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この恋のかけら
コギト=エラムス/文


 「大丈夫か...長谷川?」

 螢一は空の背中をさすっていた。

 

 「うっぷ...すみません...先輩...おえっ」

 便器に顔を近づけたまま、すまなさそうに言う空。

 

 長谷川空の部長の座をかけた森里螢一とのレーシングボードの勝負。

 結局軍配は空にあがったのだが、空は結局、自動車部の部長に就任することになった。

 その就任祝いの宴会で酔っ払った空を自宅まで螢一は送り届けてきたのだ。

 そして今、ユニットバスで空の介抱をしている。

 

 「なに、気にするな、全部出してスッキリしなよ」

 いたわるように声をかけながら背中をさする螢一。

 

 その背中がばっ! と上がり、螢一の方を向く。

 「私なんて...私なんて...どうせ死神部長だし...殺人シェフだし...」

 酔った勢いで全く脈絡のない話を始める空。

 その顔はいまにも泣きそうに顔をくしゃくしゃになっていた。

 

 「(ま、まさか...泣き上戸?)」

 嫌な予感が螢一の中を駆け巡る。

 

 その予感は当った。

 「こんなだから男の人にもいつもフラれてばっかりなんですよね...うっううう...」

 えぐえぐと泣きべそをかきながら肩を震わせる。

 「うっううう...うえぇえええ...」

 その泣き声が嘔吐へと変わる。

 

 「ほ、ほら、早く便器に!」

 あわてて空に手を差し伸べる螢一、だが、空はその手を払いのけた。

 

 「私の恋はぜーんぶフラれてフラれてフラれてどれも片思いのかけらばっかりなんですよっ! どーせ!」

 今度はうって変わって語気が荒くなり、一気にまくしたてる。

 言いおわった後、ぷん! とむくれる空。

 

 「(次は怒り上戸か...)」

 やれやれと言った表情の螢一。

 

 「何か文句あるんですかぁあ!?」

 だがその反応が今の彼女には癪にさわったらしく、

 がっ、と螢一の胸倉をつかんで引き寄せる空。

 目が完全にすわっている。

 

 「大丈夫...そうやって想い続ける気持ちがあれば...決してかけらじゃないものが産まれてくるはずだよ、きっと」

 酔っ払い相手だというのに、真面目な顔で言う螢一。

 

 「え...」

 だが空には効果があったようで、一瞬どきりとした表情になる。

 胸倉をつかんだ手の力が緩む。

 

 だが、それも一瞬だけであった。

 「えーいっ!」

 どんっ、と螢一を風呂に突き落とす。

 「わああっ!?」

 どぼーん!

 大きな波をたてて、湯船にまともに入ってしまう螢一。

 「先輩、お風呂入りましょ! お風呂! きゃははははははっ!!」

 シャワーを全開にして螢一に浴びせながら、ケラケラと笑う。

 「(こ、今度は笑い上戸か...)」

 濡れねずみになりながら苦笑いする螢一。

 

 ふと顔を上げると...同じように服をびしょ濡れにした空が楽しそうに笑っていた。

 着ているシャツが濡れて完全に透け、水色のブラがはっきりと見えていた。

 

 「う...」

 思わず動揺してしまい、視線をそらす螢一。

 

 その反応に、空が気づく。

 「やあーっだぁ! ドコ見てるんですか! エッチ! きゃははははははっ!!」

 そう言いながら隠そうともしない。

 笑いながら螢一の頭をぺちぺちと叩いている。

 

 「(は...早く帰りたい.....)」

 濡れた髪をくしゃくしゃにされながら、螢一はそう思っていた。

 

 . . . . .

