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二人の果て 第三話
西秦王爺/文


 「先輩。またあの男のところへ行くんですか」

 

  教室を出て行こうとする原素子を森精華が呼び止めた。

  振り返った素子の顔には煩わしさがありありと浮んでいた。

  その表情を目にすると、失望とそれ以上の痛みが森の胸をかきむしった。

 「そうよ。一緒にお昼をとろうと思ってね」

  手にした二人分の弁当箱を持ち上げて素子が言った。

  既に昼休みのチャイムが鳴り、他の生徒もランチを摂ろうと教室を出て行く。

  つい一週間前までは、素子も森と連れ立って昼食を摂るのが習慣になっていた。

 

  森精華は小隊の発足以前から素子の部下だった。

  この自分とそう年齢の変わらない上官は出会って早々に、

  機械工学や生化学での博識さを披露して森を大いに驚かせた。

  技術者として、あるいは女性としてもこの人にはかなわない。

  そう思って彼女から自身に足りないものを得ようと、森を必死になって努力した。

  彼女の側で出来うる限り時間を過ごす事。

  それが森の日課であり、日々の幸福と言っても良かった。

 

 「最近の先輩、変です。いつもあの男の側にいるじゃないですか。

  みんな噂してるんです。先輩はあの男に体を売ってるって。

  それで自分だけこの戦況から助かろうとしてるんだ、なんて事も言われてるんです。

  そんな事言わせておいていいんですか」

 

  森の言うあの男とは、先日小隊の委員長となった速水厚志を指している。

  何の実績もない彼が突然司令の地位に就いた事は、

  森に限らず小隊内で不満とする者が多かった。

 

 「構わないじゃない。誰が何を言おうと私はどうって事ないわ。

  でも私に言わせれば、皆速水君のこと悪く言いすぎよ」

 

  そう言い返した素子の言葉には、いささかも動じたところがない。

  意志の強さに裏付けされた真直ぐな視線。

  それは速水の許で時間を過ごすようになっても変わることはなかった。

 

 「言いたいことはそれだけ。なら私は行くけど」

 

  一秒でも惜しいかのように、素子がこの場を去る素振りを見せた。

  森は彼女の以前と違う冷淡な口調と視線に耐えきれずに、目を逸らしていた。

  それでも何かを言おうとして、口を開きかけた森を素子が制した。

 

 「貴女には悪いけど、今更どうしようも出来ないくらい彼のことが好きなの。

  他人の目だとか、仕事に振り回されるのはもう沢山。

  たとえ彼に何がおきても側にいてあげたいの、今の私にはそれで精一杯だから」

 

  そういって微笑んだ素子の顔が、森の眼にはひどく悲しげに映った。

  それを見ただけで森は言うべき言葉を失くしてしまった。

 

 「これから先、この小隊も変わるはずよ。私が変わってしまったのと同じにね。

  でも貴女の事、悪い様にはしないわ。

  それだけは約束できるから」

 

  言い残して素子が立ち去った。

  彼女を止めようとして手を伸ばした。

  だが森はその背に触れる前で留めた。

  自分の敬愛する女性は、もう手の届かない存在でしかない。そう森は直感していた。

  彼女の知る素子は他人が言うほど理知的でも大人でもない。

  感情的で、誰にも自身の意思を変えさせない。

  悪く言えば意固地な女性だった。

  だからこそ誰かを愛するときには一途になれるのだろう。

 

  ひとり残された森は椅子を引き寄せると、力なくそこへ座った。

  そして誰もいなくなった教室でわずかに肩を震わせた。

 

 

 

  教室を出た素子は隊長室に足を向けた。

  速水がそこにいるのは間違いなかった。

  司令に任命されて以後、彼は授業に出たことはない。

  常に隊長室に籠もり、他の生徒とは接触を絶っている。

  それも彼が不興を買う一因だった。

 

