copyright by Twentieth Century Fox Film Corporation The X-Files is a trademark of Twentieth Century Fox Film Corporation *********************** この作品は、RIOSA個人の楽しみのために作ったのが始まりであり、一切の営利目的に 基づきません。 また、本作は「Will&Dana club」シリーズ作品であります。 設定などで、本編とかなり食い違いがありますことをくれぐれも宣言しておきます(苦笑) また、前作を読んでいないと分からない描写があるかもしれませんが、シリーズものですので ご容赦ください。 ***************************** Description for Will & Dana club Serial number:004 Condition:For sweet collecter ***************************** Sweet Destiny -club mix- RIOSA 春の夜の幻みたいに、静かな夜の中、ふっと目を覚ました。 寝息の音に耳をすます。温かい腕は窮屈なほどに私を締め付けているけれど、彼は熟睡しているから、 私は守られていると同時に、彼を守っているような誇らしい気分にもなれる。 私は彼を眠らせている。 どんな大手術に成功した時だって、こうは得意な気持ちにならないだろう。 どれほどの勲章が、ここまで私を優越感に浸らせてくれるだろう。 そっと背中に回した手に力を加えてみる。 胸元に鼻先を押し付けてみる。いつもの自分のソープの匂いが彼から漂ってくるのは、とてもいい気分。 少し汗ばんだ匂いも混じっていて、私達が恋人としてはまだほんの駆け出しだってことを思い出させてく れる。 結局あの休職届けを休暇願いに変更するようにと、スキナーは私に指示を出した。電話で一言付け加えた 彼の上司としての偉大さに、感謝せずにはいられない。 「…スカリー捜査官、よく考えて、結論が出たら話に来てくれ」 そしてモルダーには、たまっている報告書を完成させるまでどこの現場にも行かさないとたくさんの捜査 官の前で宣言したそうだ。つまり、ほとんど出社せず家にいても誰にもとがめられないような仕事を与えて くれた。 一応、自分の中で一週間と決めて、彼の世話を楽しんだ。 私達は今まで互いに立ち入ったことのない領域に踏み込み合い、たくさん話して、たくさんキスして、そ れから抱き合った。そんな時間をとても楽しくて、いとおしいと思う。夢見心地という状態は、こういうも のだったのかという、懐かしさと照れくささも…。 残された休暇はあと一日。 実は、まだ迷っている。これからの私のあり方に。 ----------------- ----------------- 珍しく僕の方が先に起きた。小鳥の鳴き声なんかが聞こえてきて、悪くない目覚めだ。 「ダナ」 なんと言っても、目覚めたときのこの腕の重み。こんなにも、朝をいいものだと思わせるアイテムはない だろう。髪にキスして声をかけたけれど、彼女はまだ起きようとしない。少々、昨夜は疲れさせすぎたかも しれない。まだ病み上がりなのにとは思うのだけど、どうもこればかりは抑制しがたい。今までの我慢の貯 金があるからな…。 「…ん…」 夢見心地に声が零れ落ちてくる。いい夢を見ているのかと顔を覗きこむと、難しい顔をしている。さしず め仕事の夢ってところか?おいおい、なにも僕の腕の中でそんな硬い夢を見なくてもいいだろ。拗ねたよう な気分になって、眠り姫の話のように起こしてやろうと唇を近づけた途端。 「…もし…やめたら…」 意外な言葉に体が止まる。 FBIを辞めるつもりなのか? 泣き出しそうに眉根を寄せているダナの表情をまじまじと見る。もうそんなことまで考え始めていたのか。 心配性の彼女を考えると当然だけど、もっと今のこの状況に夢中になってくれていると思っていたから、少し 驚いた。そういえば一昨日、オフィスに顔を出したときも、スキナーによく考えろと言われた。 命がけの仕事だから、感情が入ると危険だということ。 …もう少しそういう現実的なことは考えずにいたかったんだけどな。 知らずに溜め息がこぼれてくる。男の本音を彼女に言ったら怒るだろうな。本当のところは、まだ君の可愛 い寝癖のついた髪を直す方法や、その流れるような体の線に合った洋服を選ぶこと、ベッドではどんなことし たら喜んでくれるのか、そんなことで悩んでいたいんだけど。 でもこういう仕事を選んできたのは、ほかならぬ僕達だ。 