かちゃ...
玄関の開く僅かな音に反応し、しのぶは駆け出した。
「ただいまーっ」
仕事から帰ってきた景太郎はホッとした様子で言う。
廊下の向こうから聞えてくるトタトタという駆け足の音。
景太郎はあわてて靴を脱ぎ捨てて、廊下に飛び出す。
ぐっ、と腰を落としてこれから飛び込んでくる者を受け入れる姿勢をとる。
だが次の瞬間、
「おかえりなセンパイきゃああああああっ!?」
すてーん!
景太郎の身構えたすぐ横をすり抜けて、すっ転ぶしのぶ。
ずずずずずーっ!
転んだ勢いで前のめりになったまま廊下をつーっと滑っていく。
「..........」
「お、おい、しのぶ、大丈夫か?」
突っ伏したまま動かないしのぶに、心配そうに声をかける景太郎。
しのぶは景太郎と結婚し、浦島しのぶとなった。
景太郎が仕事から帰ってくるのが待ち遠しくて仕方がないしのぶは、
玄関が開く音を聞くと、早く景太郎の顔が見たくて玄関まで駆け足をするのだ。
しかし不運なしのぶは、いつも自分がピカピカに磨いている廊下で転倒するのが日課だった。
何度転んで痛い目にあっても、景太郎の顔を早く見たい気持ちが強いらしく、出迎えの駆け足をやめようとはしなかった。
なので景太郎は廊下を走る音が聞えると、転ぶであろうしのぶを抱きとめようと身構えるのだ。
だが...今日は景太郎の身構えた所とは違う場所にしのぶはすっ飛んでいった。
「いたたたたた...」
やっと起き上がったしのぶは、廊下にぺたんとお尻をついたまま身体をさすっていた。
「あ、しのぶ、鼻の頭がすりむけてるよ...じっとしてて」
しのぶの顔をのぞきこむようにして景太郎はかがみこむ。
「えっ...」
そのまましのぶの肩をそっと抱いて...鼻の頭をぺろんと舐めた。
「あっ...」
これも...ふたりの儀式のひとつだった。
こうするとしのぶの痛みはたちどころにどこかに飛んでいくのだ。
「...夕食の準備、できてる?」
肩を抱いたまま、景太郎は微笑む。
「は...はいっ!」
しのぶの鼻の頭は景太郎に舐められて、てかてか光っていた。
そして...これも毎日のこと。
食事が終わると、ふたりで居間のソファに座ってテレビを見る。
景太郎がソファにすわり、その上に抱っこされるような形でしのぶが座る。
いつもしのぶは景太郎のひざの上に座る時、自分の身体の重さを気にするのだが、
しのぶは驚くほど軽いので景太郎はひざにネコでも乗せているような感覚だった。
そしてふたりは頬をぴったりくっつけたまま、一緒にテレビを見る。
しばらくテレビを見ていると...景太郎が首筋にキスなどをしてくる。
「あんっ...だめですセンパイ...あっ」
そう言いながらも景太郎の手に手を重ねるしのぶ。
とくん..... とくん..... とくん.....
首筋にキスをするたびに...唇ごしにしのぶのあたたかい鼓動を感じる。
景太郎はしのぶの首筋にキスの雨を降らせ、服の上から器用に胸を撫でさする。
それも適当ではなく、しのぶの控えめな大きさの胸からでもしっかりと性感帯を捉えた愛撫を送り込む。
「あふ...あっ...あ」
それだけでしのぶはもう顔をあげて喘ぎはじめる。
景太郎にならどこを触られても気持ちいいのだが、それが官能を受ける場所であるなら尚更である。
景太郎は揉むたびにほんのり手に残る柔らかさを楽しみながら、
ブラをずらしてカップの裏で器用に乳首をこすりあげる。
すりすりと布ずれの音をたてるたびに、
「あふっ...あうっ...あっ」
まるで電気でも流れたかのように僅かに身体を浮かせるしのぶ。
とくん.... とくん.... とくん....
