DISCLAIMER// The characters and situations of the television program"The X-Files" are the creations and property of Chris Carter,Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended. +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ おことわり:この作品は「XFおとな化委員会」推薦のアダルトFicです。                もしあなたが、18歳未満であったり、その種の作品に興味がないという方なら、        すぐにこのウィンドウを閉じてください。                上記のことを了承してくださったうえで、これを読んでくださる方。        初めての「おとな」作品なので、どうぞ甘い目で読んでやってください。        感想やアドバイス等をいただけたらうれしいです。              e-mail : stella@hikoboshi.net   +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「celebrate」 by Stella Date 99/8/8 A.D Skinnerの眉間には思いっきり皺がよっている。 いくら事件を解決したとはいえ、毎回の経費のことを考えるとあの皺はすでに刻まれているのでは ないだろうかとも思うけど。 隣に座っているMulderをそっと盗み見ると、彼はいつもどおり涼しそうな顔をしている。 確かに事件を解決したのだし、後ろ暗いところはなにもないけれど、もう少し謙虚な態度を示せば A.Dのお小言も半分くらいで済むようになるのではないかなと思う。 でも、そんなことを彼に言っても無駄っていうのは私が一番良く知っている。 その時、A.Dの表情が動いた。 報告書の最後のページのようである。 今まで眉間に寄っていた皺なんて、比べ物にならないくらいよりいっそう深くなった。 苦虫を思いっきり噛み潰したような顔。 おかしい。 あの報告書はちゃんと私もチェックを入れてある。 そんな最後にインパクトのある事は書かなかったつもりだが… でも! そこで思い出した。 書きあがった報告書をMulderに渡すと、彼は付け加えたいところがあると言って何事かを書きこん でいた。 ほんの一言のようだったし、別段気にもせずに彼に任せておいてはいたが、やはりMulderのする事 だもの。 ちゃんとチェックをするべきだったわ! 私が激しい後悔の念を噛み締めていると、やがてA.Dはゆっくりと顔をあげた。 なんのせいかは分からないが、次に訪れるだろうお説教を予感して、私は思わず身構える。 「…わかった。ご苦労だった、2人とも。今日はもう帰っていい。」 「え?」予想外の言葉にびっくりして思わず声を漏らしてしまう。 一方のMulderは、すでに立ち上がっている。 「なんだね?Scully。」眼鏡の奥に光る小さい瞳は、訝しげに私を見ていた。 その瞳を改めて見返すと、「不本意」って言葉を雄弁に語っているような気がする。 「いえ、あの…」私が真意を聞こうと口を開きかけると、ふいにMulderに腕を掴まれて立ち上がらされ ていた。 「さあ、行こう。Scully。」その瞳はA.Dと正反対で、笑っているような気もする。 私は、あっという間に背中を押されて、気がつくと既にドアの前にいた。 「Mulder。」背中で鋭いA.D呼びとめる声がする。 呼びとめられたのはMulderだが、私も思わず振り返った。 「なんでしょう、Sir?」 「こんな手は二度と通用しないからな。」 こんな手? どんな手? 頭の中に?マークが一杯の私は、A.Dの真意をはかろうと彼の顔をMulderの大きな背中越しに覗き こんだ。 …すると、予想外にも台詞とは相反して、とても柔らかい表情だったので、余計に訳がわからなくなる。 「1年に1度は通用すると思っているのですが。」とMulder。 するとA.Dは、その言葉に軽く肩をすくめてみせ、また席に座った。 「さあ、行くよ。Scully。」 私が再び背中を押されて外に出されると、あっという間にA.Dの部屋のドアは閉まってしまった。 いったいなにがあったのかと確かめる間もないまま、Mulderは先に歩き始める。 