********************************************  この作品はMulderとScullyのLoveStoryです。  作者の趣味により甘々LoveStoryに仕上がっております。その為、実際の二人とはかけ離れて  いる部分も多々ございますので、嫌だとお思いの方はこのまま読まずに閉じて下さい。  また、今回の作品は『メメントモリ』後を想定しておりますが、時期などは特に無視してお  りますのでご了承下さい。<どうしても秋にしたかったもので・・・(苦笑)>  あくまでもこの作品は、作者の趣味です。よって苦情Mailなどに関しては一切無視させて頂  きます。  また、読んで頂いた方で感想を送ってやろう!という方は最後に記述してますMailアドにお  願い致します。では、お楽しみ下さい! ******************************************** =Sea green= Written By AKUA Data:09/11/98 Spiler:MEMENTO MORI Rating:PG-13 =========================================== Scully's Apartment 11:00 PM 9/22 Scullyは、いつもより少し早く眠りについていた。 しかし、そんな睡眠を邪魔するかの様に、静かな部屋の中けたたましく電話のベルが 鳴った。 "トゥルルー・トゥルルー・トゥルルー" Scullyはなかなか起きることが出来ない。電話のベルは諦めることもなく執拗に鳴り 響いている。 「うっうぅーん・・・」 "ガタン" 「Hello・・・Scully・・・」 "トゥルルー・トゥルルー・トゥルルー" 電話のベルは、まだ鳴り響いている。 Scullyは漸く、自分が枕元の時計を耳に当てていることに気が付いた。 「ふぁ〜」(こんな時間に・・・)「Hi、Scully・・・Mulderでしょ?」 「OH!愛だな!Scully」 (何言ってんのよ全く・・・こんな時間に・・・はぁあ) 思った通りMulderからの電話だった。 「で、どんな事件なの?」 「寝てたかい?Scully。」 「ええ、ぐっすりと気持ちよくね・・・」 「そうか。しかし、すぐにボクだと分かるあたり・・・やっぱり愛だろ?」 Mulderは楽しそうに話している。 「(何言ってんのよ、ったく!)だから、どんな事件なの!」Scullyの口調が少し荒くなる。 「今から1時間後に迎えに行く。2,3日は帰れないから準備しておいてくれ。」 「ええ、2,3日?!準備って・・・私も一緒に行くの?」 「もちろん!」Mulderは嬉しそうに応えた。 「急に言わないでよ!私にだって・・・」 「私にだって・・・何?まさかまたデートか?!」 「そっそうよ!!」Scullyは強がって言った。 「・・・でも・・・僕らはいつも一緒だろ、Scully?」Mulderは可愛く尋ねた。 「わっ分かったわよ・・・」 (だから、どんな事件だって聞いてるのに!!)Scullyはイラだっていた。 「あ、Scully。スーツはいらないよ!今回は山の中だから普段着でいい!」 「普段着〜?!」 「そっ、普段着。君のお気に入りを用意すればいい!じゃあ、後でな!」 「ちょっ、ちょっと、Mulder!!」 Mulderは自分の言いたいことだけ言うと、すぐに電話を切ってしまった。 (ちょっと・・・ホントに自分勝手なんだから・・・) Scullyは呆れて電話を置くことさえ忘れていた。 (いつもいつも、どうしてこんなに身勝手なのかしら・・・) Scullyは、少し不機嫌になっていた。 しかし、彼の身勝手は今に始まった事ではないと諦め、荷物の整理に取りかかった。 (普段着って、何を持って行こうかしら???お気に入りって言われても・・・) Scullyは暫く考えた後、突然大声を出した。 「そうだ!!あの服を持って行こう!」 自分が楽しそうに荷物の整理をしている事に気づき、バカバカしくなってきた。 (何やってんのよ、私・・・ヤツの身勝手に付き合わされているのに・・・) (それにただの出張じゃないの・・・何考えてるの・・・) 色々考えながらも、とにかく、荷物の整理を終了させた。 =========================================== 0:15 AM 9/23 "トントントン" Scullyの部屋の扉が叩かれた。 「ボクだ!」 Scullyは扉を開けた。 「(やっと来たわぁ、ったく!)遅刻よMulder。」 「うっ・・・。準備は出来てる?」 「ええ、ところで何処に行くの?」 「ん?後で話す。荷物をお持ちしましょう!」 「あら、どうも。」 Scullyは、Mulderのペースに填りニコッと微笑んで荷物を預けてしまった。 (しまった!いっつもコレにダマされるのよね〜) 扉の鍵を閉めながら考えていた。 =========================================== Mulder's Car 0:45 AM 「Mulder?さっきから何も言わないけど、一体どんな事件なの?」 「ん?」 Mulderは運転をしながら、ヒマワリの種を食べ続けている。 「捜査の資料もないの?」 「え、あぁ・・・」どうも歯切れが悪い。 「ねぇ?一体どういうつもりなの?突然電話してきて、しかも3日間の出張よ!  Skinnerには許可を得てるの?」 「ん?あぁ・・・3日間では済まないかもな。」Mulderがそう言うと、 「何ですって!!3日間じゃ済まっ!・・・あなたはいつも身勝手すぎるわ!!」 Scullyのイライラは頂点に達しついに怒鳴ってしまった。 「デート出来ないから怒ってるの?」Mulderは意地悪くニヤリと笑って尋ねた。 ScullyはMulderをキッと睨み付けた。 「悪かったよ・・・まだ、3時間ほど掛かるから眠っていいよ。」 Mulderは落ち込んだ風だったが、優しく呟いた。 Scullyはそんな彼を見て少しだけ反省したが、怒鳴ってしまった手前退くに退けない。 (だって、Mulderが悪いのよ・・・) Scullyは何とも言えない苦い気持ちになっていた。 その後の2人の間には、会話は全くなかった。 =========================================== Mountain road 3:45 AM Mulderは山沿いの道に車を止めた。 眼下には、街の灯りがまるで星屑を鏤めたかの様に見える。今夜は空気が澄んでいて、 さらにその様子を美しく見せている。 Mulderの本当の目的はこの景色と森の中にあった。 前回の休暇で、Mulderは「自分探し」の旅に出た。 彼が望んだ場所を訪れてはみたが、なんとなくスッキリせず、考える事は彼女の事以外な かった。 そんなとき、偶然この景色を見つけ、必ずいつか彼女と一緒に訪れようと心に誓っていた。 しかし、彼女の病気の発覚、そして他の色々な問題が重なり、なかなか機会が見つからず、 今まで時間が掛かってしまった。 それに、何と言っても彼自身が素直に自分の気持ちを伝えることが出来なかった。今回に しても、彼女にウソをついて誘うことしか出来ない。彼女に「NO」と言われることが何よ りも怖いのだ。だからこそ彼女に接するときは、今日の様に強引になってみたり、困らせ る様な事をしてしまう。 36歳の男性にしては、あまりにも子供じみている。けれど、彼女にだけは、どうしても他 の女性のときの様にスマートに接する事が出来ないのである。 隣の助手席で眠るScullyを起こそうかとも思ったが、気持ちよさそうな彼女を見て、先を 急ぐことにした。 =========================================== Cottage 4:00 AM 山沿いの道を10分程走ると、今夜の目的の場所に到着した。ログハウス風の建物がいくつ か離れて建っている。Mulderはその一角に静かに車を止めた。 「・・・Scully、着いたぞ。」Mulderはゆっくりと彼女を起こした。 「うっう〜ん・・・着いたの?」 「ああ。」Mulderは車の後ろに回り荷物を降ろしている。 