  歩きながら素子は二人分の弁当を嬉しそうに見つめた。

  今朝久しぶりに時間のあった彼女が、厨房で腕を振るった成果がそれだった。

  ここ数日は速水からの夜通しの調教で、寝る時間すらなかった。

  夕べは新たに加藤祭を交えた性宴に疲れ果てると、

  体力の限界を感じた彼女は隊長室を後にした。

  そして一晩充分に睡眠をとった後で調理場に立った。

  速水は何気に家事もこなすタイプで、必要があれば自分で食事を作ってしまう。

  真夜中素子が絶え間ない調教に疲れ果てた時、不意に速水の姿が消えた。

  息も絶えそうになってその場で倒れこんでいると、程なくして彼が戻った。

  手には二人分のチャーハンを持って。

  体力の尽きた素子を案じた彼は、調理場に忍び込み小隊の食材を借用してそれを作ったと言う。

  盗んだ物資のことを咎めるべきか、

  好き放題弄んだ女性に食事をすすめる無神経さに呆れるべきか。

  全裸のままの素子が頭を悩ますうちに、さっさと速水はチャーハンをかきこんだ。

 

  思い出して苦笑がこみ上げた。

  悪役ぶっている癖にぽややんとしたところが抜けないんだから。

  そう考えているうちに隊長室の前に着いた。

  隊長室のドアに手を伸ばすと、鍵がかけられている。

  用心深い速水は中に自分がいようが、常に施錠を怠らなかった。

  素子はノックしたが返事はない。

  速水の行き場所が思いつかず、素子はこの中で待つ事にした。

  ポケットを探り、夕べ彼に渡された合鍵を出した。

 

  男に部屋の鍵を与えられる。

  この場合本来の意味合いと多少ずれてはいるが、

  それでも速水が彼女に心を許した証拠に変わりないかもしれない。

  施錠を外した後で素子は合鍵と持参した弁当を見比べた。

  無理矢理犯されて始まった関係に何を期待しているのか。

  そう思わない事もない。

  だが森にも言ったように、今の素子が望むのは速水の側にいる事だけだった。

  男なんて手玉にとって生きていこうと思ってたのに、またバカな女に逆戻りね。

  素子は何度目かの自嘲と共にドアを開いた。

 

 

 

  部屋に入った素子の眼に速水の姿は映らなかった。

  見えたのは裸のままで、隊長用デスクの椅子に座る加藤祭の姿だけだった。

  全てを剥ぎ取られたまま、痴態をさらす姿は昨夜と何の変わりもない。

  精液と愛液、汗と尿水の臭いが混ざり合って彼女の全身から漂っていた。

  意識がないのか、眼は虚ろで口許には涎まで垂らしている。

  流石に死んではいないようで、胸と喉元が微かに上下する弱々しい呼吸が確認できた。

 

 「お帰り。

  原さんがいない間に加藤さんも、だいぶアナルが気に入ってくれたみたいだよ。

  今朝から尻が締まりっぱなしでチ×ポ放してくれないもの。

  人間何事も経験だね」

 

  聞こえた声は加藤のものではない。それは間違いなく速水のものだった。

  素子は加藤が椅子に座った速水に抱えられている事に、その時になって気付いた。

  立ち尽くしたままの素子に向かって、速水は両手で加藤の脚を持ち上げ目一杯開かせた。

  言葉どおりに速水の肉棒は、加藤のアナルを深々と貫いていた。

  怒張の埋まる肛門の上では、吹き出すほどの勢いで愛液に潤う淫裂が剥き出しになっている。

  椅子に座ったままの速水が下から突き上げると、

  意識も怪しそうだった加藤の口から、悲鳴とも喘ぎともつかない声があがった。

 

  ヒィン、んんっ、んあぁぁ。ヒッ、ヒッ、ヒグゥゥ、んっんんっ。クッ、クゥウン。

 

  男の腰がテンポよくスイングし、肉棒が加藤の肉壁を擦りあげる。

  本来性交に使われるべきでない器官も一晩中の責めによって、

  獣欲を受け入れる淫らな秘穴に変貌していた。

  初めは裂傷から出た血が肉棒を汚し、ヴァギナとは格段に違う締め付けが挿入を拒んだ。

  今では刺激された直腸から腸液が大量に分泌し、愛液代わりの潤滑油となっている。

 

  速水が加藤の調教にアナル責めを選んだ理由は素子にその一端がある。

  彼女が加藤のヴァギナに突き刺さったバイブを蹴り上げ、そこにかなりの裂傷を負わせてしまった為だった。

  速水はすぐには使えそうもない前の穴ではなく、未踏の秘穴を選び執拗にそこを責め立てた。

  数時間にわたって肛門を汚液と男性器によって汚される間、加藤の口からは悲鳴が絶えなかった。

  それが今や肉欲の歓喜に変わっている。

 

 「……はぁぁ、ええわぁ、…お尻がぁ……オチ×チンでいっぱいやぁ……」

 

