本作品の著作権は全てCC、1013、FOXに続します。 この小説は私の片寄った趣味により書かれたものなので、気を悪くさせたら申し訳ありません。 なので、一切の責任は負いません(笑) ======================================      『 bond − 愛する人 − 』(14)                             from  涼夜 一番大切な物はすぐ側にある。 それに気付いていて、気付かないふりを続けて来た。 目を瞑っていれば楽だから、何も知らずにすむから・・・・。 "傷付く事もないから" モルダーはそっと目を開くと、穏やかな陽射しが眩しい、空を見つめた。 「もうすぐ・・・一年がたつのか・・・」 モルダーは小さく呟いた。 そう、スカリーが地下のオフィスでたった一枚の写真を見つけてから。 あれから、全てが始まった。 「モルダー?」 扉が開く音と共に、モルダーの耳には聞きなれた声が届く。 「スカリー・・・」 彼女の姿を見ただけで心が落ち着くのを感じ、彼は柔らかく微笑む。 その表情は距離が近付いた事を素直に認める、モルダーの気持ちが入っていた。 「スキナーは?」 「さっき帰ったよ」 「説明はできたの?」 「まぁ・・・無理矢理だけど、なんとか大丈夫だったよ」 「・・・副長官の困惑顔が見えみえるわ」 「君は聞きたくないのか?」 モルダーは首を傾げて見せたが、スカリーは苦い顔で首を振った。 「冗談はやめて、これ以上頭痛の種を増やす気?」 もっともらしいスカリーの意見に、今度はモルダーが苦笑する。 「ああ、それとこれを」 「?」 スカリーから手渡された紙袋に、モルダーは眉をよせる。 「これは?」 「さっき廊下で青年から頼まれたの、あなたに渡して欲しいって」 「青年?」 「凄くあなたの事を心配していたわよ。金髪の青年で・・・知り合いじゃないの?」 「いや、身に覚えがないけど・・・」 モルダーは手渡された紙袋の中身を見て、言葉を止めた。 「何?」 「・・・・身に覚えがあったよ」 モルダーは袋の中に入っていた、青い帽子と小さな花束を取り出した。 スカリーは彼の手から帽子を手にとると、それを見つめて小さなため息をつく。 「人質になった被害者達の事情聴取で聞いた・・・犯人がかぶってた帽子と特徴が似てるわね」 「本当に良く似てる」 顔色一つかえないモルダーにスカリーは呆れたように微笑むと、手に持っていた帽子をモルダー の頭にかぶせた。 「花をいけておいてくれるかい?」 「ええ」 スカリーはデスクの下から小さな花瓶を取り出すと、病室を出て行った。 彼女が扉を閉めたのを見届けると、モルダーは傷口を押さえて窓際へと歩み寄る。 少ししか開かれていないカーテンを全開にすると、モルダーは身を乗り出した。 その瞬間、4階下からこっちを見上げている1人の青年と目が合う。 モルダーは微笑むと頭にかぶっていた帽子を左手で持って、青年に向って軽く振り上げる。 モルダーのその行動に、青年はいくらかほっとしたような表情に変わった。 暫く立ち尽くしたまま青年はモルダーを見つめていたが、モルダーの"大丈夫"という笑顔に 頷いて、ゆっくりと歩き出した。 青年が去った姿を見送ったモルダーの表情は、おだやかな笑みに満ちていた。 「モルダー!!」 名前を呼ばれて彼が振り返ると、そこには花瓶を手に持って戻って来たスカリーの姿があった。 「何やってるの・・・!」 スカリーは花瓶を手に置くと、モルダーへと手を伸ばす。 「まだ歩ける状態じゃないでしょう」 「大丈夫だって」 「いいから、横になって」 有無を言わせないスカリーの行動にモルダーは小さく微笑む。 スカリーが「何なの?」と首を傾げたが、モルダーは何も答えなかった。 