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ゆぅ はっぴぃ? 完
井川 正寿/文


  街灯と月明かりの下、若い恋人達は黙して座っていたままだった。

  冬の終わり雲が一片もない透明な月夜。いつのまにか人通りも途絶え、二人の周りに夜の静けさが広がっている。

 「・・・・・・ねぇ・・・・浩之ちゃん・・・・」

  浩之のジャンパーを握り締めながらあかりは口を開けた。

 「ん?」

  浩之はぶっきらぼうに答えた。それでも表情は優しげで笑みが浮かんでいた。

  あかりは次の言葉が出なかった。

  浩之の顔を見るのが怖い、今の自分の気持ちを告げることは必要なのだろうか? 浩之が『ああっ・・』って答えたら自分はどうするんだろう。浩之と別れるなんて考えられない。

 「・・・・・・まだ寒いね・・・・」

  違う・・・・。そんな事を聞きたいんじゃない。

 「おお、そうだな、まださみいな」

  あかりの腕が浩之の腕に絡みついた。

 「あったかい・・・・」

  浩之のぬくもりが志保への罪悪感に変わる。このぬくもりを忘れたくは無かった。けれど浩之と志保の気持ちを考えると胸が痛んだ。

  肩に浩之の腕が回って抱き寄せられる。

  浩之の優しさが辛くて涙が出てくる。どうしようも無い愛しさ・・・・。この腕をいつまでも掴んでいたかった。

 「・・・・いいんだよ」

  自分の腕に幼児のようにしがみつくあかり。

 「あかり・・・俺と志保は何でも無いんだよ。ソファーで寝ていたら志保が、あの格好でいたんだ」

  裏切られた気分。胸が締め付けられるようだ。

 「・・・・・・ウソッ・・・」

  浩之を突き放した。

 「ウソって・・・俺と志保がどうにかなるハズないだろう」

  浩之の言葉に、ここ最近の様子に疑念が拭いきれない。それどころか不安になってくる。

 「だって・・・浩之ちゃん変だもん。凄く優しいけど、いつも夜遅くに帰ってきて何も言ってくれない・・・。志保の方が好きなんでしょ」

  泣きながら立ち上がってあかりは叫ぶように言う。

 「それは・・・・・」

  浩之も立ち上がってあかりを見つめる。

 「こんなの辛いよ。あたし浩之ちゃんも志保も好きなのに・・・・」

  あかりは泣きながら走り出した。

  浩之も走り出してあかりを追う。

 「ば、バカ走るなよ。危ないだろ。あかり待てよ」

  慌ててあかりの手を握って捕まえた。

 「放してよ・・・・」

  暴れるように浩之の手を振り解こうとするあかり。

 「暴れるなよ・・・・。その、えっと、お腹が・・・・大丈夫なのかよ」

  照れるように浩之は言った。

 「・・・・お腹?」

  不思議そうに首を傾げる。

 「そ、そうだよ・・・・その・・・に、にん、にん、妊娠してんだろ。お、おれとあかりの子供・・・・・・」

 「・・・・・・えっ・・・・」

  二人とも真っ赤な顔をして俯いてしまった。

 「浩之ちゃん・・・・あ、あの私・・・赤ちゃんできてないよ・・・・」

  なんとなく気まずい空気と気恥ずかしさが沈黙となって二人の間を挟む。そのまま気まずい雰囲気でベンチに腰掛けた。

 「ホンとに妊娠してないんだな」

 「・・・・う、うん」

  浩之はがっくりと肩を落とした。

  あかりはモジモジと手を膝の上に置いて落ち着かないでいた。

  二人の脳裏に志保の名がグルグルと回る。

  浩之はゆっくりと深呼吸する。

 「あかり・・・これ・・・・」

  ポケットから取り出した小箱の中には指輪があった。

 「その・・・・責任取るつもりだったんだよ」

 「うん」

 「志保から電話で聞いてさぁ。うれしい反面、なさけなくて」

 「うん」

 「すげぇ悩んでるって聞いて、どうしていいか」

 「うん」

 「大学も卒業しなきゃ行けないし、バイトして金も貯めなきゃいけねぇ。本気で死ぬかと思ったぜ」

 「うん」

 「お前聞いてるかぁ?」

 「・・・・・・・・・・・」

 「あかり結婚・・・・しよう」

 「・・・・うん」

  

