その日、拓也と実は買い物に出かけていました。
「にいちゃあ〜、これ買ってえ」
おねだりする実。拓也は実をしかります。
「お菓子、さっき食べたばかりだろ」
そのとき一人の男とぶつかりました。
「いてて……」
拓也と男は互いにしりもちをつきます。
「ちょうどいい……これ持てや」
男はさっと鞄を拓也に押し付けると、そのまま走り去っていきました。
「何なんだろ、一体……」
――これが地獄の始まりでした。
拓也は鞄を交番に届けようと歩いていました。
不意に拓也の喉元に腕が回りこんできました。
「ん……んぐ!」
やがて意識を失う拓也。
「にいちゃあ〜」
実の泣き叫ぶこえが遠く聞こえていきます。
「うっ」
「目がさめたかコラ」
どかっと自分を蹴る衝撃で拓也は目覚めました。
拓也はパイプ椅子に縛り付けられていました。
目で見回すあたりは廃屋のような部屋。
そこにいかにもガラの悪い連中が十名ほどいました。
「よぉ、鞄の中空っぽになってるんだけどねえ」
そういいながら男の一人が蹴りを拓也の腹部に見舞いました。
「がは」
胃液をぶちまける拓也。
その前髪を引っつかんで顔を上向かせました。
「とぼけてんじゃねえぞコラ、末端価格で三億のシャブなんだ。どこにかくしやがった」
「ううぅ……」
拓也は喘ぎながら何とか言葉をつむぎます。
「知らない……よ。鞄だって、僕……」
「しょうがねえな。じゃ、これだ」
そういうと顎で向こうをしゃくりました。
「にいちゃあ〜」
そこには男たちに押さえられた実の姿がありました。
「実!」
拓也が血相を変えて叫びました。
「やめて!実をどうする気?」
必死で叫ぶ拓也。男はくくとわらいました。
「てめえがシャブのありか吐くまでこのガキ痛めつけてやる。そうだなあ……。まずは」
男の一人が鋏を取り出しました。
「指を一本ずつ切り取ってやるよ」
「!!」
男は実のまだ幼い手を開くと鋏を左手の人差指に挟みます。
それからぐっと力を込めました。
ぐちゅるぐちゅ
「あう……あうう」
嫌な音がして実の指が弾け飛びました。
「ぎゃああああああ!!」
実の絶叫が響きます。
「いちゃいのー!いちゃいのー!ぎゃあああああああっ!!」
「実ぅ!」
拓也が泣き叫びながら男たちに哀願しました。
「もうやめてよ、もうやめてよ!!」
だが男たちがすんなり願いを聞き入れてくれるはずもありません。
次に中指に鋏を挟んで力を加えます。
ぶちゅう
今度は中指が切り落とされました。
「うあああああああ!!いちゃい!いちゃいの〜!ああーん」
実は数人に押さえつけられ、どうすることもなく、大鋏で指を切断されていきます。
「いちゃいの〜!いちゃいの〜!」
実は顔をくしゃくしゃにして涙を垂れ流していました。
「やめて!僕に代わって!もう実には何もしないでよおおおおおっ!!」
拓也が狂ったように叫びました。
だが男たちは冷たく嘲笑うだけです。
「いちゃいの〜!いちゃいのおおおっ!!」
「やめてよ!鞄の中身なんて知らないよ。止めてよおおおっ!」
「黙ってろやクズが」
どがあっと男が拓也の顔面を殴ります。
「今度はこっちかな〜」
どんどん少なくなっていく実の指の薬指に鋏が挟まれました。
めりめり、ごきゅ
骨が切断される鈍い音とともに指が根元から切り落とされました。
「いちゃいいいい!いちゃいいい!!ぎゃあああああああああ!!」
そうして次は親指へ……
……やがてすべての指が切り落とされました。
「いちゃいよ……いちゃいよ……」
もう実の声もはっきりしません。
拓也は凄まじい目で男たちを睨んでいました。
「許さない……許さない……」
「何ガンつけてんだ小僧?」
男の一人がナイフを取り出しました。
「おい、ドラム缶とセメント用意しとけ」
