この物語はフィクションであり、「XF」の著作権等を侵害するつもりではない ことをここにおことわりしておきます。 また、「XF」に関するすべての権利は、クリス・カーター氏及び20世紀FOX社に 帰属します。 クリスマス→サンタ→子供→メルヘン(なんで?) という連想のもと、こんなficになってしまいました。 甘々どころか、モルスカさえ登場しないこのfic。 思いきりメルヘンの世界にどっぷりと自己陶酔して書いております。 それでもよいという方(いらっしゃるのか?)だけ先にお進みください。 お読み頂いた後、御不満な点も多くあるかと存じますが、 罵声、中傷等のメールは御容赦下さいますよう心より お願い申し上げます。 /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ 『つきのかけら』 「父さん!雪が積もってるよ。」 子ぎつねモルは朝起きると、あたりが真っ白なのを見てそう叫びました。 雪は白く輝いて、森に本格的な冬の訪れを知らせているようでした。 「外に出ちゃだめだ。モル。   足跡を見つけた人間がやって来るから。」 父さんぎつねはそう言いました。 まだモルがもっと小さい子ぎつねだったころ、もっともっと小さかった 妹ぎつねのサマンサが人間にさらわれてしまった日から、 父さんぎつねはモルが外に出るのを、とても気にしているのです。 モルもその日のことはよく覚えています。 モルとサマンサの2匹で、お留守番をしていた時に起こったこと。 母さんぎつねがとてもショックを受けて、モルと父さんぎつねを置いて 隣の森に越してしまったこと。 そのことを思い出すとモルは、いつも涙が出そうになります。 でも、オスぎつねは強くなくちゃ。 モルはいつも自分にそう言い聞かせて、泣いたことはありませんでした。 モルはわざと明るく言いました。 「大丈夫だよ。父さん。気をつけるから。  それに今日は、ダナと約束してるんだ。」 ダナはどんぐりの実が落ちるころ、この森に家族で越して来た子ぎつねです。 他の兄弟より赤い毛並みをして、白いエリマキがとてもよく似合う、 とても、きれいな子ぎつねでした。 モルは兄さんぎつねたちと遊んでいるダナを初めて見たとき 「なんてきれいな子なんだろう。」 とぼーっと見つめてしまいました。 すると、そんなモルに気付いた兄さんぎつねのビルが寄ってきました。 そして、 「何、見てるんだよ。」 とモルを突き飛ばそうとしたのです。 とっさによけようとしたモルでしたが、ふいの出来事だったので、 まともにビルの体当たりをくらい、そばにあったきりかぶで 思い切り頭を打ってしまいました。 その時ダナが飛んできて、 「兄さん、やめて。」 とかばってくれたのでした。 これがモルとダナとの最初の出会いだったのです。 兄さんぎつねを追いやってから、ダナはモルに 「大丈夫?ごめんなさいね。」 と言いました。 モルはかぶりを振って 「平気だよ。これくらい。」 と言ってから、 「僕はモル。この先のほら穴に父さんと住んでるんだ。」 と言いました。 「わたしはダナ。よろしくね。」 この日からモルとダナは2匹でよく遊ぶようになりました。 こんな雪が積もった日も2匹は、遊び場になっている森の奥の 池のほとりへ出かけていきました。 この季節になると池は凍ってつるつる滑ります。 2匹はひとしきりのその氷の上を滑って遊び、疲れると隠れ家に している大きな樫の木のうろに入って、お昼寝をしたりしていました。 この池は森の奥深くにあるので、人間もそうたやすく入ってくることは 出来ません。 今日も2匹は遊び疲れて木のうろで休んでいました。 あたりは静かで、時折枝から雪が落ちる音だけが響いています。 ダナが言いました。 「ねえ。モル。月のかけらって知ってる?」 「月ってあの空の月?」 「そうよ。毎年クリスマスになると、神様が月のかけらを落として下さるんですって。  その月のかけらを拾ったきつねは幸せになれるそうなの。」 「ふーん。そうなんだ。どこで見つけられるんだい?そのかけら。」 モルは尋ねました。 「町の入口にある教会の前に小さな泉があるんですって。  イブの夜にはその泉が、神様の落とした月のかけらでいっぱいになるそうよ。  私、今年のイブにはその泉へ行くつもりなの。」 「ええっ。町に向かうのは危険だよ。」 心配になってモルはそう言いました。 「大丈夫よ。人間なんて怖くないもの。」 「だめだって。もし何かあったらどうするんだよ。」 「大丈夫。心配しないで。」 「じゃあ。僕も行くよ。イブの日だね。」 そうしてモルとダナは町へと向かう約束をしたのでした。 そうしてイブの日がやってきました。 モルは父さんが起きないうちにそうっと寝床を抜け出しました。 見つかって心配させたくないからです。 森の出口でダナと待ち合わせをして、2匹は出発しました。 子ギツネだけで森の外へ出るなんて、モルもダナも初めてです。 雪景色の谷や林を抜けて、丘を下ると町が見えてきました。 丘から下には、もう雪はありません。 これなら足跡を気にする必要もありませんでした。 「もうすぐね。」 ダナが言います。 するとその時、 ワンワン! 声がしました。 犬です。 犬がいる所には人間がいる。 モルもダナも父さんぎつねにそれをいやというほど聞かされて いました。 2匹はあわてて、近くの茂みに身を隠しました。 人間の足音が聞こえてきます。 そして、犬の足音も。 見つからないことを祈りながら、2匹は息を殺してうずくまって いました。 足音はだんだん大きくなり、そしてだんだん小さくなっていきました。 どうやら風下にいたので、犬は気付かなかったようです。 