DISCLAIMER// The characters and situations of the television program"The X-Files" are the creations and property of Chris Carter,Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended. ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ WARNING:このFicは「おとな」向けのものです。     もしあなたが、18歳未満であったり、その種の作品に興味がないという方なら、     すぐにこのウィンドウを閉じてください。     そしてもう一つ!     これのFicには「MulderとDiana」の性描写があります。     「MulderとScully」の部分は一切ありません。     Stellaはshipperであり、もちろんモルスカの幸せを願ってはいるのですが、今回     他の形でそれを表現してみたくてこのような形となりました。     ただ、Mulderはあくまでも精神的には気持ちがScullyにありますが、肉体的には     Dianaを愛している結果となっています。     そのようなものを絶対に形がどうであれ読みたくないとちらっとでも思われたら     即刻このウィンドウを閉じてください。     あと、読後感の悪さは保証付です。     ここまでの警告文を読んで「それでもよい」と思い読んで下さる方、本当にこん     な話で済みません。     言い訳はあとがきにて・・・(苦笑)     これだけしつこいくらいに警告してあるのに読んでStellaに怒りを覚えても、     非難や怒りのメールはご容赦ください。     ただ、感想やアドバイスや、読んでくださった方なりの考えを教えていただけ     たらうれしいです。     e-mail : stella@hikoboshi.net       ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ 「deceitful」 by Stella Date 99/9/14 「どうして信じないんだ、Scully!君もその目でみたじゃないか!!!」僕はついに感情を抑えき れなくなり、荒々しい声をあげた。 けれども彼女も負けじと僕を睨み返す。 「あの時は私の意識は朦朧としていたし、はっきりと見たという確信はないわ。それにそんなこと どう科学的に考えてもあるはずがないものっ!」 みなぎる緊迫感が、僕達を重苦しく包みこんだ。 こうなったらお互いに一歩も引かないというのは目に見えている。 しばらくはお互いに一言も発せずににらみ合っていたが、その沈黙を先に破ったのはScullyだった。 「…これ以上話し合っても時間の無駄のようね、Mulder。私は私の見たままのことを科学的根拠に 基づいて報告書を作成するわ。」そう言ってブリーフケースを手に取った。 「見たまま?じゃあ僕の言うとおりに書くってことかい?」僕は皮肉に笑いながらそんな言葉を投 げつける。 もちろん、Scullyがそんな事を書くはずはないというのは承知済みだ。 すると彼女は案の定、僕の予想通りの言葉を返した。 「あなたの言うとおりになんか書くわけがないでしょう?Mulder。私は自分の信念を曲げるつもり はないの。」とScullyはそう言い捨ててオフィスを出ていこうとする。 「良い週末を!これで二日間お互いに苛立った顔を合わせずに済むな!」 するとScullyはくるりと振り返って僕に冷たい一瞥を投げつけて答えた。 「そのようね、Mulder。良い週末を!」 ばたんとドアが閉まり、規則正しい足音が響く。 その音がどんどんと遠ざかっていくのを聞くにつれ、僕の中の苛立った気持ちも急速に冷え込んで 行くのがわかった。 代わりに虚しい気持ちが僕を支配する。 