今日も野球部の練習が終わり、いつものようにマネージャーの仕事をこなす虹野沙希。
ひとつひとつ心をこめて手洗いをしたユニフォームを部室の裏に干す。
風になびく9つのユニフォーム。
「よしっ」
そのユニフォームを見て再びやる気を出す沙希。
きらめき高校の野球部は弱小で、部員もギリギリ9人しかいない。
今年の大会、結果を残せないと廃部にさせられてしまうのだ。
こんな状況でも、沙希は希望を捨てず、弱音ひとつ吐かなかった。
「次は、スパイク磨きね」
再び出たやる気を維持しながら、部室へと向かう沙希。
鼻歌を歌いながら部室の扉を開ける。
「...あれっ?」
沙希が洗濯を始めるまでは脱ぎ捨てられていたスパイクが、
泥を落とされ、綺麗に磨かれて揃えられていた。
「誰がやってくれたんだろう...?」
そのスパイクは、沙希が見ても合格点をあげられるほど丹念な磨かれかただった。
その人物に感謝しながら、沙希はひとつひとつそのスパイクを見ていく。
「じゃあ...次はグランド整備ね」
自分の仕事がひとつなくなったので、最後の仕事にとりかかる沙希。
「あれっ...誰だろ?」
トンボを持ってグランドに出た沙希は、グランドでトンボがけをする人物を見つけた。
「あれは...剛くん」
沙希の仕事となっていたグランド整備は、剛によって先に行われていた。
「剛くん!」
トンボをその場に置いて、剛の元へと駆けていく沙希。
「あっ、虹野先輩! お疲れ様っス!」
駆けよってくる沙希を見て、野球帽を取って深々と頭をさげる剛。
「どうしてグランド整備してくれてるの?」
沙希の問いかけに即答する剛。
「うっす! グランド整備は新入部員である自分の仕事っス!」
沙希も2年生になったばかり、剛は野球部に入ったばかりの新入部員だ。
だが、部員の少ないこの野球部では彼もレギュラーである。
「それはマネージャーの私の仕事よ! 剛くんは練習で疲れてるんだから、お家に帰って休んで!」
沙希は剛からトンボを受け取ろうとするが、
「と、とんでもないっス! こんな雑用を虹野先輩にやらせるわけにはいかないっス!!」
剛はぶるぶると顔を振って言う。
「...ひょっとして、スパイク磨いてくれたの剛くん?」
「うっす! スパイク磨きは新入部員である自分の仕事っス!」
白く輝く歯をキラリと輝かせる剛。
剛の思考は驚くほど体育会系だった。
「ねぇ、ここは私がやっておくから、もう帰って」
剛の身体を気遣う沙希。
「虹野先輩こそお疲れでしょう! お帰りになってください!」
沙希を先輩として敬う剛。
ふたりは譲らず、沈む夕日の中、ふたりでグランド整備をすることになった。
. . . . .
「いつも手伝ってくれてありがとう、剛くん」
沙希はスパイクを磨きながら言った。
「とんでもないっス! 虹野先輩こそ、こんな自分の仕事を手伝ってくださって...」
剛の思考は相変わらずだった。
沙希は剛の身体を気遣って雑用は自分がやると言いつづけてきたのだが、
結局、剛は譲らずふたりで毎日の雑用をこなしていた。
剛は大柄のわりに心のこもった丹念な仕事で、沙希も安心して任せられるほどだった。
いつものようにスパイクを綺麗に磨きおわり、ひと休みしている剛を見て、沙希はあることを思いついた。
「寝て、マッサージしてあげる」
沙希はそう言いながら、長椅子にバスタオルを広げた。
疲れた部員の身体をマッサージするのも沙希の仕事だ。
だが、剛にはやってあげたことがなかったのだ。
「ととっ、とんでもないっス!! 自分みたいな一年坊主が虹野先輩にそんなことしてもらうなんて、百年早いっス!!」
例によって恐縮しながら後ずさる剛。
剛と話をしていても埒があかないのはもう沙希には十分わかっていた。
「百年も一年もないわよ! さあ、寝て寝て!」
背中をぐいぐいと押して剛を長椅子にうつぶせに寝そべらせる。
「えっ、あっ、虹野先輩...」