その変わり、彼女の手をそっと握りしめる。 感謝の意味を込めて。 スカリーは戸惑ったように微笑むと、ベットの脇に腰を落とした。 モルダーは同じ目線に立つために体を起し、彼女を真っ直ぐに見つめた。 そして壊れ物に触れるかのように、そっとスカリーの白い頬に触れる。 指先から伝わる彼女の温もり。そう、それはモルダーがただ一つ望んだ物・・・。 「いつの間にか・・・君は僕の一番大切な人になってた・・・失う事など考えられない、一番 大切な人に・・・」 でも言葉とは反対に、モルダーは寂しそうに小さく微笑んだ。 「だけど・・・君は僕といると傷付いていく。僕は君を傷つける事しか出来ない」 「モルダー・・・それは・・」 反論しようとしたスカリーの言葉を、モルダーは首を振って止める。 「君はそれを決して僕の責任したりしない。自分が選んだ道だと、全てを受け入れて僕を責める 日など永遠に来ない」 「あなたの責じゃないわ」 モルダーはさっきより強く首を振った。 「いや、僕の責だ。何度思っただろう、君を巻き込まなければ良かったと。 傷つけたいなら僕だけにすればいい。だけどいつも君ばかりが傷を負っていく。 君を守りたい。だけど願いばかりが空しく、実際は僕が君に助けられてばかりだった そして僕は助けられるばかりで君に何一つ、そう奪うだけで何一つしてやれなかった」 「モルダー・・・・」 「そして思ったんだ・・・このままずっと、君を壊し続けて行くのかと・・・・」 モルダーはスカリーの頬に触れる指先で、彼女の輪郭をなぞった。 「抱き締めるたびに傷つけて、触れるたびに壊して行く、そんな日常をこれからも繰り返して 行くのかと・・・」 輪郭を進む手が止まる。 スカリーを見つめるモルダーの瞳は深い悲しみに満ちていた。 「答えなんて分かりきってた。君を傷つける事なんて出来ない。 どれだけ側に居たいと望んでも、そのために君が傷付く姿なんて見たくない。 だけど君が傷付く理由の先端にいるのは僕だ。君が傷付くのは、僕が元凶なんだ」 モルダーは彼女の首にかかる、銀色の十字架を許しを願うように、切望の眼差しで見つめる。 「僕とさえ出会わなければ、君の人生はきっともっと全然違う物だった。 僕は君と出会った事を後悔した事はない。だけど君を巻き込んだ事は後悔している」 「モルダー 私は後悔してないわ。あなたと一緒に事件を追って来た事も、側に居た事も」 真っ直ぐ言葉を伝えるスカリーに微笑むと、モルダーは彼女の手をとった。 「ありがとう、スカリー・・・きっと君なら、そう言ってくれると思った。 だから僕は、それだけでいいと思うようになったんだ。ただ君に出会えた事だけで・・・」 「たとえ側にいられなくても・・・?」 握っていた手にモルダーは力を込める。 「僕が一番辛いのは君と離れることじゃない。君が傷付く事だ。 だけど僕が側にいれば君が傷付く。傷つけたくなんてない。だけど事実は変えられない」 「だから・・・離れようとしたのね・・・」 「君が大切だから、心から想ってるから、この腕から解放したかったんだ。 僕という鎖から、今さらだと思うかもしれないけど、自由になって欲しかった」 「私はあなたを重荷に感じた事なんて一度もないわ」 「分かってる。だけど僕は君の側で壊れるかもしれない日々と可能性に怯えるよりも 友人として、仕事の相棒として、離れた場所で永遠に君を見つめ続ける道を選択したんだ」 「・・・モルダー・・・・・」 「君と触れ合う日が永遠に訪れなくとも、君を永遠に失わないなら・・・それでいいと・・・」 スカリーはモルダーの手から自分の手を外し、彼の頬に触れた。 何も望まない、モルダーの愛情。 時間をかけてその気持ちを理解出来た。 今は自分も・・・彼と同じ気持ちなのだ。 触れ合う事よりも、側にいる事よりも・・・ただ存在だけで心から愛しい・・・。 