「じゃ、ね」
去っていく穂鳥の背中で揺れる艶やかな髪を眺めながら、春彦は溜息をついた。
……もったいない。
何が、彼女をあそこまでの男嫌いにしたのだ? いや、あれは嫌悪というより、恐怖か。
脳裏に、穂鳥の姿を思い浮べる。
胸の前で組んだ腕は、無意識の警戒心のあらわれだろう。もっとも、その行為は胸を強調するだけであったが。
あれならパイズリもできそうだなと、千歳の可愛らしい胸を思い出しながら、そんなことを考える。
ちょっと調べてみるか。ひょっとしたら、なんとかできるかもしれないしな。
我ながら、いい考えに思えて春彦の口元に笑みが浮かぶ。
その思考をもたらしたのが、教師としての職業意識なのか、単なる好奇心なのか、それは春彦自身にもはっきりとはわからなかった。
そして、数日後。
千歳が羞恥に頬を染めながら、制服のスカートを咥えあげて、愛液に濡れた秘所と太股を春彦の視線にさらしていた。
「ふふ、いい子だ。ちゃんと言いつけを守ったようだな。
では、報告してもらおうか」
だが千歳は、もうひとりの観客が気になるのかそちらにちらちらと視線を走らせては、口を開きかけてはつぐむ。
その視線の先には、M字開脚の格好で椅子に縛りつけられたひとりの少女。
「どうした? 気になるのか。大丈夫、これも彼女のためだ」
千歳の視線の先に、自分も目をやってからそう言うと同時に、秘裂を爪先で擦りあげる。
「ひうぅっ……!」
敏感な粘膜に対する刺激に、千歳がひくりと背をそらせた。
その動きにそってポニーテールがふわりと揺れる。
「報告できるよな?」
「は…はい。ご主人さま」
ご主人さま……?
千歳の言葉に、信頼していた教師の裏切りと、クラスメートの痴態に精神を凍てつかせていた観客――穂鳥が目をみはる。
そして、バイブとアナルバンドをはめて一日を過ごしたという、信じられないようなことを語る千歳。
報告し終えた千歳の太ももを、一筋の液体がつたい落ちた。
「おやおや、はたしないなあ。して欲しくなったのか?」
春彦が喉の奥で嗤う。
嗤いながら、どこから取り出したのか手にもった首輪を、慣れた手つきで千歳にはめる。
「さあ、奴隷の千歳はどうして欲しいのかな?」
なぶるような言葉。
なのに、千歳は濡れた瞳で春彦を見つめ答えた。
「ボクがご主人さまの物だって知ってほしいんです。ちゃんといつでも、ご主人さまが前でも後ろでも使えるようにしてるってことを確かめてください」
「そうか、じゃあ、まずは前から犯ってやる」
その言葉とともに、春彦が服を脱ぐ。
その光景に、穂鳥の心がひきつれる。恐怖の記憶が脳裏の浮かび上がる。
無慈悲に体を蹂躙された記憶が。
思わず目を閉じる。しかし、千歳のすすり泣くようなあえぎが、肉がぶつかり、粘膜の擦れ合う水音が容赦泣く耳に飛び込んでくる。
牡と牝が交わる獣の匂いが鼻をくすぐる。
「あ…そんなに突かれたら……だめ、いいの……いっちゃう…」
快楽を訴える千歳の声が、脳髄をゆさぶる。
「あ! やあ、抜かないでえ!」
ひときわ大きなその声に、思わずあけた穂鳥の目に、子供におしっこをさせるような格好で千歳を抱えあげた春彦が映った。
「千歳はこっちの方が好きなんだろう?」
穂鳥の目の前で、千歳のアナルに春彦の肉棒がめりこんでいく。
「………いい……」
春彦を根元まで後ろで咥えて、千歳が満足気に息を吐く。
淫液にべたつく千歳の秘裂。そこから新たに粘液がしたたり、菊のすぼまりを出入りする剛直に絡みつく。
出入りするそれに絡みついた粘膜が、引きずりだされ、押し込まれる。
直腸を荒々しく蹂躙するその光景。
千歳の顔に浮かぶ肉悦に溺れた牝の表情。
本当にいいの………?
