サクラサク

 

 

 

 「さくらさんと一緒にお食事できるなんて夢みたいですわ」

 広々とした大道寺家の食堂で知世は嬉しそうに笑う。
知世の両親は常に忙しく飛び回っており、生まれてこの方家族揃っての食事など数える程だった。金持ちの娘と言うことで周囲の人間からも特別視され、友人もなかなか出来ずに育った。また近付いてくる者達は皆何らかの思惑があり、利発な知世にはそれが何より苦痛だった。
 
 木之本桜に出会ったのは丁度1年前、3年生のクラス替えの時。
友人もなく休み時間になっても独りで席に着いたままの知世に桜が笑いかけてきた。
「はじめまして!わたし木之本桜、友達になろうね」
屈託のない明るい笑顔、差し出された白い手は春の日差しそのもので、表情豊かな桜は知世が知っていた他のどんな人間より魅力的で眩しかった。


「ほえ〜、わたしこんなごちそう食べたことないよ!いいなぁ知世ちゃん」
 贅沢な食材をふんだんに使った豪華な料理に桜が目を丸くしている。その様子を見つめながら知世は微笑んだ。
 今日桜は是非にと促され大道寺の家に泊まりに来ていた。
「私にとってはさくらさんと食べる給食の方がごちそうですわ」
日頃独りで食事をする知世にとってはどんな豪華な食事も味気ないものだったが今夜は違う。桜の存在が嬉しかった。
 桜と出会ってから知世の世界は一変した。それはまるでモノクロームの景色の中に桜色のインクを一滴落としたようなそんな感覚だった。知世にとって桜は本当に舞い降りた天使そのものだった。毎日桜に会うために学校へ行っていると言っても過言ではない。クロウカードの事を知ったときは歓びで胸が震えた。
「わたし達だけの秘密ね」
 それは知世に陶酔にも似た感覚を与え、何度も秘密という言葉を心の中で繰り返した。
心から大切に出来るものをようやく手に入れたと思った。そう、あの少年が現れるまでは…

「おなかいっぱ〜い!もう何も食べられないよ〜」
椅子に反っくり返って笑う桜に、知世もつられて声をあげて笑う。
「じゃあ、私の部屋でお茶でも飲みませんこと?まだデザートもありましてよ」
 食堂を後にして長い廊下を抜け、連れだって知世の部屋に入った桜は思わず息を飲んだ。壁という壁に貼られた桜の写真。
「と、知世ちゃん恥ずかしいよ〜こんなに…」
 顔を真っ赤にして照れる桜をよそに知世は言う。
「まだまだ飾りたい写真がありますのよ。私の部屋が狭いばっかりにこれしか…お父様に言ってもっとお部屋を広くして貰わないといけませんわ!」
 桜の部屋の何倍もあろうという広さも、知世の想いを詰め込むには充分ではなかったらしい。
 あまりの気恥ずかしさに俯いたままの桜の手をとってソファに座らせ、知世は紅茶を入れる準備を始めた。上品なウエッジウッドのカップに透き通った赤い液体が注がれ、ほんのりと桜の葉の香りが漂ってくる。
 この日のために知世が自分で探して買い求めたものだ。
「いい匂い!それに美味しいね〜」
 屈託の無い無邪気な笑顔、今まではその全てが知世に向けられていた。
 側で見ているだけで充分だった。もし桜に好きな人が出来ても自分は必ず祝福出来るとそう思っていた。桜が幸福であることが自分の幸せだと信じて疑わなかった。
 だが、現実に桜の心が動くのを目の当たりにしたとき、知世の中に芽生えたのはどす黒い嫉妬でしか無かった。
「知世ちゃん?どうかしたの?」
 かつて自分がいた場所にあの少年がいる。自分ですらかなわなかった桜を守るという行為をいとも簡単にあの少年はこなしてしまう。
「何でもありませんのよ。それよりさくらさんに気に入って頂けて嬉しいですわ」
 兄の友人に憧れを抱く桜の事を素直に応援することはできた。『今日は話が出来た』と言ってはしゃぐ、小さな事一つ一つに一喜一憂を見せる桜を愛しく思ったし、その淡い初恋を暖かく見守ることができた。
「知世ちゃんはいつでもわたしに何でもしてくれるのね…」
 嬉しそうな桜の顔を見るのが楽しかった。
「さくらさんが大好きだからですわ」
 桜が幸せならそれでよかった。
「わたしも知世ちゃん大好きだよ!」

