本作品の著作権は全てCC、1013、FOXに続します。 この小説は私の片寄った趣味により書かれたものなので、気を悪くさせたら申し訳ありません。 ======================================                       『fou you』 (3)                                from 涼夜 目を離したそれは一瞬だった。 誰もが歓喜の声を上げる中、ソニアの手が肩から離れた瞬間、四度の銃声が鳴り響いた。 歓喜は一瞬にして悲鳴に変わる。           「ソニア、!!!」 名前を叫ぶのと同時に全力で走り寄る。 彼女を抱き上げた瞬間、地面を覆う真っ白い雪はみるみる赤く染まっていった。 どこまでも広がり続ける真っ赤な血・・・・真っ赤な・・・・。 「本当にありがとう、モルダ−」 ロクサーヌの手が肩から離れた瞬間、過去の記憶がフラッシュバックになってモルダ−の脳裏に流れ込んだ。 安心して目を離したすぐ後、銃声が聞こえたのを思い出す。 本当に狙われているのは"今" 「ロクサーヌ!!!!」 ほとんど瞬間的に、モルダ−は彼女を突き飛ばした。 "あの時"ソニアが自分にしたように。 モルダ−には全てがスロモーションのように感じられた。 鳴り響く銃声の音、腹部に広がる鈍く強い痛み、血に染まった真っ赤な手・・・・。 ゆっくりと膝をついて仰向けに地面に倒れたモルダ−は、パラパラと空を舞う白い粉雪に気付いた。 "あの時"もこんな風に空から雪が降りそそいでいた。 優しくそっと、自分を包み込んでくれるように落ちて来る白い粉雪。 "あの時"ソニアの瞳には自分が写っていなかった、今ならそれが理解できる。 死を感じた瞬間に知る事のできる自然の尊さ。 彼女が見た最後の外の光景、それはこんなにも美しい物だったのだ・・・・。 「モルダ−!!!!」 遠く離れた場所から、聞き慣れた声が名前を呼んでいる。 「・・・・・スカ・・リ−・・・」 薄れて行く意識の中で、モルダ−は自分の名を呼ぶスカリーの声を聞いていた。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 二週間前−ワシントンDC− 二日間の休暇を終えハリファクスから帰って来たモルダ−を待っていたのは、スキナーからの信じられない事件の報告だった。 「ブライアン・ジャクソンが脱獄した!?」 モルダ−は勢いよく立ち上がり、デスクに身を乗り出す。 「今日の早朝、看守を一人殺して脱獄した。全国に指名手配して今FBIが総力を上げて調査しているが、モルダ−・・・12年前やつを捕まえたのはお前か?」 「・・・・はい、そうです」 一瞬、当時の事がモルダ−の脳裏に蘇った。 苦くて辛い、あの出来事が。 「これは脱獄したブライアン・ジャクソンがお前に残したメモだ。見てみろ」 「奴が・・・?」 スキナーに手渡され、証拠品としてビニール袋にしまわれた紙にモルダ−は目を通す。 『過ちは消えはしない、永遠に。ならば歴史を繰り返そう。 赤と白の交わる最初の生け贄は罪人ではならなくてはいけない。 私をこの監獄に閉じ込め、時間を残酷に狂わせた深き大罪人達。 会い行こう。その血で祝杯を上げ、止まった時を進めるために                        12年前、私を鎖に繋いだ捜査官フォックス・モルダ−へ   』 「これを僕に・・・・?」 いぶかしげにメモを見つめながら、モルダ−はふとある一点に気付いた。 「そうだ。モルダ−、奴はこのメモにお前を殺してみせる書いてある。逆恨みかもしれんが・・・奴と昔何があった?」 「・・・・・」 「モルダ−!お前の命が懸かってるんだぞ!!それに市民が危険に巻き込まれる可能性は大きい!奴と何が・・・・」 スキナーが言い終わる前に、モルダ−はメモをから顔を上げて血相を変えた。 「ロクサーヌが危ない!!」 叫ぶのと同時に、モルダ−はスキナ−のオフィスから飛び出していた。 「頼むから電話に出てくれ・・・・ロクサーヌ・・・・!!」 彼は自分の地下のオフィスに戻るなり、乱暴に電話番号を押すと相手が出るのをただ待っていた。 もう何度目のコールだろうか?しつこく鳴らし続けても彼女の声を聞く事が出来ない。 「ロクサーヌ・・・・・!!」 心臓がわしずかみにされたような感覚で、息が苦しくなる。 "頼む・・・・!!" 願いにもにた祈りが胸によぎった瞬間、電話のコールが急に消えた。 「はい?