  もはや素子の目に映る加藤は牝奴隷以外の何者でもなかった。

  数秒前まで半死人の態だったはずの少女は、

  男の腰が動き出してからは狂ったように身悶えを始めていた。

  より深い結合を求め、男の動きに合わせようと自身の腰を振り出す。

  調子外れに発せられる声も快感を貪る牝の鳴き声に他ならない。

  速水の肉棒と精液が加藤の理性を蝕み、侵食してゆくのが素子には手にとる様に判る。

  それが自身の数日前の姿でもあるからだった。

  常人とは思えない速水の精力と、

  今も作動しているに違いない快楽プログラム〈ブレインハレルヤ〉。

  その二つが執拗に身体を犯し、牝の本性へと近づける。

  男の舌が這うたびに、指が触れるたびに、性器で貫かれるたびに、

  精液の臭いを嗅ぐたびに、嬲りの言葉を聴かされるたびに、

  抵抗の無意味さを思い知らされた。

 

  ズン、ズジュ、ズッピュ、ズッピュン。パン、パン、ズン、ズパン。ズギュ、ズッグ。

 

  速水の怒張が雄々しく加藤の肛門をえぐるさまを見て、

  素子の尻が貫かれたように熱く疼《うず》いた。

  肉棒を欲して肛門が収縮を始め、花芯が潤いだすのが自分でも判る。

  目の前で尻を犯される少女が自身であるかのような錯覚だった。

  加藤の肛門に埋もれた肉棒の大きさ、形、臭い、太さ、固さ。

  その全て知り尽くした身体が狂おしくそれを求める。

  溢れ始めた情欲が素子の神経を焼き焦がすのに、そう時間はかからなかった。

 

 「加藤さんのマ×コが治っているか、確かめてくれないかな。

  あんな酷い事した本人なんだから、優しく扱うんだよ」

 

  男の声がした。

  あの人が私を求めた。

  意識なしに身体が動いていた。

  覚束ない歩みで声の主に近づくと、何かが落ちた音がした。

 

  素子は結合中の二人の近くまで歩き膝を落とした。

  奉仕の姿勢となった素子の眼前には、肉ビラも露わな淫裂が待ち受けていた。

  陰毛が絡まるほど蜜を滴らせたヴァギナの上部にはピンク色の肉真珠が勃起している。

  充血し、ぷっくりと膨らんだクリトリスは包皮から完全に剥き出た状態にあった。

  素子が奉仕しやすいように、速水は突き上げを止めていた。

  にもかかわらず加藤の下半身は淫らな律動を休んではいない。

  少女の思考には情欲だけが残され、

  性器を飲み込んだアナルもオスの精気を搾り取ろうと収縮を繰り返していた。

  かがみこんで加藤の内股を手で押さえると、

  ねっとりとした愛液が指先を濡らした。

  気が付けば加藤の全身はおろか、椅子や床にまで分泌液が垂れ落ちている。

  そして淫らな開花の芳香がきつく鼻を突いた。

  淫靡《いんび》に香るヴァギナへと誘われるように、素子は舌を這わせた。

  柔らかな媚肉《びにく》の感触が舌の上に伝わる。

  舌先で膣口を一周しながら蜜液をすすった。

  クリトリスに至ると唇を押し付けてキスをし、豆粒大のそれを口に含んで吸いたてた。

 

 「クゥン、クハァァァッ。……そう、そこやぁ…。もっと……弄ってえなぁ…」

 

  加藤の反応に痛みを訴える響きはない。

  確信を持って素子は膣内に舌を潜らせた。

  舌を伸ばして膣腔に分け入ると、体内の熱さが直に伝わってくる。

  首や顎を動かし前よりいっそう大胆に舌を使った。

  舌を横に広げて、膣壁をべったりと舐め上げる。

  そして大きく口を開き、膣口を唇で刺激させながら、口に流れ込む蜜液を嚥下した。

 

  ンンッ、ンチュッ、チュッ、チュブッ。んぐっ、ごくっ。チュッ、チュニュッ。

 

  今度は指を入れた。

  具合を確かめるようにまず一本。急速に膣壁が締め付ける。

  次いで二本目を足した。

  そのまま人差し指と中指で掻き回すと、加藤の花芯は吸い込むように離さなかった。

 

  グチュッ、グチュッ、グニュン。ジュッパン、グッシュ。ジュッパ、グッシュ。

 