  

  浩之のプロポーズの後、二人は家に帰ってきた。

  志保に感謝の気持ちと・・・・・何とも言えない後悔の気持ちを伝えに。

  あかりの話を聞いて浩之は志保の気持ちを知った。

 「志保・・・・・・いるか」

  リビングのテーブルに一枚の置き手紙が残されていた。

 「また会う日まで     志保」

  たった一言だけ書いて志保は二人の前から消えた。

 「志保・・・・」

  浩之は手紙を握り締め、二人は寄り添って床に直接座った。

 「・・・・・・浩之ちゃん・・・うむぅ」

  目をつぶって浩之の唇を奪った。

  志保の為にも浩之と愛しあうことが必要だと思ったのだ。

 「いいよ、浩之ちゃん・・・・きて」

  あかりが求めるまま浩之も舌を絡めあった。

 「服を・・・」

 「うん」

  頬を染めて頷いて、サマーセーターを脱いだ。あかりは脱いだ服を足元に脱ぎ捨てた。服を頭から抜くことで乱れた顔をなおし、そのままロングスカートのホックを外して上着に重ねた。

  おとなしめなあかりらしい清純さを損なわないブラとショーツは白で統一されていた。志保とは対照的な女性特有な丸みのあるボディラインが浩之の前に晒される。

  あかりがこうして自分から浩之を求めるのは初めてかもしれない。電灯の明かりの下、浩之に身体の隅々まで見て欲しかった。

  恥かしさで肌が羞恥の色に染まり、緊張で震えてきた。まるで初めて身体を重ねる恋人達のようだ。

  そう言えば、自分から浩之に求めたことは無かったような気がして、今はただ自分の為に浩之が欲しかった。

 「震えんなよ」

  困ったような口調であかりの頬をなでて首筋にキスをする。何度もしたキスの中で一番緊張した。

  あかりは背中に手を回してブラのホックを外す。浩之の視線が怖い、ブラを床に落として、あまり自信の無い二つの膨らみを両手で隠す。どうしてこんなに緊張しているのかわからなかった。まるで初体験の時のようだ。

  そして、おずおずと最後の一枚に手が伸びる。左手で小さな膨らみを隠しながら、膝を曲げて右手で薄布を一気に降ろして、細い足首を通して脱いだ。いよいよあかりは白いロングタイツだけの姿になってしまった。

  のどが渇くぐらい緊張する。背中を丸くして胸を左手で隠し、太股をビッシリと閉じて股間と薄い恥毛を右手で隠す。片腕だけ隠す胸は両側から持ち上げるように盛り上がって零れそうになっている。

  緊張のあまりに震える肌の上に、さらさらした赤い髪が素肌の上でなびく姿は、浩之をドキドキさせた。

 「な、なんか・・・・すごく緊張する」

  あかりの声は確かにふるえている。浩之に裸を見られたことなど何度もあるというのに、身体中が燃えるように熱くなっていた。

 「・・・・・」

  浩之も口に出せない気恥ずかしさのまま、あかりの左手を持ってまず二つの膨らみを大気に触れさせる。柔らかな肉の塊が腕の支えを失って、重力の力で弾む。何度も見た小ぶりだが形のいい乳房が露になる。乳輪と乳首は小さく、ピンク色の突起がこじんまりと存在していた。

 「・・・こっちも・・・」

  今度は、浩之はあかりの右手首をつかんで胸元に引き寄せる。その下から髪と同じ艶やかな赤い恥毛が表れて秘所が見えた。赤い三角のデルタは薄く、キレイに伸びて秘所を丁寧に隠していた。