胸を手のひらで覆うたびに、命を刻む振動を感じる。
心臓のあたりの手のひらを置くと、ぽかぽか暖かかった。
それから景太郎の手はスカートの中にするりと入り込む。
「や...あんっ...ふああぁ」
恥ずかしくて脚を閉じようとするものの、首筋と胸の2ヶ所に絶え間ない愛撫を受け力が入らない。
景太郎はすね毛ひとつ生えていないつるつるの脚を、手のひらですべすべと撫でる。
そしてその勢いにまぎれてスカートをぱっとめくりあげる。
「ひゃ...あ...あふぅ」
下半身からふわりと風を感じ、視線を落とすと明るい居間でスカートをめくり上げられ、
ショーツを丸だしにしている。
小さく悲鳴をあげるがその悲鳴も愛撫によって甘い声に変わる。
まだ子供っぽいショーツの前面に...ぽつぽつとシミができ...しのぶの羞恥を煽る。
景太郎は浮かんできたシミを、ちょん、と指で押した。
「ひゃっ...!」
背中に冷水を浴びたような声をあげ、背筋をそらせるしのぶ。
指で押されたショーツの部分が、じんわりとシミで湿っていく。
それと同じ頃合に、キスの雨でしのぶの白い首筋が唾液でてかてかと濡れ光りだす。
舌はそのまま首筋を這って...鎖骨をめざしていく。
景太郎は胸を愛撫している最中、器用にしのぶのブラウスのボタンを外し、肩をはだけさせていたのだ。
「せ...せんぱいいぃ...はあぁあ」
自分でも気づかないうちに魔法のように服を脱がされていた。
戸惑い混じりの声をあげるしのぶ。
舌はつーっ、と肩のラインをなぞりながら、肩口から下がる白いブラのヒモをまきこんで、
はらりとブラのヒモを肩から外す。
こうした愛撫と一体になった景太郎の脱がしのテクニックは、新妻を知らず知らずのうちに生まれたままの姿にしていくのだ。
同様に反対側の肩も舐めて...肩ヒモをずらしていく。
「はぁぁぁぁぁぁ...」
肩の上をナメクジのように這う舌の感触に、くすぐったいような気持ちいいようなため息を漏らすしのぶ。
自分の胸を覆うブラが、支えを失って辛うじて胸にひっかかっているのも知らずに。
ずれたブラのカップから...ぷっくりと固くしこった乳首が見える。
それはピンク色で...つつましやかだったがショートケーキの上のイチゴのような存在感があった。
景太郎は無言でごくりと唾を飲み込むと、ブラの間からするりと手を入れてそのイチゴを摘む。
「きゃんっ!?」
てっきりまだブラをしているものと思っていたしのぶは、びっくりして飛び跳ねる。
それを合図に景太郎得意の3点同時攻撃が始まる。
舌で鎖骨をしゃぶるように舐め、
固くしこった乳首をひとさし指と親指でつまみ、コリコリと転がし、
ショーツの上から中に秘められた花園をツンツンと突つく。
「あっ、はあぁ、あっ、ああんっ、あはああああ」
いままでは吐息だけだったが、たまらずはっきりわかる声で喘ぎはじめるしのぶ。
この3点からこんこんと湧き起こる官能のさざ波は、脳天から足のつま先まで全身に行き渡る。
「ふあああ...はあああ...はあああん」
やがて全身の力が抜けていき、景太郎に身を預けるしのぶ。
まるで景太郎という小船に乗って、身体がとろけるような快感の波に揺られるように。
しのぶの瞳がしっとりと潤みはじめ、半開きになった口からは、はぁはぁと吐息が漏れる。
まさに恍惚というべきうっとりした表情で、景太郎にしなだれかかる。
とくん... とくん... とくん...
しなだれかかったしのぶから聞こえる、かわいい鼓動。
ドキドキしているのが手に取るようにわかる。
「かわいいよ...しのぶ」
半開きになった口に、チュッ、と唇を重ねる。
吐息を感じながら口をこじ開け、舌を指し込む。
「あむっ...あむむ...」
しのぶも舌を絡め、歓迎する。
じゃれあうように舌を絡めあい、ずるずると唾液をすすりあう。まるで甘い蜜を味わうように...。
舌を絡めあいながら、景太郎はしのぶの小っちゃなお尻を覆う、これまた小っちゃなショーツをするするとおろしていく。
「んふぅぅ...」
一瞬眉を曇らせるしのぶだったが、嫌がったりはしない。
ぱさ...っ
ひざのあたりまで脱がすと、ショーツは布ずれの音をたててひとりでに床に落ちた。
恥かしそうにぴったりと閉じた両足の間に手を入れ、すすすすっ、と太ももの内側を割れ目のところまで撫でる。
まだ生えていないつるんとしたゆでタマゴのような割れ目に、ひとさし指を第一関節くらいまで挿入して、スジに沿ってつぅっと撫でる。
「んふぅ!」
唇を重ねあったまま、しのぶはくぐもった声をあげる。
ぱか...っ
そして少し力を入れて両足を広げてやると、しのぶはようやく閉じていた両足を開いてくれる。
その奥には...花とも、果実ともつかないピンク色に濡れ光る薄肉があった。
その薄肉はすでに景太郎の愛撫によって、溶けそうなほどにとろとろになっている。
僅かに開いた楕円の肉穴から蜜がこんこんと沸き立ち、景太郎のズボンにあふれた蜜を染みこませている。
ちゅくんっ...
