DDDR双辱 第二部 愛玩動物「第拾七話 ふたりの想い」
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双辱 第二部 愛玩動物「第拾七話 ふたりの想い」
ハーデス/文




ミナ「ほ、ホントにやるんですかぁ?」

半ば鳴きそうな顔で…というより既に泣きながら愚図るミナ

マナ「あら?私の言うことが聞けないの?」

ブルリッと震え上がったミナが背筋を伸ばして気をつけの体勢で上ずった返事をする

ミナ「や、やります!迅速丁寧に今すぐにぃ!!」

逃げるように猛然とダッシュで走り去っていった


此処を出て行くのは容易い…実際マナもカナもそれぞれの分野で奨学生レベルの成績なのだ

しかし、今となってはもう遅い…自分は兎も角カナは絶対に此処を出ようとはしないだろう…

マナ「だって…カナちゃんのあの目は…」

あれは確かにオンナノコの…恋する女の目だったから…



既に行為も終え、就寝したカナと恭一郎…今日は恭一郎の部屋で寝るのだろうか…ダブルベットがとても空虚に見える

マナ「…喩えご主人様でも…カナちゃんを奪ったりしたら…」

鍵付きの引き出しに鍵を差し込むとかチャリと音がして鍵が外れる

マナ「許さない…絶対に」

引き出しにあったもの…それは…TT1933

俗称トカレフ…しかもその横に添えられているのは金色に光り輝くモーゼルミリタリー…実弾が8発添えられていた

知名度の割には性能はイマイチだが、その分安く手に入る

実際是もインターネットを通じて購入したものだった

ミナの一件の後だった為、恭一郎は気付いてはいたようだが結局咎められなかった

マナ自身こんな使い方はするつもりはなかったのだが…

深夜、恭一郎の部屋に訪れる…やはりカナも寝ているのか…しかし構わない二人分膨らんだ布団の明らかに大きい膨らみにサイレンサー代わりのウレタンを詰めたペットボトルを押し当てた

パスッパスッ

くぐもった音がして二つの銃弾が布団に穴を開け

ブシューーー

空気の抜ける音、と同時に布団の膨らみがペシャンコになってしまった

マナ「なっ?」

不意に部屋に明かりが点る、入り口に一人の男が立っていた

恭一郎「…マナ」

マナ「…ご主人様、やっぱり気付かれてましたね」

殺り損ねた筈なのに別段落胆した表情もない…当然だろう…これはまだ宣戦布告に過ぎないのだから

恭一郎「その位も見抜けない様じゃ失格だろう?」

マナ「えぇ…でもご主人様?…判りますか、私は気付かれていること位「気付いていた」んですよ?」

恭一郎「…カナならナナの部屋で眠っている…愛想が尽きたのなら好きにするといい」

双子を手放すのは甚だ不本意ではあるが拒否されたのであれば致し方ない…何よりカナはもとよりマナにもプレイでの痛苦は与えても暴力という危害は加えるのは本位でないのだから