何か言おうとする剛にまたがり、両手で背中を押しはじめる沙希。
沙希のマッサージはツボを心得たもので、少女の細腕でも十分に分厚い筋肉をもみほぐした。
「あうぅ...にっ、虹野せんぱぁい...」
いつもはハキハキとした口調の剛が、沙希のマッサージを受けて吐息を漏らすような力の抜けた声を出した。
「うふふ、気持いいでしょ?」
沙希は体重をかけるようにして、両手の親指で背中を押していく。
ツボを押すたびに剛は、はぁあ...、ふぅう...とため息のような声をあげる。
いつもと違う剛の気の抜けたような反応が面白くて、いつもより念入りにマッサージしてしまう。
「(やっぱり疲れがたまってる...)」
剛の身体の疲労は他の部員とは比較にならないものだった。
きっと、剛は精神力だけでがんばっているのだろう。
この、いつも一生懸命な剛の息を少しでも自分が抜いてあげなければ、と沙希は妙な使命感にかられていた。
沙希の心のこもったマッサージは、剛の身体と心の緊張をやさしく解きほぐしていった。
「はい、おしまい」
最後に腰骨のあたりをきゅっ、と押して、剛から離れる沙希。
だが、剛は動かない。
「...? 剛くん?」
剛の顔を覗き込むと、すやすやと安らかな寝息をたてていた。
普段のきりっとした顔の剛からは、想像もつかないくらいその表情は緩んでいた。
肩を冷やさないように、そっと沙希は眠る剛の背中にタオルケットをかけた。
いつも全力で、精一杯生きている剛。
この息を抜くことを知らない剛のオアシスに自分がなれたら、
私で癒すことができるなら、ずっとそうしてあげたい、と沙希は思うようになっていた。
沙希は剛の寝顔を見つめながら、剛が目を覚ますまでずっとそばにいた。
. . . . .
お昼休み、沙希は剛の教室へと向かった。
「あっ、虹野先輩! こんちはっス!」
剛は沙希を見ると、いつものように深々と頭を下げた。
「こんにちは! はいっ! これっ」
沙希は剛の手にぽん、とポーチを置いた。
「...? なんスかこれは?」
手に乗せたポーチと沙希を交互に見つめる剛。
「お弁当よ」
ポーチの中身は沙希手作りの弁当だった。
「オス! この中の弁当箱を洗っておけばいいんスね!?」
言うが早いが駆け出そうとする剛の背中を、むんずと掴む沙希。
「ち、ちがうわ! そのお弁当を剛くんが食べるの!」
あわてて付け加える沙希。
「自分がスか? それはなぜっスか?」
剛はこういう事には縁がなかった。
「剛くん、お昼はいつもパンでしょ? それじゃあいけないと思って、私が作ってきたの」
沙希は栄養のバランスを考えたメニューを弁当箱の中に詰めていた。
もちろん、剛の身体にあわせて弁当箱は特別に大きいものだ。
「えっ...」
剛が何か言おうと息を吸い込むのを制止する沙希。
「恐れ多いなんて言わないで! たくさん食べてしっかり体力つけなさいっ!」
お姉さんぶった口調で、ぴしゃりと言う沙希。
声の大きい剛と話していると、つい沙希もつられて大きな声になってしまう。
「う...うっす! ありがたく頂戴するっス!!」
言おうとした言葉を飲みこんで、再び最敬礼する剛。
「じゃあね、後でお弁当箱取りにくるからね」
言いながらくるりと踵をかえし、自分の教室に戻ろうとする。
「と、とんでもないっス! 自分がちゃんと洗ってお持ちするっス!!」
廊下中に響くような声を張り上げる剛に、沙希は笑顔で手を振った。
...おそらく彼は、自分のお弁当を先輩からの命令だから食べてくれるだけかもしれない。
もちろん沙希は命令なんてしたつもりはないが、彼はそう受け取っているかもしれない。
自分の愛情を込めたお弁当をそう思われるのは少し寂しかったが、今は彼の身体の方が心配だ。
どう思われても、彼にはちゃんと栄養をとってほしい。沙希はそう考えていた。
それから毎日、沙希は剛のために愛情をこめた弁当を持っていった。
. . . . .