 「・・・なんか恥ずかしいよ・・・」

  余ったあかりの両手が浩之の首筋に回って、背伸びをして浩之の唇を奪った。

 「乳首が固くなってるぜ、服の上からでも・・・・」

  浩之の言葉を奪うように、あかりは男の唇を貪った。

 「一人だけ・・・・・ずるいよ・・・・」

  浩之はうなずいて服を流れるように脱いでいった。

  浩之の股間のモノは既に固く勃起していた。日に焼けた肌の中で、ソコは特に赤黒く染まっている。先端の包皮は完全に捲れ、赤ピンクな亀頭をさらし、ビクンビクンと心臓の鼓動に合わせて震え、鋭角に突き上がっていた。

 「あかり・・・なんか・・・俺も」

  浩之はあかりの裸身を見て、これ以上にないくらい興奮していた。

 「・・・・・・座って・・・」

  ソファーに腰掛けた浩之の膝の間に、あかりは膝をついて座った。

  あかりが浩之のモノに顔を近づけると、何とも言えないニオイと迫力が目の前に迫っている。痛いぐらい固く急角度にそそり立った肉茎はあかりを求めるようにビクビクと動いていた。

  両手で丁寧に肉茎をつかんで、咥えやすいように角度を変える。口に入れる前に上目使いに浩之の顔を覗くと、愛しげに自分を見つめていて、肩口から流れる髪を指先で摘まんでいた。そして、舌先を伸ばして浩之のモノを奉仕する。

  いつものように、口からちょっとだけ舌をだして舌先部分で舐める。渇いた肉茎はあかりの唾液をまぶすように塗られ、テカテカと妖しく光りだす。そうやって肉茎の表面全部に唾液を塗りこめて、カリの部分に舌で刺激を加えた。

  首をつかって、それは丁寧に浩之に奉仕を続ける。側面や裏側、先端から根元まであかりの舌はゆっくりと動いていた。

 「・・・・うわぁ・・・・」

  浩之の声が思わず漏れた。あかりは浩之にもっともっと気持ちよくなって欲しかった。

 「・・・・うむぅ」

  あかりは自らの唾液でまぶした肉茎を口に含んだ。

 「ちゅぷ・・・・ちゅぷ・・・ちゅぷるん」

  これを何度口に含んだか思い出せない。忘れられない浩之の味・・・。

  唾液が良くまぶされた肉茎はスムーズに動いて、首と唇を使って頭を前後に振る。それでも、固く勃起した肉茎はあかりの口内では狭く、直ぐに咽に当たって苦しげな声を漏らさせた。

 「んふぅ・・・んんッ・・・んぐ・・・んぐぅ」

  小さな口を使って自らの巨大な肉の塊に奉仕するあかりの姿を見て、浩之は敏感な部分の刺激のほかに暖かな愛情が滲むのがわかり、愛しいと純粋に思った。そして、あかりは苦しげに肉茎の半分から亀頭の先端までを何度も往復して射精に導こうとしていた。

 「ンッ・・・ング・・んんん・・んふぅ・・・」

  こんなに情熱的なフェラチオはやったことがなかった。顎が重く、肩が痛くなっていた。それでも、リズムを一定に保って奉仕は続けられた。あかりの肌は玉のような汗できらめき、長い髪が動きに合わせてキレイに揺れている。

 「ん、んんん、んふぅ・・・・んぐ」

  口の中に唾液が溜まって卑猥な粘着音が出てき始めた。

 「・・・う、あかり・・・・」

  浩之の射精感が高まってきているのが伝わる。そして、肉茎を深く早くして、唇を使ってしごきあげた。

 「うわぁ・・・・出るぞ・・」

  浩之の膝がきつく閉じられて、弾けるように腰が跳ねると肉茎の先端から白濁液があかりの咽奥にほとばしった。

  すべてを飲み下そうとしても、あまりの量と生臭さに殆ど口元から零れてしまう。

 「にゅちゅぅ・・・・ごめんね浩之ちゃん・・・・・・やっぱり全部飲めないよ・・・」

  目を潤ませながら、浩之の膝の間から口元を拭いながらあかりは言った。

 「いいよ別に・・・・今度は俺が気持ちよくしてやる」

  そう言って、浩之はあかりを倒して指で股間をやさしく愛撫してみる。手触りのいい恥毛の舌の秘裂はすでにしっとりと濡れている。浩之の指先が突然、もっとも敏感な突起を指の腹でこすりあげると、あかりは甘い声をもらした。