心が揺らぎ、体の芯が熱を帯びる。肉の槍に貫かれる自分の姿が脳裏に浮かび、消える。
「こいつはサービスだ」
ねじ込まれたバイブを淫唇が、愛液を溢れさせ咥えこむ。
新たな刺激に、千歳が太ももをひくつかせ、おとがいをそらす。
「いい! いいの!」
もはや、焦点の合わぬ瞳で虚ろに宙を見ながら、千歳がしきりに肉の悦びを訴える。
忌まわしいはずの光景。
穂鳥の常識を越えた男女の交わり。
なぜか、目が離せなかった。
「そら、いけ!」
春彦の手が、千歳のクリトリスを摘みあげる。
「――――!」
声ならぬ声をあげて、千歳は背筋をそらせ、頂点を迎えた。ぬるりと、千歳の淫裂からバイブが落ちる。
「ほら、ご主人さまの物をきれいにしろ」
まだとろんとした目つきの千歳に、春彦が肉棒をつきつける。
「はい……」
異臭を放つそれを、陶酔の表情で千歳が口に含む。
なぜ…そこまでできるの……?
ごくりと唾を飲む。心臓が早鐘を打ち、体の深奥で何かがうねる。
「今度は、穂鳥の番だな」
己の物を千歳に清めさせた春彦が、穂鳥を見つめる。
猿ぐつわの代わりに咬まされていた、SMで使うギャグボールが外される。
「や、やめてください、先生。いまなら、千歳との事も黙っていますから……だから…」
心の奥を見透かすような視線に、言葉が弱々しく途切れる。
仮面のように凍てついた表情。瞳の奥にかいまみえる、冷たい輝き。なでまわすような視線に、肌が熱くなる。
春彦が口元を笑みの形に釣り上げる。
「欲しいんだろ? びしょびしょじゃないか」
言われて気づいた。自分の女の部分が、蜜をこぼしていることに。しとどに濡れ、男を誘う甘い香りを漂わせていることに。
「まるで漏らしたみたいだよなあ。大事な所が透けて見えるぞ。そんなに興奮したのか? 千歳もかなりよがっていたからな」
耳元で囁き、耳を甘噛みする。そこから、電流のような刺激が全身に走り、穂鳥はピクンと身を震わせた。
「や、やめてください」
拒否する言葉に力ないのが、自分でもわかる。
「いーや、やめない。今日は穂鳥に、男の良さを教えてやるつもりだからな」
だが騒がれるのも面倒だな、とつぶやき、笑みを浮かべる。今までに見たことのない、悪意に満ちた笑みを。
春彦は異様に手早く、穂鳥のショーツをはぎ取ると無理やり口に押し込む。
「むぐっ!」
嫌悪感と自らの淫臭に穂鳥は、顔を歪める。
「それで、自分がどれだけ男が欲しかったかわかるだろう」
次にお前の口から洩れる言葉は、犯してくださいとの懇願だよ。悪魔の笑みを浮かべて囁きながら、肌をまさぐり愛撫する。
「ほら、千歳も手伝え」
春彦の言葉に、千歳がおずおずとうなずく。
「はい、ご主人さま」
ふたりの、女のポイントを知り尽くした責めが、穂鳥の体の奥底から快楽を引き出す。
クラスメートに肌をまさぐられるという、倒錯的な状況が穂鳥の心を痺れさせる。
だめ……そんな……
本人の意志を無視して、肉体が与えられる刺激に素直に反応する。
官能の火がともり、その熱に体が火照る。
そして、三十分後。
執拗な責めに穂鳥の理性は痺れ、悦楽の大海のなかに溶け落ちた。
「自分から腰を振ってどうした? いきたいのか?」
決してイクことを許さない、焦らすような巧妙な技巧に、穂鳥の心は情欲の虜になっていた。
どこかひょうひょうとした春彦を最初は変な奴だと思っていた。だがやがて、信頼できる先生だと思うようになった。
「どういったらいいかわかるな?」
ショーツを口から引き出しながら、春彦が訊ねる。
「……いかせて。わたしをいかせて!」
しばしのためらい。しかし、一度言ってしまうと堰を切ったように請い願う。
「お願い! いかせて! わたしをそれで犯して!」
濡れた瞳でじっと春彦の物を見つめ、穂鳥が懇願する。
「まあ、いいだろう」
後ろから貫く獣の姿勢。
小鳥をとらえた猫を思わす笑みとともに、春彦が肉棒を穂鳥の淫裂にねじり込む。
「はあぁぁぁぁん! いいの、いいのぉ!」
貫かれる悦びに、穂鳥が狂ったように嬌声をあげる。媚肉が、むさぼるように肉棒に絡みつき、締めあげる。