指で触れるだけで、それは水っぽい音をたてた。
女の子の一番大事な箇所を愛する人に触れられて...
「んうぅ!」
恥かしさに震えながらも身をまかせるしのぶ。
ここでようやく...景太郎は唇を離した。
「しのぶ...いっぱい、いっぱい気持ち良くなってね...」
しのぶの唾液で濡れ光る唇で言った。
「せ...センパイ...はああん!」
しのぶの返事をまたずに、指はクリトリスに触れた。
「目をそらさずに、じっと俺の目を見て」
「は...はいぃ...ああん」
恥かしくて恥かしくて、本当は俯いてしまいたかったが...愛する人のためにじっとその瞳を見つめるしのぶ。
「センパイ...センパイ...センパイ...」
耳まで真っ赤にしながらも景太郎を見上げ、その瞳は水を張ったように潤みきっており、端には大粒の涙が溜まっていた。
景太郎の指は、ピンクパールのようなクリトリスの包皮を剥いたり戻したりしながら、クリクリと指で転がす。
開いたほうの手で蜜壷のまわりを指で焦らすようになぞる。
「センパイ...センパイ...センパイ...」
愛する人をうわごとのように呼びながら、景太郎の腰に手をまわしてしっかりとしがみつく。
気持ちよさのあまり、どこかに飛んでいってしまいそうだったからだ。
その眉間に、かわらいしくシワが寄る。
「ひあっ! センパイいっ! あひっ! あんんんっ!」
潤った秘穴の中に、ずぶりと指が挿入されたからだ。
華奢な身体をぐぐぐっ、と弓なりに反らしながらも、景太郎を見つめるのだけは忘れない。
「あんっ! センパイっ! ひんっ! せ、センパイいぃ」
そして、愛する人を呼ぶことも。
とくん.. とくん.. とくん..
とろとろに柔かくなった肉壁ごしに、挿入した指で鼓動を感じ取る。
早鐘のように鳴り響く心音。
景太郎は指を奥深く挿入すると、くいっ、と指を曲げた。
くちゅんっ!
「あひいいいいいん!」
その瞬間、スイッチが入ったかのようにしのぶは腰をバウンドさせる。
くちゅ、くちゅ、くちゅ、くちゅん
肉壁の中をかきまわすように指を動かすと、指にからみついた愛液がくちゅくちゅと音を響かせる。
「ひんっ! ひんっ! ひんっ! あひん! せせせっ、センパイ...センパイぃ...」
まるで腰が抜けたような情けない声をあげるしのぶ。
もう頭の中が真っ白く呆けてしまいそうなほどの快感に、桜色の唇からよだれがつぅっと垂れた。
とくん! とくん! とくん!
絡みつく愛液、暖かいしのぶの中で、絶頂が近いことを感じとる。
「はああああ...センパイ、センパイ、センパイ、ひああああん...」
景太郎の腰にまわした手がきゅっ、と更に強く抱きしめられる。
「そろそろイクんだね...いいよ、いっぱいイクんだよ...」
切羽つまった表情のしのぶを見ながら、やさしく囁きかける景太郎。
言いながら、景太郎は入れた指を2本に増やし、ピースサインをするかのような形で肉壁を押し広げ、ぐりぐりとこね回す。
「はひいいいっ! イクっ! イクっ! ひくううぅ! いきますううううっ!」
もうロレツの回らないしのぶ。
とくん!とくん!とくん!とくん!とくん!
爆発しそうなほどに鼓動が早くなったかと思うと、
「せんぱいひいいいいいっ! ひくっ! ひくぅ! ひくうううううっ!」
ブリッジをするようにぐいんぐいんと背筋を反りかえらせ、ソファの背もたれに額をくっつけるようにして絶頂を迎えるしのぶ。
ぶしゅ...っ、しゃああああ...