 「んひっ・・・・・・」

 「ここだろ、あかり・・・」

  浩之はあかりの反応を見逃さないで、股間に顔をうずめて舌先でクリトリスを弄った。舌全部を出して固い肉真珠に愛撫を加えつづける。

 「あん・・・・」

  激しい愛撫にあかりは思わず浩之の後頭部を掴む。

 「・・・・浩之ちゃん・・・・一緒にしよ・・・」

  あかりの意図を察すると浩之は床に直接に横になった。そのまま、あかりは浩之の頭を股間で押し潰すように跨いで倒れた。これで、お互いの秘所に愛撫を加えることができるようになった。

  浩之は、眼前にせまるあかりの卑劣に熱烈で執拗な愛撫をする。愛液が滲む卑劣に左右の指を巧みに使い分けて、ラビアや陰唇を無造作にこねくり回す。あかりの口からくぐもった声がする。あかりはあかりで浩之の陰茎を咥えて放そうとしない。

  じゅくじゅくと留めなく愛液があふれる柔肉を弄びながら浩之は聞いた。

 「・・・・・どう? 気持ちいいか?」

  恥かしくて答えられない。今にも腰が抜けてしまいそうだった。何も考えないで浩之に奉仕を続けた。

  しっとりと濡れた粘膜は淫液を滲ませ、トロトロと流れを伝って、しまいには床に恥かしい水溜りを作るまでに至った。

 「ほしいのか・・・・」

 「・・・・う、うん・・・・・ちょ、ちょうだい・・・・浩之ちゃん」

  口から肉茎を吐き出すと、浩之のソレは一度射精したにも関わらず痛いぐらい勃起していた。

  浩之はあかりを横にどけて、あかりの股間に自らの腰を割って入れる。

  あかりは浩之を受け入れるためにだらしなく太股広げた。その格好の恥かしさに思わず両手で顔を隠した。

 「は、はやく・・・・」

  口にしてしまってから恥かしくて消え入りそうになる。子宮がキュッと窄まって、陰唇からとろみのあるイヤらしい淫液があふれてきた。浩之はそんなあかりをかわいく思って右手で髪を撫でながら、左手であかりの腰を持った。

  そして、いよいよあかりの中に自らを入れるために腰を進めた。

  亀頭の先端にあかりの濡れた柔肉と恥毛の感触を感じる。そして、ワレメの部分を探るようにくねくねと腰を動かした。

 「んっ・・・・・あふぅああ!!」

  執拗に愛撫を受けた秘裂はあっさり浩之を受け入れて奥まで挿入した。あかりは大きく背を反らして動きに合わせるように身を揺らした。

 「あっ・・・んくぅ」

  身を捩るようにして快感を受ける。狭い蜜壷の中に肉茎が出し入れする度に淫液が零れ床を汚した。

  更なる快楽を貪るように浩之は膝立ちになってあかりの腰を持ち上げる。その後、前倒しになって、ゆっくりと腰をグラインドさせる。あかりの中は熱く、ぐしょぐしょに濡れて肉茎を締め付けた。