「ふぁ〜むるだぁ・・・一体どういうことなの?」 「ん?とにかく中へ入ろう。」 「・・・・」ScullyはMulderに続いて中に入った。 1階には、大きな暖炉が1つあり広いキッチンとバスルーム、2階には屋根裏部屋風の 部屋が1つ、その部屋の手前にはベッドが2つ並んでいた。 「Scully、まだ眠いだろ?」 「ええ、でもここに来た理由を聞きたいわ。」 「理由?ボクの気まぐれだ!」 「きっ、気まぐれって、それに付き合わされるこっちはどうなるの!」 「シーッ、Scully。周りに迷惑だろ・・・」 「迷惑なのはどっちよ!それに、Summer vacationは終わったばかりで、  人がいる訳ないわよ!!」 確かに9月も後半に入り、辺りのロッジでは夏の賑わいは影をひそめている。 「わっ、分かったから・・・とにかく眠ろう。ひたすら車を走らせたから疲れた。」 「・・・・」Scullyは何を言ってもダメだと言うように、深いため息をついた。 (眠ろうって、部屋は1つ・・・何処にどうやって・・・)Scullyは少しドキッとした。 「ボクはここのカウチで眠る。君は上の部屋を使えばいい。」 「・・・・・・」 「ほら、部屋のキーだ。中から鍵を掛ければ・・・・・・ボクは絶対に入れない。」 Mulderはニヤリと微笑んで、Scullyの手の中にギュッとキーを握らせた。 Scullyは自分の気持ちを見透かした様な彼の行動に、何も言えなくなりそのまま部屋 に向かった。 「Scully!今日から3日間休暇を取っておいたからなぁ〜!」 Mulderはやっと決意を固め彼女に叫んだ。 "バタンッ!" (勝手な事しないでよ!私の・・・)Scullyは何も言わず勢い良く扉を閉めた。 =========================================== 8:00 AM Scullyはそろそろとベッドから抜け出し、ガウンを羽織った。 (うぅ寒い・・・) 扉をそっと開けると、美味しそうな香りが漂ってくる。 階段を降りかけるとMulderが声を掛けた。 「おはよう!」彼は朝食の準備を進めている。 しかし、Scullyは自分の姿に気づき、何も言わずに部屋に戻った。 「Scully・・・?」 Mulderはそんな様子を見て、やれやれという風に苦笑いしてみせた。 (まだ、怒ってるのか・・・) 「Scully、朝食の用意が出来たぞ〜!」 Mulderが叫ぶと、扉の中から着替えを済ませたScullyが出てきた。 「おはよう。」Scullyはばつが悪そうに挨拶した。 「顔を洗っといで。」Mulderは優しく彼女を促した。 「ええ。」 Scullyがダイニングへ戻ってくると、テーブルには、パンとサラダにスクランブルエッグ、 そしてオレンジジュースという、典型的な朝食パターンが用意されていた。 Mulderがコーヒーを入れながら言った。 「さっ、食べよ!Scully。」 「ええ・・・いただきます。」 MulderはScullyが食べる様子を嬉しそうに眺めている。 Scullyはあまりにジッと見つめられるので、段々恥ずかしくなってきた。 「Mulder・・・何?」 「いや、別に。おいしい?」 「ええ。おいしいけど・・・そんなにマジマジ見ないでくれる。」 「ボクに見られるのは恥ずかしい?」 「あ、いえ、そういう・・・・・・あなたも食べれば。」 「え、あ、そうだな。ところでその、まだ怒っているかい?」 「・・・」Scullyは何も応えなかった。 「悪かったよ・・・とにかく、ここでは何もせずにゆっくりして欲しいんだ。」 「何もせず?」 「そう、何もせずに君はゆっくりしていればいい!」 「ありがとう・・・」 Scullyが照れくさそうにお礼を言うと、2人は朝食を食べ続けた。 =========================================== 6:00 PM 今日1日Scullyは、本当に何もせずに過ごした。Mulderが、わざわざ彼女の好きな本を 用意してくれていたので1日中読書に耽っていた。 