 

 「(何をやってるんだ...俺は...)」

 部屋に干された自分の服を見ながら、ため息をつく螢一。

 着替えなどないので、バスタオルを腰に巻いてあるだけの格好だった。

 

 そこへ、風呂から出てきた空。

 「(ほっ...ちゃんと着てくれたか)」

 てっきり酔った勢いで全裸のまま出てくるかと思ったが、

 ちゃんと螢一が投げこんだパジャマを着てくれている。

 

 千鳥足で歩きながらも、なんとか螢一の横にどすんと腰を下ろす。

 

 「わあーっ! ハダカで何してるんですかぁあ!? きゃははははははっ!!」

 大声で笑いながら螢一の背中をばちばちと叩く。

 

 「(い、いてっ! ま、まだ酔いはさめてないのか...)」

 容赦ないビンタに身体をよじらせて逃げる螢一。

 

 そのビンタの雨が終わったかと思うと、今度は螢一にぐんっ、と顔を近づけてきた。

 「先輩...」

 少し怒ったような、真剣な表情の空。

 「な...なんだい?」

 迫ってくる顔から少しづつ離れる螢一。それにあわせて空の顔も近づいていく。

 

 その顔の近づく速度が急に上がる。

 「んっ...ちゅっ...」

 螢一の唇に、唇を重ねる空。

 

 「..........」

 沈黙が部屋を包んだ。

 

 だが、すぐに我に返る螢一。

 「こ...このっ!!」

 語気を強めて空を振りほどく。

 

 「きゃあっ!?」

 突き飛ばされ、どさりと尻もちをつく空。

 

 「い...いくら酔ってるからって...いい加減にしろっ!!」

 うつむく空に向かって怒鳴る螢一。

 

 「..........」

 何もこたえない空。

 

 やがて、消えいるような小さな声で、呟きはじめる空。

 「さっき先輩、言ったじゃないですか...想い続ける気持ちがあれば、かけらじゃないものが産まれてくるって...」

 その声は涙声だった。

 

 「えっ...そ、それは、確かにそうなんだけど...」

 急に大人しくなった空にたじろぐ螢一。

 

 ゆっくりと顔をあげる空。その頬は真っ赤に染まり、瞳は今にも泣きそうなほど潤んでいた。

 

 「...ずるいです...ずるいです...先輩」

 眼鏡ごしの大きな瞳が揺らいだかと思うと、

 「私の気持ちを...こんなにいっぱい奪っておいて知らんぷりしてるなんて...」

 ぽろり...と大粒の涙が頬を伝った。

 

 紅潮した顔は、酒のせいか、告白のせいかはわからなかった。

 だがその表情は、螢一を確実にどきりとさせた。

 

 「長谷川...」

 何か言おうとするが、言葉に詰まる螢一を、

 「えーいっ!」

 どんっ、と押し倒す空。

 「うわっ!」

 勢いよくのしかかられ、倒れる螢一。

 

 「!? は...長谷川っ!?」

 顔をあげた螢一は、驚きの声をあげる。

 

 腰に巻いたバスタオルを取り去り、股間に顔をうずめる空の姿があったからだ。

 

 「や...やめっ...ううっ!」

 ぱくんと咥えこまれて制止の言葉が続かない螢一。

 

 口の中に含んだものを、じゅぷじゅぷと音をたててしゃぶり始める空。

 

 「あっ! ううっ! はっ、長谷川ぁあっ!」

 ぐぐっ、と螢一が背筋を反らしたかと思うと、口内のペニスがいきなり大きくなり、爆ぜた。

 

 どぴゅっ! ずぴゅっ! ずぴゅぴゅっ!

 

 「んんんんっ!?」

 いきなり爆発したペニスに目を白黒させる空。

 

 射精はすさまじい勢いで、空の喉の奥にも降り注いだ。

 

 「んぶっ! けふっ!」

 喉にひっかかるような感覚に苦しさをおぼえ、あわてて口からペニスを離す空。

 

 口を離すと、いまだ脈動を続けるペニスから射出された精液が顔めがけて飛んでいく。

 「きゃっ!?」

 

 ずぴゅっ! どぴゅっ!

 ぺちゃっ! べちゃっ!