 −−−−−桜を幸せにするのは自分である筈だった。

「さくらさんにそんな風に言って頂けるなんて、本当に嬉しいですわ」
 力の抜けた桜の指から滑り落ちてゆくカップが、知世の瞳にはスローモーションの様に映る。
    カシャン…
 白い破片が床で砕け散った瞬間、今までの上品な微笑みとは違う表情が知世を支配していた。



 身体が浮遊するような不思議な感覚に桜の意識はぼんやりと覚醒した。
 ほのかな灯りの中にまだ焦点の合わない瞳を凝らす。長い黒髪がさらさらと音をたてて流れている。
「知世…ちゃん?」
 知世と紅茶を飲んでいたのは憶えている、だが突然意識が無くなってしまったのが何故か桜には理解できなかった。
「さくらさん…綺麗ですわ。それになんて可愛らしいんでしょう」
 天蓋の付いたベッドに横たえられた桜は純白のドレスを着せられていた。ようやく目の慣れた桜は驚き身体を起こそうとしたがそれはかなわなかった。
 手足が妙に痺れて動かない。
「と、知世ちゃん?わたし…どうしちゃったの?」
 知世はうっすらと微笑んだ。それは桜の知らない微笑みだった。
「わたし、決めましたのよ。さくらさん」
 優しく頬に触れながら熱を帯びた瞳で知世が言う。柔らかな白い指がくすぐったくて桜が身をよじろうとしたとき、そっと知世の唇が重ねられた。
「え?…ともっ…?!」
 桜は知世の行為の意味が理解できずにいた。それは普通男女の間でされるもので、外人が挨拶にするものともまた違うものだった。
 ゆっくりと確かめるように唇をなぞっていた知世の舌が滑り込んできた時も、桜はまだこれから自分の身に起きることを予見できずにいた。
「さくらさんの唇、思ったとおり柔らかですわ」
 知世は陶酔したように微笑みながら 頬に、髪に口付ける。耳を甘噛みされたときに走った小さな快感がやっと桜に現状を把握させた。
「やだ、知世ちゃんっ、やめて!」
 力一杯抵抗しようとしたが相変わらず四肢に力が入らない。
「さくらさん、紅茶を沢山お飲みになりましたわね。美味しかったでしょう?」
 知世は微笑みを浮かべたまま、桜の胸のボタンを一つ一つ丁寧に外してゆく。先程の紅茶に何かが入っていた事を知らされた桜は愕然とした。
 知世の行動が理解できない、一番の親友であり自分をとても大切にしてくれる彼女が何故…?
「知世ちゃん…どうして?どうしてこんな事…」
「さくらさんが大好きだから…ですわ」
 露わになった首筋に知世の唇がそっと触れる。感触を楽しむかのように少しずつ位置を変え触れるか触れないかの愛撫を繰り返した。
「わ、わたしも知世ちゃん大好きだけど…でも…」
 戸惑いを口にできずにいるうちにくすぐったいだけの感覚が徐々に別のものにかわってゆく。
 手足は痺れているのに知世に触れられた場所だけが熱を帯びたように熱い。まだ幼い小さなふくらみに知世の白くて華奢な指が触れる。
「っ…あん」
 触れるか触れないかの柔らかい指の感覚に桜の身体が震える。まだ誰も触れたことのない突起を口に含みそっと舌で転がすとほんの少し堅くなった。
 優しく絡みつくような知世の舌は決して強い刺激を与えることはない。
「知…世ちゃ…」
 目覚めたときとは違う浮遊感が桜の身体を徐々に支配していく。柔らかな愛撫に意識はぼんやりと宙を漂い、服のボタンを全て外され知世の手が下着にかかった時にようやく我に返った。
