いつものように、登校するしのぶ。
下駄箱で上履きに履き替える。
そして元気に駆け出そうとしたしのぶの足元に、いきなりつっかえ棒のように足が現れた。
「きゃあっ!?」
足をひっかけられたしのぶはそのまま前のめりになり、べちょりと床に顔を打ちつける。
「いたたた...」
顔をしたたかに打ち、うつぶせのままで顔をあげる。
そこには足を突き出したクラスメイトが立っていた。うすら笑いをうかべてしのぶを見下ろしている。
その姿に気づくと、しのぶは体についたほこりを払いながら立ちあがり、
「お...おはようございます!」
その小さな体が二つに折れ曲がったのではないかと思うほど、しのぶは深く深く頭を下げて挨拶する。
この男がしのぶの足をかけたのは明白なのだが、しのぶは怒りもしない。
男はしのぶの挨拶の返事もかえさず、そのままどこかへ行ってしまう。
しのぶは誰かと出会うたび、先程のようにぺこぺこと頭を下げながら挨拶をしていた。
しかし、返事をする者は誰もいなかった。
途中、何度か心ないクラスメイトによって突き飛ばされたり、足をかけられたりして転ばされるしのぶ。
しかし明らかに転ばせた相手がわかっていても、しのぶは怒りもせず、かわりに丁寧な挨拶をかえした。
そのせいかしのぶには生傷が絶えなかった。
本来ならば保健室にいって手当てをしてもらうのだろうが、
保健室の教諭もしのぶの苦痛に歪む顔を見るのを身上の喜びとしており、
ヨードチンキと偽って紅ショウガの汁を塗ったりされるので
もう保健室には近づかないようにしていた。
教室に着くまで何度か廊下を転ばされたせいで、家を出る時には真新しかったしのぶの制服はもううす汚れていた。
「おっはよ〜! しのぶちゃん!!」
「きゃあっ!?」
教室に入ると不意に、背後から制服の中に無造作に手を突っ込まれる。
しのぶの制服の中に手を突っ込んだ男は、器用にしのぶのブラを下ろし、まるで当たり前のごとくその乳房を触りはじめる。
「あっ、お、おはようございます...」
きゅっと、乳首がつままれた。
「あっ、や、やめてくださいっ」
もぞもぞと制服の中を動の手を上から押さえて必死に抵抗するしのぶ。
「今日もちっちゃいムネだね〜」
くにくにとしのぶの乳房をひねるように揉む。
「いやぁ...やめてくださいっ」
始業のベルが鳴った。
「おっと、じゃあまた後で揉増せてね。しのぶちゃん」
男はするりとしのぶの制服に忍びこませた手をぬく。しかしそのついでに手品のようにしのぶのブラを抜いていった。
「えっ? あ、返してくださぁい!!」
ブラをひらひらとなびかせて席に戻ろうとする男を、しのぶはぱたぱたと追いかける。
「前原! 何やんてんだ! 授業を始めるぞ!」
教壇の上から、担任の怒鳴り声が。
「あっ...す、すみませんっ!」
もうクラスメートは全員席につき、授業の準備をしていた。
まだカバンを背負っているのはしのぶだけだった。
クスクスとあちこちでしのぶに対する小さな嘲笑が起こっていた。
しのぶの瞳が、わずかに潤んだようであった。
. . . . .