私は慌ててMulderの後を追った。 思いの他うまくいったな…と僕は内心ほくそえんでいた。 Skinnerにまさかそんなことが通じるとは思いもよらなかったが、今回ばかりはいつものお説教に付き 合う気にはなれない。 おまけにうまいぐあいに今日は金曜日だ。 幸せな週末になるか、失意にくれる週末になるかは、すべて今夜にかかっている。 そう決めたからには、もう誰にも邪魔はさせない。 彼のコンパスの長さは私のと根本的に違いすぎる。 Mulderは歩いているのに、私は小走りになっているって気がついているのかしら? 聞きたいことも聞けないまま、FBIの廊下をずんずんとエレベーターに向かって突き進んでいる。 あまり、すれ違う人がいないのがせめてもの救いだわ。 もし、誰かに見られたら私の姿は少し滑稽に写るかもしれない。 角を曲がるたびに、Mulderとぶつかった。 そのたびに彼は笑いながら「Sorry」とは言うものの、歩調が変わる様子はまったくない。 いいかげん付き合いきれなくなって少し遅れて歩き出す。 そんな私に気付かないMulderはどんどん歩いていってしまった。 なにをそんなに慌てているのかしら? 確かに先ほどの報告書の中身は気になるけれど、どうせ地下のオフィスに戻ればまた会えるのだし。 そう思い至って、ゆっくりと歩いているとエレベーターに到着した。 でも、その前にはMulderがじっと立っている。 私の顔を見た瞬間、ほっとしたような表情を見せて歩み寄ってきた。 「どこにいたんだい?Scully?」 「どこにってずっとあなたの後ろを歩いていたけど。」 「…そうか…」そう言ってMulderはエレベーターのボタンを押した。 「なにか考え事をしていたの?」私の存在を忘れるくらい… 「いや…うん。」そこへエレベーターが到着する。 軽い電子音とともに、ドアが開いた。 中には誰も乗っていない。 Mulderに続いて乗りこむと、地下へのボタンを押した。 「ねえ、Scully。」 「なに?」と答えて顔をあげると思わぬ近い所にMulderの顔があってびっくりする。 Mulderは2人きりしかいないのにまるで内緒話をするかのように、私の耳元で囁くように言った。 「今日2人で打ち上げをしないか?」 「え?」突然の誘いにさらにびっくりしながら、Mulderの方に顔をむけると彼はあいかわらず顔を寄せ てきている。 別に驚く事でも改めて意識する事でもない…と思う。 いつでも地下のオフィスで2人だし、車でも2人なんだから、エレベーターで2人という事にことさら 意識しなくても… そう自分に言い聞かせるが、いつまでも顔を離そうとしないMulderに対し、不覚にも鼓動が早まってし まう。 けれど、それを気付かれないように、あくまでも冷静でいるように見せようとすばやく仮面を被る努力 をする。 「どうしたの?今回に限って…特に難しすぎる事件でもなかったじゃない?」 「いいじゃないか。明日は土曜日だし、今日はめずらしく飲みたい気分なんだよ。」 「なぜ、急に…?」突然の誘いにさらに胸が高鳴る。 「だめかい?」Mulderの顔がさらに近付く。 そのままキスでもされそうな勢いだ。 「わ、わかったわ。」あえぐようになんとか答えた瞬間、再び軽い電子音が鳴り、エレベーターのドア が開く。 Mulderは満足そうににっこりと笑って、エレベーターを後にする。 私は、思わぬ展開に少しだけ固まっていたが、閉まりかけたドアを見てわれにかえり、慌ててドアの 間を擦りぬけた。 簡単にオフィスを片づけた後、僕はScullyを急かしながら外に出た。 一旦廊下に出た後、彼女は「忘れ物がある。」と言って慌てて中から大きな紙袋を下げて出てきた。 「持とうか?」といった僕だったが、なぜかかたくなにそれを持たせたがらず、結果大荷物で僕の横を 歩いている。 そこで時計を見て、時間に少し余裕のあるのを確認し、彼女の歩調に合わせてゆっくりと歩くことにし た。 意外と素直に誘いに乗ってくれたScully。 正直言って、Skinnerの件といい、Scullyといい、これほど思い通りに事が運ぶとは思っていなかった。 これはもう、今日こそ行動しろっていう普段は絶対に信じない神の思し召しかとも思えるくらいだ。 先ほどの廊下とは違い、今度は私の歩調に合わせてゆっくり歩いてくれるMulderに、少しだけ驚きな がらもなんだかうれしい気分になった。 顔に当たる風は少し冷たく、もうじき訪れる冬を感じさせる。 考えてみればもう10月。 