  素子は指使いを止めることなく、舌先を下方向に向かわせた。

  その先には肉棒を咥えこんだアナルがある。

  結合する二つの性器を唇と舌で愛撫した。

  肛門の周りから肉棒の根元、睾丸部に至るまで執拗に愛撫と口づけを繰り返す。

  結合部の隙間に舌先を潜らせると、濃厚な精液の味がした。

  オスの味覚が素子を昂ぶらせ、いっそう愛撫に熱を込めさせた。

  ヴァギナと結合部を交互に愛撫し、その間の会陰部も丹念に刺激する。

 

 「…ハァァン、もう……らめやぁ…。ヒィィン……ハアァ…イクッ、イってまうわぁ……」

 

  素子の舌使いで限界に近いた加藤が、声を上擦らせて悶えた。

  頃合を計っていた速水が一気に腰のスイングを再開する。

  素子もその動きに合わせ、加藤の花芯を指でかき混ぜた。

 

 「ヒィンン、ヒッ、アアァッ、クハァッッッ、ヒグッ、ヒグゥゥゥゥゥ」

 

  前後の秘穴を責められて達した加藤が大きく仰け反った。

  速水の方も同時に達したようだった。

  射精を終えた速水の肉棒が力尽きたように加藤の肛門から抜け落ちた途端、

  そこから大量の精液が吹き出した。

 

  ビュジュルルッルルッ。ビュババババッッッ。ドブッ、ドボボボボボッッッ。

 

  加藤の腸内に溜められていた精液は、

  栓代わりとなっていた怒張が萎えた事で下にいた素子に降り注いだ。

  ゆうに十発分以上はある白濁液は黄味がかって、ゲル状に固形化し排泄物の様ですらあった。

  服や髪が汚れるのも気にせず、素子は汚液の雨に全身を浸していた。

  髪に付着した精液は容易には流れ落ちず、所々で塊になってこびり付いたままだった。

  秀麗な素子の顔中にも万遍なくそれは塗りたくられ、

  常人がそれを見たならば直視できない光景だったろう。

  白濁色のメイクが施された女は精液を肌に染み込ませる様に、

  指でこね回した後残さず口に運んだ。

  口内で舌に絡みつく粘液とそれに含まれた何かによって、

  素子は求めていたものを満たされていった。

 

 

 

 「そろそろ仕事のほうを始めようと思うんだけど」

  夢中で肉棒にしゃぶりつく素子を見下ろして速水が言った。

  女は加藤の腸液で汚れきった性器を清めるように、隈なく舐め回し続けていた。

  風呂洗い以上に執拗な素子の舌使いで、怒張は充分過ぎるほど回復している。

 「ほら、そんなに弄っちゃまた一発抜けちゃうから。この辺でおしまい」

  速水は強引に肉棒を素子の口から引き抜いた。

  口に残っていた分泌液を飲み下した素子が不服そうに眉を寄せた。

 「仕事がある事忘れてない?芝村準竜師からの命令だよ」

  速水は素子に〈慰安専任部隊〉編成の辞令が下ったのを繰り返し話した。

  彼らの所属する第5121小隊を最前線にいる兵士の性欲処理部隊に改編する案は、

  以前から速水が司令部に陳情していた。

  それが採用され、昨晩正式な形で通達がなされた。

  通達内容に寄れば五月の上旬には、激戦区へと移動しなければならない。

  その為早急に小隊の女子を男に奉仕する肉奴隷として調教する必要があった。

  加藤と素子以外の生徒はこの密命を当然知らない。

  それを知れば逃亡する女子も出てくるだろう。

 「手始めに次の調教場所が必要になる。ここは皆に怪しまれているからね」

  速水は言い終えると服を着始めた。

  その間素子に倒れたままの加藤を介抱させる。

  調教から解放された少女は、仮眠用の毛布に包まれて寝かされた。

 「だいぶ臭いが酷いな。

  僕先にシャワーを浴びているからさ。部屋の戸締りよろしく」

  そう言い残して男は部屋を出て行った。

  部屋には彼の言ったとおり、情交の後のすえた臭いが濃厚に残っていた。

  男女がオスと牝に戻った証しの香り。

  まもなく小隊全てがこの芳香に包まれるだろう。

 

  眠る加藤を残して隊長室を出た。

  鍵を閉めようとした素子の目に、床に落ちた弁当箱が映った。

  女はそれをしばらく眺めた後ゆっくりとドアを閉めた。

 