緊縛された体がはね、官能の調べを奏でる。その旋律が頂点を迎える寸前で、春彦が動きを止めた。
気づけば心に宿っていた淡い想い。信頼が、恋心に変わったのはいつのことだったのだろう。
「どうしてっ! 動いて! お願い、いかせてぇ!」
もどかしげに腰を振り、穂鳥が叫ぶ。
「だったら、お前も奴隷になれ。千歳みたいに、俺だけに忠誠を誓って、何も考えずに快楽をむさぼればいい」
かすかに残った理性が、警告の声を上げる。だが、それも快楽への渇望が飲み込み、かき消す。
「な…なります! わたしは先生の奴隷です! だから、いかせて!」
奴隷の誓約。それでも不足とばかりに、春彦が重ねて訊く。
「千歳みたいに、学校でも俺をいつでも迎えられるように調教するぞ? 人間でなく、奴隷になるんだ。俺専用の、精液便所になるんだぞ?」
先生なら、心の傷を癒してくれるような気がした。先生なら、体を許してもいい気がした。先生となら、普通に愛し合える気がした。
その日、その時のことを考えたこともあった。
恋する乙女の、甘い想像。
「はいぃぃ! わたしは奴隷です。便所です。だから……だからぁ!」
先生となら………
(堕ちたな……)
人間としての尊厳すら捨てて懇願する少女に、春彦の口元が歪む。
笑みの形に。
目前の少女は、もはや人間でなく、色に狂った性奴であり、女でなく、発情した牝だった。
催促するようにざわめく肉襞に応えて腰を振る。
「いい……いいのぉ!」
絶頂に向かって押し上げられて、口を開け舌を突きだし快楽を訴える。
「ほら、いけ!」
最後にひときわつよく、肉槍を打ち込む。
「はうぅぅぅん! いっちゃうぅぅっ!」
子宮を叩く精液のほとばしりに、きれいな髪を振り乱して穂鳥が、頂点を迎える。
最後の一滴まで搾り取るかのように、肉壷が収縮する。
「はあぁぁ……あぁぁん…」
うつぶせにぺちゃりと床にのびた少女の細い首筋に、奴隷の証の首輪をはめる。
乱れた長く艶やかな髪と虚ろな表情。首輪をはめ、股間からは溢れた精液がこぼれ落ちている。
奴隷誕生、てとこかな。
ふと掻き立てられた創作意欲に、脳裏に描きあげた絵にタイトルをつけてみる。
それから――
「はあん…ん……」
鼻にかかった甘い声。
ぴちゃぴちゃと響く、卑猥な水音。
発情した二匹の牝の放つ、甘い芳香。
「そうだ、そこだ。穂鳥もなかなかうまくなったな」
「ありがとうございます」
主人の言葉に頬を染め、陶酔の表情で奴隷が答える。
春彦の自室。首輪のみを唯一の衣裳とし、一糸まとまわぬ奴隷の姿で千歳と穂鳥の二人がいた。
親友の二人は、仲良く春彦の股間にひざまずき、肉棒に奉仕していた。
あの日から毎日調教を受け、穂鳥は本物の肉奴隷となっていた。
前も後ろも開発され、学校でも調教され、千歳同様バイブをはめて一日を過ごしもした。
もはや、男性に対する恐怖も嫌悪もない。
あるのは、奴隷としての壊れた肉の悦びだけ。
「今度は友達同士、仲良く相手を慰めろ」
「はい、ご主人さま」
春彦の命令に、二人はうなずく。
親友同士のレズビアンショーを眺めながら、春彦は二人をどう責め、二人のどの穴をどう使うか考えていた。
そして、春彦もあの日気づいたことがあった。
自分の創作意欲を刺激するものが、この倒錯の世界の中にあると。
二匹の奴隷をもてあそび、創作意欲のままに絵を描く。全ては順調だった。
気掛かりがあるとすれば、愛姫のまなざし。
何かを探るような、あのまなざし。ひょっとしたら、奴隷たちのことに感づいたのかもしれない。
(だったら、あいつも堕とすまでか……)
愛姫の巨乳を脳裏に浮かべながら、春彦は目の前で妖しく絡む少女たちの白い裸身に、のしかかっていった。
終
元ネタのゲーム。好きでした。今となっては、懐かしいものですが。
知らない人のために内容を軽く説明すると、お兄ちゃんと慕ってくる千歳と結ばれたところから始まり、彼女と愛を育むか、肉欲に溺れるかというものでした。
ちなみに、主人公は美術の非常勤講師。
どこが、と言われたら困るけど、妙に記憶に残るゲームでした。