確かにScullyの言う事は正しかった。 僕の見たままを報告したところで、その存在を確証できるような肝心の証拠がない。 という事は、その報告書から要らぬ部分として削除され処理されて終わるだろう。 …しかし… 僕は手にしていた鉛筆をぱっきりと折った。 いつまでも証拠がないからといって、確かにいる彼らの存在をいつまで見てみぬふりを続けるのか? Scullyは聡明で、とてもたよりになる大切な相棒だ。 現に彼女の機転によって、何度も命を助けられた事もある。 しかし、肝心要の根底で、彼女とは決して相容れないものが存在していた。 僕は激しい脱力感にみまわれて、じっとしていることしかできない。 なにもない空間をただひたすら睨み続けた。 "トントン"ドアがノックされる音がした。 僕は顔をあげるのもおっくうで返事もしなかった。 すると、ゆっくりとドアが開き…Dianaが入ってきた。 「Fox!いったいどうしたの?」 石のように固まっていた僕を認めると彼女は走り寄ってきた。 僕は仕方がなく視線を軽く上げて、挨拶にする。 「こんな夜遅くまでいったい何を?」 彼女はそういいながら僕の手をそっと握った。 いつものように、僕が落ち込んでいる様子を見て取る行動。 6年経った今も、その行為は変わらない。 でも、なぜか僕は昔のように握り返す気分にもなれず、そっとその手を解いて机へと向かった。 「仕事だよ。でも、もう帰るところなんだ。」 するとDianaはとても心配そうな顔をして覗きこんできた。 「ねぇ、Fox。なにか悩みがあるんじゃないの?あなたの力になりたいの。」 その時僕は彼女と一緒に仕事をしていたころ、毎晩遅くまで仕事についても語り合っていたのを 思い出す。 彼女とはいつも意見はぴったりだった。 2人で1つのことに向かっていっているという実感に溢れていた。 そのころにはこんな虚しさなどなかったなと思う。 Dianaが僕の意見に対して反論することはなく、それどころか僕自身の発見できなかったことにま で細かくケアをしてくれていて、あの時は最高のパートナーだと感じていた。 それは今も変わらないのだろうか? 「Fox?」促すようにDianaは僕を見つめる。 僕はその言葉につい答えてしまった。 「いや、ちょっと仕事の事でね。Scullyと意見が別れてしまったものだから…」 Dianaはそれを聞いて"わかってる"というように頷いた。 「Fox、私ではあなたの力になれないかしら?」 「君が?」思わず聞き返すとDianaはにっこりと笑った。 「今晩はもう遅いわ。よかったら私のマンションに来ない?そこならゆっくりあなたの話が聞ける と思うのだけれど…」 「いや、しかし…」いくらなんでももう11時を過ぎている。 ただの同僚になってしまった彼女の家に行くなんて… 「私の家の事なら心配しないで。ただ…あなたの力になりたいの。私ならあなたからの情報で新た な発見ができるかもしれないわ。昔みたいに…」 その言葉に僕はつい、たまらない安らぎを覚えた。 もう1度、昔のような気持ちに戻れるのだろうか? 「…行ってもいいのかい?Diana」 「もちろん!」そう答えるとDianaは僕の背中を押し出した。 「それはあなたの意見が正しいわ、Fox。」とDianaは大きく頷いた。 しかし、その予測通りの答えがすこし白々しく響く気もする。 …僕はそこまで考えて、思わず苦笑した。 これはいつもScullyとやりあってるのがすっかり身についてしまったからなのだろうか? 意見をそのまま肯定されても、喜ぶどころか少しむずがゆくなってしまうなんて。 そんな思惑をよそに彼女は続ける。 「じゃあ、その件に関しては明日、管轄の警察署へ行って確認するわ。それから…」 すっかり昔の気分になりかけていた僕だったが、彼女の意欲を見て逆に慌ててしまった。 「いや、Diana。これは君の仕事ではないからそんな事は頼めないよ。」 するとDianaははっとした顔をして、淋しげに微笑んだ。 「あ、ごめんなさい、Fox。私は、もうあなたのパートナーではなかったわね。」 