その間Mulderは、彼女と同じ様に本を読んだり、彼女の為に手の込んだ夕食を準備した りしていた。 今まで、お互いに仕事に追われ、ゆっくり自分の時間を持つことが出来なかった。 Mulderにしてみれば、それが自分自身の求めた事である以上、特に問題にはしていなか った。 しかし、彼女にとっては・・・彼女の身体の事、そして人生。 自分と出逢わなければ、今頃別の生き方を歩み、平凡で穏やかな日々を他の誰かと過ご していたかも知れない。自分と居ない方がいいのでは?そう考えると、いつも、堪らな く弱気になって正直な気持ちを伝える事が出来なくなる。 「ねえ、Mulder?どうしたの?」 Scullyは、彼の隣にちょこんと座って聞いた。 「え、いや何でもないよ。」 「そぉ?でも・・・何だか・・・お腹が空いたみたいな顔してる。」 「へ?お腹・・・あっははははー」 MulderはScullyのズレた観察力に大笑いしてしまった。 いつもは的確に答えを出す彼女も、普段はこんなにズレているのかと思うと、何だか 妙な安心感と愛しさを覚えてしまった。 考えてみれば、仕事や出張では四六時中一緒にいても、それ以外でこんなに長く一緒 にいるのは初めてだ。 「何で笑うの〜?だってホントに・・・」 Scullyは訳が分からないという風に少し頬を膨らませた。 「いや、悪い悪い。あっははははー」 「ねえ、私お腹空いちゃった・・・」 「ああ、そうだな!じゃあ、夕食にするか。」 「うん。」Scullyは元気良く返事をしてみせた。 「じゃあ、少し待ってろよ。」 「私も何か手伝う。」 「ダメダメ、ここではボクがやるんだから。」 「そぉ?」Scullyはクスッと笑って言った。 =========================================== 7:00 PM 今朝の朝食時と違い、2人の間には色々な会話が続いた。 出会ってから今までの思い出話や自分達の学生時代の話しなど、自然と口数が多く なった。 それは、もしかすると少しだけ飲んだアルコールのせいかも知れない。 「はぁ〜ごちそうさま。」Scullyが満足そうに言った。 「Scully、デザートはどう?」 「ふぅ・・・今はいいわ〜。でも、あなたにこんな才能があったなんて。」 「まあな、普段は全くだけど。」 「そうよ、自分で作ればいいのに。」 「自分で自分の為にかい?やめてくれよぉ〜。自分の為になんて絶対にイヤだね!」 「あら?じゃあ今日は私の為?」 「そうだよ!」 Mulderは笑顔でScullyを見つめている。 その瞳はいつにも増して優しく、あまりの恥ずかしさに彼女は目を伏せてしまった。 「あのねMulder・・・これは私に対する、その・・・」  *愛情*なのかと聞きたかった。しかし・・・。 「その何?」Mulderは楽しそうに笑っている。 「だから、その・・・同情?それとも謝罪?」 その言葉を聞いて、Mulderの顔色が一転した。 Scully自身も酷いことを言ってしまったと思ったが、自分の口からこぼれ出す言葉を 止める事が出来なかった。 「そう言う気持ちなら・・・止めてほしいの。」 「どう・・・」Mulderはこれ以上言葉が出ない。 「あの、気を悪くしないで。ただ、今までの事は私自身の問題で誰のせいでも・・・」 「分かった。確かに申し訳ないと思っているのは事実だ!だけど・・・」 Mulderの声が大きさを増した。その言葉からは彼の苛立ちが痛いほど伝わってくる。 「悪い。ちょっと出掛ける。」 「Mulder・・・」Scullyは泣きそうになりながら言った。 「これ以上一緒にいたら・・・」Mulderはそれ以上何も言わず、扉の外に出て行った。 「Mul・・・」 Scullyが言いかけると、扉が"バタン!"と激しく閉まった。 そして、車のエンジン音が聞こえたかと思うと、激しく砂利を擦る音がした。 その音はScullyの中の不安と罪悪感を掻き立てた。 =========================================== 11:00 PM (どうして私は、いつも素直になれないの?