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藍より出でて −結び文−
コギト=エラムス/文


 窓から差し込む月明かり...青白い光に照らされ...裸婦像の彫刻のように浮かび上がるしなやかな女体。

 あまりの美しさに、言葉を失ってしまう薫。

 恥かしげに覆われた両手があるにも関わらず、ふくよかさが想像できる。

 

 ごくり、と生唾を飲み込んで、

 「もっと...よく...見せて」

 かすれた声で言う薫。

 

 言いおわって、とんでもないことを要求していることに気付く薫。

 つい先ほどファーストキスをしたばかりの少女に、なんてことを言っているんだと後悔する。

 

 「は...はいっ...」

 が...葵は震える声で返事をすると...緊張と恥かしさのあまりぎくしゃくした動きで覆いかくした手をどけた。

 白く細い腕の下から...適度に量感のある乳房が月光に晒された。

 オワンをふたつ伏せたような整った形で、ツンと上向きの乳首は小粒ながらもショートケーキの上のイチゴのような存在感がある。

 「(わ...和服着ててわかんなかったけど...葵ちゃんの胸...大きいんだな...)」

 何度も唾を飲み込みながら、そのふたつの母性を凝視する薫。

 

 その視線がゆっくりと下にさがっていき...控えめに若草の生える股間に移る。

 

 「きゃ」

 薫の視線の動きを察し、あわてて股間を両手で覆う葵。

 

 いくら薫からのお願いとはいえ、さすがに少女にはたえられなかった。

 申し訳程度に生えた若草が見れたのはほんの一瞬だった。

 

 「ね...さわって...いい?」

 初めてみる女性の身体に冷静さを失ったのか、薫は返事を待たずに葵の肢体に手を延ばす。

 ...そのなだらかなシルエットが怯えるように震え、強張った。

 

 急に我にかえる薫。

 

 「あっ、ご、ごめん、イヤだよね」

 自分の欲望のために葵を怖い目にあわせてしまったと思い、気まずそうに伸ばした手を引っ込めようとする。

 

 「あっ...葵...ちゃん?」

 が、引っ込めようとしたその手を、葵は小さな両手で包み込むように添える。

 葵の手は薫のものよりもひとまわり以上小さかった。

 

 「わ...薫さまの手...おっきいんですね」

 やさしく包んだ薫の手を、きゅっと握り締めて嬉しそうに言う葵。

 

 そしてそのまま...ゆっくりと自分の胸元まで運ぶ。

 

 「薫さまが望まれるなら...どうぞ...」

 包み込んだ薫の手を、抱きしめるようにして胸に押し当てる葵。

 それは...愛する者を一途に思う、少女の精一杯の勇気だった。

 

 ふにゅ...

 

 薫の手のひらに、葵の乳房の感触が。

 「(うわ...や...やわらかい...)」

 初めて触れる女性の母性の象徴。

 

 じっと薫を上目づかいに見つめていた葵が...

 「あの...私の身体...ヘンじゃ...ない、ですか...?」

 言いにくそうに、途切れ途切れの言葉で言った。

 

 「え...?」

 一瞬呆気にとられる薫。

 

 どうしてそんな言葉が出てくるのか理解に苦しむほど...葵の身体は美しかった。

 華奢ながらも無駄な贅肉ひとつなく、最高級の白磁のようなシミひとつない肌。

 その感触は張りがありながらも手に吸いつくようなきめ細やかさで...まさに芸術的といってもよかった。

 

 「そ、そんな...とってもキレイだよ、葵ちゃんの身体」

 言い終わってから、もっと気のきいたセリフはなかったのかと後悔する薫。

 

 ずっと強張っていた葵の身体から、ふっ...と力が抜ける。

 「よ...よかったぁ...私の身体がヘンで...薫さまに嫌われてしまったらどうしようかと思って...」

 言いながら、ほっと胸を撫で下ろような仕草をする。

 

 初めて触れる胸の感触に感激するあまり気づかなかったが...

 とくん、とくん、とくん、とくん

 手のひらごしに感じる葵の胸の奥から、早鐘のような鼓動が感じとれた。

 

 「葵ちゃん...」

 やっと薫は気づいた。

 薫が葵の身体に手を伸ばしたときに怯えるように震えたのは...嫌悪感からではない。

 自分の身体がヘンで薫に嫌われてしまわないか、ずっと不安だったのだ。

 

 自分をここまで想ってくれる...そんな愛とおしい存在を抱きしめられずにはいられなかった。

 「葵ちゃんっ」

 薫は両手を開いて葵の身体を抱き寄せる。

 

 「あっ!? か、薫さまっ?」

 初めは驚いた葵だったが...ぎゅっと抱きしめてあげるとすぐに安心して...薫の胸に身体をあずけた。

 

 「薫さま...薫さま...」

 薫の胸板に頬をよせ、擦り寄るようにほおずりをしている。

 

 抱きしめた葵の身体は驚くほど細く華奢で...力を込めたら折れてしまいそうなほどだった。

 「(こんな小さな身体で...ずっと俺のことを...)」

 胸が詰まる思いだった。

 