このままだと、二人のことを考えて彼女は辞職を言い出すだろう。でも、それが本当に彼女のしたいことな のだろうか?まだ解いていない、彼女自身の謎だってある。もうそれはどうでも良くなったのか?そんなのは、 彼女らしくない。 どう言ったら、彼女に安心してしたい仕事をさせられるか、真剣に考えてみるか。 ----------------- ----------------- 「海に行こう」 そう言い出したのはモルダーだった。浮かない表情をしたスカリーを急き立てて、自分が彼女のために選ん だノースリーブのワンピースを着せたかと思うと、あっという間に手を引いて車に向かう。 「ホントにもう…。私今日はゆっくりしようと思ってたのよ。昨日だって遅かったし…」 車の中で毒づくスカリー。それでも、仕事のときと違ってまんざらでもなさそうだ。 「車に乗るにはまだ腰が痛いかい?」 「ウィル!!」 恥ずかしそうに叫ぶスカリーにモルダーはウィンクしてみせる。 「フォックス」と呼ぶことに抵抗を感じつつも、「ダナ」と呼ぶ恋人に「モルダー」と返すわけにもいかな いスカリ−の苦肉の策が「ウィリアム」だった。最初そう呼ばれたときは父親のことかと鳩が豆鉄砲を食らった ような顔をしたモルダーだったが、慣れてくると悪くない。  誰も呼んだことのない名前は、まるで二人だけの甘い呪文。 「あ、あそこが綺麗よ」 最初はギャーギャー言っていたはずのスカリーだったが、海が見え始めると大喜び。 「はいはい、お姫様」 春の海は西に傾き始めた太陽の光を浴びて、きらきらと輝いている。人気の少ない砂浜に車を止めて、彼らは 歩き出す。時に手をつなぎ、時に腕を組み。 寄せては帰って行く波に魅せられて、スカリーはモルダーの手を離れる。緩やかな風に朱色のワンピースの裾 がはためく。見ているだけでは物足りなくなったのか、お転婆にサンダルを両手に持って、波のすぐそばを歩き 出す。その少女のような表情に、モルダーはしばらく見とれていた。たくさんの彼女の表情を見てきたつもりで いたけれど、まだまだ彼女はとっておきを隠しているようだ。 「そんなに波に近づくと濡れるぞ」 「平気よ」 得意げに綱渡りのように、波と砂の境目を歩いていく。濡れた砂にスカリーの影、太陽はますますオレンジに 空を染め、それはまるで一枚の絵のよう。その一瞬の芸術作品を堪能できる人間が、この世に自分しかいないこ とを、モルダーは誇りに思う。 「きゃっ」 不意に短い悲鳴が響く。少し大きな波がきて、避けようとしたスカリーがよろめいたのだ。 「ダナ!」 慌てて彼女を抱きとめに走る。  いつだって、そんな彼女を支えるのは自分でなければならない。これほどに甘い責任感はないだろう。 「大丈夫か?」 「ええ、平気よ。ウィル、そんなに急に心配症になられても困るわよ」 言葉とは裏腹に、うれしげにくすくす笑いながらスカリーが抱きついた。 「見てごらん、ダナ。夕焼けが始まった」 潮風の中、しっかりと彼女を抱き寄せながらモルダーが空に向かって顎をしゃくる。その先に視線を向けたス カリーは、その鮮やかな色に言葉を失う。サンダルが足元に落ちて、感動を分け合う証のように、二人は抱き合 い、同じ空を見ていた。 「君のワンピースと同じ色だ」 オレンジだった太陽は、ますますその色を濃くして、今や赤に近い色になっている。 「毎日自分に向かってくる太陽があんなに美しいなんて、海は自惚れるだろうね」 「いやだ、これは目の錯覚よ。実際は地球が太陽の周りを回転しているんだもの」 いかにもスカリーらしい発言に、モルダーは笑ってしまう。 「でも、僕らの目に映るこの圧巻的な美しさは真実だよ。そうは思わないかい?」 「……そうね」 少々自分が、現実的すぎたことに気付いたスカリーが素直に同意した。 「…ダナ。いろいろあるけど、でも、太陽は毎日海に落ちて行く。こうして、空を染めて、海を染めて」 「それは宇宙の決まり事だもの」 「…そういう決まり事に、この項目を付け加えてくれないかい?君と僕が一緒にいること」 遠まわしなその言い方に、しばらく考える。自分を抱く腕の優しさから判断しようとする。溢れるほどの愛情 を感じて、でもスカリーにはまだ彼の真意が掴めない。 「…ウィル…?」 「色んな事は、決まり事の上に成り立つだろう? 君の人生を考えるときに、今の僕達のことをそういう風に考え てもらいたいんだ。…太陽が西に沈むからって、自分の進む道を変える人間はいないだろう?」 すこし照れながら、なんとかモルダーは言い終えた。自分の真意が正しく彼女に伝わっていることを、祈りな がら。 彼の言葉の意味を噛み締めて、スカリーはその胸によりいっそう身を寄せる。生きている生物の証が、彼女の 耳で木霊する。  