私は彼を必要としているのに・・・) (でも、私が彼を求めれば今の関係は壊れてしまう。それが怖い・・・何よりも怖い ・・・) Scullyは顔を上げ時計を見た。彼が出て行ってから既に4時間近くを過ぎている。 Mulderはまだ戻って来ない。 いつものScullyならば何らかの行動に出ているだろう。しかし、今は、何をどうす れば良いのか分からず、ただソファーに座ってジッと動かない。それはまるで母親 とはぐれてしまった子供の様に見える。 「Mulder・・・」 Scullyが囁いても返事が返ってくることはない。 それから1時間程ジッとしていたが、突然扉の外に飛び出した。そして、暗い山沿い の道を1人で歩き出した。 =========================================== Mountain road 11:20 PM Mulderは山道に車を止めていた。ロッジを飛び出してから既に4時間以上を過ぎている。 「何故、俺は・・・」そう言うとハンドルに顔を伏せた。 Mulderには彼女の気持ちが痛い程分かっていた。彼女の口に出せない気持ちも全て。 しかし、どうしても冷静な対応が出来なかった。 今、彼女が後悔して落ち込んでいる事も分かっている。 Mulderは己のバカさ加減にほとほと呆れていた。彼女の事を分かっていながらも、ここ でこうしている自分は何なのか・・・とにかく今は、それが腹立たしくて仕方なかった。 =========================================== 0:30 AM 9/24  Scullyはトボトボと1人で山道を歩いている。 さすがに山の中では、深夜ともなるとかなり肌寒い。舗装された道とは言え、街灯も なく何が出てくるか分からない。それでも、Scullyはひたすら道を歩いている。 今の彼女の耳には木々を揺らす激しい風の音も届いていない。 暫く歩くと、1台の車が止まっているのが見え、中から誰かが降りてきた。 「Scully!!」 Mulderの声が聞こえた。 「Mul・・・」Scullyはそれ以上声が出せなかった。 「何やってんだ!!」 駆け寄るとScullyの両肩をつかんだ。彼女の身体は冷たくなっている。 「バカ野郎!!女が1人で・・・それにこんなに。」 そう言うと、MulderはScullyをギュッと抱きしめた。その瞬間、Scullyの瞳から涙が ポロポロとこぼれ落ち、Mulderの胸の辺りを涙で濡らしていった。 「ごめん・・・なさい・・・」Scullyは涙声で囁いた。 「もう、何も言わなくてもいい。分かってる。」 「でも、私・・・」 Scullyがそう言いかけると、Mulderが唇で遮った。 その唇はとても暖かく、今までの不安を全て拭い去っていく。 そして、ゆっくりと唇を離すと、 「黙って・・・ボクの方が大人げなかった。君と一緒にいるとどうしても・・・」 「どうしても、何?」 「・・・あ、Scully、この景色を君に見せたかった。」 Mulderはわざと答えをはぐらかした。 「えっ?」 Scullyの目の前に広がるのは、星屑の様な街の灯りだ。 そのキラキラと輝く光の中で、様々な事件が起こっているなどとは到底思えない。 それ程に美しい光を放っている。その光達は、Scullyの心を癒していった。 今までの事を忘れてしまう程に美しい景色。 「キレイ・・・」 「だろ?君と一緒に見たかった。」 Mulderは後ろから抱きしめながらそう言った。 「私と?」ScullyはMulderを見上げた。 「そう、君と。」MulderはそっとScullyに頬を寄せた。 「ありがとう・・・」 (目に見えない物を恐れていても仕方がない・・・ここから踏み出さないと、  何も変わらないのよね・・・) Scullyはそう思っていた。 =========================================== Cottage 1:00 AM 「Scully。身体が冷えただろ?シャワーでも入れば。」 「ええ、じゃあお先に。」 Scullyはバスルームへ急いだ。 Mulderはその間、ソファーに座り1人ウイスキーを飲んでいる。 