マナ「いえ、愛想が尽きたわけじゃありませんよ…ただ」

恭一郎「…カナ…か」

マナ「はい、カナちゃんはきっとご主人様に恋してます…喩えご主人様でも…私からカナちゃんを奪ったら…カナちゃんの一番になったりしたら」

トカレフには安全装置など元よりない、引き金を引くだけで弾の飛び出す銃身がゆっくりと恭一郎に向いた

マナ「許さない」

耳を劈くような爆発音!微動だにしない恭一郎の直ぐ横の壁に穴が穿たれる

当てるつもりだったがやはりトカレフでは命中精度はイマイチだった

恭一郎「引く気は…無さそうだな」

乗り気はしないようだが渋々と構える

…幾ら相手がマナとはいえ拳銃持った相手と素手で遣りあうなど正気の沙汰ではない…

マナ「さようなら」

引き金を引き絞る…硝煙が立ち込めて発射された鉛の塊が恭一郎に向けて飛来する

カナ「ダメェェェ!!」

ドアから飛び込んだ影が恭一郎を押し倒すように飛び込むとその一瞬後、恭一郎のいた場所の後ろの壁に穴があいた

マナ「…カナちゃん」

流石に先ほどの銃声は館じゅうに響いたのだろう…眠っていたはずのカナが飛び込んできた

カナ「マナちゃん…ど、どうして?ねぇ!どうしてなのぉ!!」

一体何がおきているのか…銃を構えるマナから恭一郎をかばう様にしながら問いただす

マナ「カナちゃん…どいて、ご主人様殺せない」

まるで氷のような瞳…本当に是があのマナなのか信じられないものを見るようなカナの瞳

カナ「ど、どかない!…そ、そんなのダメだよぉ!なんて言えばいいのか良く判んないけどだめなんだってばぁ!」

既にパニクッてしまったのか言葉につっかえながらも必死に留めようとする

マナ「仕方ないですね…一旦引きます…けど」

恭一郎「何だ?」

マナ「もう…この家からは誰も出られないようになってますから…電話線も切らせてもらいました」

見ればご丁寧に携帯もマナ自身の分まで無残に叩き壊されている…外からはドリルの回すような音…ミナが鉄板でドアを塞いでいるのだ

カナ「そ、そんな…」

窓は元々格子付きだ…更にこの館の壁…見かけによらず頑丈だ…幾らカナの怪力でも壁一枚は壊せない

恭一郎「なるほど…生き残り合戦…サバイバルか」

マナ「えぇ…私かご主人様か勝ったほうが全て手に入れる…恨みっこ無しですよ」

カナ「マナちゃ…ん」

マナ「ごめんねカナちゃん…また直ぐに会えるわ」

パタンとドアが閉まりマナが消えていった



恭一郎「カナ…もういいからお前はナナの部屋に行くんだ」

ずっと泣き止むことなく恭一郎に縋るカナを宥めるが埒が明かない

カナ「ふぇぇぇぇ…グズッ…だ、だって…マナちゃんが…」

調べたところ火災報知器から電話回線からありとあらゆる外部との接触を絶たれている

この際学校はどうでもいいのだがそれは外からの助けはないという事だ…恭一郎にとってもマナにとっても

カナ「えぐっひぐっ」

本来良く泣いていたのはマナだった…カナがこれだけ泣くのは初めてかもしれない

しかしマナはどうするつもりだろうか…命を狙ってくるのは判っているがこの無駄に広い屋敷不用意には歩けない

恭一郎「そろそろ行くか」

ピクッとカナが震えて泣き腫らした顔を上げる

カナ「グズッ…何処へ?」

恭一郎「マナと会ってくるさ」

カナ「ダ、ダメェ!だ、だってマナちゃ…グズッ」

恭一郎「言ったはずだぞ…俺にはマナも「必要だった」とな」

カナ「で、でも…」

今のマナに説得はムリだろう…殺すか殺されるか二つに一つしかないのかもしれない

恭一郎「俺はお前等の何だ?」

カナ「グズッ…ごしゅじん…さま?」

恭一郎「だったら…逃げるわけには行かないな」

はなっから逃げるつもりはない…どうなるのかは判らないが…

カナに内側から鍵を掛けさせると自分が戻るまで決して開けるなとだけ告げた

部屋を出るとそれは直ぐに起こった

細いピアノ線が張り巡らされている

恭一郎「ブービートラップか」

しかし何も仕掛けられていない…ただ、壁と壁の間にピアノ線が張られているだけだ

それ自体が罠だった

足元を見ていた恭一郎の真上からナイフが降り注ぐ!

恭一郎「クッ!」

寸でのところで身を引くが2本交わし切れなかったナイフが右足と肩に突き刺さる

恭一郎「やれやれ…本気…か」

毒くらい塗ってあるかもしれない…そうでない場合は…

恭一郎「弄り殺しか」

まだ歩ける…肩に刺さったとはいえ浅い…引き抜くと血がにじむがまだ腕も動かせる

血塗られたナイフを片手にマナを探す…いつの間にかあたり一面ありとあらゆる致死性の罠だらけだった

床に撒かれた油…其処に落ちてくる千切られた電気コード…階段の途中では簡易爆弾…踊り場から飛び出すように逃げたが爆風にアバラ骨が2〜3本いかれた

しかし…マナは居ない…何処を探しても本人が居ないのだ

恭一郎「何処だ…俺なら…何処に隠れる…」

散々探し回ったが…もし、自分がマナならば…

恭一郎「…そういうことか」

どうやらいっぱい食わされたか…マナは…

恭一郎「カナ!」

急ぎ来た道を駆け戻る!