「知世ちゃん!?」
 羞恥で顔を赤らめながら必死に抵抗しようとする桜だったが、薬のせいで暴れることもできない。痺れのとれはじめた腕が虚しく空を切った。
 そんな動きを意に介さず、知世はうっとりと桜の肢体を見つめていた。
「さくらさん、本当にお綺麗ですわ…」
 修学旅行で一緒に入浴したときはこんな恥ずかしい気持ちにはならなかった。だが生まれたままの姿にされた自分を、きっちりと服を着た知世に見つめられるのはいたたまれなかった。
「や…やだ…」
 少しずつだが動くようになった手足でなんとか隠そうと身をよじる。
「まあ、お薬が切れてきたんですのね?」
 知世はそう呟いてブラウスの胸のリボンを外し、桜の右足首に巻き付けた。
「?」
「ごめんなさい、さくらさん」
 そして膝を抱えるように持ち上げ、桜の右手首にもリボンを巻き付け堅く縛る。
「いやっ、知世ちゃん!こんな格好っ」
 知世は桜の叫びを無視して髪のリボンを解き、もう片方の手足も同じように縛った。
 他人になど見せたことのない場所を露わにされ、羞恥のあまり桜の瞳からは涙が零れる。
「やだ…やだようっ…」
 知世の顔が涙で霞んで見えない。ここに居るのは自分の知っている知世では無い。そう思った、いや、思いたかった。『大好きな知世ちゃん』はいつも優しくて自分の嫌がる事は決してしない。そう信じていたのに…
「泣かせてしまうなんて…ごめんなさいさくらさん」
 涙で濡れた桜の頬に知世の唇が触れる。
「さくらさんを盗られたくなかったんですもの」
 潤んだ瞳に映った知世の顔はとても哀しそうだった。
「知世ちゃん…」
 桜が知る限り知世がこんな表情をしたことは無い。いつでも笑顔で桜を励まし、助けてくれた。初恋の人の話をしたときも優しく微笑んで応援してくれた。そう、知世はいつも桜の側で微笑みを絶やさなかった。
「さくらさんのためならなんでもして差しあげますのに…」
 知世の指がゆっくりと脇腹をなぞり臍から足の付け根に向かい下腹部に滑ってゆく。桜の身体は快感に震えた。
「あっ…ん…」
 まだ毛の生えていない桜の秘部はピンク色で、何者にも侵略されていない聖域だった。誰でもない自分が初めてそこに触れると思うと知世の胸は歓びで高鳴った。
「なんて可愛いんでしょう、さくらさん…」
 堅く閉じた蕾に沿って下から上に優しくゆっくりと指で撫で上げる。クリトリスを少し刺激するとぷっくりと膨らみ更に敏感に感じるようになった。
「やっ…ん…あ」
 足を閉じようとしても知世のリボンの戒めがそれを許さない。
「感じやすいんですのね、さくらさん」
 何度も丁寧にその花弁に沿って指を這わす。決して無理にこじ開けたりはしない。花びらが開くのを待つように知世の指は優しい愛撫を続けた。
 今まで他人に触られた事など無かった桜の秘部は、やがて蜜を蓄えながら開き始めた。
 羞恥と与えられた愛撫による快感がじわじわと桜の身体を支配し、熱い吐息が唇から漏れる。
「はぁ…んっ…」
 膝を立てられた両足が小刻みに震え、刺激が与えられる度にぴくりと跳ねる。幼い花びらからは蜜が流れ出し知世の指を濡らした。最初撫でるだけだった指の動きはゆっくりとしかし優しく花びらを押し開きピンク色の肉襞を露わにする。桜の蜜を指で拭いクリトリスをいじると、ぬらぬらとした感覚が余計に快感を引き出していく。
「気持ちいいでしょう?さくらさん」