そう言って手にしていたアイスティーを一口飲んだ。 そして、しばらく黙っていたが、やがて口を開いた。 「あなたと仕事をしていたころに戻りたいわ。」 「…」僕は何も言えない。 「前も言ったけど、あなたの今のパートナーはあまりにも考え方が違いすぎるのではないかしら? やはり同じ様な考えのもの同士の方が…」 そう言って向かいのソファから僕の隣へと座り直す。 「Fox…」覗きこむように目の前に現れた顔がだんだんと近づいてきた。 僕は思わず身を引いて立ちあがった。 驚いた彼女も一緒に立ちあがって僕を見つめる。 「すまない。すっかり長居をしてしまったみたいだ。そろそろ帰るよ。」 「え?明日は休みだからゆっくりしていったら?私は構わないわ。」と僕の腕を彼女は掴んだ。 「いや、そうもいかないよ。今日はありがとう、Diana。」そう言って彼女の手をそっとふりほど いた。 そして、くるりと背中を向けると…その瞬間、僕の右足に冷たいものがかかる。 「?!」慌てて何事かと見るとDianaが持っていたアイスティーをこぼしたようだった。 みるみる僕のスーツのズボンにしみが広がる。 「たいへん!ちょっと待って、Fox!」そう言ってそばのクロークへ走りより、タオルを取り出し て戻ってきた。 「ごめんなさい。」そう言いながら跪いて僕のズボンを拭く。 かがんだ拍子に、彼女の3つほどボタンの外されたブラウスの中のふくらみがよく見えた。 「大丈夫だ、Diana。どうせアイスティーだしすぐ乾くよ。」思わずやってしまった視線の先を 強引に外す努力をする。 「いいえ、Fox。このままじゃダメよ。」 そう言ってやおら僕のベルトのバックルに手をかけた。 「Diana?」 慌てて彼女の手を外す。 するとDianaは立ちあがった。 「脱いで、Fox。しみになってしまうわ。すぐに洗わないと。」 「しかし…」 「もしよかったら、待っている間にシャワーでも浴びていて。ね?べたべたして気持ち悪いで しょ?」 そしてDianaは僕をバスルームへと促した。 確かに洗ってしまいたい気もする。 「じゃあ、少し借りるよ。」 「あなたが入っている間に、簡単に洗ってアイロンをかけておくわ。」 その言葉に僕はあきらめてシャワーを浴びることにした。 シャワーから出るとDianaがアイロンを置いたところだった。 「あとはしばらく放っておけば大丈夫。」 「ありがとう、Diana。」 お礼を言った僕にDianaはにっこりと笑う。 「私が悪いんだもの…それより。」 彼女は額の汗をぬぐって続けた。 「私も失礼してシャワーを浴びてもいいかしら?すっかり汗をかいてしまって…」 「もちろんだよ、Diana。じゃあ、僕は乾いたころに消えてるから…」 するとDianaは僕を睨んだ。 「その渇き具合だと私がシャワーから出てくるまでは完全には乾かないわよ。」 言外に"待ってて"と言っている。 僕はこれだけしてくれた相手に対して、このままいない間に帰ってしまうのもどうかな?と思い 異論はなかった。 「わかったよ、待っているから。」 その言葉に彼女はなんだか妖艶に頷いた。 僕は少しだけある予感をする。 Dianaは僕の答えに頷いて、バスルームへと消えた。 「Fox。」Dianaの声が背中でして、振り返る。 スレンダーな長身をバスローブで包んで、僕の顔をじっと見ていた。 彼女の目が妖しく僕を誘う。 Dianaが僕にわざとアイスティーをかけた時から、なんとなく気付いてはいた。 いや、彼女が自宅へと僕を招いた時から予感はあった。 Dianaは僕に近付いてきたかと思うと、身振りでバスローブを脱がすようにと促す。 僕はなにも考えることなく、その紐を解いた。 はらりと落ちたバスローブの中には一糸まとわぬ姿があった。 さすがに何も着けていないとは予想していなかったために、僕はちょっと驚いた顔になったか もしれない。 するとDianaは、ゆったりと微笑んで僕の手を引いて寝室へといざなった。 彼女の手に導かれるまま、ベッドへと倒れこむ。 ベッドサイドの明かりの元であらためて彼女の肢体を眺めた。 