この物語はフィクションであり、「XF」の著作権等を侵害するつもりではない ことをここにおことわりしておきます。 また、「XF」に関するすべての権利は、クリス・カーター氏及び20世紀FOX社に 帰属します。 本文中に性描写を含む表現があります。(というか、それだけしかありません…汗) しかも場面は車の中です。 18才未満の方や、そういう関係の二人を好ましく思わない方にはお勧め致しません。 お読み頂いた後、御不満な点も多くあるかと存じますが、罵声、中傷等のメールは御容赦 下さいますよう心よりお願い申し上げます。 /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ 「サンクチュアリ」                  僕が人気のない路地に車を停めたのは、彼女の意志だったのか、 それとも僕の意志だったのかは、もうどうでもいいことだった。 人々はとっくに眠ってる時間だったし、昼からずっと降り続く雨で 普段なら路地裏で生活している男達も、雨をしのげる寝床を求めて 立ち去った後だった。 僕は、イグニッションキーを回してエンジンを止めた。 少しの間、僕達は前を向いて座ったまま黙っていた。 まるで、雨音を注意深く数えているかのように。 すぐ上の高架鉄橋から、貨物列車が近付いてくる振動を合図に 僕は手をのばして彼女の髪に触れ、そして身を乗り出して彼女の唇にキスをした。 一度顔を離して、彼女の瞳をのぞきこみ、僕が映っていることを確かめてから もう一度キスをする。 ようやくここに辿り着いたという安堵と辿り着いてしまったことへの不安と当惑 をお互いに確認しあうような、そんな長いキスだった。 すぐ上を貨物列車が音を立てて通り過ぎていく。 彼女が僕の肩を少し押し戻して、こう言った。 「あなたを愛してる、モルダー。自分ではもうどうしようもできないくらい。」 彼女がこの言葉を口に出すということは、僕達がこうなること の言い訳をもう探さないという決意だと、僕は思った。 なりゆきでもなく、なぐさめでもなく、愛してるから僕に抱かれるということ。 僕は自分がどう答えるべきか少し考えた。 彼女を愛してる。どうしようもないくらいに。 僕はようやく、欲しかったものを手に入れるようとしている…。 今は考えまい、先のことは…。僕はそう思った。 「僕もだ。ダナ。君を愛してる。」 二人ともそれだけで良かった。とりあえずそれだけで。 それくらい僕達はお互いを欲していた。 「こっちへ来て。ダナ。」 僕は彼女の身体を僕の膝の上に引き上げてもう一度キスをする。 僕の唇は迷わずに首筋へ、そして喉元の窪みへと降りていく。 彼女の甘い吐息を聞きながら、僕は彼女の黒のブラウスを引き出して、 裾から手を差し入れた。 背骨に沿って手を這わせ、ホックに辿り着いた指がそれをはずした。 彼女の二つの膨らみに手をあてると、彼女は少し声を上げた。 その声に促されるように、ブラウスのボタンをもどかしくはずそうとする。 体の動きに制約があることが、余計に僕達がどうしようとしたいかを 確実にさせていく。 表通りから時折漏れる車のライトが、雨の滴に溶け出して光の筋を作る 様子さえ、僕らは気付かないふりをしていた。 彼女が僕のネクタイをほどき、シャツのボタンをはずした。 前をはだけると僕の首筋にキスをしながら、手は僕のベルトへとのびていく。 鎖骨に歯を立てられた軽い痛みが、僕の手を彼女のスカートの中へとのばさせた。 僕達は愛しあっている。車の中で。 もう、逆戻りすることは出来なかった。 僕が彼女の腰を抱きかかえて、僕自身を沈み込ませたとき、彼女は僕の名前を呼んだ。 「フォックス…愛してる。」 「愛してるよ。ダナ」 彼女が僕の膝の上で、無意識に体を反らせようとするのを支えながら、 僕は自分の膝でリズムを刻む。 「愛してる。」 「名前を呼んで。」 「ダナ…愛してる…。」 「もっと…。」 「ダナ…愛してるよ。」 彼女の声は吐息と一緒になって、言葉に変えるのは難しそうだった。 体に受けるリズムに反応して、雨音よりも大きい声をあげまいと耐えている 彼女がどうしようもなく愛おしかった。 「お願い…フォックス…」 そう絞りきるように僕の名前を呼ばれて、僕は登りつめた階段から 彼女に声をかけた。 「ダナ、一緒に…。」 続きは言葉にならなかった。 