DISCLAIMER: The characters and situations of the television program "The X-Files"are the creations and property of Chris Carter, Fox Broadcasting, and Ten-Thirteen Productions. No copyright infringement is intended. Title: Wall Chapter 8 Author: Missy Spoiler: none Date: 2000.2.19 ================================================================================================ メモだけを残して逃げるようにオフィスをでた私は 駐車場には行ったものの 車の座席に座ったままで、 時間がどのくらい経ったのかもわからなかった。 とにかく仕事をしなければ。 頭ではそう考えているのに、 心がそれを拒否している。 体が嫌がっている。 明らかに自分が陥るであろう混沌。 仕事に集中できない スカリー特別捜査官としての自己嫌悪。 モルダーをも苦しませるであろう ダナ・キャサリン・スカリーとしての自己嫌悪。 近づいてはいけないと、 頭では分かっているのに、 心が離れられない。 何かが私をひきつける。 どうしていいのか分からなくて、 ハンドルに体をあずけようとしたら クラクションが鳴った。 行こう。 ここで考えていたって何も変わらない。 とにかく動かなきゃ。 キーを回すと同時にセルが鳴った。 相手は誰だか分かってる。 今私が言えることは一つしかないわ。 「ごめんなさい。  一人で考えたいの。  暫く私の好きなようにさせて。」 電話に出ると同時にそう言った私に、 彼は一瞬言葉を失ったようだったが、 ため息を吐き出してから答えた。 「わかった。でも仕事は別だ。  捜査結果についての話し合いは必ずしよう。  僕もひっかかるものがあるから。」 「ええ。夕方までにはオフィスに戻れると思うわ。」 「じゃあ、後で。」 「ええ、後で。  ・・・・・・  モルダー」 「ん?」 「・・・・・・  私が信じてるのはあなただけよ。」 「ああ、わかってる。  僕にも君だけだ。」 「じゃあ。」 「ああ。」 ================================================================================================ 君は最後の言葉を僕にではなくて、 自分自身に言っていたね。 その言葉を自分に言い聞かせるように。 でもね、スカリー。 人間ってやつは 信じていない相手でも愛することはできるんだよ。 裏切られることが分かっていても どうしようもなく引かれることがあるんだ。 僕をスパイする為に送り込まれたんじゃないかと 疑いながらも、 僕が君にひかれたように。 僕が君から離れられなかったように。 そして、僕が君を離せなかったように 他の誰かにとっても君が必要なのかもしれない。 僕が君を独占しすぎてたんだ。 他の誰にも触れさすまいと ずっと目を光らせてたからな。 君は僕といて本当に幸せなのか? アブダクトも姉さんの死もガンも不妊もエミリーも 僕といなかったら、 僕とさえ出会わなかったら。 同じことを何度考えたことだろう。 僕らにとっての ”もし” の重さ。 いくつのもの「怒り」「疑惑」「怖れ」「悲しみ」「傷」「喪失」 そして、「死」と「真実」。 僕が君から奪ってしまった沢山のもの。 僕が君にあげられない多くのもの。 君が僕にくれた光。 でも、ダメなんだ。 君は僕にとって水や空気と同じ。 なくては生きていけない。 僕は君の為なら何でもするよ。 けど、君を僕のもとから去らせることだけはできない。 たとえ、それが君を不幸にすることでも、 これだけはできないんだ。 ================================================================================================ 車のエンジンをかけながら、 くだらない仕事だったはずの汚職事件が 僕達に予定外の波紋を投げかけたことに やっぱり、上の奴らは僕らを引き離そうとしているのかと 勘違いな怒りを感じたりする。 スカリー、僕はどうしたらいい。 どうしたらいいんだ。 End of Chapter 8 missy@mc.neweb.ne.jp