DISCLAIMER: The characters and situations of the television program "The X-Files"are the creations and property of Chris Carter, Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended. Title: Wall Chapter 6 Author: Missy Spoiler: none Date: 2000.1.31 ================================================================================================ 「スカリー」 「僕だ。君今どこ?」 「オフィスで報告書を書いてるとこよ。」 「そうか。僕はまだかかりそうなんだ。」 「今回の調査については逐一報告書を出すようにって  スキナーに言われてること忘れないで。  必ず今日中に報告書をスキナーに出すのよ。」 「ああ、分かってる。  君はもう終わるのか?」 「ええ、そろそろ終わると思うわ。」 「そうか。わかった。じゃあ。」 「モルダー」 「うん?」 「報告書、いいわね。」 「ああ。大丈夫だよ。」 「ええ。じゃあ」 「ああ。」 いつもなら鬱陶しく思える電話魔の声を 今日ほどずっと聞いていたいと思ったことはない。 いったいどうしたっていうの? 何かがおかしい。 何が不安なの? 何が怖いの? ああ、イヤだ、こんな感じ。 誰か、・・・・・・ 誰かにどうして欲しいというの? 誰かに頼ろうとするなんて。 いったい、私に何が起きているの? こんなことをウジウジ考えていても何がかわるわけじゃない。 とにかく、報告書を完成してしまおう。 なんとか気持ちを報告書に集中させ、 ようやく完成させてスキナーに提出した。 今日はもう帰ろう。 こんな閉ざされた空間にいるから気持ちが塞ぐんだわ。 =============================================================================================== 時間はどんどん過ぎていく。 なのに今日に限って眠気が訪れてくれる気配はまったくない。 玄関の鍵を回す音、誰かが足音を忍ばせて入ってくる。 寝室のドアが開く。 「報告書は出したの?」 「仰せの通りちゃんと提出して参りました。」 「モルダー、まだ週末じゃないわ。」 「うん。」 そう言いながらも彼が服を脱いでいる音がする。 やがて、彼がベッドに潜り込んで来た。 「モルダー」 「セントラルヒーティングが故障したみたいで、  ひどく寒いんだよ。  君は僕に凍え死ねって言うのかい?」 「モルダー」 「僕の分の朝飯はちゃんと持参したから大丈夫だよ。」 「モルダー」 「ちゃんとシャワーも浴びてきたからね。  汗臭くないだろ。」 「モルダー」 「明日の朝は一緒にシャワー浴びような。」 「モルダー」 「うん?」 暗くて見えないけど、今の彼が子犬顔をしているであろうことは 手にとるようにわかる。 「もうちょっと、そっちに寄って。  落ちちゃうわ。」 「じゃあ、こっちにおいで。  落ちないように抱いててあげる。」 「モルダー」 「抱いて眠るだけだよ。  他には何もしない。  ね、眠るだけだ。」 「眠るだけよ」 「ああ、眠るだけだ。」 =============================================================================================== そう言って、僕の胸に頬を寄せた君は 予想した以上にしっかりと僕にしがみついてきた。 電話での彼女の声の調子。 あの何かに怯えたような感じ。 やっぱり何かがあったんだ。 でも君は何も言わない。 僕にそれを感じ取られることさえ拒むように。 どうしていつもそうなんだ。 どうしていつも自分一人で背負い込むんだ。 確かに僕に話したからって、 僕は何かできるわけじゃない。 君自身が自分の力で解決しなければ 君の心に忍び込んだ何かを追い出せるわけじゃない。 僕だってそれはわかってるさ。 誰かに与えられた答えなんて、なんの役にも立たないなんてことは。 でも、話すことで答えが見つかることだってあるだろう。 僕はその手助けもできないのか。 尋常ではない君の様子が、 僕の不安を煽る。 でも、今は僕がそばにいることを許してくれただけでもよしとしよう。 今は君をただ抱きしめるしかできない。 そして、僕がそばにいることが 君の不安と恐れを少しでも軽くするのなら、 僕はいつまでも君を抱いているよ。 =============================================================================================== 見え透いた彼の嘘を受け入れながら、 この人はどうしてこんなにも私の雰囲気に敏感なのかと 今更ながら彼に自分の弱さを気取られたことに歯噛みする。 でも、今夜はそばにいて欲しかった。 ただ黙って抱きしめていて欲しかった。 私が何かにさらわれないように。 押しつぶされないように。 いったい、私に何が起きているの? いったい・・・・・・ End of Chapter 6 missy@mc.neweb.ne.jp