次の授業は移動教室だ。
しのぶは休み時間の間にその教室に向かっていた。
しかしその教室の前の廊下で、不意に背後からしのぶの背中を押す力があった。
「きゃあああっ!」
その力にうつぶせに倒されるしのぶ。
その勢いでスカートがめくれ、かわいい犬のイラストのバックプリントのついたパンツが露になる。
男にお尻を大きく突き出した形となる。
「もーらいっ!」
男は言うが早いが、器用にするりとしのぶのパンツを脱がした。
「ああっ!」
あわてて押さえようとするが、もう遅かった。
男の手によって、しのぶの小ぶりな尻が晒されてしまう。
「どーん!」
男はふざけたように叫ぶと、足元にあったしのぶの尻を足の裏で押すように蹴る。
「きゃ!」
またべしゃりとうつぶせにさせられる。勢いあまって磨かれた廊下を1mほどすべっていく。
「うう...」
なんとか起きあがったしのぶは、上目づかいで男を見上げる。しのぶの瞳はわずかに水を張ったようになっていた。
「...わたしの...ぱんつ、帰してください...」
小声で哀願するように言うしのぶ。恥ずかしいのか「ぱんつ」の所だけは蚊の鳴くような声になる。
「ああ? なんだ? この汚いパンツがお前のだっていうのか!?」
男はわざと周りに聞こえるような大声で叫びながら、頭の上にしのぶのパンツをかざし、両手で力いっぱい伸ばす。
男の手によってびろんと伸ばされたのぶのパンツ。伸びているせいでバックプリントのイラストは犬ではなく牛みたいに見える。
「あ...あの...」
片手を口にあて、恥ずかしそうにあたりをきょろきょろと見まわすしのぶ。
男が大声をあげたせいで、数人の生徒が立ち止まり、座りこんだしのぶを見てクスクスを笑っている。
「どうなんだ? この汚ねぇパンツがお前のだって言うんだったら返してやるよ、ほら、とりにこい」
男はしのぶのパンツを片手でつまんでひらひらとしのぶの前でなびかせる。
「あ...ありがとうございま...あっ!」
しのぶが手をのばした瞬間、男はパンツを持った手をひっこめて再び頭上にあげる。
「ほらほら、こっちだぞ〜」
男はしのぶをからかうように頭上でパンツをひらひらとさせる。
「か、返してください!」
しのぶはぱんつに飛びつこうと、ぴょんぴょんと必死にジャンプする。
しかし、身長の低いしのぶには、ジャンプしても僅かに男の手のパンツに届かない。
「ほら、パスっ!」
男は近くを通りかかったクラスメイトに、パンツを投げた。
投げられパンツで一気に現状を理解したクラスメイトは、ぱっとパンツを受け取ると、
やってきたしのぶよりわずかに早くパンツを頭上に掲げた。
「お、お願いします! かえしてください!!」
またぴょんぴょんと飛びはねながらパンツを取ろうとする。
小動物的なしのぶの動きは、男たち、いや廊下を通りすぎる生徒たちの目を楽しませていた。
「あの子、またパンツ取られてるよ、恥っずかしい〜」
通りかかる女生徒たちが、しのぶを指さして笑った。
「こらーっ! 前原!! 廊下を走るんじゃない!!」
いかつい形相の教師らしき男が、しのぶをからかっていた男たちの間をぬけて、しのぶの元にずかずかと歩いてくる。
「あっ、すみません! すみません!」
ずかずかと歩いてくる教師にびっくりして、ぺこぺこと頭を下げるしのぶ。
しのぶが悪かったことなど一度もないのだが、教師はいつも、しのぶだけを叱った。
さっきまでしのぶをからかっていた男たちは、しらけたように散っていく。
しのぶの瞳は、水にぬれたようになっていた。
しのぶの下着は、上下ともに下校まで無事だったためしがない。
今日もいとも簡単にクラスメートにブラ、パンツともに取られてしまった。
彼らはこの下着をしのぶの生写真つきでブルセラショップに売り、小遣いを稼いでいた。
「このいまにも泣き出しそうな困った顔がいいね」と、
しのぶの下着はしのぶの全く知らないところで入荷と同時に売れるほどの大人気を見せていた。
. . . . .
休み時間。
「おい、前原」
しのぶの身体を大きな影が被う。
この声。この気配。しのぶはびくんとなる。
見上げると、いかにも不良そうなガラの悪い男が立っている。
くちゃくちゃとだらしなくガムを噛んでいる。
「あ...せ、先輩...お、おはようございます」
例によって深々と頭をさげるしのぶ。勢いあまって机に額をごつんとぶつけてしまう。
「いたた...」
その様子を冷ややかに見下ろしながら、先輩は言う。
「おい、ガム喰うか?」
逃げるように身を縮こませるしのぶ。
「い...いえ...結構です...」
いつものやりとりが続く。
「遠慮するなって」
そして、いつもの答えにたどりつく。
「は...はい...じゃあ...いただきます...きゃあ!」
先輩は噛んでいたガムをペッとしのぶの髪の毛めがけて吐きかける。
避けようと身を縮こませるしのぶだが、無情にもガムはべちょりとしのぶの髪の毛に付着する。
「家に帰るまでそうしてるんだ」
先輩は付着したガムが取れないように髪の毛になすりつける。
「あ...は、はい...」
しのぶの美しい黒髪を蹂躙するかのように、ピンク色のガムがべったりと付着していた。
授業中。
「おい、前原、なんだその髪かざりは。校則違反だろうが」
教師はしのぶの頭にガムが付着していると知りつつ、からかうように言った。
「す、すみません!!」
しのぶは立ちあがって、ぺこぺこと頭を下げた。
どっと湧き上がるクラスメイト。そして嘲笑の渦。
このクラスには、しのぶの味方などひとりもいなかった。
しのぶはひとりうつむいて、その好奇と嘲笑の視線に堪えるしかなかった。
しのぶの瞳は、まるで水をたたえたかのように潤んでいた。
. . . . .