そして、野球部の存続のかかった大会の前日。
いつもと変わらずマネージャーの仕事をこなしていく沙希。
大会が近いので、剛にはマネージャーの仕事は一切手伝わせていない。
...だが、グランド整備に出た沙希は、ダイヤモンドの真ん中でひざを抱える剛を見つけた。
「だめじゃない剛くん! 早く帰って休まないと!」
剛のユニフォームは体中、砂埃におおわれていた。
きっと、一人で残って練習をしていたのだろう。
「虹野先輩...自分...こわいっス...」
表情は見えないが、その声は震えていた。
剛はただ一人の一年生レギュラーで技量も他のメンバーに比べて劣っていた。
だが、剛はこの数ヶ月どの部員よりも練習をし、今では劣らないほどの実力をつけてきている。
しかし、初の大会で、しかも野球部の存続がかかっている明日の試合は、剛にとっては計り知れないプレッシャーを与えていた。
沙希ももちろんその剛のプレッシャーは痛いほどわかっていた。出来るならかわってあげたいほどに。
「自分のエラーで...自分のアウトで...先輩方の足をひっぱるんじゃないか、って...」
いつもの歯切れのよい剛とは違う、心細そうな声。その肩が、小刻みに震えている。
沙希は背中を丸める剛の後ろにしゃがみこむと、砂埃にまみれた2桁の背番号を手でそっと払った。
「剛くん...あなたは今まで一生懸命がんばったわ...あなたなら大丈夫。自分を信じて」
だが、剛の肩の震えはおさまらない。
「...先輩...」
沙希はそっと肩を抱いた。
「さ...座ってないで...シャワーを浴びて、今日は帰るのよ」
いたわる口調の沙希。
「はい.....」
沙希の顔を見ようともせず、立ちあがった剛はトボトボと肩を落としてシャワールームへと歩いていく。
いつもは背筋を伸ばしてあるく剛。だが今の背中は力ないものだった。
「剛くん.....」
沙希はその背中を心配そうに見つめていた。
. . . . .
カチャ....
シャワールームの扉が開く。
シャワールームへと入ってきた人物は、ただひとつ使われているシャワーの元へと歩いていく。
シャワーを浴びているのは大柄で、筋肉質な身体の剛だった。
剛は背後に人が近づいてきたのに気づき、振り向く。
「にっ!? 虹野先輩っ!?」
まるで幻でも見たかのように飛びあがって驚く剛。
無理もない。ここは男子のシャワールームだ。女子である沙希が入ってくること自体がおかしい。
しかも、沙希はバスタオル一枚という姿だったのだ。
肉体的に健全である剛は、その姿にすぐに反応し、男の象徴を膨らませた。
「あっ! こっ、ここは男子用ですよ!!」
反応した股間を手で隠しながらあわてて背中を向け、沙希に言う。
沙希は精一杯の勇気を振り絞って、その背中に近づく。
胸を剛の背中に押し付けながら、沙希は両手を剛の胸のあたりに回した。
たくましい胸板の感触。その胸が高鳴っているのがわかる。
「せっ、先輩っ!?」
沙希のやわらかな胸の感触を感じ、びくん! と身体を硬直させる剛。
「剛くん...女の子にはね、大好きな人を勇気づけるおまじないがあるんだよ...」
余裕を装っているが、沙希の胸は剛以上に高鳴っていた。
剛の身体から少しだけ離れると、
「...剛くん、こっちを向いて...」
沙希は言った。
ごくりと唾を飲みこむ剛。
緊張のあまり、ぎくしゃくとした動きで、沙希の方を向く。
そこには、バスタオルを床に落とし、一糸纏わぬ姿の沙希がいた。
剛のごつごつとした筋肉質な身体とは違い、華奢で、ふっくらと丸みのあるその身体。
初めて見る女性の裸に、両手で覆った股間のものが張り裂けんばかりに膨張する。
「ね...剛くん...お願い...私の勇気をもらって」
もう沙希の表情に余裕はなかった。
しっとりと濡れた瞳を剛に向け、立ったまま精一杯足を広いてみせる。
鼓動の高鳴りが聴こえてきそうなほどに赤く上気した顔。
小ぶりだが形の良い胸。桜色の乳首。
折れそうなほど細い腰。
開いた脚からは、申し訳程度の翳りを見せる花園が見えていた。
「先輩...」
ようやく剛にも、沙希の気持ちが伝わった。
先輩が...虹野先輩が、自分を勇気づけるために...恥かしいのを我慢してここまでのことをしてくれている。
なにより剛自身が我慢の限界だった。
「せ、先輩っ!!」
いままで禁欲的な生活だった剛は、いままでの欲望を一気に爆発させ、
力づよく沙希を抱きしめる。