 今まで体験した事のない快感で桜の理性は麻痺し始めていた。未発達の心と身体は与えられた強すぎる刺激の虜になりつつあった。
「うん…気持ち…いい…」
 桜の言葉に知世は微笑んだ。
「さくらさんが喜んでくれて本当に嬉しいですわ」
 知世の柔らかい指が更に刺激を与えると桜の秘部は淫猥な音をたて、その蜜を溢れさせる。指の動きに合わせて歓喜の声が桜の口から零れた。
「あ…んんっ…はあっ…知…世ちゃん」
 知世がその指の動きを止めた。突然の快感の喪失に桜は瞳を潤ませ哀願するように知世を見つめる。
「どうしたんですの?さくらさん」
 桜の答えを待つかのように知世は服を脱ぎ始めた。知世の白い肌に漆黒の髪が映えて、桜と同じ年齢なのに醸し出す雰囲気は大人のそれのようだった。
「…知世ちゃん…」
 腰をくねらすように刺激を求める桜に知世は尋ねる。
「さくらさんの為ならなんでもしてさしあげますわ?」
 知世の指で嬲られた桜の秘部はひくひくと震え更なる快感を求めていた。幼いながらも雌としての本能を呼び起こされた身体は熱く火照り続けている。
「気持ち…いいの…もっと」
「もっと…なんですの?」
 既に桜の心は快感だけを欲していた。
「もっと…して…知世ちゃん」
 知世は微笑みを浮かべて桜の戒めをとき始めた。
「これはもう必要ありませんわね」
 リボンが外されほんのりと跡の付いた手首をいたわるように口付ける。重ねられた知世の素肌がまた違う快感を桜に与えた。知世の指が再び秘部に辿り着いたとき、桜の身体は悦びで戦慄いていた。時に優しく、時に激しくうねるような指の動きに嗚咽のような声が漏れた。
「あんっ…はぁ…んっ…」
 滴り落ちる蜜が純白のドレスに染みを作る。幼い身体は貪欲に更なる刺激を欲して腰を動かし始めた。
 くちゅくちゅと言う淫猥な音が部屋に響く。半開きの唇からは唾液が零れ、淫らな微笑みが浮かんでいた。
「あっ…ふぅん…あん…知…ちゃぁん…」
 普段の桜とは違う鼻にかかった甘ったるい声で知世を呼ぶ。その声に応えるように知世は愛撫を強めた。波が押し寄せるように刺激が与えられ桜の感覚は知世の指の動きだけに翻弄されている。耐えきれない桜の腕が知世に縋り付くように絡む。
「可愛いですわ、さくらさん」
 追い上げるような知世の指に桜は絶頂を迎えた。
「あっ、あああぁぁっ!!」
 
 
 放心したように宙を見つめる桜にそっと口付ける。まだ呼吸の整わない唇にそっと舌を差し込むと敏感になっている身体が跳ねた。歯列をなぞり、舌を絡めると応えるように桜の舌が動く。先程のキスとは違い艶めかしく求めるように知世の舌を絡めとる。溢れ出た唾液を知世がすくうように舐め取ると細く糸を引いた。
「大好きですわ、さくらさん」
 囁く知世に桜はうっとりと微笑みながら応える。
「わたしも…知世ちゃん大好きぃ…」



「さくらさん、週末はあいていらっしゃいますか?」
 机を向かい合わせに並べて給食を食べながら知世が尋ねる。その言葉に桜は頬を染めて頷き、膝をもじもじさせながら言葉を続けた。
「今日ねお兄ちゃんバイトで遅いし、お父さんも遅くなるの…」
 
 じっとりと下着を濡らしながら桜は放課後を待ちわびる。『大好きな知世ちゃん』と共に過ごす時間を夢見て…。

 

 

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