放課後。
掃除当番であるしのぶは、うでまくりをしながら「ふん」と気合を入れて掃除をはじめた。
本来の掃除当番は別にいるのだが、いつもしのぶに全部押しつけて帰ってしまう。
それをクラスぐるみで行っているものだから、しのぶは毎日ひとりで掃除当番だった。
本来掃除は好きだったので、ひとりになれるこの時間は、しのぶはまんざらでもないと思っていた。
鼻歌を歌いながら、丁寧に雑巾で床を磨くしのぶ。
しかし、その軽快な鼻歌も強制的に中断させられた。
「おい!」
声とともに、ばしゃっとしのぶの頭から水が浴びせかけられる。
「きゃあああっ!?」
男はしのぶが掃除に使っていたバケツの汚水をしのぶの頭から浴びせかける。
雑巾をしぼった汁でバケツの水は真っ黒になっていた。その水を浴びせられたのだ。
顔からしたたる汚水をぬぐいながら、必死に相手を確認する。
「な、なんでしょう?」
体のあちこちからぽたぽたと濁った水滴をしたたらせながら、上目づかいで、いつもの困った顔で見上げる。
「なんでしょうじゃねーだろ! さっきから呼んでんのに無視しやがって!」
男は一度もしのぶを呼んでいない。ただ難癖をつけているだけだった。
「そ、そうなんですか!? す、すみません!」
しかしそんなこととはつゆしらず、しのぶは濡れねずみの格好でぺこぺこと頭を下げた。
自分の望んだ通りの反応をしてくれるしのぶは、男たちにとって格好のオモチャだった。
男はカラになったバケツをほおり投げると、
「おい、まだ綺麗になってないところがあるぞ」
意地悪そうに言う。
「えっ、どちらですか!?」
きょとんと目を丸くするしのぶ。
「ついてこい」
そう言うと男はしのぶに背を向け、教室から出た。
「あ、はいっ!」
制服を乾かす間も与えられず、しのぶはずぶ濡れのまま男の後をぱたぱたと追った。
「ここだ」
ひんやりとした空気。
「おトイレ...ですか?」
しのぶの前には、扉の開かれた男子便所があった。
「そうだ」
しのぶ自身、男子便所など入ったことどころか、中を見るのもはじめてだった。
「えっ...でも...」
ここは掃除当番の担当区域ではない、と言おうとしたしのぶ。
「掃除当番だったら汚れてるところはどこでも掃除するのが義務だろうが!!」
言いよどむしのぶに、わざとらしいくらいの大きな声で怒鳴る。ビクッと目をつぶり、肩をちぢこませるしのぶ。
怒ってみせればしのぶはすぐに言う事を聞く。
「す、すみません! すぐにやります!」
またぺこぺこと頭を下げると、ぱたぱたと男子便所の奥にある掃除用具入れに駆けていく。
掃除用具入れを開けようとするしのぶの手を、上からつかむ。
「誰が掃除用具使えっつった?」
ギロリとにらむ。
「えっ...じゃあどうやってお掃除を...」
男の機嫌を伺うようなおびえた表情で聞く。
男はその表情を楽しみながら、無言でしのぶの頬を掴む。
「舌だよ! お前のその舌で舐めて綺麗にするんだ!」
クニッと口を開かされ、その奥にはかわいらしい舌がのぞいていた。
「そっ...そんな...」
許しを請うような目で男を見るしのぶ。その瞳には涙がいっぱい浮かんでいる。
その表情に、男の背筋がゾクゾクとなる。
「ふぇぇぇぇ...許してくださぁい...」
しのぶの必死の哀願も、男には甘美なBGMでしかなかった。
「さっさとやるんだよ!」
「あっ!?」
男はしのぶの頬を掴んだ手を離し、かわりに前髪を掴む。
力づくで引き倒すようにして小便器の前にひざまずかせる。
「ほら、舐めるんだよ!」
男は前髪をひっぱってしのぶの顔を小便器にこすりつけるようにする。
「い...いや...」
しのぶの返事を聞くと、男はつかんだ前髪を前後に動かし、しのぶの顔を軽く便器に打ちつけるようにする。
しのぶの顔が便器に当るたびに、ゴツン、ゴツンという音が響く。
「ほらほら、とっととやるんだよ!」
ゴツン、ゴツン、ゴツン、ゴツン
「あうっ! ううっ! は、はいっ!」
たまらず返事をしてしまうしのぶ。返事と共に男の手の動きが止まる。
「うう...」
しのぶはあきらめたように小便器に舌を這わせた。
ぺちゃ...しのぶの舌にひんやりとした感覚が。
「んううっ!」