勢いあまって沙希は後ろの壁にごつんと頭をぶつけてしまう。
「先輩っ! 先輩っっ!!」
余裕のない剛は叫んで、沙希の柔らかな身体を力の限り抱きしめた。
折れんばかりに軋む沙希の身体。
だが、沙希はこらえた。剛のために。
沙希のヘソのあたりに剛の反りかえった剛直がぶつかる。
だが、沙希は身体にかかる剛の力さえも、嬉しかった。
しばらく剛の乱暴な抱擁が続いたあと、だんだんと腕の力が緩んできた。
「ね...剛くん。おねがい。あ...あなたのこ、これを...わっ、私のここに...」
沙希はまた勇気を振り絞って、固くなった剛の剛直をそっと握って言った。
本当は余裕を気取って言うつもりだったのだが、少女には恥かしすぎるセリフに、つっかかりながら沙希は言う。
初めて触れた男性自身は、想像以上に固く、熱く滾っていた。
「(こ...こんな大きなのが...私の中に入るの?)」
その感触は、沙希を不安にさせる。
「あっ...」
沙希は剛のたくましい両腕に抱えあげられ、軽々と持ち上げられた。
入れやすいように沙希の身体を持ち上げたのだ。
だが、沙希の花弁のあたりで剛の剛直は戸惑っていた。
どこに入れていいのかわからないのだ。
剛自身の表情も戸惑っていた。
「こっ...ここよ...ここに...い...入れて...」
最後の勇気を振り絞って、沙希は指で自らの花弁を開いてみせた。
花弁を開くその指は、小刻みに震えていた。
だが、自らの身体も震えている剛には、その沙希の変化に気づく余裕はない。
「せ...先輩...っ!」
沙希の指が開いたあたりに亀頭をあてがうと、剛は一気に貫いた。
ずぶっ!
「ん...くうっ!!」
想像以上の肉が裂けるような痛みが沙希の下腹部から発生した。
眉間にしわが寄り、こらえていた声が漏れる。
愛撫など一切なく、まったく濡れていない所に入ってきた剛の剛直。
それは破瓜の痛みを倍増させた。
また、剛は力の加減ができず、処女膜を剥ぎ取られ、一気に奥深くまでえぐられる形となる。
だが、沙希は必死になってその痛みに耐えた。
剛が気持よくなってくれれば...そして、いつもの剛に戻ってくれれば。
自分がここで痛そうな素振りをしたら、きっと剛は気にするに違いない。
沙希は華奢な身体にはあり余るほどの激痛に、健気に耐えていた。
瞳の端から、自然と大粒の涙がぽろぽろとこぼれた。
剛に悟られないように顔を伏せる沙希。
「このまま...動いて...剛くんの好きなように...私のことは気にしなくていいから...」
涙声にならないように、うつむいたまま言う沙希。
「せ...先輩っっ!!」
我慢できなくなった剛は、トップスピードで腰振りはじめた。
抱え上げられ、ゆさゆさと揺さぶられる沙希。
「ん! ううっ! くうううっ!」
剛を心配させないように声をこらえる沙希だったが、あまりの痛みに声をあげさせられてしまう。
剛の力強いピストン運動は、もたれかかった壁に沙希を何度も打ちつけた。
だが、沙希は健気に、自分のひとまわり以上もある剛の律動を全部受け止めた。
「ううっ、せ、先輩っっ、先輩ぃぃっ!」
腰を突き入れながら、うわ言のように沙希を呼ぶ剛。
沙希はそっと、剛の頭に手を回した。
まるで、母親に抱かれているような感覚。
それはまさに沙希の、剛を思う母性の現れだった。
相変わらず痛みはあった。だが、自分の大好きな人が与えてくれる痛み。
その痛みで、その人が気持ちよくなってくれる。
そう考えるだけで、その痛みも沙希には嬉しいものだった。
「剛...くんっ!」
両手を背中に回し、広い胸板に顔をうずめる。
「せんぱいっ! せんぱいっ! せんぱいっっっ!」
やがて、剛の呼ぶ声が、切羽つまったものになってくる。
沙希は遊ばせていた両足を、剛の腰のあたりで絡ませるように交差させる。
「剛くんっ! 剛くんっ! 剛くんっ!」
両手と両足に力を入れて、沙希からも剛にしがみつくようにする。
まさにひとつにならんばかりに強く抱きしめあいながら、剛は絶頂を迎えた。
剛の尻肉がぴくぴくと痙攣し、沙希の中に精液をどくんどくんと送り込んでいく。
沙希はその精液を歓迎するかのように、無意識のうちに肉壁をきゅっ、きゅっと締め、射精を促した。
子宮に精液を注ぎこまれ、沙希の腹部がほんわかとした暖かさに包まれる。
「私の勇気...もらってくれたね...」
沙希は、剛の胸板にほおずりをしながらつぶやいた。
. . . . .