「だけど・・・・」 モルダーは彼女の手から自分の手を重ねた。 「僕は全てを理由にして・・・逃げてたんだ」 「・・・モルダー・・・!」 その言葉にスカリーの瞳が大きく開く。 「君と話し合った後でこの道を選んだなら、決して苦しくなどなかっただろう。 だけど僕は君と一度も話し合わずにこの関係に、僕の一方的な想いで決着をつけようとした」 モルダーは消え入るような小さな声で呟いた。 ずっと認められずにいた言葉を・・・。 「傷付くのが・・・怖いから・・・」 顔を上げて、スカリーを見つめる。 「君をいつか失ってしまうと思いこんで、君を遠ざけようとした。 そうすれば君が離れて悲しくても、君を失って傷付くわけじゃないと、自分を納得させようと したんだ」 「モルダー・・・あなた・・・」 「君を失ったらという恐怖が僕の中に渦巻いて、君に背を向けさせた。 僕の弱さが、逆にもっと君を傷つけてしまったんだ・・・すまない、スカリー」 潤むスカリーの瞳を、モルダーは真っ直ぐに見つめる。 「謝ってすむ問題じゃないのは分かってる。だけど、後悔はしたくない。 たとえもう僕等の関係が無理でも、君の気持ちを聞かせてもらえないか?・・・君の本音が 聞きたい」 「本音を・・・?」 スカリーは小さく聞き返し、モルダーは強く頷いた。 彼女の心を波のような感情が押し寄せる。 本音は心をさらすということ。 ずっと隠して認めず、直視してこなかった気持ち。 受け入れてもらえないかもという恐怖が身を包んで、ずっと閉ざしていた感情。 壊せなかったのは、自分の方なのかもしれない。 だからずっと、1人答えを出して行くモルダーを止める事が出来なかったのだ。 「・・・・モルダー・・・私は・・・」 スカリーはモルダーから目を外し、視線をそらした。 素直になる事が一番難しい。 7年間、言葉にする日は、永遠に訪れないと思ったのだから。 それでも・・・。 すれ違い話し合わない日々が辛かったのを、彼女は思い出す。 "後悔はしたくない" モルダーのその言葉は、彼女の想いそのものだったのだ・・・。 スカリーは迷いない瞳でモルダーを見つめ返し、優しく微笑んだ。 「私は・・・あなたと一緒にいたいわ・・・ずっとこれからも、この先も、ずっと・・・」 「・・・・スカリー・・・!」 「あなたは?責任とか後悔とかそんな事よりも、あなたの気持ちを聞かせて、モルダー・・・」 不安げに自分を見つめる彼女の瞳の奥に、モルダーはスカリーの言葉の想いを感じとる。 "伝えて欲しい"と理屈じゃなく、気持ちを込めた言葉を、口にして欲しいのだと・・・。 スカリーの頬を両手で包み込むと、モルダーは優しく微笑み、彼女を見つめた。 「僕も同じ気持ちだ、スカリー。君とずっと、いつまでもこの先も・・・一緒にいたい」 ほっとしたようにスカリーの表情は緩み、美しい笑みが広がる。 モルダーも満面の笑みを浮かべ、そっとスカリーを抱き寄せる。 気持ちと、彼女自身の両方を手に入れた瞬間、モルダーは心の底から気持ちが落ち着いて行く のを感じた。 それはずっと否定し続けてきた物であり、モルダーが自分に許しはいけない感情だった。 愛しいと想う、ずっと側にいたいと願う・・・"幸せ"な温かい感情。 けど胸を刺す痛みが彼の中に残って居たのも真実だった。 「スカリー・・・これから・・・色んな事があるのかもしれない」 モルダーは彼女を抱き締める腕を緩めると、スカリーの耳もとで囁いた。 「だけど、色んな事を君と一緒に乗り越えて行きたい。ずっと側で、ずっと一緒に」 「・・・・ええ」 「君を巻き込みたくないっと言った言葉は本心だよ。だけど、真実を追い続ける事 それが・・・僕の道であり、僕の本心なんだ。