6年前までは毎日のように自分の手の中にあった体。 その肌は乳脂を思わせるほどに白く、スレンダーな体に相応した小ぶりだがわりと上向きの バストが僕の目の前で、彼女の息遣いとともに揺れている。 僕が本能のまま、その乳房をわしづかみにすると、Dianaは目を閉じた。 僕は彼女の胸を揉みしだきながら、じっとその顔を見つめてみる。 Dianaが恍惚の表情になっていくのと同時に、僕の感情は不思議な事にどんどんと冷めていく ような気がした。 そこで、彼女の胸に顔を近付ける。 掴んでいた胸の先を最初は吸ってみたが、なぜだかとても荒々しい感情にとらわれてその乳首 に歯をたてた。 一瞬Dianaの顔が歪む。 そして目を開けて僕をみたが、僕の視線とぶつかった瞬間、慈悲深そうな笑みを投げかけた。 6年前は彼女のその表情がたまらなく好きだったのを思い出す。 …しかし、今は僕をよけいに苛立たせるものでしかなかった。 その偽善に満ちたようにしかみえなくなってしまった笑みを消し去りたくて、思わず次にはぐっ と噛んでしまった。 ぴくんと彼女の体が跳ねるとともに、気のせいか口の中に薄く鉄の味を感じた気もする。 「Fox!」 今度は笑みを浮かべるどころではない様子だった。 とても険しい怒りの表情。 その顔が彼女の真実の顔に見えて、僕の感情はちょっと収まる。 「ごめん…」そう言って今度はやさしく舐りあげた。 するとDianaは、一瞬戸惑ったような表情を見せたものの、また目を閉じる。 先ほどの自分のした行為に対する罪悪感からか、僕はゆっくりと彼女を昔のように舌で転がす ことにした。 胸元から次第に唇を下げてゆくと、Dianaの口から甘い声が漏れ始める。 しかし、昔のようにその肌に僕の印をつけようとは思わなかった。 ただ、きまった行動のように昔通りに舌を這わせる。 やがてウエストをなぞった後、下腹部に到達し、僕はゆっくりと足を開かせた。 彼女は抵抗することなくすべてを僕にさらした。 その花芯は既に十分過ぎるくらい、透明な液で溢れている。 僕は舌を添わせかけたが…なぜかその気になれず、指で探ることにした。 ぐいっと中に滑り込ませると、Dianaの声が頭の上で響く。 僕はそんな彼女の様子を、なんだか少し滑稽に感じながらも、挿入する指の数を一本また一本 と増やしてみた。 その数に見事なほど呼応して大きくなる彼女の声を聞いたとき…僕はふいにその手を抜き取り 行動を止めた。 「…Fox?」突然止まってしまった僕を不思議に思ったのか、Dianaが身を起こして顔を覗きこ んできた。 止まったままの僕を見て、視線を落として僕自身を見る。 あまり元気でない様子を見て取った彼女はおもむろに顔を近付け、口に含んだ。 吸いこまれるような感覚… 歯を立てないように吸いつきながらも、微妙に舌で刺激をする。 すると元気のなかった僕のモノは、久方ぶりの外部からの口撃に簡単に反応した。 しかし、一方であくまでも冷めている僕もいる。 Dianaに奉仕させながらも、僕は冷めた頭でScullyのことを考えていた。 あの別れ際の光景が、彼女の表情が目に浮かぶ。 あくまでも、僕より科学を信じているというのか? Scullyの冷たい目は、彼女自身が思っているより僕を鋭く射ぬく力を持っているのを気付いて いないのか? 僕は、君にそんな目で見られると… そして、思い通りにならないScullyの事を考えると歯痒くて、くやしくて、様々な感情が僕を 支配する。 相容れない部分以外では、彼女はとても優しく、僕に関する事はなによりも優先させてくれる のに… そんな事をどのくらい考えていたのだろう。 やがて僕の股間にいたDianaの視線を感じてのろのろと彼女を見つめ返した。 …昔なら彼女の前には、まったく歯が立たずあっという間に絶頂を迎えていたのに…気持ちが ないとはこういう事なのか?と改めて感じた。 するとDianaは、口でいかせるのをあきらめたのか僕を胸に抱えて再びベッドに横たわる。 そして耳元で甘く囁いた。 「…Fox。来て…」 そう言って彼女は、僕を抱えたまま足を開き僕自身に彼女の花芯があたるように足を絡めた。 