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AVENGER −復讐者− 最終話 父と娘

ハーデス/文


冷静に在れ

 

師の教え…されど自分は今本当に冷静だろうか…

母を喰らい、今育ててくれた父を焼き殺し…哂い声をあげている悪魔を前に

 

冷静で居られるだろうか

 

リリー「……」

ゆらりと立ち上がる…燃えるような紅い瞳が光り輝く

溢れ出す瘴気…とんがり帽子を突き破った頭の角が放電し、更に足元から青白い光が立ちこめていく…遂にウィザードとしても人としてもその躯の限界に到達してしまった…それは

 

ミルフィー「ぁぁ…そんな…まさか…ですの」

ティア「あれは…リリーさん?ですよね」

首飾りの封印の源であった魔術師の魔力が途絶えたゆえに…

 

ー封印が解けるー

 

リリー「…ファイアーボルト」

ボソリと呟くような詠唱と共に出ずる炎の矢

光線のような矢が悪魔の躯を打ち抜いた!

バフォメット「クッ…ほほぉ…今度は楽しめそうだのぉ」

先ほどとは明らかに魔力の質が違う

鎌を掲げた悪魔が漸く本気を出した…

 

冷静に在れ…

漸くその意味が判る…

少しでも気を抜けば一瞬でこのおぞましき力に飲み込まれてしまう…

理性と狂気の狭間ギリギリの線で自らとの戦いを繰り広げながらも目の前の悪魔とも実質的な戦いをしなくては成らない

片手にウィザードスタッフ、もう片手に魔剣を持つと羽ばたいた!

風を切りながら滑空し悪魔に光弾を打ち込む!

ソウルストライクは数十数百にも及び、その圧力に思わず飛んだ悪魔に付きたてられる魔剣

バフォメット「ぐぁっ!小癪なぁ!」

背を切り裂き黒き血を滴らせながら遂に悪魔が始めて唸り声をあげた

地に降り立ったリリーが賺さず詠唱を始めた!

しかし…前衛も居ない状態であまりにも無謀

…本気になったバフォメットの振りかぶった鎌がリリーに向けて振り下ろされる!

ボフォメット「去ね!!」

詠唱が止まると同時に鎌がリリーの躯を貫いた

カトレア「リ…リリーっ!!うぁああああ!!」

群がる悪魔が行く手を阻む…切りつけられながらも必死に追いすがる…しかし、届かない

ティア「もう少し…もう少しなのに!」

この距離では回復魔法も届かない…鎌から滴り落ちていく真っ赤な鮮血を悪夢のように見つめた…

 

なのに…リリーは笑っていた…何処かホッとしたように

リリー「ふふっ…紅いわ…」

自分の血は紅かった…目の前の悪魔の流す黒き血とは違う…

確かめるように魔剣を自らの手首にあてるとゆっくりと引いた…

更に溢れ出す紅き血…血…血

 

ミルフィー「リ、リリーちゃん?!気は確かですのぉ?!」

やはりもうリリーは正気ではないのではないかとさえ疑ってしまう

肩口から突き抜けた鎌が既に床一面に血の池を作り上げているのに其処に更に滴り落ちる血の中…悪魔に向けて杖が突き出された

 

リリー「お・ば・か・さ・ん♪」

既に詠唱は済んでいたのだ…更にこの距離…決して外さない

リリー「ウォーターボール!!」

水場のある場所という限定された魔法…室内ゆえ一切の水場の無いこの部屋にリリーは…

 

水場を作ったのだ

血が舞い上がり無数の球状となり連なっていく!

高速で旋回し悪魔に向かい次々と撃ち出されていく!

バフォメット「ぐぉああああっ?!

正に至近距離から打ち出された血の弾が鋼鉄のような強度を保ち躯を撃ち抜かれていく!

リリー「まだ…まだ足りない」

自らの腕を思いっきり逸らして傷口を広げると更に溢れ出す血が直接弾丸となり撃ち出された

 

一際大きな弾が遂に悪魔の角をへし折ると頭蓋を打ち抜いた

 

遠吠えのような唸り声を上げ燃え上がるような瘴気を噴出しながら崩れ落ちていく悪魔…

 

ティア「そんな…ウォーターボールなんて…」

一体どれ程の血を流したというのか…既に躯の中の血の殆どを出しつくしてしまっているかもしれない

ミルフィー「ぁぁ…リリーちゃんが」

周りに居たバフォメットJrが次々と消滅していく…

主の消滅によりその眷属たちも異界に帰っていくのだ

カトレア「リ、リリーッ!!」

そしてそれは…リリー自身にも言えること…

もはやさえぎる物は何も無い…徐々にその姿がおぼろげになっていくリリーに駆け寄る仲間達…

後一歩…後一歩のところで…リリーの姿は消しゴムでもかけたかのように消え去っていった

 

 

 

 

 

気がつけば見たことも無い神殿で横たわっていた

 

世界の終末「ラグナロク」が近付けば...ヴァルキリーたちが偉大な人間を捜し出して...偉大な殿堂、ヴァルハラに導く...

 

遠くから声が聞こえた…

「お眠りなさい…あなたに刻まれている過去の記憶を消し、あなたの精神に現在までの栄光の証を記憶させます」

「では…一つにウルドに過去の記憶を残します。二つ、ヴェルダンディに現在の栄光の瞬間を覚えてもらいます。三つ、スクルドに未来への生を与えさせるようにします。」

躯が…徐々に消えていく…精神が真っ白に消されたような感覚…

しかし、不思議なことに心が安らいだ…

「くれぐれも過去のウルドが記憶したあなたの生が無駄にならないようにして欲しいと思います。また現在のヴェルダンディが記憶したあなたの栄光が再現することを、そして未来のスクルドが記憶したあなたの生に光あることを願います。」

 

 

少女がナイフを片手にポリンを突っついていた

ぽよんぽよんと弾みながら体当たりをされたノービスの少女はどうやら戦闘続行は不可能となりぐったりと倒れこむ

「きゅぅ〜…もぅダメェ…」

基本的に自分は力が無いのだ…接近戦には向いていないことは百も承知している

どのくらい倒れていただろうか…気がつくと町の宿屋のベットに戻っていた少女が横を見上げると其処に騎士の姿があった…

「慢心、油断、気の緩みなんて物は戦場では言い訳にさえならないぞ?」

どうやら彼女が運んでくれたようだ…とても懐かしい言葉

でも…ちょっと癪に障る言葉だ

「…貴女に心配されるほど落ちぶれてないわよ」

「減らず口は変わらないな…」

ベットに寝そべったままの少女の体を抱き起こすとそっと抱きしめた

 

「お帰り…リリー」

 

 

 

ハーデス「終わった〜〜〜そして反応無くてショボーン」

カナ「ま、そんなもんでしょ、諦めなさい」

マナ「力不足、文才不足は否めませんねぇ」

ハーデス「イジイジ…こうなったら…赤石に暫く逝って来ます!!(マテコラ」

カナ「あ…またネトゲに逃げちゃった(汗」

マナ「あの作者…ネトゲ始めると…(滝汗」

 


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