ついこの前までは、いくら夜になっても夏が名残を惜しむかのように、風に熱を残したままだったが、 10月に入った途端、秋がやっと表に出てきた気がする。 秋は私の好きな季節だ。 それに今日は… 「Scully、行く店は僕が決めてもいいかな?」 「ええ、もちろんよ。Mulder。」そんな会話を交わしながら、町を歩くカップルとすれ違うと私はつい 考えてしまう。 傍からみた私たちはどんな関係に見えるのかしら? そしてこの先あと何回、2人で季節を越して行けるのだろう? 「着いたよ、Scully。」とりとめのない、でも飽きる事のない会話をしているうちにあっという間に店 についた気がした。 それほど大きい店ではないが、ちょっと品の良い雰囲気を漂わせている。 打ちっぱなしのコンクリートの、ところどころに沿えてある緑が、スポットライトをうけて浮かびあが っている。 エントランスへと続く通路は、足元の間接照明のみでほんのりと薄暗く、まるで夢幻の空間へと誘われ るようだった。 ガラス張りのドアを開けると、人のよさそうな年配の男性が迎え出る。 「いらっしゃいませ。」にっこりと微笑んだその顔は、ひとなつこい感じで好感が持てる。 「ええっと、席はあるかな?」しらじらしいかなと思いつつ、一応Scullyの手前聞いてみた。 すると主人は、心得ているとばかりに、僕にだけそっと目配せをして店の奥へと手を広げる。 「はい、ちょうど先ほどまでのお客様がお帰りになられた所です。どうぞ。」 主人に案内されて、一番奥の特等席へと着いた。 とりあえず、ワインを注文して彼が奥へ消えると、案の定Scullyは驚いた顔で僕を見た。 「Mulder、このお店って…知っていたの?」 「いいや。」 「予約していたわけではないわよね。」 「だってさっきのいきさつは知っているだろう?前から感じの良い店だと思ってはいたから、1度君を 連れてはいってみたかったんだ。」僕は初めてきたわけじゃないけど。 「でも、ここってたしかすごく人気のあるお店で、予約しないと絶対に入れないって…」 「運が良かったんだよ。」実は予約してあった。 「それに、この店ってカップルで食事をすると…」 「なに?」途中で口篭もったScullyを少し可愛く感じながら聞いてみる。 「…なんでもないわ。」 僕はその言葉の続きを知っている。 信じているわけではないけど、信じてみたい気分だ。 「美味しい…」なにを食べてもどれを食べても口からつい、なんとかの一つ覚えのように出てしまう。 明かりはテーブルの上のキャンドルだけで、なんだかより一層親密感が増しておしゃべりもはずむ。 目の前にいるMulderが終始にこやかで、見ているだけでほのぼのした気分になってきた。 職場にいる時に聞くには、あまりにも奇想天外な彼のUFO話も、いまは素敵な御伽噺を聞いているようで 心地よい。 また、ここのご主人が料理に合わせて出してくれるワインも絶妙な選び方で、ついつい飲みすぎてしまう。 こんなに笑ったのは久しぶり。 こんなに楽しいのも久しぶり。 でも、楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。 最後に出てきたデザートが時間の終わりを告げた。 出てきたのは、シンプルなガトーショコラ。 ふわっとホイップした真っ白なクリームが少しだけ添えてある。 口に入れると甘味と共に苦味が口に広がった。 まるで、今過ごしている時間みたい。 Mulderと一緒にいて楽しい甘味。 Mulderと一緒にいてせつない苦味。 Scullyの満足げな顔の中に少しの影を見つけた。 ふとした瞬間に見せた影。 それが僕と同じ様に、この時間が過ぎてしまうということに対する淋しさの影ならばとてもうれしいの だけれど… でも、まだ終わらない。 終わらせない。 店の主人に礼を言って、表に出た。 "さあ、帰りましょう"とは、なんとなく言い難い気分。 時計を見ると10時を回っている。 Mulderは帰ると言うのかしら? それとも軽くもう一軒、どこかに飲みに行こうと言うのかしら? 正直な気持ちを言えばもう少し一緒にいたい。 ちょっとした運命の別れ道に立った気分。 「Mulder。これから…」 そう言いかけて、彼の方を振り返ると視線に入らない。 一瞬びっくりしたが、視線を落とした先にMulderはいたので安心した。 けれど、それはすぐに不安へと変わる。 しゃがみこんでいる彼を発見したのだ。 「どうしたの?Mulder。」 