僕はただ機械的に彼女に入ろうとしたが、彼女の顔が視界に入ると…できなかった。 不思議そうに見上げるDiana。 僕はふと思いついて彼女に言った。 「Diana、うつぶせになって…」 暗に後背位を促す。 すると彼女はうれしそうに微笑み、僕に言われたまま背中を見せた。 僕は彼女の腰を抱えて後から一気に挿入した。 そのとたん、彼女はシーツを掴む。 僕はそこで腰を動かし始めた。 何の音もない空間に僕の下腹部と彼女の尻がぶつかる音のみが響く。 それはまるで三流のポルノを見ているようなそんな安っぽい音だった。 Dianaのよがる声を聞いても冷めた部分は熱くなることがない。 かろうじてこの行為をしていられるのも、ただの外界からの刺激のためだけかもしれないと 思った。 そんな感情のまま、イクことはできない。 彼女はこれを僕の持続力と思うのだろうか? ただ、本能のままに腰を振り続けている僕。 その声にいちいち律儀に声をあげるDiana。 まったくの高ぶりもなく続くその時間は、決して甘美な男女の営みではなくて、発情期にメス でもないのに抱えられるものなら主人の足であろうといきなり抱えて、腰を振る犬のようにも 思える。 そのあまりの虚しいの時間の中、ふとScullyだったらどんな表情をするだろうか?と考えてし まった。 彼女の透き通るような白い肌やその地図は南極で見た時のものが脳裏に焼き付いている。 そして、蒼い大きな瞳。 僕が君に同じ行為をしたら、その瞳を潤ませて見つめ返すのだろうか? その柔らかそうでいてしなやかな髪を素直に僕に撫でさせてくれるのか? そして、君がこんな格好で… 突然目の前にあった背中の主が振り返る。 黄褐色の髪の奥に覗く蒼い瞳。 …Scully。 その瞬間、僕は呆気なく頂点に達していた… 迎えたその後の真っ白な頭の中には、なぜかScullyの哀しげな顔が浮かんでいた。 コトが終わり、僕はベッドを抜けようとした。 しかし、すかさず僕の腕をDianaが掴む。 「Fox、どこへ行くの?」 「…ごめん、今日は帰るよ。」 その言葉に心底驚いた顔を見せたDianaだったが、すぐにいつもの物分りの良い表情で頷いた。 「そう、久しぶりにあなたの腕枕で眠りたかったのに…」そういいつつ手を離す。 僕はそこに脱ぎ散らかした服を手にとって、シャワールームへと急いだ。 シャワーの水量を最大限にして、滝に打たれるようにその前に立つ。 痛いくらいの水を頭に被り、口を開けて濯ぎもした。 そばにあったボディブラシで痛いくらいに体をこする。 そんなにまでしても、僕が頂点に達する前の刹那に現われたScullyの艶かしい姿は僕の頭から 離れなかった。 すばやく身支度を整えて外に出ると、応接のソファにDianaがバスローブ姿で座っていた。 僕は彼女に少しだけ微笑んで"お休み"を告げるとそそくさと部屋を後にした。 その帰路でふと気付いた事がある。 …結局Dianaと1度もキスをしなかったな… ************************************************************************************** Mulderの背中を見送った後、Dianaはしばらくソファの上で石のように固まっていた。 その表情はさっきまでMulderに見せていたものとは正反対の、悔しさと怒りでいまにも叫び 出しそうなものだった。 そんな心の荒々しさを静めるべく、彼女はキャビネットからブランデーを取り出す。 グラスに注いだ琥珀色の液体を一気に胃に流し込み、乱暴に机に置いた。 「…しい」搾り出すような小さな声での感情の吐露。 そして少し遠くを見つめて次の自分の行動を決めようと思考を巡らす。 次に立ち上がり、おもむろに電話の受話器を取った。 番号は暗記している風で、手馴れた様子でボタンを押す。 そして、彼女が現在の時間を知ろうと顔を上げた時、電話口に声が響いた。 「私よ。」そう一言告げると、相手からは長く吹き出す息遣いが聞こえた。 「どうした?」