 薫が花菱家を飛び出してもう何年も経つというのに、葵はずっと薫のことを想いつづけてきたのだ。

 薫にとっては葵はもう過去の女の子でしかなかった。

 それなのに、葵はずっと薫のことだけを考えて生きてきたのだ。、

 

 「薫さま...? お苦しいのですか?」

 

 そして今も...自分のことはおかまいなしに、薫のことを真っ先に心配している。

 薫が自分の胸元に視線を落とすと...腕の中に包まれたまま、顔をあげて心配そうに見つめる愛とおしい人の姿があった。

 

 あまりに一途で...あまりに健気で...あまりにいじらしいその存在。

 今は...その存在を片時も離したくはなかった。

 それはきっと...葵も同じだったに違いない。

 もう離れたくない、離さないでください、とばかりに身体をぴったりと密着させている。

 

 見つめあったふたりは、どちらからともなく顔を寄せ合い...それがまるで当然のように...唇を重ねた。

 

 愛とおしい人の唇は...とろけるような甘美な柔らかさだった。

 「(葵ちゃんの唇...やわらかい...)」

 

 ずっと慕いつづけてきた人の唇は...包み込んでくれるような暖かさだった。

 「(薫さまの唇...あったかい...)」

 

 ふたりは熱心に、お互いの唇を求めた。

 

 ちゅっ...ちゅ...ちゅっ...

 「んっ...ん...んっっ」

 唇の重なりあう音と...ふたりの男女のくぐもった声だけが響く。

 

 不意に、薫の唇がそれ、葵の首筋へと移動する。

 

 ちゅっ...

 

 「あ...! 薫...さまっ」

 ナメクジが這うような感覚に...細い首筋をぞくぞくとのけぞらせる葵。

 

 「(葵ちゃんの髪の毛...いいニオイがする...)」

 きちんと切り揃えられた葵の髪の毛から香る...リンスの香り。

 その香りに心を奪われそうになりながらも、

 チュッ、チュッ、と吸いつき、葵の白い首筋に跡を残すようにキスマークをつけていく。

 

 「あ...は...ああっ」

 キスひとつひとつに反応し、天井を仰ぎながら首筋を反らす薫。

 

 薫のキス攻勢は首筋から鎖骨を通って、ふくらみのあたりにまで降りてくる。

 ふくらみの裾野のあたりに唇が触れた瞬間、

 「あ...!」

 敏感に反応する葵。

 

 「(や...やわらかい...)」

 葵の肌はどこもすべすべで柔らかかったが...この母性ともいえるべき箇所はマシュマロとも思える柔軟さだった。

 薫の唇は柔肉を摘みながら、ふくらみの頂頭めざしてチュバチュバと吸いつきつつ移動していく。

 

 「あっ...あ! い...いけません薫さまっ!」

 唇が頂点にさしかかる直前に...葵は急に我にかえったように言葉で制する。

 

 唇の動きを止め...双乳に顔を埋めるようにしたまま視線だけを上に向ける薫。

 

 自分の胸の谷間に...大好きな人の顔があるのはまだ少女の葵にとってはたまらなく恥ずかしい光景だった。

 それが直視できないのか、視線をそらしたまま、

 「ち...”契り”は...殿方である薫さまさえ気持ちよくなっていただければ...」

 軽く握った手で口元を押さえながら言う葵。

 

 薫に仕えるのが当たり前であるように躾[しつけ]られてきた葵にとって、

 性交も自分の身体を使って薫に気持ちよくなってもらうのが当然だと思っていたのだ。

 

 「じゃあ...気持ちいいんだ?」

 少しからかうような調子を含んで言う薫。

 

 その一言に、葵の顔全体が発火したように赤面する。

 

 「かっ...薫さまのいじわるっ」

 かあっと真っ赤になった顔をさっと両手で覆い隠す。

 

 「葵ちゃんが気持ちよくなってくれれば...俺も気持ちよくなれるんだ」

 薫は再び顔を伏せ...乳房の先端にちょこんと乗った小粒を口に含んだ。

 

 ちゅむ...

 

 「あっ!!」

 顔を手で覆ったままの葵の身体が、びくん! とわなないた。

 

 少女の敏感な場所を口に含み、突起を舌でチロチロと転がす。

 

 「あふっ...は...い、いけませんっ、いけませんっ...薫さまっ...あっ」

 顔を手で覆ったまま、いやいやと首を振る葵。

 

 初めての口唇愛撫に湧き起こる不思議な感覚に...少女は戸惑っていた。

 自らの意思とは関係なく口から漏れるはしたない声に恥らう葵。

 顔は両手で覆われているので表情はわからないが、

 みるみるうちに赤く染まっていく耳で少女がいかに羞恥を感じているかがわかる。

 

 薫はさらにその感覚を引き出してやろうと、空いたほうの乳房を手のひらでつつみ、やわやわと揉み込む。

 「あふぅ...そ、そんなとこっ...きゃ! んっ!」

 揉みながら、唇で突起の側面をしごき...先っちょを舌でツンと突いてやると、否定の言葉にかわいらしい嬌声が混じる。

 

 母性は揉みしだかれると、葵同様けなげに手の中でぷるぷると形を変える。

 薫は夢中になってそれを吸い、ちゅうちゅうと音をたててむしゃぶりつく。

 「はんっ...あ...くふぅん...」

 必死に口をつぐんで声をこらえる葵。

 

 だんだんと固さを増してきた突起に、やさしく歯を立てる薫。

 

 「あふんんんっ...」

 コリコリと甘噛みされると、自分でも聞いたことがないような甘い吐息が漏れてしまう。

 

 愛する人に揉まれ、しゃぶられ、噛まれ...そのつど自分の胸がたぷたぷと揺れるているのがわかる。

 自分の身体で薫が喜んでもらえるのならそれは無上の喜びだったが...