 

 

  整備員詰め所にいた石津萌は速水の顔を見ると、怯えた様子で椅子から立ち上がった。

  久しぶり、とにこやかに言いながら歩み寄る彼の後ろにはもう一人女性の姿も見えた。

  それが原素子だと気付いた時、萌の背中に冷たい感覚が奔った。

 

 「……な……にか…よう……なの……」

  動揺と怯えを懸命に隠して萌が言った。

  彼女特有のたどたどしい喋り方も、いつもよりその度合いを増す。

 

  石津萌は小隊では生活環境の保全を担当する衛生官を務めていた。

  ウェーブのかかった黒髪と中性的な程ほっそりとした肢体の持ち主で、

  大きなエンジ色のリボンを巻いているのが特徴だった。

  かなり性格の気弱な少女で、始終顔をうつむかせて周囲の様子を窺《うかが》ってばかりいる。

  そうした態度が彼女を小隊で浮いた存在とさせ、特に一部の女子から反感を買っていた。

 

 「石津さんに新しい仕事をお願いしたいんだけど」

  椅子に座った速水が真先にそう言った。

  笑顔で語りかける彼を見ると、悪寒に近い感覚が萌の全身にめぐった。

  萌は数日前から速水に起こっている変化を敏感に察知していた。

  以前の速水は彼女を蔑視しない殆ど唯一の男性だった。

  その優しさに惹かれ、告白すら考えた事もある。

  常に彼の傍らにいた芝村舞の存在がなかったら、

  躊躇《ちゅうちょ》せず行動に移していただろう。

 

 「特別衛生班と言ってね、貴女にはぴったりのお仕事なんだけど」

  速水の隣に立ったままの素子が言い添えた。

  小隊の女子のリーダー格でもある素子は、萌を毛嫌いする側の一人だった。

  この二人は自分に害意を抱いている。

  萌の超常的な感覚がそう告げていた。度々の悪寒がその証左だった。

  他人の感情や思考に敏感に反応するこの能力が、

  彼女を周囲に対し臆病な性格にした主要因でもある。

  それは必ずしも萌の救いとなってきたわけではなかった。

 「…どんな……仕事…なの……」

  ざわつく感覚を無視して萌が尋ねた。

  眼前の速水の笑みに、優しかった少年の幻影を重ねていたのかもしれない。

  それが萌の判断を迷わせた。

 

 「要するに戦争に疲れた男達のチ×ポをきれいにしてあげる仕事さ。

  汗臭いオチ×チンを君のマン汁で洗ってやるんだよ。

  これから石津さんは皆のチ×ポの衛生を任されるワケだね」

  途中から速水が何を言っているのか、判らなくなった。

  もう一度聞き返して、萌は自分の耳の方を疑った。

  「……うそ…よ…ね……。……速水…く…ん……」

  悲痛な萌の言葉を聞いても、速水は遅刻でも詫びるような表情で首を振った。

 「悪いんだけど、もう決めちゃったんだよね。

  大丈夫だよ。石津さんだけじゃなく、この小隊の女の子は、皆チ×ポの衛生係になるんだから。

  その為にはこの整備員詰め所が使いたいんだよね。

  ここを皆のチ×ポ慣れの訓練所にする予定でね」

  話し続けるごとに速水の顔の笑みが増す。

  イラストのような何か現実味を欠いた笑みだった。

  狂人の笑みと耳を覆いたくなる言葉。

  その二つが幻影を砕いた。

 

 「…いや…よッ……」

  悲鳴にも届かないか細い声を出し、萌は逃げようとして飛び出した。

  だがその後ろには素子が待ち構えていた。

  一瞬動きの止まった萌は速水に引き倒され、そのまま二人がかりで床の上に組み敷かれる。

  身体を起こして抵抗したが、背後へ回った速水に両手を捻られるとそれまでだった。

  諦めずに部屋の外へ助けを呼ぼうと、悲鳴をあげかけた瞬間素子の平手が頬を打った。

 「諦めなさい。命令を拒否、または逃亡した者には射殺も許可されているのよ」

  言い放つ素子の口許には艶然とした笑みがあった。

  萌はそれに似た笑みを思い出した。

  この小隊に来る前、彼女に虐待を加えた少女達のしていた笑みだった。

 