僕達は小さな悲鳴をあげた。 雨音はやわらかく、でも絶えることなくずっと続いていた…。 僕達は浜辺に打ち上げられた死体のようだった。 シートを倒した僕の上にスカリーがいる。 僕の胸の上に顔を乗せて。 あまりに静かなので眠ってしまったのかと思った。 「ダナ?大丈夫?」 僕は声をかけた。 「ええ。大丈夫。あなたは?」 スカリーが姿勢を変えないまま尋ねた。 「こうしてるのはよくない。また続きを始めてしまいそうだ。」 そう言って僕は笑った。 それを聞いたスカリーもつられて少し笑う。 「帰って、シャワー浴びて、少し寝て…8時には現場にいなくちゃ。」 「あと5時間もあるさ。移動時間もいれるとね。」 スカリーが少し体を起こして僕を見た。 「ねぇ。ひとつ聞いてもいい?」 「すごく、よかった。」 僕がすかさずそう言ったので、彼女は一瞬微笑みそうになるのをこらえて 少し眉をひそめた。 「茶化さないで」 「ほんとのことだよ。」 「じゃなくて、私が聞きたいのは…。」 「何だい。」 「いいわ…やっぱり。」 「言いかけてやめるのはよくないよ。」 「ううん。いいの。」 「後悔してない?って聞こうとしただろ。」 スカリーは答えなかった。 「僕が返す答えはわかってる…だから聞くのをやめた。」 「意地悪ね。」 「そうじゃなくて。余計な心配をさせたくないだけさ。  これでよかったのかどうかってね。」 僕はスカリーの髪を撫でながらそう言った。 彼女も僕もこれ以上このことは話さなかった。 僕らはお互いを手に入れてしまった。今度はこれを抱えつづけることの 難しさを味わうのだ。僕達はそのことをよく承知していた。 だから、こんなに時間がかかったのだ。ここに辿り着くまでに。 僕らはどちらからともなく、もう1度キスをした。 また、ブラウスの中にもぐろうとする僕の手を彼女の声がさえぎった。 「帰らなくちゃ。モルダー。」 僕は苦笑いして、シートを起こした。 彼女の家の前に着いた時刻では、僕達の今日のスケジュールから睡眠時間 らしきものを割くのは難しそうだった。 夜明け前の一番静かな時間だ。細い雨がやわらかく降る音以外は。 僕らと雨以外の全てのものが、深い眠りについているようだった。 「ありがと。」 彼女は短くそう言うと、傘をささずに車を降りた。運転席側にまわって ウィンドウを下げた僕を見つめる。 「じゃあ。」 伝えたいことや、伝えるべきことが沢山あるような気がしたが、 言葉になったのはこれだけだった。 窓から手を出して彼女の左手を取り、手の甲にキスをする。 彼女の手が驚くほど冷たかったのは、雨のせいだけではなさそうだった。 「じゃあね。」 そう言って、少し首をかしげて微笑んだ彼女の姿に、僕は耐えきれずに 車を降りた。 そのまま彼女を抱きしめる。 「今更遅いって言われるかもしれないんだけど…。」 と僕はそこで少し言いよどんだ。 「うちへ来ないか。スカリー。」 雨は相変わらず、僕らを包み込んでいる。 「言わないわ。そんなこと。」 僕の腕の中で彼女がくすっと笑った。 「今更って言われるかもしれないけど。」 「今更って」の所を僕の口調を真似て彼女は言う。 「うちでコーヒーでも飲んでいく?」 僕は彼女の肩に手をおいて、少し姿勢を低くした。  見つめあって少し笑う。 返事をするかわりに、僕は車のエンジンを止めてキーを抜いた。 あと、数時間…。 眠れなくてもよかった。彼女を見つめていられる時間さえあれば。 僕は、雨の降りやむのはいつだろうとぼんやりと考えながら、 前を進む彼女の足音を追った。 End /-/-/-/-/-/-/-/-/-//-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ このような拙作におつき合い頂きましてありがとうございました。 「そうなってしまうまで」が難しくて描けないので、不精をしていきなり 車の中などという設定にしたら、今度は「そうなってしまってから」を どうして描けばいいのか、かなり苦しむハメになってしまいました。 なんだか、中途半端なお話になってしまってごめんなさい。 これをアトのマツリというのでしょうね。 まだまだ修行が足りませぬ。(汗) 御意見、御感想などを書いてやってもいいぞと思って下さった方は下記アドレスまで お送り頂ければ幸いです。 亜里 knd-mh@pop07.odn.ne.jp