もしこの音を、彼が自分を庇ったために失ったら?それも運命だと、自分には思えるだろうか?  そんな切なさに涙ぐみそうになるけれど、彼が言いたいことは伝わっていた。 「…ありがとう」 抱きしめあう、互いの想いがより強いものに成長して行くであろう確信。 「太陽にでも誓ってみる?」 赤い髪が光の中でより赤く輝く。そんな光線のプレゼントを慈しむように、モルダーは彼女の髪を梳く。 「…何を?」 その指の動きに心地よさげに目を細めて、スカリーは問い掛ける。 「…笑うなよ?僕達の運命に逆らわないって事にさ」 「…運命には逆らえないから運命って言うのよ?」 笑い出したくなるのをこらえて、スカリーはたしなめるように言って、モルダーの前髪をいじった。茶色い瞳 は、その目尻に切ない微笑を刻みながら、彼女の仕草を見ている。  こんなにあどけない表情も持っている彼女がもし自分を失ったら?  そして、彼女を自分が失ったら?  それでも出来る限り、一緒にいたいと思う気持ちがモルダーの中では強かった。  そう思いつづけられる気持ちこそが運命なのでは?  そんな風に強くありたいと、海を目の前に、違う深さの青を魅せるスカリーの瞳を見ながらモルダーは強く願った。 「今の言い方だと、君も運命だと思ってくれてるんだ」 「え?」 指摘されてはじめて、自分の言葉がモルダーを肯定していたことに気付いたスカリーが赤くなる。嬉しそうに 自分を見る視線から逃げるようにぎゅっとしがみつく。どう言ったものかと、モルダーの胸の中でしばらく考え て、どうしても愛情には理論をつけられないという事実に屈服することにした。 「私の中で、あなたとの事は科学的に説明できない甘い運命になっちゃってるみたい」 「ダナ」 他の女ならいざ知らず、スカリーの口からそんな台詞を引き出せるとは思っていなかったモルダーは、驚きと 喜びで混乱したようなキスを繰り返した。それだけでは物足りなさを感じ始め、薄暗くなり始めた砂浜に押し倒 そうとする。 「ちょっと、ウィル!そこはだめだってば!…もう…」 危険を感じたときにはもう遅く、スカリーのワンピースの胸元にははっきりと新しい痣がついていた。 「…明日から出社なのに…何着てくのよぉ」 「ごめんごめん」 悪いことをしたとほんの少しは思いつつも、モルダーは自分の下で情けない声を出して抗議するスカリーが、 堪らなく可愛くて、謝る声も笑いを含んでいる。 「もう!帰るわよ!」 全く反省しているように見えないモルダーに呆れて、スカリーが彼を押しのけて立ち上がった。 既に太陽は海の中に入りこんで、残り火を紫に燃やしているところだった。 --------------------- --------------------- 帰り道のドライブで、太陽の光に長時間当たって疲れたのか、彼女はすぐに転寝をはじめた。途中で運転を 代わるなんて、こんなに気持ち良さそうに眠っているくせに。でもその言葉の本意、君が僕を家に帰らせよう としていたことは分かっていた。 でも、僕はまだ君が確固たる結論に辿りついていないことを知っていた。だから君が起きないうちに、家ま で戻ってしまわなければと、少し焦って運転している。 甘い運命。 まさかそんな単語、君の唇から零れ落ちてくるとは思わなかったから、すごく嬉しかったんだ。ちらりと目 をやると、胸元には他人だったら目のやり場に困るような痣がくっきり。…確かに、ちょっとやりすぎたな。 あのときは、太陽の光もあったし、そうひどく見えなかったんだけど。 寝顔すらも、仕事のときとはちょっと違うように見える。 明日から、彼女はどんな人生を選び取って行くだろう。もう僕と仕事をすることを拒否するだろうか。それ ともそれはそれだと思ってくれるだろうか?これだけは僕の口出しすることではないだろう。でも僕の願いは 突き止めるべきものを突き止めるまでは、二人でX-Filesを追いかけていくこと。本当は、君もそう願ってい てくれていると、思っているのだけれど。 家はもう近い。まだ寝息が聞こえてくる。どうやら今夜も彼女の隣で眠れそうだ。 --------------------- --------------------- 結局今夜も彼を泊めてしまって、その腕の中ですっかり安心している。 明日からの割り切りのために、今夜は家に戻ってもらわないと、と考えていたのに。遅くなったから、とか 明日遅刻されたら困るし、とか、くだらない言い訳を自分につくって甘えたい気持ちに負けてしまった。始め から帰るつもりなんかなかったらしい、彼の寝息は私の口元を綻ばせつづけている。 