あくまでも事務的に返す声にDianaは少しムッとしながらも続けた。 「今、Foxと寝たわ。」 「…それで?」冷静に返してくる声にDianaは拍子抜けする。 「彼はまだ私に夢中よ。あなたの役に立そうじゃない?」ちょっと媚びたように言うと、また しても長い息遣い。 たばこを吸っているに違いないとDianaは踏んだ。 しばらくの沈黙の後、再び声が響いた。 「君は私を裏切った事はない。」 「そのとおりよ。」その男の発言にDianaは少し強気を取り戻す。 「だから、あなたにも私の願いを叶えてくる義務はあるわ。」 「…なんだ?」相変わらずの感情のない声が戻ってくる。 しかし、それはOKの印と捕らえてDianaは続けた。 「部屋に来て、今すぐ。あなたの為に働いた私を、たまにはあなたが癒してくれてもいいで しょ?」 その言葉の指す意味は一つしかない。 男は再び深く煙草を吸って長いため息の延長のように"わかった"と一言言って、電話を切った。 Dianaは受話器を置いて、再びシャワーを浴びるべく立ち上がった。 シャワールームに入り、その鏡の後にある棚を開ける。 お気に入りのボディーソープを取り出そうとしたのだが、その隅にあったガラス瓶に目がいって それを手に取った。 Dianaはそれをしばらく見つめていたが、やがてぐっと握り壁に投げつけようとした。 しかし、一瞬とまどった後、結局それを棚に戻す。 「Foxはこれに気付いたのかしら?」と呟き、自分にとって都合の良いように先ほどのMulderの 行動を解釈しなおした。 瓶の中には透明な粘性の液体が詰まっている。 それは見ようによっては充分、女性の愛液に見えた。 「でも彼との夜にこんなものはいらないわね。」 Dianaはそう呟いて瓶を棚に戻し、バスローブを籠に放り投げて新しいのを取り出す。 そしてシャワーを浴びるべく栓をひねった。 ************************************************************************************** 最悪な気分のまま月曜日を迎える。 ただでさえ、いつも憂鬱な週明けなのにずっとScullyの事を引きずったままの僕はなおさら足取り が重くなった。 オフィスのドアの前に着いて一呼吸整える。 開けようとした瞬間、様々な思いが交錯した。 週末のScully、Dianaとの夜、一瞬僕の瞳に映った艶かしいScullyの姿… 会いたい気持ちと会いたくない気持ちがせめぎあったが、僕は結局いつもの行動どおりドアノブに 手をかけた。 ドアを開けた瞬間、Scullyの姿が目に入る。 いつもの変わらない僕にとっての日常であり、なんだかとてもほっとした。 「おはよう、Scully。」 僕の頭の中に刷り込まれた日常。 「おはよう、Mulder。」そう答えて、彼女は軽く微笑んだ。 しかし、少しぎこちなく感じるのはやはり週末の言い争いが尾を引いているのだろうか? 僕は机にかばんを置いて、資料をとりだしながら次の言葉を探していた。 やがてうつむいている僕の視線に彼女の靴の先が目に入る。 僕が顔をあげると目の前にいたScullyは言った。 「今日はいまからアカデミーへ講義に行かなくちゃならないの。夕方には戻れると思うけど…」 「そうか…」ほんの少しのほっとした気持ちと淋しい気持ちが入り乱れる。 「わかった。今日は僕も外に出る予定はないから、多分1日オフィスにいると思うよ。報告書も 書かなければならないしね。」 いつもどおりに答えかけたが、報告書の言葉が週末の一件を思い出させ"はっ"とした。 少し気まずい雰囲気が流れた…と思った時、ふいに僕の手にやわらかい指が触れた。 「あのね、Mulder。この週末ずっと考えていたんだけど…あの時、私は言いすぎたかもしれない って思っているの。」と彼女は言葉を選ぶようにゆっくりと言う。 「私は科学の名の元に、自分で見たものすら否定しようとしたわ。それこそ科学的ではないと 思う。」 僕の手を握る指先にだんだん力が入る。 