「…気分が悪い…」蚊の泣くような声で答えが返ってくる。 「え?大丈夫なの?」そういえば、Mulderはあまりお酒に強くない。 それほどたくさん飲んでいたようには見えなかったが、思いっきりしゃべりながらお酒を飲むといつも よりはよけいにまわったりする。 そのつらそうな様子は、絶対に放ってはおけず、気がつくと私は大通りに向かって手を振り、なんとかタ クシーを止めて、まずMulderを乗せて自分も乗りこんだ。 タクシーの運転手は吐かないかと気が気じゃない様子だったが、やがてMulderが眠りに着いたのをみる とようやく安心したようだった。 眠りながらも、全体重を私に預けてくるMulderを、ついに支えきれずに膝枕をする形になる。 すやすやと子供のように眠るMulderの髪をそっと撫でながら、まだ今日別れずに済んだ事に対して、す ごく安心した気分でいる自分を感じていた。 彼女の膝枕は柔らかくて暖かい。 狸寝入りがばれないように、目を開けたいのを必死にこらえる。 もちろん僕は酔っていない。 姑息な手を使ってしまったかもしれないが、まだまだ離れたくはなかった。 そして2人きりになりたかった。 何度も自分の頭を往復する手の感触が、彼女の優しさや母性を感じさせる。 この時間がずっと続けばいいと思う。 僕はそんな事をずっと考えていた。 しかし、目的地についたタクシーは無情にも止まってしまう。 至福の時間が終わってしまった。 Scullyに揺り動かされて、眠い目をこする風に起きてみたけれど、ばれないように心の中で祈る。 そこは自分のアパートだった。 そのままScullyがタクシーに乗って帰ってしまわないかとひやひやしたが、どうやら大丈夫らしい。 小柄な体で一生懸命僕を支えて部屋に連れて行ってくれる。 僕も今までの演技の手前、いきなりしゃんと歩くわけにもいかず、Scullyにほどほどに体重を預けた。 それにしても、その大きな紙袋の中身が気になる… Mulderを支えつつ、なんとかかばんの中から鍵を取り出して開ける。 大きな紙袋もやっと目的地に着いた。 大きな荷物を二つも抱えて部屋に入り、一つは床に投げ出してもう一つはそっとカウチに寝かせる。 そのあと、床に投げ出した紙袋を手に取り少し悩む。 本当はMulderに開けてもらいたかったのだけれど。 でも、彼が寝ている間にかけておくのもいいかもしれない。 「Happy Birthday」を小さく歌いながらつつみ紙を開ける。 出てきた、お気に入りの大きな… Scullyの行動を薄目を開けて見ていた僕は、彼女がとりだそうとしているものを、わくわくしながら 見守っていた。 でも…でかい布? 色はとてもきれいなワインレッドだ。 彼女はそれをそっと机に広げる。 けれどそれは床にずるずるするような大きさ…まさか?テーブルクロス? "でかいテーブルクロスだね、Scully。" そんなMulderの言葉を想像して思わず笑ってしまった。 これはマルチカバー。 家を空けがちなあなたにぴったりのアイテム。 一週間も家を空ければ当然、カウチや机には埃が積もる。 でも、これをかけておけば大丈夫。 あなたにとって一番居心地の良い場所であろうカウチも、しばらく主がいなくてもきれいなまま。 本当は私が来て掃除をしてあげられればいいのだけれど、そんな日が来るかなんてわからない。 だから、せめて…私の代わりにMulderの大事な場所を守ってあげてね。 Scullyが何を思ってでかいテーブルクロスを広げているのかはわからないが、聞こえてきた「Happy  Birthday」を聞くと、どうやら僕の誕生日プレゼントなのかもしれない。 覚えていてくれたのか?今日が誕生日だという事を。 いや、正確に言えばあと1時間くらいで誕生日は終わってしまうのだが… 子供っぽいかもしれないけど、なんだか今日は君と一緒に過ごしたかった。 他の誰も考えられなかった。 この前、道でからまれていたお年寄りを助けたら、実は彼があのレストランのオーナーだと知って驚 いた。 お礼を是非させて欲しいと言ってくれた彼の申し出を、最初は辞退していたが、結局彼の誘いを受けて あのすばらしい料理を食べさせてもらった。 すると、その美味しさをScullyと分かち合いたくなって、1度だけということで今夜の予約をさせて もらったのだ。 でも、そんなことはScullyに、照れくさくて言えなくって、偶然を装ってもらった。 Skinnerに至っては、そういう約束があるのに例のお説教がはじまっては大変と思い、ダメモトで "Happy birtyday to me"と書いてみた。 