  抉るように根元まで押し込んではカリ首まで引き戻す。

  ぐちゅぐちゅとイヤらしい音を立てながらあかりの中を抉りかき回し、貪欲に快楽を貪った。

  動きは大きなものから、小さく力強いものへと変わり、奥まで入れないで秘裂の入口に絶妙な刺激を与える。あかりは裸身をくねらせてより奥への刺激を求めて腰を浮かせた。

 「あうっ・・・は、は、は・・・・す、すごい・・・んく」

  あかりがたまらない顔をしているのを見計らって浩之は子宮を突き上げるように腰を叩きつけた。

 「ひゅんあ!!」

  あかりの口から甲高い声が上がって、女芯から全身を突き抜ける激しい官能の波のようだ。

  浩之は更に腰を使って、あかりを快楽の波に翻弄させ、エクスタシーへと導いていく。横になっても型崩れしない小ぶりの張りのある胸。少し痩せすぎたボディライン。床に広がった長く伸びた赤い髪。今、浩之は全身であかりを感じていた。

  いよいよ絶頂の時が迎えつつあった。

  浩之は正常位のままあかりを覆うように倒れこんでラストスパートに入った。汗ばんだ肌と肌とを密着させ、上から体重をゆっくりかけて中を貫いていった。

  お互いを確かめるように抱き合って腰の動きは激しさをます。

  あかりのあえぎ声が切迫していよいよ最後を迎える。

 「あん・・・・あ、あ、あ、浩之ちゃん・・・・あたし・・・もう」

 「俺もだ・・・あかり」

  二人の身体が同時に跳ねた。

  動きが止まるとビュクビュクと痙攣する。

  あかりの胎内で精液が弾けた。

  二人はその夜、何度も何度も身体を求めて肌を重ねた・・・・・。

  

  

  あの夜から、季節は春に変わっていた。

  志保とは結局、連絡が取れなかった。アメリカに戻ったのか、日本にいるのかも解からなかった。

  花嫁の控え室、あかりは純白のウェディングドレス姿で椅子に座っていた。準備も終え、両親も結婚式場のスッタフ、それに大学の友人。あと、保科 智子が花嫁の準備を手伝って客席の方に戻っていった。

  後は花婿の迎えを待つだけだった。

  扉が叩く音。

  部屋の中に入って来たのは志保。あかりにとって一番の親友。

  あの夜、浩之と抱き合っているのを見て別れて以来だった。

 「・・・・おかえり志保」

 「あかり・・・・すごい・・・きれいね」

  純白のドレスは、あかりの白い肌と赤い髪にマッチしてよく似合っていた。

 「うん・・・お母さんとか保科さんが手伝ってくれたんだよ」

  四年ぶりの邂逅とは思えないたわいの無い話が続いた。

  突然、志保は話を切り出した。

  あかりの笑顔を見ていると言いだせそうも無かったから、吐き出すように言う。

 「あたしはずっと自分が犠牲者だと思っていたの。あかりのために自分の気持ちを殺していると言い聞かせて、自分が不幸であることをよ拠り所にしていたわ。でもね、ずっと後になって気付いた・・・・・」