 それは眼鏡のレンズに命中し、勢いのあまりあたりに玉のしぶきを飛ばす。

 

 口の中だけでは飽きたらず、射出された精液は次々と空の顔に降り注いだ。

 

 ずぴゅ...っ

 最後の一滴が、鈴口からだらしなく垂れると、

 「はああああっ...」

 大きくため息をつく螢一。

 

 「けほっ、こほっ、こほっ!」

 顔を精液まみれにしながら、けふけふとむせ続ける空。

 

 「だ、大丈夫か長谷川、初めてだったからつい...」

 童貞である螢一は女性にフェラチオをされるというのも初めてだった。

 戸惑いながらも空に声をかける。

 

 ようやく空の咳がおさまると、

 「私だって...」

 うつむいたまま続ける。

 

 「私だって初めてですよぅ...」

 それは、消え入るような小さな声だった。

 

 そして...耳まで真っ赤にした顔をゆっくりと上げる。

 丸い眼鏡のレンズには白い皮膜が張ったようにべったりと精液が張りついており、

 その奥の瞳にも垂れて視界を塞ぎ、なんとか薄目をあけている。

 鼻の頭や頬などにも精液の雫が垂れており、唇の端からも筋のようになった精液があごにまで垂れていた。

 

 長い睫毛の1本1本の間に精液が入りこみ、糸を引いていた。

 その奥にあるうるうると潤んだ瞳で、螢一を上目づかいに見上げる空。

 

 「でも...先輩のためだったら...何でもしてあげられます...」

 その濡れた唇が動く。

 

 「長谷川....」

 空の無垢でまっすぐな思いに、射抜かれたように動けなくなる螢一。

 

 「寝てください...先輩...」

 囁くように言う空。それに黙って従う螢一。

 

 ゆっくりとパジャマを脱ぎ捨て、一糸纏わぬ姿になる。

 「長谷川....」

 

 隠したいのを必死でこらえながら、

 「私の身体...ヘンじゃないですか...?」

 恥かしそうに俯いて言う空。その身体が僅かに震えている。

 

 皿を伏せた程度の小ぶりな乳房...その先端にある薄桃色の小さな乳首。

 それはぷっくりと膨らんだおり、震えにあわせてぷるぷると揺れている。

 身体の線はまだ幼い曲線が残っており、腰のくびれなども少ないのだが、

 すべすべとした腹部とそこにぽつんと空いたヘソは十分に魅力的だった。

 

 「...いや、とってもきれいだよ」

 螢一は思ったことを素直に口にした。

 

 「うれしい...」

 ほっとした表情で更に瞳を潤ませる空。

 

 ゆっくりと螢一のそばにしゃがみこみ、先ほどから硬直したままのペニスに手をかける。

 

 これから空がやろうとしていることを予測し、

 「い...いいのか? 本当に俺なんかで...」

 確認するように言う螢一。

 

 「初めては...初めては...大好きな人に、って決めてましたから...」

 包みこむようなやさしい笑顔で微笑む空。

 

 そしてゆっくりと...またがった。

 

 ぬぷ...っ

 

 「長谷川...う...あ...」

 先端が入り口にあてがわれただけで、もうたまらない様子で声をあげる螢一。

 

 「先輩...んっ! あ!」

 その短い髪を振り乱し、腰をしずめていく。

 

 「くううううっ!」

 ミリミリと肉が裂けるような感覚に、身をよじらせる空。

 

 「んっ! くふうっ!」

 全身を大きく震わせながら、一気に腰を落とした。

 

 ずず...っ!

 

 その瞬間、ずずん、とペニスが一段深いところに入った。

 見ると、繋がった所からとろりと血が垂れ、ペニスを伝った。

 

 「だ、大丈夫か長谷川? 痛くないのか?」

 螢一の腰に手をついたまま、震える空に向かって言う。

 

 自らの力で姦通を行った空。

 まだ身体も未成熟な感じのする女性に、ここまでのことをさせてしまったことを後悔する螢一。

 

 「お...お酒のせいかな...初めてなのに...初めてなのに...気持ちいいですっ」

 戸惑ったような声で答える空。

 

 たしかに破瓜の瞬間は身が裂けるような痛みがあった。

 だが膜を通過してからは、背筋の震えるような快感ばかりがあった。

 

 螢一の腰に手をついているのは痛みを和らげるためではなく、

 このまま奥まで一気にペニスが埋没したら快感のあまり気が変になってしまうのではないかという戸惑いからだった。

 

 「う...う...、動いて、いいです...か?」

 じわじわと湧き起こる痺れるような感覚に身体を震わせる空。

 

 だが、螢一は腰にあてられていた手を外した。

 

 ずずん!