しのぶが小便器に舌をつけたことを確認すると、男は前髪を掴んだまま上下に動かし、しのぶの顔をこすりつけた、
まるで、しのぶの顔を使って小便器を磨くように。
「ほら、ちゃんと舌出して、でないと汚れが落ちないよ」
「ふ...ふぁい...」
しのぶは男の言われるままに舌をめいっぱい出す。
乱暴にこすりつけられ、だんだんと小便器にしのぶの唾液が塗られていく。
まるで自分の顔と舌が、便所掃除用のデッキブラシにでもなったかのような錯覚に、みじめな気持ちになるしのぶ。
ひざまずいたまま、小便器の外側をまんべんなく舐めさせられると、今度は中。
さすがにこれはしのぶも身をよじって抵抗するが、結局後頭部を押さえつけられ、力づくで舐めさせられる。
小便器に顔をつっこむような形になるしのぶ。
「ほらほら、特にそこを念入りに、舌をペロペロって動かして舐めるんだ」
「ふ...ふぁ...」
小便器の排水溝のフタを、念入りに舐めさせられるしのぶ。
舌で排水口のフタの隙間を、舌をペロペロと動かして汚れをこそぎ取る。
「汚れは全部呑みこむんだぞ」
「ぴちゃ...んっ...こくっ」
今まで味わったことのない、強烈な苦味がしのぶの口内に広がる。
「よし、綺麗になったな」
男はしのぶの後頭部をしっかりと押さえつけたまま、その小便器の水流ボタンを押す。
ジョゴゴゴゴゴ
水は勢いよく流れはじめる。
「あっ、きゃああああああっ!」
そのまま流れてきた水をびしゃびしゃとまともに浴びせられるしのぶ。
いやいやをして顔を離そうとするが、男に後頭部を押さえつけられているので、ままならない。
ジャバババババ
便所の水でしのぶはまた濡れねずみにさせられてしまった。
水流が終わると、やっと解放されるしのぶ。
先ほどしのぶが綺麗にした小便器の前にぺたりと座りこみ、
ぽたぽたと雫を顔や髪から垂らしながら、すがるような顔で男を上目づかいに見上げる。
「ご苦労だったな、じゃあ明日は大便器頼むぜ」
その言葉に、しのぶの顔はいまにも泣きそうなものに変わる。
その表情に、男の背筋に心地よい快感の電撃が走る。
「じゃーな、人間デッキブラシのしのぶちゃん。ハハハハハ!」
男は笑いながら便所を出ていった。
ぽつんと一人、ずぶ濡れのままで男子便所に取り残されたしのぶ。
「うっ.....」
今日は悲しまないと決めたのに、今日は泣かないと決めたのに、瞬きをした時、ぽろりと涙がこぼれた。
「うっ...ひくっ...」
涙を止めようとがんばるが、楽しいことを考えても、目をつぶっても、どんどん涙があふれてくる。
「う...うえええええ...」
男子便所の床に、座りこんだまま、嗚咽をもらし、泣きだした。
この小さな身体のどこに、これほどまでの涙があるのか、というほど、止めどなく涙をあふれさせながら。
. . . . .
夕暮れ、とぼとぼとした足取りで家に帰るしのぶ。
「よお」
ふと視線をあげると、そこにはしのぶより少し背の高い、太った少年が立っていた。
「あっ...こ、こんにちは!」
いつもの調子でぺこりと頭を下げる。相手は小学生のようだ。
しのぶの泣きはらした顔、汚水で汚れた制服、そして髪の毛に付着したガム。
しかしこの時間帯のしのぶはいつもこんな調子なので、少年は驚く様子もなかった。
「いま空地で遊んでんだ。つきあえよ」
「えっ...でもわたし...あっ!」
少年はしのぶの答えを待たずに制服の襟を乱暴につかんで引きずりはじめた。
そのままなす術なく少年につれていかれるしのぶ。
ほどなくして、少年のいう「空地」にやってきた。そこには数人の小学生がいる。
「おーい、賞品つれてきたぞー」
少年はしのぶの制服の襟をつかんだまま、空地にいる仲間たちに声をかけた。
「しょ...賞品?」
少年のひとことに、しのぶ身体の中の血液が、音をたててひいていった。
アニメーション「ラブひな」の第2話を見てたら、しのぶちゃんの反応が妙にくすぐられました。
このように女の子がまわりの人間からいじめ抜かれるお話を以前から書いてみたかったんです。
なお、このお話はアニメーション第2話でしのぶが引越してしまい、その引越し先の共学の中学校での出来事として書いています。
本来は彼女は引越しせず、通っている学校も女子校です。
でも嫌らしくないね...これ。自己満足。