この作品はあくまでも作者の個人的な楽しみに基づくものであり この作品の登場人物、設定などの著作権はすべて、クリス・カーター、 1013、20世紀フォックス社に帰属します。 また、参考にさせていただいた次の歌も私に帰属するものではありません。 『おだやかな構図』by 来生たかお TITLE     - with - by  yuria モルダーとスカリーは恋人同士の設定になっています。 これは作者の楽しみのために書いた作品です。 ******************************************************************************************** Scully's apartment 10:37 pm Knock, knock, knock... PCに向かい、仕事の報告書を仕上げるいつもの時間 聞きなれたノックの音に、おもわず笑顔がこぼれる自分に気がつく。 夢中で仕事をしていたつもりなのに心の奥ではいつでもあなたを待ってる私がいる。 椅子をひくことももどかしく、急いでドアへ向かい一呼吸おいてからあなたへとドアを開ける。 "Hi, Scully" いつものあなたの穏やかな笑顔が見下ろしてくる。 "Hi, Mulder" 私はいつもちょっと背伸びをしてあなたのキスを受ける。 ひんやりとしたあなたの唇から外の冷気が伝わる。 「体が冷えてるわ。今熱いお茶を入れるから、かけて待っていて」 あなたのロングコートを受け取ってコート掛けにかけながら、 そのままキッチンへ向かう。 あなたはスーツの上着を脱いでネクタイを外し、ソファの上へと投げ、指定席へ身を 沈ませる。私はその様子を音で感じながら2人分のお茶を用意し、 ひっそりとした部屋に響く、かすかなあなたの音を楽しむ。 キッチンの鏡で大きく胸の開いたシルバーグレーのVネックのカーディガン の襟元を直し、黒のピッタリとしたスラックスをチェックする。 そして、髪をさっと両手で整えてからトレーにあなたと私のTea cupをのせ、 リビングへと向かう。 あなたは眼鏡をかけ、ソファに長い足をなげだして本を読んでいる。 お茶を置くと「ありがとう」と優しく笑い、「仕事かい?」とPCの方へ 顔を傾けてあなたが尋ねる。 「僕はこれを読みたいから君は仕事を続けろよ」 あなた流の気づかいに、おもわず微笑みながら 「そうさせてもらうわ、ありがとう」と、私。 おだやかな2人の夜に沈黙が流れる。 1人でいる時の“それ“とは種類の違う、心地よい沈黙。 ことばの要らない、やすらぎの時。 あなたの長くて美しい指がページをめくる音、時折のセキ払い、 時計が時を刻むゆったりとした音に、私のタイプ音が歩調を合わせる。 それらがひっそり響く、2人のいつもの夜。 私の特別な時。 どのくらい時間がたったのだろう、一口飲んだお茶の冷たさに我に返り、 あなたへ振り向く。あなたは気づかず、本を読みながら右手で栗色の柔らかい髪を 掻き揚げ、瞳は活字を追いつづける。 きっと私がここにいることすら、忘れてる。 お茶を入れ替えようと手を伸ばすと、突然あなたの手が私を引き寄せ、 驚いてバランスを崩した私を、抱き寄せる。 ソファに投げ出していた長い足を床に下ろし座りなおすと、眼鏡を外し 目をまぶしそうにしばたいて私を見つめ、てれくさそうに微笑んで 「好きだよ」と低い声。 愛しいあなたのヘーゼルの瞳が私を映し、 「私もよ」と答える自分のかすれた声を聞く。 2人の唇が優しく重なり、再び甘い沈黙が訪れる。 ゆったりと時は流れ、おだやかに夜は過ぎる。 読みかけの本があなたのヒザから床へと滑り落ちる。 あなたの香りに包まれながら、心の奥にしまいこんだはずの 私の願いが目を覚ます 『このままずっと。。。』 あなたのすべてを愛しく思う。 風にゆれる少しクセのある栗色の髪、 イタズラ気なヘーゼルの瞳、 柔らかな唇、 懐かしい香り、 私の名を呼ぶ低くて甘い声、 繊細な指先、 傷つきやすい少年の心。 そのすべてをいつも側で感じていたい。 あなたのとなりで、おだやかに、いっしょに年を重ねて行けたら。 このまま一緒に暮らしましょう ねえ、Mulder。。。                           − end − ********************************************************************************************                                             【あとがき】 『おだやかな構図』 私の大好きな曲です。 この曲をベースに、モルダーとスカリーにも幸せになってもらいたくて この作品を書きました。 モルダーに眼鏡を外す仕草をしてほしい! その一心で書いたようなものでもあります。     どうかこの2人に、静かで穏やかな夜が再びおとずれますように・・・。 Oct 2000            - yuria -    yuria@duchovny.i-p.com