だから僕は答えを見つけるまで・・・この道を 進み続ける」 「・・・・ええ」 「だけど君も一緒に来て欲しい。君を失えないから・・・」 「ええ、もちろんよ」 モルダーは微笑むと、少しだけ悲しそうにスカリーを見つめた。 「心はずっと君だけだ、スカリー。だから・・・・」 問題にする必要はないのかもしれない。 でも、どこかで線を引かないと二人の関係は崩れるだろう。 そう「真実」を追い求めるその日まで、この言葉を言えない。 「だから・・・今は言えない」 スカリーは何も答えなかったが、小さく頷いて、微笑んだ。 彼女にも分かっているのだ。 言葉にすれば、その想いを伝えきってしまえば、今よりも深い物を求めあうだろう。 そうすれば幸せでも、それは薄い氷の上に貼られた物になってしまう。 焦る必要はない。 時間はある。そう、永遠に。 これからの長い時間を彼女と共に歩むのだ。 彼女が求めたのは「言葉」じゃなく、気持ちだったのだから。 それが伝われば、もうお互いだけを想い続けていける。 それでも・・・・・。 それでも「真実」に辿り着くその日まで言えないなら、たった一度ぐらいは許されるだろう。 一度だけで、今だけ・・・・。 「スカリー・・・・」 「えっ?」 顔上げた彼女の耳元で、モルダーはたった一言だけ、優しく囁いた。 次に口に出す時は「真実」に辿り着いた時、堂々と彼女に伝える言葉を。 全ての気持ちを込めて、たった一言、優しい声で・・・・。 " I love you "と・・・・。                       to be continued・・・。 ====================================== どうもヽ(´▽`)/ 涼夜です   すいません(汗)まだ続くのか?って感じですけど、あと一つ。次でラストです。 皆様本当にありがとうございました☆ ここまで書いているともっと続けたかったけど、私なりに二人の話は完結しました。 書きはじめた私の当初の目的は二人をくっつける気持ちではなかったです(爆) いや、くっついて欲しいとは切望に懇願しています!! だけどこれは悪魔で私が作ったお話であって、私のモルには(実物のドラマ)では語ら れていなかったけどもしかしたら、こんな過去があったのかもしれない!と思って生 まれたのが「fou you」だったのです。そしてそれで終わらそうと思ったら、続きを 書いて下さい!って言葉を多く頂き、はずかしながら筆とらさせて頂きました(///▽///) そして続いたのが「憧憬」だったのです。そしてその後、あんなに無茶をしとるモル なら記憶喪失ぐらいなってるんちゃうかなーって思って続いたのが、今回の「bond」です。 話しは戻って、私はこのお話 ficを書くにあたって、本編からかけ離れた二人を書き たかったのではなく、次の事件が起こる間にあった出来事として書きたかったのです。 もしかしたら、こんな事が新しい事件が始まる前に事件と事件の間にあったのかも!? って気持ちで書いていました。つまり自分の中でリアル化したいために妄想が爆進し てその超物の塊がこのficって事ですね(笑)だから最後の方はシーズン8に繋げる 形でモルが誘拐される回あるじゃないですか?シーズン7の最後。その事件の前って 形でこの話は終わらせるつもりだったのです。だけどどんどん話が繋げるのが難しく なって来たので、ここはもうficと言う力を使おうと・・・(笑) それと、応援して下さった皆様に感謝と私なりのお礼を込めて、モルが本編で言って くれない言葉を言わせました(笑)早く本編でも言ってくれるといいですねー♪ ぁ 次は映画かな? でわ長々と語ってしまいましたが、ラストficでお会いしましょう。 よければ感想を→ rilyouya.ouri@k6.dion.ne.jp