「あ、Mulder1人でズルイ。」 Scullyが頭を拭きながらやって来た。 今はとにかく、何も無かった様に振る舞っていたかった。 「ん?でも、飲んでいいのか?」 「少しくらいなら大丈夫よ。」 「じゃあ、少しだけだぞ。」 「えへへ。」 2人は暫くお酒を飲みながら、彼が持参した昔の映画のビデオを見ていた。 そして、その映画について、ああでもない、こうでもないと語り合った。 2人ともさっきの事を口に出すことを敢えて止めていた。 Scullyは眠そうに目を擦り出している。 「Scully?眠い?」 「ええ、少し。」 「じゃあ、ゆっくりおやすみ。」 そう言って、Mulderは部屋のキーを渡した。 「・・・ねえ、Mulder。一緒に眠ってくれないの?」Scullyはモジモジしながら尋ねた。 「えっ!?」Mulderはあまりの事に驚きの声を挙げたが、その後は冷静に言葉を続けた。 「今日は止めておくよ。何するか分かんないからな。」笑いながら言っている。 「え、そうなの?残念。私は良かったのに。」Scullyはクスッと笑って両肩を上げた。 「ホントに?・・・でも、明日にしておくよ。」 「じゃあ、明日を楽しみにしているわ!」 そう言うとScullyは、恥ずかしさのあまり階段を駆け上がり部屋へと向かった。 Mulderはその様子を笑いながら見送り、グラスのウイスキーを飲み干すとバスルームへと 急いだ。シャワーからあがると、もう一杯だけ口にして横になった。 「おやすみScully。」 5分程して、Mulderがスクッと起き出した。 そして、Scullyが眠る部屋の前まで来ると、ゆっくり扉を叩いた。 "トントントン" 「Scully・・・寝てる?」 「うん?いいえ、どうしたの?」 「その、あの・・・入っていい?」 「(ぷっ)今日はダメ!!」Scullyは少しだけイジワルをして言った。 「あ、やっぱり・・・チェッ、誘われたときに行っておくんだった。」 Mulderはガクンと首を垂らした。 Scullyは扉の外のMulderを想像すると、笑いが止まらなくなった。 「おやすみMulder。」 そう言うと知らぬ間に眠りに入っていた。 =========================================== 8:45 AM キッチンからコトコトと、朝食を作る音が聞こえる。 Mulderは暖かい気分になりながら目覚めた。 「ふぁ〜おはようScully・・・ボクがやるのに・・・」 目を擦りながらキッチンのScullyに近づいてきた。 「おはようMulder」 彼女は目を合わさずひたすら料理を作っている。昨夜の事がかなり恥ずかしいらしい。 「Scully、挨拶は目を見て!」父親が子供に言い聞かせるように言った。 「だって・・・」どう見ても照れているのが分かる。 「恥ずかしいのか?」Mulderがそう言うと、彼女はコクンと頷いた。 「おいおい、あれで恥ずかしがってたら、これから先、ボクは何も出来ないぞ!」 「何よ!もう!」 ScullyがやっとMulderの方にむき直すと、彼はニヤリと笑って言った。 「昨夜のお返し!!」 「もう・・・ほら!早く顔洗ってきなさいよ!」 Scullyがそう言うと、彼はバスルームへ急いだ。 =========================================== 9:00 AM 2人は朝食を取りながら、今日1日の予定を話し合った。 「ねえ、Mulder。ここからマーケットまでどのくらいかかる?」 「うん?そうだなぁ・・・街までだと・・・車で2時間はかかるぞ?」 「2時間?じゃあ、早く朝食を終わらせて、お掃除とお洗濯を済ませたらお買い物に  行きましょ!昼食はマーケットの近くでね!」 いつもと違い、仕事を離れて、まるで自分たちが恋人同士にでもなった様な気分にな っていた。そう考えるとScullyはウキウキしてきた。 「おい、ここでは・・・」Mulderが言いかけるとすかさず、 「ダメ!今日は1日私のしたいようにするの!!」 「・・・はいはい、女王様」 「分かればいいのよ、分かれば!