すると、予想外にもあの結果だった。 ただ、頭が固いばかりの上司ではないようだ。 こんなにすべてがうまく行く日は、そうないような気がする。 これはやはり思いきってScullyに… 「Mulder。大丈夫?」そう言いつつ、あまりに起きあがらないMulderの傍に寄ってみた。 するとMulderは薄目を開けて手を広げる。 起こせというのかしら? 子供みたいなMulderを抱きかかえようと彼の体に両手を廻す。 よいしょと座らそうと力を入れても、なんとか途中まで持ち上がるもののその先は動かない。 どうしようかと考えあぐねているうちに私の体力も限界にきて、今度は彼の下敷きにされてしまった。 まるで石か何かを抱いたように体が動かない。 でも、なんだかその重みが心地よく、なんとなく彼の背中に腕を廻す。 …その瞬間、すごい力で抱きしめられた。 驚いて、声も出ない私の耳元にMulderが囁く。 「やっと捕まえた。」 「え?」 聞き返す間もなく、あっという間に唇を塞がれた。 私の唇を塞いだものがMulderの唇であるということに気付くのに、3秒くらいあったかもしれない。 唇から伝わる暖かさは、自分の体温とは違う温度で、改めて相手を意識させる。 初めて受けた彼の激しいキスは、形ばかりの抵抗をしようという気も起こらないくらいあっという間に 私を溶かした。 "違う、順番が違うだろ?"僕は心の片隅で考えながらも、もう止める事ができなかった。 自分の誕生日を彼女が気付いていなくても、その瞬間を一緒に過ごしたいと思ったこどもっぽい思い から始まっただけだったのに。 そして雰囲気が許せば、Scullyにちゃんと自分の思いの丈を伝えるつもりだったのに。 カウチの上で思わず甘えてしまった僕に優しく手をさしのべてくれたScullyを、いたずら心から組み 伏したつもりだったが、彼女の甘い香りを胸一杯に吸いこんだ瞬間、僕のなかで何かが外れた。 今、自分の腕の中にいるScullyがいつもより素直に、僕に対する愛情を隠さずにいるように感じるの は僕の気のせいなのか? 僕の感情の赴くままに起こしてしまった行動は、意外にも彼女の心の扉を簡単に開ける事ができたのだ ろうか? 頭の中で一瞬分析癖を現わしてしまったが、そんな思考は一気に吹き飛んでしまうような、Scullyとの キスに酔いしれた。 初めて触れるその唇は、やわらかく暖かく僕を迎えてくれる。 舌先で彼女の歯をノックすると、扉は簡単に開き、より激しいキスになった。 僕は、キスをしたまま彼女をすっと抱えて、机の上に広げてあったワインレッドのテーブルクロスを床 にひきずりおろし、カウチとテーブルの間に場所を確保する。 普段はどこよりも安心して眠れる最高の相棒だが、Scullyと僕の2人には狭すぎた。 テーブルクロスに横たえたScullyにキスを浴びせながら、片手でカウチをぐいっとずらす。 同様に机も遠くに離せば、ゆったりとした空間ができあがる。 僕はしつこく吸っていた彼女の唇から顔を離し、あらためて彼女を見つめる。 ワインレッドの布に彼女の豊かな金褐色の髪が広がっていた。 Scullyは少し顔を上気させて僕を見つめ返す。 …お互いになにも言葉がでなかった。 長いキスの後、初めて視線が合った。 私を見つめるMulderの瞳は、まるで私の心の奥底を覗き込んでいるようだった。 もし見えるのなら、なにも言葉はいらない。 あなたの今望んでいる事。 それは私も今望んでいる事。 Scullyの目を見て、もう迷う必要はないんだとあらためて実感した。 そして、再び彼女に唇を重ねながら、ブラウスのボタンを外し始める。 一番下まで外した後、彼女を少し持ち上げてするりと脱がす。 Scullyはなにも抵抗することなく、黙って僕にされるがままだ。 フロントホックをそっと外すと、小柄なScullyからはちょっと想像のできないボリュームがそこに あった。 横たわっていても、よい形が変わる事無く保たれている。 僕は目の前で露わになった彼女の美しい隆起にそっと手をのばしてみた。 思わず汗ばんでしまった僕のてのひらの下で、思い通りに形を崩す。 しっとりした吸いつくような肌触りと、みずみずしい弾力が合わさった不思議な感触だった。 僕の手が動くたびに、Scullyの口から甘い吐息が漏れる。 その吐息の熱さが、僕をよりいっそう彼女にのめりこませる。 Mulderの唇を指を、体中のあちこちに感じながら、私の頭は真っ白になっていく。 