 

 また一段、深くペニスが入りこむ。

 「んきゅっ!」

 その瞬間、壊れた笛のような声をあげ、背筋をのけぞらせる空。

 「ん...! あ...はあああんっ...」

 その後、色っぽい吐息を吐く。

 

 外された空の手は、螢一がしっかりと握っていた。

 

 「いっしょに動こう...」

 やさしげな瞳で空に言う。

 自分の事を想ってここまでのことをしてくれる女性に、何もしないわけにはいかない。

 

 「先輩...」

 ふたりは見つめあった後、律動を開始した。

 

 くちゅっ...くちゅ...くちゅん...

 

 水っぽい音が響く。

 「んあっ...ああんっ! あっ!」

 突き上げにあわせ、空のしなやかな身体が反りかえる。

 

 「せ、先輩、あっ! あんっ!」

 髪の毛を振り乱して悶える空。

 「は、長谷川っ! 長谷川っつ!」

 夢中になって突き上げる螢一。

 

 ぎゅっ...

 ふたりは手を強く握りあった。

 

 空の膣内は確かににきつかったが、ふたりは力をあわせた。

 螢一が締めつけのあまり腰が動かせないときは空が動き、

 空が快感のあまり身体を震わせている時は螢一が動いた。

 そして、きつい肉壁を何度も何度もペニスでこすりあげ、肉壁は何度も何度もペニスを締めあげた。

 

 やがてその突き上げの速度が速くなり、

 ぽんぽんと螢一の上で跳ねるように突き上げられる空。

 トランポリンで跳ねるように続けざまに突き上げを受けながら、小ぶりな胸も健気にぷるぷると揺れる。

 「あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ!」

 それにより途絶えることのない快感が空を包む。

 「長谷川...っ! いいっ! いく! いくよっ!」

 夢中になって突き上げながら、切羽つまった声で叫ぶ螢一。

 

 「あっあっあっあっああん! 空、空って呼んでくださいいいいっ!」

 

 「空! 空っ!! そあああっ! いくよっ! いくううっ!」

 がしっと空の腰をつかみ、ぐいっと引き寄せる。

 ずずん...

 射精の瞬間、螢一のペニスは子宮まで達した。

 

 「先輩っ! 先輩っ! せんぱいいいっ! あっ! ああん!」

 子宮の入り口を突かれ、飛び跳ねんばかりにびくん! と反応する空。

 

 次の瞬間、

 どぴゅっ! どくっ! どくんっ!

 鈴口から勢いよく発射された子種が、空の膣内を満たした。

 ずぴゅん! どぴゅっ! どくっ!

 「あっ...あ! ああっ...」

 ペニスが脈動し、注ぎこまれるのにあわせ、身体を震わせる空。

 

 「あっ! んっ! あん!」

 そして最後に、びくっ、びくっ、と2、3度身体を痙攣させた後、

 「は.....あああ...ん」

 全身の力が抜け、螢一の胸にゆっくりと倒れこんだ。

 

 「はぁっ...はあっ...はあっ...」

 ふたりはぐったりとなり、お互いはぁはぁと荒い呼吸をする。

 

 螢一の胸がぜいぜいと上下している。

 「(いま...私、先輩と同じ呼吸をしてる...)」

 その胸の動きをまるでゆりかごにでも揺られているかのように感じながら、それに身を任せる。

 

 やがて、呼吸も整ってきたころ、目の前に螢一の乳首があることに気づいた空。

 「(先輩の...乳首...)」

 ちゅっ...

 迷わずそれに口づけする。

 

 「う...あっ...」

 いきなりの愛撫に、声をあげてしまう螢一。

 

 「(かわいい...)」

 眉間にシワを寄せる螢一の顔を見ながら、その乳首を舌で舐めたり、唇でつまんで引っ張ったりする。

 

 「あうっ...そ、そんな...」

 すると...まだ繋がったままの螢一のペニスが、再びムクムクと固さを取り戻してくる。

 

 「あっ...また、おっきくなりましたね...先輩...」

 ぷはっ、と乳首から口を離し、うれしそうに言う空。

 

 「おねがいです...今だけ、今だけでいいから...私をもっと求めてください...」

 再び腰を動かそうとする空。

 

 だが、螢一は空の後ろ頭と腰を押えつけたまま、ころんと一回転する。

 「あっ!?」

 上下が逆転し、今度は螢一が空を押し倒す形となる。

 

 「いくよ...空」

 まっすぐ空の瞳を見つめながら言う螢一。

 「せ...先輩....あんっ!」

 空の言葉は螢一が突き上げを開始したせいで、途中で遮られた。

 

 その後、ふたりは朝までお互いを求め合った。

 

 . . . . .

 

 昼前に起きたふたりは、少し早い昼食をとっていた。

 「おいしいですか? 先輩」

 味噌汁を一口飲んだ螢一を見て、どきどきした表情で聞く空。

 

 「えっ、あ、うん、うまいよ」

 あわてて顔をあげ、応える螢一。

 

 「よかった...」

 微笑む空。

 

 螢一は戸惑っていた。

 先に目をさました螢一は乾いた服を着て、空が起きるのを待っていた。

 だが、起きた空はいつもの調子だった。

 まるで昨日の夜の出来事が嘘であるかのように。

 ...それとも、わざと知らないふりをしているのだろうか? 螢一にはわからなかった。

 

 ちょっと恥かしげに視線を落としながら、口を開く螢一。

 「あのさ、長谷川、昨日の夜のことだけど...」

 「昨日の夜? なにかあったんですか?」

 きょとんとした表情の空。

 

 「なにか...って、おぼえてないのか?」

 その一言に、うつむく空。

 「はい...」

 申し訳なさそうに肩をすくめる。

 「あの、日本酒を一気飲みしたところまでは憶えてるんですけど...そこから先がさっぱり...」

 その顔がばっ! とあがる。

 「ま、まさか私、とんでもないことしましたか!?」

 

 「い、いや、とんでもないといえばとんでもないかもしれないけど...」

 

 「ううううう...私ったらまた酔った勢いでヘンなことを...」

 がっくりとうなだれる空。

 

 その空を、優しげな瞳で空を見つめる螢一。

 「ヘンなことじゃないさ」

 昨日の夜の出来事は、決して螢一にとっては変な出来事ではなかった。

 むしろ...いま目の前にいる女性の想い、そして魅力に気づかされた夜だったからだ。

 丸い眼鏡、そしてその奥にある大きな瞳とソバカス...今の螢一にとって、そのどれもが愛とおしかった。

 

 「そ、そうなんですか...よかったぁ...」

 胸をなでおろす仕草をする空。

 どうやら空は昨日の夜の出来事を全く憶えていないようである。

 

 「やれやれ...」

 その空を見て肩をすくめる螢一。

 

 .....昨日の夜、気持ちを奪われたのは、空だけではなかった。

 

 「今度は俺が勇気を出す番だな...」

 ボソリと呟く螢一。

 

 昨日の夜、空が自分に向けてくれた想いに今度は自分がこたえる番だと思っていた。

 

 「えっ、なんですか先輩?」

 顔をあげる空。

 

 「いや、なんでもないよ長谷川...いや、空」

 

 「えっ?」

 一瞬自分の名前を呼ばれたものの、まるで聞き間違いではないかという顔をする空。

 

 「これからどっか遊びに行こうか! 空!」

 「えっ...あ、は、はいっ!」

 聞き間違いではなかった。

 いきなり名前を呼ばれ、そしていきなりの誘い。

 戸惑いながらも返事をする空。その頬にさっと朱がさす。

 

 螢一の想いによって、かけらだった空の小さな恋が、大きな形になろうとしていた。

 


解説

 鯨鳥様のリクエスト「酔った長谷川を螢一が送っていき、長谷川のほうから迫る」です。

 

 一応純愛のつもりですが、それっぽく見えますか?

 しかしなんで騎乗位なんだ?

 


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