  志保をあかりの後ろに回って、長く伸びた赤い髪を束ねて優しく撫でた。過ぎた時間の象徴を確かめるように。

 「あ、あたしもあかりと一緒・・・。ヒロの気持ちを知るのが怖かっただけ、犠牲者だと言い聞かせて、自分とあんた達を騙していただけだったのにね」

 「志保・・・・・」

 「でもね。あたしは・・・・ヒロが誰を好きなのか知っていた。それなのに・・・・・」

  あかりが立ちあがって志保を抱きしめる。腕の中にいる親友の気持ちを答えることが出来なかった自分に申し訳ないと思った。

 「あかり・・・・浩之はあんたを選んだんだよ」

  優しい抱擁の中、志保は自分がすごくすっきりした気持ちになっているのがわかった。

 「うん・・・志保・・・・ありがとう・・・・わたしね・・浩之ちゃんが好き・・・・・」

  涙を拭きながら、あかりは答えた。

 「じゃぁ・・・・・」

  少し悔しいけど、随分いい顔ができた。そう志保は思った。あかりに一言だけ伝えて抱擁から出て、お互い笑顔で別れた。

  花嫁の控え室を出るとタキシードを着た浩之がいた。

 「よぉ・・・」

  壁によりかかって、苦い笑顔を浮かべながら手を振っていた。

 「なによアンタ聞いてたの?」

 「・・・・・・俺達・・・友達だよな・・・・」

  質問の答えにはなっていない。

 「あったりまえじゃない!!」

  志保は拳を作って浩之の胸を叩いた。

  二人は久しぶりにあの頃の二人に戻れた気がした。

 「ねぇヒロ?」

 「なんだよ」

 「ゆぅ はっぴい?」

  棒読みの英語。花嫁の控え室の扉が開いた。白いウェディングドレスを着たあかりと黒いタキシードを着た浩之。

  若い恋人達は見詰め合って、そろって頷いた。

  志保は少しだけ悔しそうな笑顔を浮かべて二人の前から立ち去った。

  

  バージンロードを厳かに進む浩之とあかり。

  客席にやっぱり志保の姿は無かった。

  神父の前で立ち止まって、宣誓が始まる。

 「病める時も健やかなる時も永遠の愛をつらぬくことを誓いますか?」

  白亜の教会に神父の声が響いた。

 「はい」

 「・・・・・・・・はい」

  確かめるように、ゆっくり答える二人。

 「では、誓いのくちづけを」

  花嫁のヴェールをまくって花婿がくちづけをする。

 「浩之ちゃん・・・・・・」

 「あかり」

  あかりは目を瞑って浩之の唇を待つ。

  二人の唇が合わさって、永遠の愛を誓った。青春の最後のページが閉じた。

 

 終

 


解説

 ・・・でした。鬼畜外道作家を目指す井川は、方向を見失いそうでちょっとイヤね。

 予想以上に反響がありました。こんなベタな展開でいいのか? 夏コミの原稿を書きながら自分なりに悩んでグズグズ書いた記憶があります。本来の路線である陵辱は感想など滅多にこないのに、純愛路線だと感想メールがいっぱいくるんだよな。

 続きを楽しみにしています・・・・・・。

 うれしい反面、ちょっぴり無念でした。同時期に投稿させて頂いている『M−KT』に感想などこないからです。

 愚痴はこのへんで解説などを言いますかね。

 一番苦労したのはあかりの行動。結婚までこぎつけるには、あかりの幸せになる勇気をどこまで書ききるか? って所でした。

 とにかくリクエストされた以上、井川テイストを発揮しなければ逆リクエストをした意味が無い。そこでベロニカ様の原案に志保との友情と、志保の浩之への気持ちの答えを追加しました。

 あかりはギャルゲーのヒロインでは珍しく主人公に対して最初から最後まで受身でした。それどころか、あかりというキャラは誰に対しても受身なんですよね。ゲーム途中であかりフラグが立つと志保との関係は説明されなくなり、志保フラグのみ、志保が浩之をあきらめる形で三人の友情は清算されます。

 これでは志保がかわいそうだ。そうだと言って志保を忘れて幸せになるあかりもあかりではありません。そこで、私はあかりに人間的に成長してもらうことにしました。『幸せになる勇気』を持つこと。これは常に受身でいるあかりにはぴったりな壁でした。

 これは、志保を裏切ることではなく、浩之に自分を選んでもらう勇気。同じなんですけど、あかりにとっては重要なことです。

 さて、これ以上書いても恥かしいのでこの辺で・・・・

 井川(鬼畜外道)正寿でした。

 次はM−KTの最終回。

 

 追伸・・・・・もう、こんな時間のかかる話は書きたくないなぁ。もっと欲望に忠実で性欲のダイレクトに反応するジャンルをリクエストしてほしいです。

 もう少し時間があれば肉付けしてボリュームのある作品に仕上がっていたものの・・・。ああ、勿体無い・・・実力が足りてない・・・二人の燃え上がる愛を表現できてない・・・修行が足りないなぁ・・・・ふぅ。

 


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