スフィルです」 優しくて少し高めのキー・トーン、つい二日前まで側で聞いていたその声・・・・・。 「・・・・・・ロクサーヌ?」 「えっ・・・モルダ−?・・・どうしたの??」 電話口で驚いているロクサーヌの声を聞き、モルダ−は全身の力が脱力して安堵感に包まれるのを感じた。 「良かった・・・・怪我は?何か変わった事はないか?大丈夫か?」 「モ、モルダ−・・・ちょっと落ち着いて、どうしたの?一体何があったの?落ち着いて説明して」 咳を切ったように質問攻めにするモルダ−を、ロクサーヌは慣れた口調で諭して彼の次の言葉を待った。 ほんの短い沈黙が二人の間に流れた後、モルダ−は覚悟を決めてゆっくりと話し始めた。 電話ごしのロクサーヌの顔色が変わって行くと分かっていながら・・・・。 「そう・・・・」 「大丈夫か?」 「ええ・・・大丈夫よ・・・・?」 「ロクサーヌ、君は絶対守る」 「モルダ−・・・・・」 「今からそっちに向えをやるから荷物をまとめといてくれ、奴を捕まえるまではこっちで君を保護するから」 ロクサーヌを落ち着かしてからモルダ−は電話を切ると、デスクの一番下の引き出しを開けて中から一つのフォト・スタンドを取り出した。 三人で撮った一番最初の写真。 今でも覚えている。あれはソニアの誕生日、ロクサーヌと二人で彼女のために三人で良く行った美術館を貸し切った。 驚きと嬉しさで涙ぐんでいたソニアに、美術館のオーナーが記念に一枚どうかと申し出てくれ、初めて三人で写真を撮った。 ほんの少し赤い目をして微笑んだソニアに、優しく穏やかな笑みを浮かべたロクサーヌ、そして照れたような顔をしてはにかんだ自分。 懐かしい過去に帰るように、モルダ−はフォト・スタンドの中で微笑む自分達の写真にそっと触れた。 二度と戻らない時間、取り戻せないあの日々・・・。 「モルダ−」 名前を呼ばれ彼が振り向くと、オフイスの入り口に見なれた"相棒"が立っていた。 「・・・・スカリー」 「まだスキナーのオフィスかと・・・」 「えっ?・・・ああっ」 スカリーの言葉に、モルダ−は自分がなんの説明もせずにオフィスを飛び出して来た事を思い出す。 「・・・・事件の事を?」 「ええ、スキナーから連絡があって・・・・あなたが狙われていると聞いたわ」 ドアを閉めて、こっちに歩いて来るスカリーの表情は曇っていた。 「休暇から帰って来てすぐこれだよ」 「大丈夫?」 「ああ、正確には狙われているは僕じゃない」 「どういう事?」 モルダ−の一言に、スカリーの表情はさらに険しくなった。 「詳しい事は後で彼女が来た時に・・・会議の時に全て話すよ。そら、スキナーからだ」 持っていた写真をスカリーに気付かれないようにデスクの引き出しに戻したモルダ−は、オフィスに鳴り響く電話を指差して小さくため息をついた。 「ロクサーヌ!!」 四時間後、空港についたロクサーヌの姿を見るなり走り出したモルダ−は、人目も関係なくその場で彼女を抱き締めた。 「モルダ−・・・・!」 「良かった君が無事で・・・・本当に」 彼女の顔を優しく両手で包み込むと、モルダ−は自分と向かい合わせた。 「どうして・・・こんな事に・・・」 自分を見つめるその薄紫色の瞳には深い悲しみが満ちていた。 「ロクサーヌ・・・・・」 彼女の頬を優しく引き寄せて、モルダ−はそっと額に口付けを交わす。 「君は絶対守る。奴の思いどうりなんてさせない」 「モルダ−・・・・」 「絶対に・・・・・」 まるで恋人同士の再会のようなその光景に、回りの捜査官達はどよめきスキナーもスカリーも驚いて声が出なかった。 「君には辛いと思うけど、捜査に協力して欲しい」 「・・・・ええ、もちろんよ」 「僕らの関係も捜査に関わる事で表立ってしまうかもしれない」 「ソニアの名誉が傷つけられなければそれで十分だわ・・・・・」 「・・・・そうだね、僕もだ」 二人は小さく微笑むと、お互いの瞳にお互いを確認してもう一度強く抱き締めあった。 これから始まる、過去への決別のために・・・・。                                                  to be continued・・・ ================================= な、なんとかパート3まで書き上げれた(涙) ってかいつもまで続いて行くんだろう・・・(滝汗) 個人的には(作者はお前だっつーの)あんまり暗いのは好きじゃないからな〜。 でもスカは好き(おいおい)だから幸せにするの(・・・・) よければ感想を→ rilyouya.ouri@k6.dion.ne.jp