  怯えて抵抗もできなくなった萌に構わず、素子は上着を脱がしにかかる。

  素子の言葉はハッタリに過ぎなかったが、軍規に疎い萌には知るよしもなかった。

  ブラウスのボタンも外され、その下のブラジャーを強引にずらされると、

  小さな膨らみが露わになった。

 

 「おおっ。可愛いオッパイだなぁ。

  原さんくらいのサイズもいいけど、微乳のほうが感度いいんだよね」

  萌の貧弱なバストを見た速水が楽しそうに声をあげる。

  無理に曝された彼女の胸は、微乳という言葉が正に当てはまっていた。

  そこにあるのは果実的な形になった乳房ではなく、

  乳首が突きあがった程度の双丘のみだった。

 「…みな……い…で……」

  恥ずかしさで一杯になった声が萌の口から出される。

  勿論その嘆願は無視されたままで、彼女の胸を素子の指が探っていた。

  その指が乳首を摘むと力任せに捻られた。

 「イタッ……い………」

  不意の痛みに思わず声があがる。

  素子はそんな萌の様子を愉しむ様に、声を弾ませた。

 「ホント、敏感な乳首ね。でも私だってこれくらい感じやすいんだけど」

  素子は笑みを絶やさぬままで、さらに力を加えた。

  萌の乳首は散々捻られた後、ようやく放された。

  過剰に刺激された突起は痛々しく紅潮し、緩やかに元の形へと戻った。

 

  次に素子は無残に扱われた萌の双丘を、今度はいたわる様に愛撫し始めた。

  肉付きの薄い胸を慣れた手つきでゆっくりと揉み解す。

  指と手の平を使った愛撫はバスト全体から次第にピンク色の頂《いただき》へ登ってゆき、

  山頂を指の腹で優しく刺激した。

  強弱の巧みな愛撫に萌も呼吸を乱し始める。

  素子は少女の反応を確かめた後、その白い肌に舌を重ねた。

  白い萌の肌と紅い素子の唇の色が混ざり合うかの如く、

  唾液に濡れた愛撫の痕がほんのりと朱に染まる。

  今度の愛撫も頂に向かって登ってゆき、先程の痛みから回復した乳首を口に含んで吸った。

 

 「……ン……ンンッ…。……ンアァン……、…ンッ、……ンン……」

 

  背筋を駆け上がる快感に耐えられなくなった萌が媚声をあげた。

  素子の口腔の中では乳首も固くしこっている。

 

 「ン痛《ツゥ》ッ……!」

  喘ぎの最中に萌が別種の声を発した。

  素子が口の中で乳首を噛んだからだった。

 「なに、気分出してるのよ。でも襲われてるってのも忘れて、よがりだすのは素質ありよね」

  嗜虐心に火照りだした素子の顔を覗き込んで速水が尋ねた。

 「それって男を悦ばせる素質?」

 「男の玩具《オモチャ》になる素質よ」

  そう言えば誰かさんも無理矢理押し倒されたくせに、マ×コをぐっしょり濡らしていたな。

  速水はそう思いついたが、言葉にはしなかった。

 

 「こんなに感じてるんだから、そろそろ準備もいいんじゃない」

  素子は側に落ちていた萌の制服のリボンを拾って、速水に差し出した。

  成る程と納得した表情で頷き、速水は渡されたリボンで萌の両手を縛った。

  後ろ手に縛られ抵抗も出来ないまま、萌は仰向けに倒された。

  少女がさっきまでの愛撫の余韻で身動きできないでいると、

  キュロットに男の手がかけられた。

 

 「……いや…よッ……。…お…願い…だか…ら……それは……ゆる…して……」

 

  その先の危険に感づいた萌が、必死になって首を横に振る。

  身体をよじって逃れようとしても、今度は後方に回った素子に押さえつけられた。

  キュロットが下ろされた後は、靴下やストッキングも難なく剥がされてゆく。

  最後に簡素な水色のショーツが投げ捨てられ、萌の下半身を覆う物はなくなった。

 

  萌の陰部は恥毛が薄く、肉ビラも淫裂に九割方収まったままだった。

  そこはいかにも処女の未開地と言った感がある。

  愛液はまだそれほど分泌されていなかったが、

  オスの性器を迎えるあの独特の匂いをすでに放っていた。

 

 「石津さんのマ×コ、なかなか綺麗だよ。それに引き替え見てよ、僕の恥知らず君を」

 