2匹はほっと溜息をつきました。 「急がないと暗くなる。」 ダナとぴったりくっついてうずくまっていたことに気付いたモルは、 そう言って慌てて立ち上がりました。 「そうね。急ぎましょ。」 ダナも後へと続きます。 日暮れにともなって町の灯りも目立ってきました。 森にはないそのきらきらした灯りは、本当にとてもきれいで、 ダナは少しうっとりしてしまいました。 「お星さまみたいね。」 「ほら。ダナ。急がなきゃ。」 モルがせかします。 ようやく教会が見えてきました。 でも、あたりは人間でいっぱいです。 人間に見つからないように、教会のそばまで行くのは難しそうでした。 「誰もいなくなるまで隠れていよう。」 モルはそう言ってダナを近くの橋のたもとへと誘います。 橋の陰から、2匹は人がいなくなるのを待っていました。 あたりはすっかり夜で、人間たちがにぎやかに町を行き来していました。 手にリボンのついた大きな包みを抱えている人。 キャンドルをもって並んで歩いている人たちもいます。 あちらこちらで鈴の音や、歌や笑い声も聞こえてきます。 シャンシャンシャンシャン・・・・・。 メリークリスマス! その様子は本当に楽しそうで、モルとダナはいつの間にか 橋のたもとを離れて、通りの真ん中まで誘われるように出てきてしまいました。 「すてきねー。」 ダナがつぶやくように言いました。 その時です。 うしろから誰かに襟首をつかまれ、ひょいと持ち上げられてしまいました。 「きゃあっ!」 「あ、ダナ!」 モルが驚いて振り向きます。 ダナは大男に抱えられていました。 「犬かと思えば、リサ。こんなところに子ぎつねがいるぞ。  プレゼントにはこれで、マフラーってのはどうだい?」 大男は言いました。 一緒にいた女が言います。 「あら、赤ぎつねなんて。  銀ぎつねならもらってあげるよ。」 モルは大男に抱えられてじたばたしているダナが、気がかりでなりません。 「おい、ダナを離せっ!」 足元にまとわりつくのですが、蹴り飛ばされてしまいました。 「モルーっ!」 ダナがモルを呼んでいます。 モルはすぐに起き上がり、必死になって大男に飛びかかります。 「うるせぇ子ぎつねだぜ。まったく。」 大男はそう言うと、片手にダナを抱えたままモルをつかまえようとしました。 「モル!危ない!」 モルはその手をよけながら、必死にダナを助けようとします。 「ダナーっ!」 モルをつかまえようと、大男が腰をかがめた隙に、モルはジャンプして 男の鼻をひっかきました。  「いてっ!」 驚いた男は、ダナをつかんでいた手をゆるめました。 ダナはすばやく男の手から逃げ出します。 「早く!こっちだ。ダナ。」 モルとダナは全速力で駆け出しました。 後ろから、大笑いする女の声が聞こえてきました。 「あはははは。あんたそれじゃあ赤鼻のトナカイだよ。」 後ろも見ずにどれくらい走ったでしょう。 気が付くと2匹は丘の上まで辿り着いていました。 「もう、大丈夫だよ。ダナ。」 立ち止まってモルが言いました。 ダナは息が切れて返事ができません。 「大丈夫?」 モルは心配になって尋ねました。 「・・・ね。モル。」 「え?」 「ごめんね。モル。」 ダナが息も切れ切れにそう言いました。 「いいんだよ。君が無事でよかった。」 「ごめんなさい・・・。私がわがまま言ったから。」 「拾えなかったね。月のかけら。」 「うん・・・。」 「残念だったね。」 モルがそう言ったとき、近くの草むらで何かがきらりと光りました。 「ダナ!来てごらんよ。」 モルはそう言って、光った方へ駆け寄ります。 「ほら、ダナ!月のかけらだよ!」 「本当?」 「ほら。」 「うわぁ!きれいね。」 「君にあげるよ。」 モルはその小さなかけらを拾って、ダナに渡しました。 「モル、幸せになれるかけらなのよ。あなたが見つけたのに。」 「いいんだよ。ダナ。君にあげるよ。」 「いいの?モル。」 「君が持ってる方が僕もうれしいよ。」 「本当に?」 「うん。本当さ。」 「ありがとう。モル!すごくうれしいわ。」 ダナはそう言って、モルのほっぺにキスをしました。 「ダ、ダナ・・・。」 「モル。大好きよ。」 ダナはそういって、大事そうにそのかけらをエリマキの中にしまいました。 それは人間が落としたぴかぴかに磨かれた銅貨でした。 幸せになれる月のかけら。 ダナは一つだけモルに言わなかったことがあります。 それは、もしも。 好きな彼からかけらをもらうことができたら、 永遠に彼と幸せに暮らせるという言い伝え。 「大好きよ。モル。」 照れながら歩くモルの後姿を見ながら、ダナはそうつぶやきます。 イブの夜。 まっしろな粉雪がまたちらつきはじめました。 end /-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/-/ このような拙作におつき合い頂きましてありがとうございました。 ダナ!ってやたら呼んでるモルが書きたかったもので…(汗) モルは子犬でしょーっ!って思った方、その通りでございます。 ごめんなさい。 でも、キツネの神様ってやっぱお稲荷様?とか自分でツッコミ入れながら 書いてた私…。(笑) あ、クリスマスソングも添えるんでしたっけ? ・・・・・(沈黙)・・・・だって色気もなにもないんじゃ・・・。(溜息) 御意見(御指導も含め)、御感想などがございましたら 下記アドレスまで頂けると幸いです。 最後に…。 いつも暖かく私の稚拙なficを掲載して下さる管理人のひよさんに。 モルスカクリスマスというリクエストをこんな形にしてしまった作者より 心から、お詫びと日頃の感謝を申し上げます。 亜里 knd-mh@pop07.odn.ne.jp