次の瞬間、失禁したかのような量の愛液が、秘穴から一気に分泌され、景太郎の手のひらをびしょびしょに濡らしていく。
ひくん! ひくん! と痙攣しながら、なおも絶頂の快感に正体を失っている。
「はあっ...はああああん...」
やがて、満足そうなため息と共にブリッジの姿勢だったしのぶがクタッと崩れ落ちる。
景太郎はその小さな身体をやさしく抱き寄せた。
糸の切れたあやつり人形のように、胸の中でぐったりとなるしのぶ。
小さな肩をはぁはぁと上下させ、荒く息をしている。
胸の中でちんまりとなるしのぶのあまりの愛とおしさに、よしよしと頭を撫でる景太郎。
「かわいいよ...しのぶ...」
しのぶは胸に抱かれ、景太郎の鼓動を聞いていた。
とくん..... とくん..... とくん.....
暖かくて、やさしい、景太郎の心音。
「(センパイ.....)」
まるで子守唄のような景太郎の鼓動に、しのぶはそのまま深い眠りに落ちていった.....。
. . . . .
「...ちゃん、しのぶちゃん、しのぶちゃん」
「はへっ?」
身体を揺さぶられて、しのぶは現実に引き戻された。
「は、はうっ!? せ、せんぱいっ!? どどどどどうしてここにっ!?」
目が飛び出んばかりに驚くしのぶ。
「い、いや、どうしてって...一緒に勉強してたじゃないか」
その一言に、今自分が置かれている状況を一気に思い出すしのぶ。
「えっっっ!?」
二度びっくり。
そこはしのぶの部屋で、ふたりは机に向っていた。
それなのにしのぶはいつの間にかうたた寝をしてしまったのだ。
「きゃーっっっ!?」
よだれまみれになったノートを見てパニックになる。
「(せ...せっかくセンパイに勉強を見てもらってたのに居眠りするなんてええええっ!!)」
「お、落ち着いてしのぶちゃん! しっかり目をさまして!」」
ぐるぐると目を回すしのぶの肩をつかむ景太郎。
「は、はいっ!!」
言われるままにしのぶは手の甲で目をごしごしとこすった。
がりっっ!
固いもので引っかかれたような痛みが鼻の頭に走る。
「いたっ!?」
謎の痛みに びくん! と肩を縮こませるしのぶ。
手を見ると...薬指のところに銀色に輝く指輪があった。
それはしのぶの細い指にはサイズが大きすぎて...ゆらゆらと頼りなくぶら下がっていた。
すりむけた鼻を押さえながら...それを見つめるしのぶ。
「.....? ゆびわ?」
指輪は...しのぶの顔が映りこむほどキラキラ光っていた。
「き...気に入ってくれたかな?」
顔を近づけた景太郎も、しのぶと一緒に並んでその指輪に映りこむ。
「えっ...」
「い、いや、しのぶちゃん最近ずっと勉強とか頑張ってたから...俺からのプレゼント」
映りこんだ景太郎の顔が、照れたようにうつむいた。
「指輪とかって買うの初めてでよくわからなかったから...サイズちょっと大きいかもしれないけど...ごめんね」
映りこんだ指輪ごしでわからなかったけど...
耳元に感じる吐息で景太郎の顔がかなり接近していることに気づいて...しのぶの顔がポッと赤くなる。
「ととととっ! とんでもないですっ! ありがとうござい...!?」
ばっ! と勢いよく景太郎の方に顔を向けるしのぶだったが、
振り向いた途端に景太郎の顔がアップで飛び込んできて...驚きのあまりしのぶの感謝の言葉は途中で遮られてしまう。
「(あわわわわわわっ!? セ、センパイの顔がこんなに近くにっ!?)」
しのぶの顔が、まるで発火したかのように一気に赤面する。
「あ、しのぶちゃん、鼻の頭がすりむけてるよ...じっとしてて」
「えっ...」
しのぶの肩をそっと抱いた景太郎は...顔を近づけて鼻の頭をぺろんと舐めた。
「あっ...」
夢で見たのと...同じ光景。
もちろん痛いのはあっという間に飛んでいったけど...夢と違っていたのは、
心の中がぽかぽか暖かくなって...とても幸せな気持ちになったこと。
「じゃあ...勉強の続きしようか?」
肩を抱いたまま、景太郎は微笑む。
「は...はいっ!」
しのぶの鼻の頭は景太郎に舐められて、てかてか光っていた。
しのぶの見ていた夢が叶う頃に...大人になったしのぶの指にこの指輪はピッタリとはまるのだが、
それはまだまだ先の話である。
シュウ様のリクエストの「ラブひな」ネタ、「しのぶと景太郎の純愛」です。
純愛小説が書きたかったので手近なネタということで...。