 その度に身体が溶けるような感覚が発生し、少女を困惑させる。

 

 「あふぅ...ふあっ...はぁぁん...」

 やがて無意識のうちに...少女は切なそうな喘ぎをもらし、身体をよじらせるようになっていた。

 

 ぷはっ、と口を離すと...葵のピンクの小粒は唾液まみれで、ぷくっと飛び出た乳首は固くしこって勃起していた。

 こんなかわいらしい少女にも...女としての官能を感じる機能はちゃんと備わっているのだ。

 

 「ほら...見てごらん、葵ちゃん...こんなに固く...おっきくなってるよ」

 薫に言われて顔をおおった手をおろし...おそるおそる頭を上げて、自分の胸を見つめる葵。

 

 ふたつのやわらかな双丘の上に、ピンとたった乳首、その谷間ごしからみ得るのは...戸惑ったような少女の表情。

 .....なんともいやらしすぎるアングルだ。

 

 「葵ちゃん...いいかい?」

 更に口唇愛撫がしたいと要求する薫。

 

 「は...はいっ...薫さまが...薫さまが望まれるなら...」

 言いおわった葵は、身を任せるようにそっと瞼を閉じた。

 

 ちゅ...

 突起に一度だけキスをする。

 

 「ん...」

 閉じた瞼のまま、眉間にしわを寄せる葵。

 

 再び葵の肢体に、キスの雨が降る。

 ちゅっ、ちゅっ、と肌に唇が触れる音がするたびに、

 葵のミルクを溶かしこんだような白さのすべすべの柔肌に...キスマークの跡が筋のようについていく。

 

 途中、控えめに穿たれたおヘソに舌を挿入すると、くすぐったそうに身体を縮こませる葵。

 

 唇からはじまった薫のキスの雨は、ついに下腹部まで降りてくる。

 うっすらと控えめに生え揃った若草に唇が触れると、

 「あっ!? か...薫さまっ!! そんなとこっ!?」

 その瞬間に飛び上がらんばかりに驚く葵。

 

 「い、いけません!! そ、そんなとこっ!! 薫さまが穢[けが]れてしまいますっ!!」

 脚を閉じようにも、股の間には薫の顔がある。愛する人の顔を脚で挟むことは絶対にできない。

 下腹部に顔を寄せる薫の頬に両手を添え、あわてて引き離そうとする葵。

 半ばパニックに陥ったように、細腕に力をこめて薫を拒否しようとする。

 

 性器を舐めるなど、葵は汚らわしい行為だと思っていた。

 もちろん薫の性器であれば葵は口に含むこともいとわないが、その逆は別である。

 自分の不浄の門に近い性器を殿方に舐めてもらうなど、彼女の常識では考えられない行為だった。

 

 「葵ちゃんの身体に...汚いところなんてあるわけないよ」

 

 たしかに...汚ないところを探すほうが難しいほど...葵の女性自身は清純だった。

 葵同様ほっそりとした大陰唇。つつましく包皮にくるまれた陰核。

 ぴったりと閉じた薄いピンクの小秘唇は...薫の口唇愛撫によってわずかに濡れ光っていた。

 性器というよりも...まるで果実のようなみずみずしいその存在。

 

 「きれいだ...」

 薫は全くお世辞のない正直な感想を述べる。

 

 その一言で...混乱している葵の動きがピタリと止まる。

 

 「薫さま...薫さま...」

 不安そうだった顔が...みるみるうちに泣き出した子供のようにくしゃくしゃになっていく。

 

 「うれしい...うれしい...ですっ...私のこんなところまで...」

 ぐすぐすとすすりあげながら言う葵。

 

 排泄器官にも近い箇所を愛する人に誉めてもらえるなんて、夢にも思っていなかったからだ。

 

 「もっと...葵ちゃんのこと...愛したいんだ...いいかい?」

 

 そして...愛してくれると言ってくれた...。

 「(この方なら...この方なら...ずっと...ずっと...尽くしていける...」

 感極まって泣き出しそうになってしまうが、こみあげてくるものをぐっとこらえる葵。

 

 両目をごしごしとこすって瞳にたまった涙を拭い、

 「は...はいっ...薫さま...」

 葵はこくりと頷いた。

 

 続

 


解説

 「藍より出でて −四阿−」の続きです。

 語彙が貧弱だなぁ、相変わらず。

 


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