あれから2年。
剛の活躍によって、野球部は甲子園出場を果たした。
その効果で入部希望者も増え、廃部は免れた。
今や剛は、次期キャプテンとして野球部には欠かせない存在になっていた。
だが、けっきょく剛の体育会系的な気質と、沙希に対する態度は入部当初と同じままだった。
そして、2年生だった沙希たちも、卒業の日を迎えた。
野球部のパーティを抜け出し「伝説の樹」と呼ばれるきらめき高校名物の樹木の下ですわりこんでいるふたり。
沙希は剛とずっと一緒にいたいと考えていた。
今はまだ先輩後輩の関係だが、今日、この「伝説の樹」の下で剛に告白をしようとしていた。
「今度の大会もがんばってねキャプテン!」
沙希の剛に対する呼び方は、剛がキャプテンになることが決定してから「剛くん」から「キャプテン」に変わった。
「うっす! 虹野先輩! 今度も甲子園出場を目指すっス! 今度は優勝っス!」
瞳を輝かせ、あらたな決意に燃える剛。
その輝くまっすぐな瞳を見て、沙希の決意は揺らいだ。
今、彼は野球のことで頭がいっぱいだ。
ここで私が告白をしたら、この輝きが失われてしまうのではないか...。
真面目な彼の性格だと、私の告白を重荷に感じてしまうのではないか...。
だが、沙希の答えはすぐに出た。
だとしたら今は、彼には大好きな野球に全力投球してもらおう。
私は...告白なんかしなくても、彼が輝いているところを見れるだけで満足なのだ。
「じゃあ...そろそろパーティの方に戻ろっか、みんな探してるよ」
沙希は未練を断ち切るように立ちあがり、剛に向かって言った。
だが、剛は座りこんで、俯いたままだ。
「...? キャプテン?」
「...2年前に虹野先輩から勇気をもらったおかげで...自分はこれまで頑張ってこれました...
だけど、今日ここで、虹野先輩からもらった勇気...全部使い果します...」
俯いたまま、ぼそぼそと言う剛。剛にしては珍しい小声のセリフ。
「えっ?」
聞き取れない沙希。
「...虹野先輩...卒業しても...マネージャーでいてください...」
俯いたままの剛から漏れたのは、相変わらずの小声のセリフだった。
しかし、剛は俯いたままぶるぶると顔を左右に振ったあと、ばっ、と勢いよく顔をあげ、
先ほどの野球について語っていた時と同じ、まっすぐな瞳で、沙希を見つめた。
「さ...沙希っ! 俺だけの...俺だけのマネージャーになってくれっ!!」
空を突きぬけるほどの絶叫。伝説の樹の木の葉が、かさかさと揺れた。
言いおわった剛の顔は、耳まで真っ赤になっている。
「...剛くん...!」
.....また、見ることができた、剛の新しい表情。
沙希はあふれる涙を拭いもせず、剛の胸へ飛び込んでいった。
長谷川誠様リクエストの「虹野沙希純愛」です。
Hシーンは少なめです。
本当はいろんなエピソードを考えていたんですが、あんまりHに繋げそうにないのでやめました。
でもありがちなお話ですね。これ。