それから・・・帰ってきたら・・・2人で散歩したいな」 「はいはい、何なりと」Mulderは恥ずかしそうに言う彼女が可愛くて仕方なかった。 「はい、は1回でいいの!」 食事が終わるとMulderは食器の後片づけを、Scullyは洗濯に取り掛かった。 「ふぅーMulder、そっちは終わった?」 「ああ、終わりましたよ」 「じゃあ、次はお風呂の掃除ね!」 「はいはい」Mulderはやれやれと言った顔で返事をした。 「はい、は1回!」 その後、2人で掃除を済ませ買い物に出掛けた。 =========================================== Shopping center 12:15 PM Mulderが言ったとおり、2時間程車で走るとコテージ周辺とは違い少し華やいだ雰囲気 になった。マーケットの近くには、たくさんのお店が建ち並んでいる。 やはり、女性に取ってはショッピングは楽しいらしく、Scullyは目をキラキラさせている。 車を止めマーケットに入ると、Mulderはカートを押しながらScullyの後を付いて回った。 「Scully?そんなに買うのか?」 「うん!ダメ?」 「いや、別にいいけど・・・これ・・・2人で食べきれる?」 「うぅ〜ん・・・やっぱり返す」Scullyはカートの中から要らないものを棚に戻した。 カートを押して冷凍食品の前まで来ると、Scullyは声を掛けられた。 「ほら!そこの奥さん!試食してみて下さい!」 ScullyとMulderは目を見つめ合い、クスッと笑い合っている。 「あんただよ!そこの綺麗な奥さん!」更に大きな声で言われた。 「奥さんだって・・・」ScullyがMulderを見上げると、 「ほら!奥さん行って!」Mulderが笑いながら肩先で彼女を押した。 「いやぁ〜しかし、ホントに綺麗な奥さんだ。旦那さんも幸せですね〜!」 「ああ、それがボクの人生の中で唯一の自慢だ!」 Mulderが恥ずかし気もなく言ってのけたので、店員は当てられたと言う風に目をパチクリ している。Scullyは彼の横でキョトンとしながらも頬を真っ赤に染めていた。 =========================================== Cottage 4:00 PM 2人は買い物から戻ると、すぐに散歩に出掛けた。 Scullyはお気に入りのワンピースとカーディガンに着替えている。 山の中には穏やかな空気が流れ、木々の間から優しい光が射し込んでいる。 それはまるで、緑色の海底を歩いているかの様に思える。 川縁まで歩くと、そこには澄み切った冷たい水が流れ、魚の泳いでいるのが分かる。 少しだけ強い風が吹きはじめた。 MulderはScullyの少し前を歩き、川縁にあるものを手にとっては無造作に投げつけている。 Scullyは彼の様子を見ながら、風になびく髪とスカートを押さえながら歩く。 Mulderはゆっくり歩く彼女を気にしながら、時折後ろを振り返っては立ち止まり、彼女の 近づくのを待った。そして、彼女が近づくと、そっと手を取り並んで歩いた。 暫くして、2人はゆっくりと腰を降ろした。 「Mulder、本当にありがとう」 「ああ・・・」 「私昨夜は・・・」Scullyが言いかけると、 「もう、何も言わなくていい」 「でもね・・・」 「君と・・・この先もずっと一緒にいたい」Mulderは照れながら囁いた。 「Mulder・・・」Scullyは胸の辺りがキュンとなるのを感じた。 「愛してるんだ、Dana・・・でも、どうしても素直になれなかった」 「それは私の気持ちよ。Mulder」 「うん。どうしても弱気になる。素直になれずに君を傷つけ、悲しませてしまう。  君の事になると・・・自分を見失っちまう。この歳になっても・・・ガキだな全く!」 「・・・」 「もう、大切な人を失いたくはない。」 そう言ったMulderの瞳は少し潤んでいる様に見えた。 Scullyはその姿を見て、苦しいほどに愛しさがこみ上げてきた。 (私を失ったらこの人は・・・) 「・・・愛してる・・・とても大事・・・」 そう言うとScullyは、溢れ出る涙を拭いもせず彼をギュッと抱きしめた。 近い内に訪れるであろう自分の最期・・・しかし今は、この人のために1日でも長く、 そう心に誓った。 「私は負けないわ。いつか必ず」 「君は強いな、Scully」 「ええ、あなたと一緒にいると頑張れる。あなたが私を強くしてくれるの。  だから、泣き言言ったら・・・承知しないから!」 Scullyは泣き笑いで応えた。 Mulderは(この女には絶対に敵わない)そう思った。自分の愛する人は、こんなにも強く 逞しいのだと改めて気づかされた。 =========================================== 11:00 PM ここで過ごす最後の夜がやってきた。 「ねえ、Mulder。明日帰るの?」 「ああ、帰らないとSkinnerにどやされるぞ!」 「いつもじゃない」Scullyは小声で言った。 「何?」Mulderは聞こえないフリをした。 「・・・じゃあ、今夜がここで過ごす最後の夜なるの・・・」 Scullyは何だか考え込んでいる。 「どうした?」 「・・・私の事を愛して・・・」 「ああ、いつも愛してる・・・」Mulderが言いかけると、 「そうじゃなくてね・・・昨夜の・・・」 彼女が恥ずかしそうに言いかけると、Mulderは彼女をスッと抱きかかえベッドルームへ 運んだ。 そのままベッドに倒れ込むと、Scullyが言った。 「この広いベッドに1人は寂しいわ・・・」 「よく言うよ、Scully。1日目は君は怒ってた。2日目は・・・」 「誘ったのに来なかったじゃない。」 「違うね!行ったけど入れてくれなかった。」 「あなたが素直にならないから悪いのよ。」Scullyはクスッと笑った。 「そう?じゃあ、素直に・・・」 そう言うと彼女と唇を重ねた。その感触は、今までのどんなKISSよりも深くそして甘い。 彼の唇は、首筋に胸元にとゆっくり下降していく。 唇が白い素肌に触れるたび、その部分に心臓が移動したかの様にトクトクと脈打つ。 そして、少しずつ少しずつ色づき出すのが分かった。 Mulderが愛おしそうにScullyを愛し続けると、彼女は切ない声をあげる。 彼は、今までのどんな人も教えてはくれなかった感覚を教えてくれた。 彼は目を閉じたまま、彼女を広い胸の上で抱きしめている。 「Scully・・・そのまま動かないで・・・」 Mulderが切なそうに囁いた。しかし、Scullyはイジワルをしてみたくなった。 「イヤよ!それに・・・Scullyは止めてよ!」 そう言いながら、彼女は起きあがろうとする。 「ああ、もう。動くなって言ってるのに・・・可愛くないなぁ〜」 Mulderは彼女を押さえつけ言った。 「分かりましたよ!Dana」 「うふふふ。愛してる?・・・Fox」 「ああ、世界一愛してる!」 「世界一?宇宙一にしてくれない?」 Scullyは笑いながら彼を抱きしめた。 =========================================== 5:30 AM 9/24 緑色の光が窓辺から射し込んで、シーツにくるまる2人を照らしている。 Scullyは彼の暖かさに包まれて目覚めた。Mulderはまだ寝息をたてている。 2人の関係がここからどう変わるのか、今の彼女には分からない。 しかし、今は、優しく抱きしめるこの腕と彼の温もりだけを信じよう。そう心に誓った。 彼女は彼の胸元に顔を寄せ、トクントクンと聞こえる心臓の音を聞きながらそっと瞳を 閉じた。 −THE END− ========================================== ご意見・ご感想は akua@mail2.dddd.ne.jp までお願い致します。 一言:  どっひゃー(汗)ひよちゃんホントにコレでいいの?  今読んだら、こんなものをよくUPしてもらっていたなぁと…  そしてまた、UPして貰うのか?私も学習能力がないのね。  モルスカ完全にお子ちゃまの恋愛だわ(泣笑)  かなり初期の作品なので、お許し下さい(ひれ伏し)