本作品の著作権は全てCC、1013、FOXに続します。 この小説は私の片寄った趣味により書かれたものなので、気を悪くさせたら申し訳ありません。 ======================================                       『fou you』 (2)                                from 涼夜 誰にでも帰りたい場所はある。 優しい思いでに包まれる瞬間、懐かしい人達との再会。 忘れられない過去。 「今年はもう、来ないのかと思った」 甘い香りのする紅茶をカップに注ぎ込みながら、彼女はおだやかな笑みを浮かべる。 「仕事が忙しくて....なかなか連絡がとれなくて、ごめん」 「あ、そんな意味で言ったんじゃないのよ....それに、ちゃんと来てくれたわ」 ロクサ−ヌは自嘲気味に微笑むと、紅茶の入ったカップをモルダーに手渡した。 部屋の中に広がる甘い香りに、モルダーは誘われるままカップに口をつける。 飲み込んだ後に広がるミスト・ローズのほのかな苦味が、いつの間にかこの時だけの恒例になっていた。 「仕事、忙しいのね」 「ああ....いい事なのか、悪い事なのか....」 「疲れてるんじゃない...?少し眠る?」 「大丈夫だよ、来る時に休んで来たから。それに雪が酷くなる前に、会って来たいし.....」 「二人だけで内緒の話し?」 ロクサ−ヌのおどけた口調に、二人の間の空気が一瞬で和らいだ。 「そう、君はいつもしてるだろ?でも、僕には毎年この日しかないからね」 「OK、邪魔しちゃ後で何を言われるか分からないから、引き止めないわ。いってらっしゃい」 「夕飯までに戻るよ」 「ええ」 モルダーはコートを着てマフラーをすると、赤い薔薇の花束と白ワインを手に持った。 「また後で」 体をほんの少しだけ前かがみにし、ロクサ−ヌの頬にそっと優しいキスを送る。 まるでそうするのが当たり前のように、彼女もそのキスを受ける。 「気をつけて」 優しい微笑みに見送られて、モルダーは雪が降り続ける外へ一歩を踏み込んだ。 1年に数回しか見ないその光景は何度見ても慣れる事は出来ず、辺り一面の白銀世界の美しさに、思わずモルダーは言葉を失う。 それでも彼は美しい形を崩さぬよう、気持ちを固めて目的の場所へとゆっくりと足を運ぶ。 何度も通い慣れた道....。 それでもこの道を通るたびに、永遠にもにた感覚に捕われる。 それはきっと凍てつくような冬の寒さと、夢ならいいのにと言う願いが無防備な心を包みこむからだろう。 けれど願いは一瞬で砕け散る。 極寒の冬にもかかわらず、"そこ"だけ青い花が咲き誇っていた。 「やぁ....遅くなったけど、今年も来たよ」 突如、突風のような風がモルダーの体をすり抜ける。 「遅くなったから、怒ってるのかい?」 少し困ったように微笑んで、モルダーはその場に静かにひざまずく。 足下に咲き誇る、青リンドウの花々。 まるで、主人の居ない砦を守っているかのように。 「あいかわらず、花に愛されてるんだね....今年は薔薇にしたよ。君の大好きな情熱の燃えるような赤だ....きれいだろ?この子達には負けるかもしれないけど、側に置いてくれるかい?」 するとモルダーに答えるように、足下の美しい青リンドウ達がさわさわと揺れ動いた。 「ありがとう......」 モルダーは笑顔で微笑むと、そっと薔薇の花束を置いた。 「明日も来るよ、ロクサ−ヌと....。でもその前に、二人だけで飲みたかったんだ。ほら、これ君が好きな白ワイン。銘柄は間違ってないはずだよ。だって店の主人と仕事の相棒に何度も確認したんだから」 そう言ってモルダーは思い出したように吹き出した。 ワインの銘柄が分からなくて何度も店の主人にかけ合い、店にあったワインを全部一通り飲ませてもらったこと、酔っぱらた自分をなかば半分呆れ顔で迎えに来てくれた相棒がそのワインの愛酒家だったこと。 今思い出しても絶対に普通じゃ考えられない自分の行動を、彼自身笑うしかなかった。 「だけど見つけたんだから、誉めてくれるだろう?」 さっきまで恥じを思い出して笑っていた顔も、今ではすっかり得意顔に変化してとびっきりの笑顔に変わる。 「じゃ、飲もうか」 モルダーはワインのコルクをゆっくりと抜くと、目の前に立ちはだかる大きな壁を見つめた。 「誕生日おめでとう、ソニア」 彼女だけの言葉に、心から愛しさを込める。 「あれからもう、12年もたったよ.....」 呟くように囁き、モルダーは白い壁に自分の体を押し付けた。 大理石にほられている文字は、どこも欠けずに今もはっきりと読み取れる。 "享年28歳 ソニア・リン・シェスタ ここに永遠に眠る" モルダーはその文字を、確かめるようにそっとなぞる....。 忘れられない、あの微笑み...あの声、あの温もり。 償っても償い切れない罪、この世で一番の大罪を犯した自分。 「ソニア......!!」 なぜ最後の瞬間まで、彼女の気持ちに答えられなかったのか。 彼女が望んだ、たった一言を言えなかった。 『ごめんなさい.....』 今でもソニアの言葉は胸を離れない。 同じヘイゼルの瞳に、漆黒の闇のように流れる黒髪。 東洋の秘宝のように美しかった女性。 心を永遠に持って逝ってしまった人。 「ソニア.....」 モルダーの頬を静かに、涙が伝う。 二度と戻らぬ彼女を想い、彼は泣いた....。 同時刻 −ワシントンDC− スカリーが二週間前キャビネットの奥で見つけた、まだ若いモルダーと見知らぬ女性が手を握っていた一枚の古ぼけた写真。 「.....これ....」 