瞳の中には、彼がもう諦めてしまった、存在を許してはいけない"決意"が宿っていた。 「だけど・・・もう一度だけ・・・話し合いたい」 「・・・・モルダー・・・・」 「話し合おう」 「・・・・本気で言っているのね?」 彼女の問いかけに、モルダーはハッキリと頷いた。 「僕は本気だ、スカリー。もう逃げない。君からも、自分の気持ちからも・・・・・」 そう、もう逃げない。 傷付く事も、失うかもしれないと言う恐怖からも・・・。 「明日僕には今日の事件の事情聴取があるんだろ?」 「・・・ええ。スキナー副長官が明日、現場指揮官と担当者があなたの所に行くと言ってたわ」 「そうか・・・・」 モルダーはふっとスカリーから視線を外し、窓に目を向けた。 外は真っ暗で何も写ってはいない。 何も掴む事のできない暗闇も、抜け出す事が叶わない闇の中でも・・・・。 モルダーはそっとスカリーの手を握りしめた。 「・・・・明日、全て終わったら・・・・・・」 それ以上モルダーは言葉を続けず、小さな沈黙が病室を包み込んだ。 二人の間に流れた静寂に、お互いの瞳がゆっくりと交差する。 暗闇の中でスカリーの瞳が青さを増し、やがてモルダーの指が彼女の金褐色の髪の触れた。 髪から頬へ、温かい肌に触れる。 青い瞳が閉じたのを合図に、モルダーはそっと引き寄せた・・・・。                        to becontinued・・・。 ====================================== あけましておめでとうございますヾ(@゜▽゜@)ノ 2003年になりましたねぇ。1年って早かった気がします☆ 皆さんはどうでした?私はあっという間です。 だけど今年も精一杯自分らしく生きて行きたいです♪ でわでわ皆様! *:゜・。.*:゜・☆。.*:゜・。.*:゜・☆よいお年を*:゜・。.*:゜・☆。.*:゜・。.*:゜・☆ よければ感想を→ rilyouya.ouri@k6.dion.ne.jp そしてもう少しだけ(すいません) 続きます☆