マナは…部屋を出て等いなかったのだ!

あの時、確かにマナは部屋を出たように見えた…しかし、実際はマナはドアを開けて閉めただけだ

カナも恭一郎も銃ばかり見ていてそのトリックに気付かなかった

入り口の直ぐ横にあった鏡…調教にも使ったあの大きな鏡だ

鏡に映されたマナは出て行ったのではなく消えてみせた…消えるトリックだ

ナナ「どうしたのさ?せんせ、そんなに慌てて…っつ〜かさっきから一体何騒いでるんだ?」

恭一郎「そういえば…お前が居たんだな…兎に角手伝え!事情は追って説明する」

言われるまま恭一郎に手をつかまれてナナが引っ張られていった




カナ「ん…あ、あれ?」

カナは縛られたまま仰向けにされていた

部屋でしばしべそべそと泣いていたカナの後ろから伸びた手に気付いたときには薬で眠らされてしまったのだ

マナ「クスッ…ゴメンネ、カナちゃん…でもこうでもしないと…」

其処には自分と同じ顔を持つ少女が居た

カナ「マナ…ちゃん」

マナ「ねぇ…カナちゃん…ご主人様のこと、好き?」

カナ「え?…ぇぇえええ?!」

不安げに蒼ざめていた顔が破裂しそうな勢いで真っ赤になる

カナ「ぁ、あの、その…す、好きっていうか…えぇっと」

しどろもどろになりながら真っ赤な顔で答えに窮してしまうがそんな顔を見せられてはもう答えたも同じだ

マナ「でもね…もうご主人様は帰ってこないの…だから此れからは私だけ…私だけがカナちゃんのそばに居てあげるわ…だから私だけを見て、カナちゃん」

カナ「そ、そんな事言われても…」

其処でふと気付く…今、マナは何と言った?「もうご主人様は帰ってこないの」それは…

カナ「ど、どういうこと?!帰ってこないって!」

マナ「もう、ご主人様はとの勝負は終わっているわ…後は早く死ぬか遅く死ぬかの違いよ」

徐々に蒼ざめていくカナ…相対的に悲しそうなマナ

マナ「そんなに心配なの?」

カナ「マナちゃん…これを外して」

マナ「ダメよ…そんな事したらカナちゃんが逃げちゃうじゃない…大丈夫、直ぐに私がご主人様のことなんて忘れさせてあげるわ…そう…何もかも忘れさせてあげる」

此処までするつもりはなかったのだ…カナさえ素直に自分のところに戻ってきてくれるのなら

ロボトミー…小骨孔を開いて前頭葉の外から器具を入れて神経を切断する

五感こそ残るもののほぼ廃人同然…言われるがままの事しか出来なくなるのだ

消毒したメスを取り出し麻酔薬を注射器のシリンダーに吸い上げていく

マナ「私の…私だけのお人形にしてあげるわ…カナちゃん」




恭一郎達が部屋に着くとやはりカナの姿はない…しかし地下室への扉が開かれている

そしてやはり鏡には細工がしてある…

ナナ「マジであのマナがそんな事してるのか?」

半信半疑…しかし、既に満身創痍の恭一郎を見れば納得せざるを得ない

恭一郎「あぁ…恐らくはロボトミーをする気だろう…カナを手に入れるためなら今のマナなら何だってするだろうさ」

ナナ「チッ…キ○ガイかよぉ…あたしゃぶっちゃけあいつはあんまり好きじゃなかったんだよ」

元々竹を割った様な性格のナナだ…裏表の激しいマナよりも単純明快…悪く言えば単細胞なカナの方が気が合うのだろう

ナナ「でも…あたしのダチに下手な真似したらどうなるか位思い知らせてやるさ」

階段を駆け下りながら地下室の扉を蹴り開けた!