あれと同じ物を今、彼女は意外な所で目にしているのだった。 モルダーが休暇を取っている間は、スカリーはラボにこもって研究の手伝いをするのが恒例になっていた。 短い時間の中でもやはり地下にいる時とは違い、気持ちが開放的になって学ぶ事も多いからだ。 そんな彼女が研究員の一人に頼まれて、地下のオフィスの隣にある資料室にファイルを取りに来たのはついさっきの事だった。 彼女はそこで、ひとつのファイルを手にする。 本棚の一番はしにひっそりと置かれ、茶色の紙袋に隠すようにしまわれていた青色のファイル。 もう何年も誰も触っていなかったのだろう。汚れ一つないそのファイルが、どれだけ大切に置かれていたのかが分かる。 紙袋からファイルを出したはずみに、何枚かの写真がファイルから落ちて床に散らばった。 しゃがみこんで拾おうとしたスカリーの手が止まる。 そう、床に散らばった数枚の写真すべてに彼女の相棒、フォックス・モルダーが写っていたから。 「.....これ....」 どこかで見た写真のモルダー....。 スカリーの脳裏に、二週間前見つけた一枚の写真が蘇った。 同じ写真?いや、同じではない。 そこにはもう一人、スカリーが見た事もない女性が写っていた。 セピア色の写真には、三人の人間が楽しそうに微笑んでいる。 "ロクサ−ヌ フォックス ソニア" 写真の左下に、ペンで名前が書かれている事にスカリーは気付く。 モルダーを挟んで両側に女性が二人、一人は最近見つけた写真にモルダーと写っていた女性だった。 日付けは1988年1月25日。 「1月25日.....」 確認するように呟いて、スカリーははっとなる。 そしてこのファイルと写真が、毎年1月24日にモルダーが休みを取る事に関係していると直感した。 スカリーは薄暗い部屋の明かりをつけると近くのデスクに座り、やや緊張した面立ちでゆっくりとファイルを開いていた。 『1988年1月25日 クァンティコFBIアカデミー訓練生ソニア・リン・シェスタ捜査官(28)死亡する』  「.....!!」 スカリーの目は大きく開かれ、思わずファイルに収められている一面の記事を力強く掴んだ。 そしてさっき拾ったセピア色の写真と、記事に掲載されている写真を見比べる。 そこにはセピア色の写真と、同一人物の女性が写っていた。 「死亡....」 記事には続きがあり、スカリーは内容を目で読み上げる。 『昨夜1月25日午後五時頃、一年前から発生していた少女連続殺人事件の犯人として捜査線上にいたブライアン・ジャクソン(38)が事情聴取に訪れたFBIアカデミーの捜査官二人と三人の一般人を人質にして、バレリ−シティビルに立てこもった。五時間後、一般人の人質三人は無事解放されたが、中にいたFBIアカデミーの訓練生の一人、ソニア・リン・シェスタ(28)捜査官が人質解放の犯人との銃撃戦で、同僚の捜査官をかばって重症を負う。銃弾は右脇腹の肺を貫通し、シェスタ捜査官は出血多量の状態で近くの病院に搬送された。その後一度は意識を取り戻した物の容態が急変。そして三時間後、意識不明のまま死亡した。 まだFBIアカデミー訓練生だったシェスタ捜査官は地元警察からの特別要請により、同じく派遣されていた同僚のアカデミー訓練生二人と極秘に調査を行っていた。 シェスタ捜査官は将来を有望視されていた人材なだけに、適格な判断と冷静な集中力により誰一人として人質の犠牲を出さずに事件を解決した。 だからこそ、今回のこの結果は非常に残念にならない。 だが職務を果たすべく人質解放の任務を真っ先に遂行し、自分の命を賭けて同僚を守った彼女のその行動に敬意を評したい。 捜査に派遣されていた同僚のFBIアカデミー訓練生二人は記者人の取材に対して一切ノーコメント。 これについてFBI本部、アカデミー、地元警察は捜査が極秘で行われていた事と二人の訓練生がシェスタ捜査官の友人だった事を考慮して、一切の名前を伏せたまま表立った記者会見にもその姿を発表しなかった。』 12年前の少女連続殺人事件、スカリーもこの事件の事は良く知っていた。 当時大々的にニュースなり、この事件で殉職した捜査官の名声はスカリーが後にFBIアカデミーに入った時も、後世で語り継がれていたからだ。 その捜査官とモルダーが知り合いだった事にスカリーは驚きを隠せなかったが、黙って次のページをめくった。 でて来たのは乱雑な文字で殴り書きしたメモに走り書きされた数字などの数枚の紙、その紙の変色ぐあいから見ておそらく当時の物だろう。 「.....!」 その文字を見て、スカリーは一瞬息を飲む。 癖のある数字の書き方に、急いで書くと自然と乱れてしまうスペル....。 その文字や数字は、今は毎日と言っていいほど見ている相棒の筆跡と同じ物だった。 スカリーの中に小さな確信が積もって行く。 誰にも触れられないようにこのファイルをここに大切に閉ったのは、そして記事に書かれていた彼女の同僚の捜査官は.....。 「モルダー.......」 スカリーはほとんど無意識に、そして呟くように静かにその名を口にした。                        to be continued・・・ ====================================== ふぅ....やっと書けた。 ん?読者の声を聞こうコーナー?? 「まだ内容が掴めれないんですけど〜」「ってか何が言いたいわけ?」etr....。 「...」ビリビリ。さ〜てと、次に取りかかるかあ(滝汗) ふっ...これからよ(遠目) よろしければ感想を→ rilyouya.ouri@k6.dion.ne.jp