  そう言うと速水はズボンを下げて、自身の恥知らずとやらを剥き出しにする。

  それは早くも逞しく怒張していた。

  萌は自身に向かって脈打つ怒張から眼をそむけた。

  初めてそれを直視した事よりも、

  ひととき思いを寄せた男に否応なく汚される事の方がはるかに辛かった。

 

 「ほら、あれが貴女のアソコを一杯にしてくれるオチ×チンよ。

  明日からアレとザーメンが貴女の御飯になるんだから、ちゃんと見てあげないと失礼よ」

 

  素子の声を聴きながら、萌は自身の操《みさお》を諦めていた。

  速水が彼女の足を開かせても抵抗はしない。

  肉棒の先端が淫裂に当てられると、陵辱の瞬間を見ないよう唇をかんで眼を閉じた。

 

  ヅヂュウ、ヅブッ。ジュッ、ジュッ、ジュプッ。

 「ぐっ、ぐあぁぁっっ。……いやぁぁ、……やだっ……やめ…て……」

 

  口数少ない萌も流石に悲鳴は抑えきれない。

  愛液の分泌が足りず、肉棒と膣壁が擦れる度に内臓が裂けるような痛みが走る。

  それでも容赦なく怒張が突き上げられた。

  その途中何かに気付いた速水が不満そうに言った。

 

 「あれぇ。てっきり石津さんて処女だと思ってたのに違うみたい。

  奥手そうだから男なんて誘えないと思ってたのになぁ」

 「バカね。こんなネクラ女に男が手を出すわけないじゃない。

  前の学校で苛められていたんでしょ。

  大方バイブか、そこらへんのスプレー缶でも突っ込まれたに決まってるわ」

 

  素子が嘲笑すると萌は顔を背けた。

  それまでの悲鳴を抑えて口を閉ざす。

  ウェーブのかかった前髪で表情が隠されたが、

  わずかに覗く髪の隙間から涙を流すのを素子に見られた。

 

 「やだ、もしかして当たっちゃった?

  だとしたら、速水君のオチ×チンが人間の男としては最初ってワケね。

  羨ましいなぁ。最初にね、速水君のオチ×チン知っちゃったら他のじゃ全然イけないわよ。

  後で何人相手にしても絶対忘れられない味なんだから」

  素子の嘲りと膣内の痛みが萌を記憶の中に引き戻してゆく。

  この数ヶ月忘れようとして、そして忘れることのできなかった記憶だった。

  萌を囲む幾重もの人影。身動きはとれない。下半身を貫く冷たい感触。

  そして絶える事のない笑い声。

  影の誰かに吐きかけられた唾が萌の顔にかかった。

 

 「速水君のオチ×チンを味わうだけなんて贅沢過ぎよ。私の相手もちゃんとするの」

  いつの間にか、キュロットを脱いでいた素子が萌の顔に跨《またが》っていた。

  否応なく素子の濡れた陰部が押し付けられる。

  淫裂から溢れる愛液が萌の顔を汚した。

  媚肉に呼吸を塞がれた萌は、口に流れ込む蜜液を仕方なしにすすりだした。

 

  んっ、んっ、んくっ。ちゅ、ちゅ、ちゅう、ごくっ。

 

  口内の量を嚥下しても、途切れなく素子の淫裂から溢れてくる。

  粘り気のある分泌液は鼻にまで浸入してきた。

  少しでも早く、この苦しみを終わらせよう。

  そう考えて萌は、自ら舌を動かし始めた。

 「あら、意外と上手ねぇ。前の部隊で色々仕込まれたってワケか」

  素子の言葉が聞こえないふりをして、舌を動かし続ける。

  彼女の気付いた通り萌が受けた苛めには、同性への奉仕も含まれていた。

  その為愛撫の強制もそれほど苦にはならかった。

  それにこの体勢なら、笑いながら自身を犯す速水を見ないで済んだ。

 

  その間に速水の動きが徐々に激しさを増していた。

  カリ太の怒張が膣奥を何度も突き、その衝撃が子宮にまで届く。

 

  ズン、ズン、ズップ、ズップン。ジュン、ジュチュン。ズッチュ。ズッチュ。

 

  男の腰がテンポを上げているのは、萌の愛液が前より量を増している所為でもあった。

  荒々しい突き上げに少女の身体は、否応なしで順応してゆく。

  痛みを和らげる為分泌される愛液が、涙代わりに花芯から溢れていた。

 