男はつかつかと拓也に歩み寄ります。
「そんなに見るのがつれえなら、目ん玉抉り出してやるよ」
「まあ、待てや」
男たちの中でリーダー格とおぼしき男が声をかけます。
「せっかくやから、もっとじっくり楽しもうや」
そういうと、熱を出し虚ろな瞳の実を抱き抱えてテーブルの上に乗せます。
それからハンマーを工具箱から取り出しました。
「おい、しっかりおさえてけよ」
男たちは実の、指がすべて無くなってしまった手をテーブルの上に固定しました。
「う……う……」
男はハンマーをその掌に渾身の力で振り落しました。
だーん!!ごきゃごきゃ
「ぎゃああああああああああっ!!」
実が目も裂けんばかりに絶叫します。
掌は巨大なハンマーに叩き潰されて骨が粉々に、肉がぐちゃりと弾けました。
「いちゃいいいいいいいっ!!いちゃいいいいいいいいいいいっ!!うぎゃあああああ」
「実、実ぅ――っ!!」
拓也が涙を流してがたがたと揺れます。
なんとか拘束を解こうとしているのですが、無駄な努力です。
「それ、もう一丁」
男がまたハンマーを振りかざしました。
ぐちゃごきゅめぎゃ!
「ぎゃあああああああああああああっ!!」
もう一方の手も叩き潰されて、血飛沫が舞います。
後にはかつて手だった肉塊があるのみです。
「もうやだ、もうやだ、もうやだよおおお」
拓也がぼろぼろ涙を流して泣き叫びました。
「よし、じゃあ気持ちを楽にしてやる」
男の一人がナイフを提げてやってきます。
「うっ」
男は拓也の前髪を掴んで顔を起こすと、ナイフを目玉の中につきいれました。
「ぐぎゃああああああああっ!!」
拓也が凄まじい声を上げます。
目玉は貫かれて、ナイフを引くと一緒に視神経が出てきました。
「にい……ちゃ……にいちゃ……」
実が微かに声をもらす先で、もう一方の目玉が抉り出されました。
あまりの激痛に拓也は泣き叫び、暴れ回っていすごと床に転がります。
「よかったな、おい。ガキがこれから味わう苦痛を見ずに済むぞ」
「にいちゃ……みの……痛いの、にいちゃ……痛い、だめなの」
リーダーの男が皆を見渡しました。
「それじゃ、そろそろケジメつけとくか。俺達の業界舐めるとこうなるぞって」
いうと数人がかりで実の体をテーブルの上に押し付けました。
これからすることの結果、幼児とは言え大暴れする事は明白だからです。
「それじゃいくぜ」
男がドスをすらっと抜きます。そして実の鳩尾につきたてました。
「!」
ドスの刃は根元まで沈み込み、そして下腹部へと引き下ろされていきました。
「ぐが……かっ」
実が血反吐をがふとはきました。
内臓が掴み出され、口の中に詰めこめられます。
大腸がこぼれてテーブルをよごします。
ナイフで内臓をさばいていき、大腸が破れて糞便がもれます。
「よし、こいつ食わしてやれや」
男が内臓のかたまりを手に取ると、床に転がって暴れる拓也の口の中に突っ込みました。
「どうだ。弟の内臓の味は。ん?」
「ぼおおお」
拓也は答える事は出来ません。
一方、実も内臓を引きずり出されて断末魔の叫びをあげていました。
「ぐぎゃああああああああっ!!ぐおおおおおおおおっ!!」
男たちは満足すると、実の体をテーブルから床に叩き付けました。
拓也の心臓にドスを刺しいれます。
そうして、そのまま鍵を掛けて去っていきました。
もうしばらく実は息がありましたが、内臓をすべて持っていかれて地獄の苦痛の中で死んだのです。
――二人が旅立った頃、拓也たちの父親・晴美は道路で車に轢かれて死にました。
運転していたのは麻薬を持ち逃げした男でした。やはり夫婦仲良く交通事故で死んだのでした。
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