ウィル、あなたはこの一週間、私に甘い言葉をたくさんくれたけれど、今日眠る前にあなたがくれた言葉、 今週一番に私を惚れ直させた言葉だった。 寝るような時間になっても、実はまだ私は迷っていた。明日スキナーに会って、なんと言えばいいのか。自 分がどうするべきなのか。どうしたいのかは分かってる。…だけど。その繰り返し。 あなたは結局、具体的に私にどうしろとは言わなかった。 そのかわりに。 「ダナ、明日から「スカリー」を怒らせたら、君にキスできないっていうのはナシだよ?」 悪戯でもするようにそう言って、あなたはにっこり笑って見せた。私は驚いてしまって、気の利いたことを 言い返せなかったけれど、目から鱗が落ちたようだった。 ありがとうのキスすらできなかったけれど、あの一言で思いきれた。自分に結論が出せた。 本当にありがとう。腕の中から少し出て、無防備な頬にキスをした。途端に抱き心地の変化に反応して、温 かい腕が肩の位置を探し出す。そんな仕草に泣きたくなるほどの喜びが私を襲う。そして、少しずつ自信に なって行く。考えるより先に私を動かす愛しいもの。 「運命」なんて言葉が私の口から出るくらいだもの、きっとうまくやっていける。 夢見心地にそう呟いて、目を閉じた。 <おまけの翌朝> 「モルダー!モルダー!何時だと思っているの?!」 『んぁ…?』 「モルダー!!」 『…ダナぁ…?」 「モルダー!!今日は何の日か分かっているの?」  重いまぶたの向こうには、仁王立ちのダナ・スカリー捜査官。 『…分かってるよ、スカリー…でも、もう少しだけ寝かせてくれよぉ…』 「私がそんなこと許すと思っているの?」  スーツ姿もきりりと決まって、彼女は相変わらず、お得意の腕組み&仁王立ち。  ああ…彼女はやっぱり捜査官だな。  そう思うとなんだかうれしさがこみ上げてくる。  僕の恋人は、有能な医者で、切れ者の捜査官で、しかもとびきり美人なんだ…。 「モルダー!!」  ついに痺れを切らした彼女の金切り声が、耳元で響いて、両目がばっちり開いた。  どうにか起き上がり、ベッドから立ち上がる。  相変わらず腕を組んだままの、スカリーが早く着替えろとせかすように睨みあげてくる。  ったく、昨日もこのせりあがった胸に顔を埋めていたっていうのに…ん……んん? 『…ダナ・スカリー捜査官、僕も着替えるが君もそのセクシーなスーツ姿は着替えたほうがいいのでは?』 「??なにねぼけているの?モルダー?」 『…いや、僕のような身長の男性捜査官は何人もいるんだよ、スカリー捜査官。まさか、見下ろす男全員に その鮮やかな愛のしるしを見せつけちゃったりする気なのかい?』 「……っ!」  真っ赤になったスカリーが、あわてて胸元を隠す姿は、ダナと被っていてなかなかに可愛い。 「着替えてくるから、あなたも早く着替えてよね!!」  くるっと背を向けて、彼女は別室に飛び込んだ。  いまさら、着替えくらい、分けることもないだろうに……。  そんな生真面目さも彼女らしいけれど……。    こうして、僕たちの捜査官生活は、再開しようとしている。  真新しい関係の上に開いてゆく事件はどんな展開を見せてゆくのだろう。  甘い味が…するだろうか?   また響くダナともスカリーともつかない叫び声を聞きながら、微笑まずにはいられない僕だった。                                      the end. ******************* 後書き ******************* 一応、「ウィルダナ」シリーズとして、全作品をお化粧直しさせての登場! というのが、このコーナーのコンセプトだったんです。 …とぉこぉろが(森の熊さん調に)、 なぜかこの「sweet destiny」は、何回手を入れても気に入らない。 気に入らないどころか、手を入れてみれば入れてみるほど オリジナルの方がマシだった気になってくる…(とほほほほほ) というわけで、いろいろためしたところ、 この作品はこのままがいいだろう、ということでほとんど触らず出すことになりました。 情けないヤツ!>自分… まあ、全作品読み返しても、 この作品は自分ではお気に入りなので、お許し願えたら幸いです。 自分では、起承転結がわりとすんなり収まっているし 主題も明確なんじゃないかなって思っているのですが…(あ、自己満足だ)。 こんな内容でも、一応UPしてくださるであろう管理者ひよさんと えっちを入れてはもだえ苦しみ、あーでもないこーでもないと 煮詰まり返っていた私と夜な夜なchatを繰り広げてくださったAKUA先生に special thanksでございます。 ご意見・感想・リクエストお待ちしてます♪ sa-yo-h@diana.dti.ne.jp