 「このコ最初からこんなに躾けられてるんだから、皆のペットにするのはどう。

  それなら服なんて着せる必要もないわよね。

  代わりに可愛い尻尾でもつけてあげればいいんじゃない」

 「あはっ。それ、いいね。

  なら猫耳もつけてあげないと。たしか裏マーケットにあったかな」

  二人のやりとりも萌の耳には入らない。

  それでも明日から自身に何が待っているのか、嫌でも判っていた。

  今は唯、この苦しみが終わる事だけを考えた。

  素子のヴァギナに舌を差し入れ、射精を促せようと腰も動かした。

  淫売の様に身体を使って、ようやくそれが訪れた。

 

 「ほうら、記念の初膣内射精《はつなかだし》だよ」

  ビュル、ビュルル、ブビュルルルルルルッッッッッ。

  速水が射精した。熱い濁流が止まることなく、子宮まで流れ込んだ。

 

 

 

  終わった。

  絶頂に達することもなかった。

  感情も情交の愉悦もない。唯犯されただけだった。

  昔と何も変わらない。

  いつだって彼女が我慢すればそれで済んだ。

 

  陵辱を終えた男の性器が引き抜かれた。

  子宮に溜まった精液が膣口まで降りてくる。

  体内から溢れ出た汚液が、ゆっくりと内股を滴り落ちた。

  途切れかけた萌の意識は、その感触だけを感じていた。

  犯されていた間の緊張が一気に薄れると、意識を保つのが辛かった。

  疲労感に任せ、その場に眠ってしまいたかった。

 

  不意に萌の肢体がうつ伏せに転がされた。

  腰が持ち上げられ、肛門に何かが触れた。

  アナルに押し付けられた未知の感触に、萌の意識が素早く反応した。

 

 「…そこっ……ちが…う……」

  振り向くと、そこには肉棒で萌の肛門を探る速水の姿があった。

 「…そこ…じゃ…できな…い……から…」

  挿入を拒もうにも、下半身に力が入らない。

  先程の陵辱が萌の身体と意識の双方から抵抗力を奪っていた。

 

 「そう言うからには、後ろの経験はないわけだね。

  さっきの初膣内射精といい、今日は初めて尽くしじゃない。

  なら、後で初浣腸も試してみようか」

  速水の両手に尻肉を広げられ、徐々に亀頭が未開発の窄《すぼ》まりを犯してゆく。

  挿入の違和感と痛みが萌の下半身にはしった。

 「下手に抵抗すると、後でトイレも行けない位裂けちゃうよ。

  どうせこれから毎日ぶち込まれるんだから、愉しんでやらないと狂い死にするかもね。

  大丈夫。マ×コでイけなかった分、これから尻でたっぷりよがりまくらせてあげるから」

 

  嬉々として速水が言い終えた瞬間、一気に肛門を貫かれた。

  萌は絶叫した。

  聞きとめる者のいない無意味な叫びだった。

 

 続く

 


解説

 どうも長らくご無沙汰しておりました。続きをご希望いただいた方々には一ヶ月以上もお待たせいて面目ありません。

 私生活上のトラブルと「書けない病」《と言うより書けてもレベル低すぎ病》に罹ってしまい、思うように筆を運ぶ事が出来ない日々が続いておりました。

 その間自身の筆の遅さと才能のなさに死にたくなるくらいでした。

 ようやく出来上がった続編もこの有様です。

 精進します。もっと精進してよりよい続編《多分この三話も後で改稿します》を書きます。

 内容的には石津萌が三番目の犠牲者となりました。前回のご感想をいただいた方々や二話の予告に田辺真紀が登場すると言っておりましたが、変更となってしまいました。

 次回はその田辺と森を登場させる予定でいます。また変更になったらすみません。

 エロは短いし薄いから抜けねえよとか、エロ以外のシーンに時間かけ過ぎとか、自意識過剰過ぎとか、なに無理矢理シリアスやろうとしてんのとかいろいろご不満もあるでしょうが見逃してください。

 鈍行列車でぶらり一人旅のはずが暴走列車に乗ってしまいました。どうにもこうにも止まってくれません。飛び降りる事も出来そうにありません。こうなればこのまま終点まで行くほかありません。最期は盛大に大激突するまでです。

 

 追伸 週間少年ジャンプの某野球漫画に萌のもろパクリキャラがいましたがいいんでしょうか。

 


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