バン!と強い音と共に部屋に飛び込む二人の影、その音にはじかれたように目を向ける双子

マナ「………思ったより、早かったですね」

カナ「ご、ご主人さまぁ!」

どうやら間に合ったようだ…まだカナはカナのままだった

ナナ「マナ…手前ぇ!」

言うが早いか…口より先に手が出るナナが殴りかかろうとして…足が止まった

マナが突き出した手に握られているもの…トカレフの銃口がこちらを向いているのだ

マナ「気をつけてください…粗悪品ですから軽くトリガー引いただけで弾が出てしまうんですよ?これ」

しかしどうも解せない…確かに一歩間違えれば致死性の罠ばかりだったのだがギリギリワザと避けられる様に作られていたのだ

それに最初の一発目…あれは本当に単に外れただけなのか?あるいは外したのか?

真意までは判らない…だがその可能性に掛けてみるしかない

恭一郎「もう止めたらどうだ?マナ」

マナ「あら?どうしてです…ご主人様だって「やったこと」じゃないですか?」

確かに双子を無理やり連れ去った上で監禁調教を施した…法的にも人道的にも到底許されない

最も元々許してもらおうなどとは思っていない

恭一郎「生憎だが…お前が「その気」ならばいよいよ本気でやらざるをえなくなるからな」

マナ「ふふっ…そうですか、やっとその気になってくれたんですね」

其処で漸く理解できた、元々マナには恭一郎を殺すつもり等無かったのだ…ただ、マナは…

恭一郎「生憎だが…俺は飼われる気は無いんでな」

マナは恭一郎が身動きできなくなったところで恭一郎ににもロボトミーを施してカナと番いで「飼う」つもりだったのだ

元々寂しがりやなマナには誰かが側に居なくては生きてすらいけないのだ

マナ「えぇ…ですから私が飼われるか、ご主人様が飼われるか…単純ですよね?力のある方にその権利があるんですから」

恭一郎「なるほどな…確かに単純だ…しかし、お前に出来るのか?」

元々動きは機敏でない…銃があったとしても殺さないように撃つのは撃てる部分が限られてしまい却って交わされてしまうのだ

だが…

マナ「出来ますよ…だってほら、そろそろ時間ですから」

突然痺れだす手足…行き成り躯の自由の利かなくなった恭一郎が膝を地に付けた

恭一郎「グッ…や、やはり、毒…か」

マナ「えぇ…遅効性でしたけどね…如何でしたか?カナちゃんのチョコトリュフに仕込んでおいたんですよ?」

なるほど毒には気付いても何時飲まされたのか判らなかったわけだ…なにしろあれはぶっちゃけ…不味かったのだから!

カナ「…ぅ…そ」

信じられない物を次々と見せられる…ずっと信じていた双子の片割れ…自分の半身

次々と自分を裏切っていく自分…なにしろあのチョコは…あのチョコは…

マナだって知っていたはずだ

カナ「ど…して」

あれはカナが始めて作った料理…恋する少女がその対象に食べてもらう為一生懸命に作ったのだ…多少失敗したかもしれないけど…

それでもカナなりに精一杯作った最高に愛情だけは込めて作ったものだ!

そんなモノを仕込む為に作ったのではない!

カナ「マナちゃん」

目を伏せたカナの四肢を縛っていた鎖が伸びきった

次第に張り詰めた鎖…壁に繋がれたジョイント部の周りから粉のようなホコリが零れ落ちていく

マナ「……」

流石に驚きを隠せない…カナの怪力を少々見誤っていたのかもしれない

計算上この太さの鎖ならば大丈夫な筈だったのだが…どうやら此処最近、カナの怪力もまだ成長段階だったようだ

カナ「ぅぅ…うぁああああああ!!!」

裂帛の気合と共に伸びきった鎖の一部が歪み拉げ溶接された部位が引きちぎられた!