「でも、報告書を書く上にはきちんとした検証が必要だわ…だから…」そこで彼女の言葉は途切 れた。 どうやって次の句に繋げるかを考えあぐねているらしい。 僕はそこで彼女の手からそっと自分の手を抜き取り、そっと肩に手を置いた。 「わかっているよ、Scully。」 僕のその言葉でScullyはやっといつものように微笑んでくれた。 僕が軽く頷くとちょっと小首を傾げてみせる。 「じゃあ、行って来るわね、Mulder。」 「ああ。」 Scullyはブリーフケースを手にオフィスを出ていった。 僕は閉まったドアをしばらく見つめて、彼女の足音が聞こえなくなったところで大きく息を吐い た。 そこで、自分が緊張していたのをあらためて感じる。 ゆっくりと肩の力を抜きながら彼女が握った左手をじっと眺めた。 Scullyの指の柔らかさと温もりを反芻する。 それだけで、体の芯から熱くなってくるような気がした。 …ただ、指が触れただけで? それだけの行為で、彼女はこんなに簡単に僕の感情を揺り動かすのか? 彼女の表情、彼女の言葉、彼女の香り、彼女の感触… さまざまなScullyの一部が僕の中で繋ぎあわされたり、一瞬にして砕けたりと入り乱れる。 それにひきかえ昨夜のDianaとのセックスはなんだったのか? いくら体を重ねても、もうこれだけの感情は呼び起こされない… まるで自分がビデオを見ているかのような第三者的な感覚。 その時ドアがノックされた。 僕が返事をすると今、一番顔をあわせたくなかった顔が現われた。 「Fox…」 「Diana…」 彼女は昨日のように僕の方へと近付いてくる。 僕は、反射的に机へと踵を返した。 「忙しいの?Fox。」 「いや、そうでもないけど…」 そういいつつ彼女の顔をまともに見る事が出来ない。 「なにか用事かい?」 かろうじて紡ぎ出した言葉にDianaは目を見張った。 それでも彼女は続けた。 「用事って事もないんだけれど…ただ、あなたの様子を…」 その先を聞きたくなかった。 僕はその場にあった適当な書類をひっつかんで答える。 「ごめん、Diana。今からSkinnerとの打ち合わせがあるんだ。悪いけどまたに…」 そう言ってドアに向かって歩き出した時、Dianaが思わずといったように僕の左手を 掴んだ。 僕は…反射的に振り払ってしまった。 はっとしたが、それは彼女も同じ気持ちのようだった。 きまずい空気がオフィスに流れる。 僕はもうこれ以上なにも言う事ができなくて…じっと見つめるDianaの視線を感じながら、 そそくさとオフィスを後にした。 (Fin) ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++ あとがき(言い訳) 「あだると」を書くぞー!と意気込んだものの、前回の作品を書いてからというものさっぱり次の 案が浮かびませんでした。 なぜ、こんなに書けないんだろう?と思った私なりの結論。 「Scullyを愛しく思うあまり、つい綺麗に書こうとすると貧困な私のボキャブラリーはすぐに尽きて しまい、書けないんだ!」 本当はもっとモルスカを大胆にしていろんなことをさせてみよう♪と思った私だったのに・・・(泣) そんなある日、「スカ以外の女性ならどうだろう?」と思いついたのが最後。 こんな形となってしまいました。 でも、基本的にDianaは大嫌いなので、彼女の体の表現なんてなんの抵抗もなく書けてしまう! そして、それに対するMulderもいくらでも嫌な男にできてしまう。 ちょっとした発見でした。 このFicを読んでいただいた方には伝わったかと思いますが、「あだると」の形をとってはいるものの 「モルスカえっち」とは逆で、読めば読むほど「Cool」な気持ちになったのではないでしょうか? 愛のないセックスを書く事によって、これはある意味“ダイアナ撲滅Fic”になったのではないか?と 思ってます。(本人もそのつもりです) 長い言い訳でしたが・・・(苦笑) ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました!