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ジャパン・プレイジング 書道編1
コギト=エラムス/文


 その光景は、まさに日本そのものだった。

 

 青畳の敷かれた和室、そこに正座する大神一郎。

 大神の視線の先には...しなかやに動く毛筆の先があった。

 筆が動くたびに白紙の上に墨が染み込んでいく。

 毛筆の動きには一切の澱みがなく、またそこから書きだされる字にも、迷いが感じられなかった。

 迷いなく筆を動かすその手は、書きだされる字には不釣合いなほど華奢だった。

 まるでミルクを溶かし込んだような白さで、そして力を入れると折れてしまいそうなほど細い指。

 そして黒い袖に覆われていてわからないが、同様に細さを想像できるような華奢な腕。

 ブラウスの襟からほっそりと伸びた白い首筋。

 筆を動かすたびにふわり、ふわりと揺れるセミロングのつややかなな黒髪。

 

 まだあどけなさを残すその少女の顔が、真剣な眼差しで筆を見つめている。

 

 その筆が生み出す字は、しなやかさがあり、また女性らしい温かみもあった。

 見ているだけで心が落ち着くようなその字。

 少女の母性愛が滲みでているような、そんな字体であった。

 

 きゅっ、と最後に筆を動かし、字に溜めるような書き残しをした後、

 「ふぅ...」

 と一息ついて紙から筆をはなす。

 

 縦長の紙には「明鏡止水」と書かれていた。

 

 「うん...花火くん、見事だ!」

 その字を見て感心したように言う大神。

 

 「ありがとうございます...」

 少しはにかんだように、控えめに微笑む花火。

 

 「だけど...それは日本の作法じゃない」

 一転して厳しい口調の大神。

 

 「まず、服装だけど...日本の書道では下穿きは身につけないんだ」

 きりっとした顔で大神は言う。

 

 「えっ!?」

 我が耳を疑う花火。

 

 下穿きとはパンツのことである。

 

 「さあ、下穿きを脱いで」

 なおも真面目な表情の大神。

 

 「書道と、そのっ...どういう関係が?」

 戸惑いながら訊ねる花火。

 純情な彼女は「下穿き」という言葉だけでわずかに頬を染めている。

 

 「それはこれから教えるから、さあ、早く脱いで...ここじゃなくてもいいから」

 

 「は...はいっ」

 大神の真面目な表情に、花火はつい返事をしてしまう。

 大神はこんな冗談を言うタイプの男ではないので、花火も信じてしまうのだ。

 

 確か、日本の着物を着る際には下着を身に着けないという。

 それと同じようなものなのかと考えてしまう花火。

 

 「じゃあ...ちょっと失礼します」

 花火はゆっくりと立ち上がり、そのまま和室を出て行った。

 

 流石は大和撫子、日本を知らないとはいえその作法は完璧だった。

 和室を出入りする際にもちゃんと正座をしてからふすまを開け閉めしていた。

 

 

 「お待たせしました...」

 小一時間後、花火が和室に戻ってきた。

 

 わずかに上気している頬から、今下着を穿いていないことがすぐにわかる。

 

 ふたたび畳の上にちょこんと正座してロングのスカートの上に恥ずかしそうに手を置いている。

 

 「じゃあ、次は姿勢。正しい書道は正座ではなく、中腰になって書くものなんだ」

 その様子を知ってか知らずか、なおもきりっとした表情で続ける大神。

 

 「中腰...ですか?」

 不思議そうな表情で小首をかしげる花火。

 

 「そう、こんな感じで...紙をまたがるようにするんだ」

 大神は立ち上がって、敷いてある書道紙をまたぎ、ふんばるような形で腰を落とす。

 ちょうど...空気イスをするような形だ。

 

 「...そ、それで書けるんですか?」

 大きく股を開いた姿勢に、ちょっと驚いた様子の花火。

 

 「伝統ある日本の書道はみんなこうして書かれてるんだ

  花火くんがやっていたのは中国の方で盛んな書き方なんだ」

 さも当然であるかのように言う大神。

 

 「へぇ...そうなんですか」

 人を疑うことを知らない無垢な少女は、大神の言葉に感心したようだった。

 

 「さあ、やってごらん」

 「は...はいっ」

 大神の一言にゆっくりと立ち上がり、書道紙をまたぐ花火。

 

 ものをまたぐことなんてしたことのない花火。それだけでも恥ずかしそうである。

 

 「その状態から...腰を落とすんだ」

 「はいっ..........んっ...」

 きゅっと瞼を閉じ、勇気を振り絞ってゆっくりと腰を落とす花火。

 

 股が両脇に広がり...それにあわせてきれいにプリーツの入ったスカートが広がり、吹き込んだ風が何も穿いていない股間をくすぐる。

 

 いくらスカートで覆われているとはいえ、殿方の前でふんばるような格好で股を開き、

 そのうえ下着をつけていない。

 考えるだけで花火の頬がみるみるうちに赤くなってくる。

 

 「うん、そんな感じだよ...じゃあ、次は、筆の持ち方なんだけど...」

 そう言いながら、大神は花火のロングスカートの裾を持ち、ばっとめくりあげた。

 

 一瞬、ひるがえったスカートから、白い太ももがチラリと見える。

 

 「きゃああああああっ!?」

 いきなりの大神の行動に仰天し、悲鳴をあげてそのままペタンと座り込んでしまう花火。

 あわててめくられたスカートの裾を押さえる。

 

 「あっ、ダメだよ花火くん、恥ずかしがっては」

 たしなめるように言う大神。

 

 涙ぐんだような顔で大神をじっと見つめる花火。

 透き通るような白い肌は、もう上気して赤く染まっている。

 

 大神がなおもきりっとした表情だからよいものの、ここでイヤらしい顔などしていたら

 花火は間違いなく泣きながらこの部屋を出ていったに違いない。

 

 大神の紳士的な態度が、花火の判断を狂わせた。

 

 「いいかい花火くん書道というのは文字を書くだけの行為じゃない。

  文字を素材とした芸術なんだ...わかるかい?」

 大神の問いかけに、黙ってこくりと頷く花火。

 

 だがまだ警戒しているようで、押さえたスカートの手をきゅっと握りしめている。

 

 「だからこれは、尊い芸術を学ぶための行為なんだ...

  それを恥ずかしがっていては書道の先人たちに申し訳がたたないよ」

 子供に言い聞かせるようなやさしい口調の大神。

 

 「すっ...すみません...でもっ...」

 もじもじとした様子の花火。

 

 「花火くんの好きな小野道風の作品もこれから俺が教える方法で書かれたんだよ。

  日本ではこの方式は当たり前で、誰も恥ずかしがる人なんていないんだ」

 

 小野道風とは、平安中期の書家で和様書道の創始者でもある人物だ。

 花火は、この小野道風の穏やかな字体が大好きだったのだ。

 

 「そ、そうなんですか?」

 ぱっと顔をあげる花火。

 

 今まで積みさねてきた大神の実直な態度のおかげで、その言葉は全て真実として少女に伝わった。

 

 「うん、慣れないうちは恥ずかしいかもしれないけど、俺がゆっくり教えてあげるからさ...」

 ちょっとはにかんだように微笑む大神。

 

 「すみません! 私...大神さんに教えていただいてるのに恥ずかしがったりして...」

 三つ指をついてぺこりと頭を下げる花火。

 

 「私、がんばります! ですから私に日本の書道を教えてください!」

 三つ指をついたまま顔だけを上げ、上目づかいに大神を見つめる花火。

 

 彼女はいかに自分が男にとって魅力的な仕草をしていることに気づいていない。

 健気さが伝わってくるような、その上目づかいの表情。

 男なら誰しも愛おしさのあまり抱きしめたくなってしまうほどの。

 

 「そんな、頭を下げることはないよ、花火くん。

  じゃあ続きをするから、さっきの姿勢をとって」

 だが大神は至って冷静だった。その冷静さが花火の信頼を得ているところでもあるのだが。

 

 「は、はいっ」

 身体を起こして嬉しそうに返事をする花火。

 

 ゆっくりと立ち上がって再び書道紙をまたぐ。

 

 いくら「教えてください」とお願いしてはみたものの、やはり殿方の前で股を開くのは何度やっても恥ずかしい。

 彼女にとっては、これはかなり「はしたない」行為なのである。

 

 しっかりと瞼を閉じ、意を決した表情で、再び腰を落とす花火。

 「んっ...」

 腰を落とした瞬間、セミロングの黒髪がふわりとなびく。

 

 長いスカートごしに、細い脚線が浮かびあがる。

 そして、大きく股を開いていることも。

 

 「じゃあ、めくるよ、いいね?」

 今度は驚かせないように確認をとる大神。

 

 「は...はいぃ...」

 かあっと赤く染まった頬、両手で恥ずかしそうに口を押さえて返事をする花火。

 

 黒いスカートに手をかけ、ぱっとめくりあげる大神。

 

 「あ...あっ」

 股間に風を感じ、思わず声をあげてしまう花火。

 

 すらりと伸びたしなやかな脚線が見える。

 それが股の間を見せつけるように開いているのだ。

 

 「あ...あ...」

 その細い脚が、緊張と羞恥でカタカタと震えはじめる。

 

 きゅっと締まった足首、全く毛の生えていない白いすね、贅肉を感じさせないがふっくらとした太もも。

 ロングスカートで隠しておくには勿体ないほどの脚線美が、そこにはあった。

 

 「ほぉ...」

 大神は感心したように唸る。

 そして...スカートを更にめくりあげながら、視線を上へ上へと運ぶ。

 

 「あっ...あっ...大神さんっ...そ...そんなに...めくらないでくださいいっ」

 首筋まで赤く染めながら、すがるように言う花火。

 

 そのまぶしい脚線美の付け根の近くに...いたいけに震える割れ目があった。

 「まだ...生えてないんだね」

 股間に集中する大神の視線。そしてその一言。

 

 「い...いやぁ...言わないでくださいいっ」

 花火は両手でさっ、と顔を覆いかくしていやいやをする。

 恥ずかしさのあまり、無意識のうちにひざが閉じてくる。

 

 ...ここで両者の認識の違いがあった。

 大神は陰毛のことを言っているのだが、花火はすね毛のことを言われているのだと思っていた。

 しかし花火にとっては脚を見られることすらかなり恥ずかしいのだ。

 きっと大神の言っていることが自分の性器のことに対する意見だと知った時、恥ずかしさのあまり気絶してしまうだろう。

 

 「おっと花火くん、駄目だよ、ちゃんと股を開いて」

 閉じてきたひざを見て、すかさず注意する大神。

 

 「はっ...は...い」

 息も絶え絶えに返事する花火。

 

 震えるひざがまたゆっくりと開いていく。

 

 花火に言うと卒倒するので大神は言わなかったが、大きく股を開いているので

 割れ目が開いて中に隠された秘肉が見えていたのだ。

 

 貞淑な花火からは容易に想像できる、まだ未開の女性器。

 薄桃色のそれは、怯えるようにふるふると震えていた。

 

 「よし、じゃあスカートの裾を自分で持って...それが正しい作法なんだ」

 ばっ、と更にスカートをたくしあげて、覆い隠している花火の顔の側までスカートの裾をもってくる。

 完全にスカートがめくりあげられているので、下半身が丸だしになっている花火。

 

 「は...はいぃ...」

 その僅かに震える手を動かし、差し出されたスカートの裾を持つ。

 

 瞳はもう泣き出さんばかりに潤み、首から上は茹でられたように真っ赤に染まっていた。

 

 まさに顔から火が出そうな花火だったが、彼女を支えていたのはまだ見ぬ日本に対する憧れの一心だった。

 

 スカートの裾を細い指でちょこんと持ったまま、のぼせたような顔をゆっくり下に向ける。

 

 「..........?」

 ぼんやりとした表情で、丸だしになった下半身を見つめる花火。

 

 「きゃ!?」

 次の瞬間飛び上がらんばかりに驚く。

 

 思いきりめくりあげられたスカート、そしてなんの遠慮もなく大股を開き、

 見てくださいといわんばかりに晒された自分の下半身。

 そしてその下半身をまじまじと見つめる大神。

 今更になって自分の状態を改めて認識する花火。

 

 もう大泣きしそうなほどうるうると瞳を潤ませる花火を見て、

 「落ち着いて、花火くん。これは日本の書道の作法なんだ」

 あわててなだめる大神。

 

 「さ...さほう...」

 頭に血がのぼりすぎて朦朧とした表情の花火。

 ただ大神の言葉をオウム返しにする。

 

 「そう、これから君は正しい書道の作法を身につけることができるんだ」

 真摯な態度で語りかける大神。

 

 「...でも、そんなに嫌だったら無理しなくてもいいよ...どうする?」

 

 「いっ...いえっ...が、我慢します...ですから、ですから...

  このまま私に書道の作法を教えてください...」

 大神の顔が映りこむほど潤んだ瞳を向け、吐息を吐きながら言う花火。

 

 まだ男を知らない少女だというのに、それはたまらない色気があった。

 

 「うん...わかった、じゃあ、続きをするよ」

 そんな男心をくすぐる花火の仕草にも、大神は冷静だった。

 

 大神は硯[すずり]の側に置いてあった筆を取り、毛先に墨を染み込ませる。

 

 「よし...じゃあ次は...正しい筆の持ち方だ」

 大神は言いながら、剥き出しになった少女の股間に筆の柄を近づけた。

 


解説

 『サクラ大戦3 巴里は燃えているか』発売記念の小説です。

 

 個人的に一番書きやすい北大路花火をネタにしました。

 お話の内容的にはエロゲーなんかではありふれたもんですね。でも、やってみたかったんです。

 

 ちなみにゲーム自体はまだ末プレイです。

 だから花火ちゃんの性格も全然わかってません。

 ひょっとしたら性格全然違うかもしれませんが、その場合は御了承ください。

 

 さてこの「ジャパン・プレイジング」は日本を知らない大和撫子、

 北大路花火に色々と誤った日本の知識を植えつけていくというシリーズです。

 (シリーズになるのか...?)

 


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