ナナ「嘘…」

唖然となる…怪力とはいえもはやこれは人間じゃない

マナ「そう…私に逆らうのね…カナちゃん」

悲しそうに目を伏せる…今までマナの言うことだけを聞いてきたカナ…そのカナが始めてマナに対して反抗するのだ

マナ「いいわ…それなら私もご主人様と同じように…力でカナちゃん…貴女を手に入れて見せるわ」

流石にカナ相手に実弾は使えないのか、M60E3のモデルガンを取り出して構える、当たれば痛いではすまない威力だ

カナが最後の鎖を引きちぎるのと同時に機関銃が火を噴いた!

大量に吐き出される弾!

しかし一瞬早く鎖を引きちぎったカナが高く飛ぶ

マナ「上に跳ぶのは逃げ場がなくなるのよ?カナちゃん」

宙に居るカナにそのまま銃口が向く

カナ「うん…でも此処なら足場はいっぱいあるからね」

何しろ此処は部屋の中だ…天井を蹴り、壁を蹴り棚の後ろ側に降り立つ

マナ「でも結局は追い詰められるのよ…前に出て交わさない限り同じことなんだから」

確かに正確に撃ち込んでくる弾を避け続けるだけでは一向にマナには近づけない

何しろ接近戦になったらマナではカナに決して勝てない

お互い其れは十分判っているのだ

故にマナの射撃は常に距離をとる様に撃ち込まれる

マナ「だから…ほら、追い詰めたわ」

三角木馬に当たった弾はその傾斜に跳弾すると急上昇して真上の電球を打ち抜きガラスの砕ける音と共に火の粉とガラス片がカナに降り注ぐ!