めくるめくような、甘い快感の海に、私は溺れていた。 いつのまにか彼も私も一糸まとわぬ姿になっていて、私は体中で彼の体温を感じている。 包み込まれている…そう感じた。 やがてその快感は頂点へと高まっていく。 私は必死に彼にしがみついた。 彼女の腕に、いままでにないくらいの力が入ったのを感じた。 それを受けて、僕は力強い律動を送りこむ。 最初はゆっくりと。 しかしそれは僕の感情と見事に比例してだんだんはやくなってしまう。 僕がScullyを責めるたびに、彼女の真っ白な歯がこぼれる。 その思わぬ艶かしさに、僕はどんどん昇りつめていく。 もう、彼女の白い肌に、僕の軌跡を残せないくらい一点に集中していた。 そして、訪れたその瞬間には彼女を折れるくらい抱きしめた。 Scullyの腕も僕に思いっきり絡み付く。 まるで、お互いに2度と離さないという無言の誓いをたてるかのように… その時、僕達の頭の後ろで、時計が厳かに12時を告げた。 嵐のような快感が過ぎて行き、いまはただ心地よい疲労感を抱いて、私はMulderの胸の中で目を 瞑っていた。 彼の上下する胸と、確かな鼓動を聞きながら、これは夢じゃないんだと改めて実感する。 その甘い余韻に浸っていると、ふいに頭の上でMulderの声が響いた。 「Scully。」 彼の呼びかけに顔を上げる。 そこにはいつもよりも、より優しく見える大切な人の顔があった。 「君が腕の中にいる…」ゆっくりと確かめるようにMulderの手が私の頭を撫でた。 その優しい動きに、私はちょっと照れくさくなる。 そして、彼からおもわず顔を背け、いつものような口調で少し辛らつに言ってしまう。 「誕生日の幻影かもしれないわ。」 そう答えて彼を見ると、Mulderはにっこりと微笑んだ。 「じゃあ、次は君の誕生日までこんな時間は過ごせないのかい?」僕はそう言ってScullyを見つめた。 そして、ちょっと意地悪く続ける。 「僕はともかく、君はそんなに待っていられるの?」 そんな自信過剰な台詞をつい口にしたくなるくらい、さっきまでの彼女は素直に僕についてきてくれた。 Scullyの額にそっとキスをしてみる。 すると彼女は、あでやかに微笑んで僕の首に腕をまわしてきた。 そして、耳元で囁く。 「あなたのせいよ。」 「え?」思わず聞き返した僕の顔をいたずらっぽい瞳で見返す。 「ほら。もう、待てなくなったわ。」Scullyは、そう言って情熱的なキスをくれた。 そんなScullyに僕はあっさりとはまり、再び彼女を責め始める。 Scullyも再び、甘い吐息ともつかない声をもらしはじめた。 この甘い声を聞き続けられるなら、この週末もこれからもずっと離さないぞと僕は見えないなにかに誓う。 レストランのジンクスがまたひとつ立証された…                                                             (Fin) ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ あとがき(言い訳) 「XFおとな化委員会」推薦作品を無性に書いてみたくなり、勢いに任せて半日くらいで書き上げ てしまいました。 なんだか、MulderととScullyと言う名前の別人になってしまったような気が・・・(汗) しかも「いかにおとなへの道へ進めるか」っていうことに重点をおいてしまったせいで、ストーリー 的には問題ありかも?(というかストーリーがないかも?) あとは、マルチカバーの色なんですが・・・絶対にMulderの部屋には合わないということは わかっていたのですが、Scullyが横たわってきれいに見える色を考えたときに、その色しか 浮かばなかったので、ワインレッドに決めてしまいました。 決して彼女のセンスが悪いのではありません。 ・・・Mulderの部屋の寝室さえちゃんとしていれば、こんな苦労はしないのに・・・(笑) ジンクスも最初はちゃんと書いていたのですが、文章にするとちょっと笑えたのであえて書きませ んでした。 どうぞ、2人の行動から美しいジンクスを思い浮かべてくださいな。(と頼る私) HPのお誕生日という事で、「誕生日ネタ」で書いてしまいましたが、8/7がDDの誕生日ではあって も、Mulderの誕生日は、10月。 思いっきり季節はずれですがご容赦ください。(しかも今年の暦を無視している) 最後まで読んでくださった方、本当にありがとうございました。