カナ「まだまだぁ!いくよぉ!」

降りかかるガラス片を木馬を潜りながらやり過ごすとカナに向けられた銃口に掠め取ったガラス片を投げ込む

マナ「あ…ふふっ…流石ねカナちゃん」

見事に細い銃身に詰め込まれてしまったガラス片…これでは一旦分解しなくては使えない…

カナ「マナちゃん…」

既に勝負は決した…元々荒事でカナにマナが勝てるわけが無いのだ

ゆっくりと近づいていくカナ

マナは諦めたのかジッと大人しくしている

カナが手を振り上げたときだった

マナ「ゴメンね…カナちゃん」

手に握られていたのはトカレフ…カナの足に向けられた銃口

そのトリガーにマナの指が掛かった

恭一郎「其処までだ」

後ろから伸びた手がトカレフの撃鉄を押さえた

マナ「?!」

カナ「ご、ご主人さま!」

動ける筈が無い…確かに毒が効いているはずだ

恭一郎「マナ…お前は気付かれていることに気付いていた…だが、その事に気付かれたとは気付かなかったようだな」

まるで狐と狸の化かしあいだ…カナのチョコを使ったのは正解だった…しかし、その更に前に既にマナの使った麻痺毒の解毒剤を飲んでおいたのだから

最も確かに毒の効果は残っている…だが、体中の痺れが逆に肩や足の痛みを消している…痛覚が麻痺している今だからこそ動けるのだ…

マナ「そ、そんな…」

それはマナにとって少なからずショックだった…自分が騙し合いで負けるなどというのは…

恭一郎「確かにお前は頭も切れるしツメも決して甘くは無かった…ただ、惜しむらくは経験が圧倒的にたりなかったんだ」

遺産が転がり込んで以来、恭一郎が毒を盛られなかった筈が無いのだ…毒に対しては人一倍敏感になっていた

故に既にマナが毒を用意した時点でその匂いから何の毒なのか種類までも把握していたのだ…解毒剤くらい元々科学教師の恭一郎が用意するのは容易かった

恭一郎「お前の負けだ…マナ」

マナ「いいえ…まだ一つ残ってます」

最悪の場合…無理心中するつもりなのだ…合図一つでこの館は火の海になる

恭一郎「嫌…お前の切り札はもう抑えた」

ナナ「あぁ…コイツだろ?」

ミナ「ご、御免なさいぃぃ〜」

男達に簀巻きにされ後は東京湾に沈めるだけになったミナが情けない声を上げる

マナ「……貴女に期待した私が馬鹿だったわ」

組員「これでよろしいですか?お嬢様」

ナナ「あぁ…親父によろしく言っといてくれ…その内顔くらい見せに行ってやるよってな」

組員「判りやした…それではお嬢様を宜しくお願いいたしやす」

黒服の集団が簀巻きのミナを床に転がすと帰っていった

ミナ「目がぁ〜目がまわるぅぅ〜〜、あれれ〜〜」

ゴロゴロと床を転がり壁に当たって車に引かれた蛙のような声を出して気絶した

恭一郎「まぁ言うまでも無いが後もう一つの敗因は…」

マナ「人選ミスね…ふふふっ…」

ノーマークのミナを使おうとしたのは良いのだが…余りに無能…使えなかった…疲れたように口元だけで哂う

カナ「で、でもご主人さま!マナちゃんは…マナちゃんは…」

こちらも此処まで来てしまった以上収まりが付かないのだろう…納得しきれないカナが食って掛かる

恭一郎「落ち着け、カナ…確かにお前としては収まりが付かないだろうがな…マナとて此処までするつもりは無かったんだ」

カナ「…でも…マナちゃん…どうしてこんな事…したの?」

マナ「…ゴメンね…私にはこうするしかなかったの…ゴメンね、カナちゃん」

カナの心が徐々に自分から離れていく恐怖と孤独…ずっと一緒だったのに…お互いにお互いだけを見つめていた筈なのに…

それだけにカナを見つめ続けていたマナはカナの視線が自分ではなく恭一郎にばかり向けられるようになっていった事に気付いてしまった

喩え憎まれてもよかった…カナの心の一番にだけは自分が居て欲しかった

恭一郎「しかし、本末転倒だな…ロボトミー等すれば結局カナは壊れてしまうだけだ…それは本当にお前の望みなのか?」

マナ「ふふふっ…馬鹿ですよね…私…抜け殻になったカナちゃんを手に入れて何がしたかったんでしょう…ふふふっ…本当にゴメンね…カナちゃん」

言うが早いか何時しか恭一郎の手から離れていたトカレフの銃口はマナ自身のコメカミに押し当てられた

カナ「マ、マナちゃん?!」

マナ「バイバイ…カナちゃん」

カチリッとトリガーの音が鳴り激鉄が落ちた

カナ「ダ、ダメェェ!!!」

飛び出すカナ…一瞬遅かった




しかし…何時までたっても銃声は聞こえない…

恭一郎「マナ…お前はお前がしでかしたことのケツも拭かずに逃げるつもりか?…」

いつの間にか恭一郎の手に握られているもの…モーゼルミリタリーが鈍く光っていた

マナ「……クスッ、厳しいんですね、私のご主人様は…」

結局自分は恭一郎の手の内で遊ばれていただけに過ぎないのだろうか…

あれだけの事をしでかした自分を庇う様にしがみ付いてきたカナに押し倒されたような格好のままその瞳に一筋の泪が浮かぶと静かに零れ落ちた

恭一郎「最低限、自分のやった事から逃げるな、正しくても間違っていても…逃げればそれは自分自身の存在を否定するだけだ」

しかし…既に恭一郎自身体中の怪我と僅かに残った毒に体力を極限まで削られていたのか…

恭一郎「そんな奴には一生何もできずに只人の後を付いて回るだけの詰まらん奴になるだけだ」

と、言い残すと恭一郎は崩れ落ちるように地面に倒れこんだ

カナ「ご、ご主人さまぁ?!」

ナナ「早く!救急車!」

マナ「でも…電話線が…」

ナナ「ほらっ!さっさと呼びな!」

ナナが取り出した携帯電話…組員達を呼んだのも是だ

2台持っていたことにまでは気付かなかった辺りつくづく自分の計画は穴だらけだったと痛感してしまった


後一話続くぽよぉ


ハーデス「ふっ…エ、エロがねぇや」

エナ「まぁ最終話一歩手前でしたしね…大目に見てやってください」

ハーデス「やっと双辱も此処までこれました…いやはや…ホントはもっと続く筈だったんですが

エナ「でもあんまり長すぎると返って読みにくくなりますからねぇ」

ハーデス「まぁ次に書きたいお話ももう決まってますしねぇ」

エナ「それはアレですね」

ハーデス「はい、アレで御座います」

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