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太陽の中の殺人者(下)
ヨッシ―/文


  朝を迎えた。

  アカリは、朝日の日差しによって目を覚ました。

 (自分は、なぜ寝てるんだろう?)

  しかし、何よりも

 (ここは、いったいどこだろう?)

  と思いながらアカリは起き上がった。

  隣のベットには、アカネが寝ている。

  アカリは、すべてを思い出した。

 (私、倒れて・・・。)

  アカリは、寝室の窓を開けた。

  外では、ショーとブルマンが牧場の仕事をしている。

  外の景色を見ているアカリに気付いたショーは、

  愛用の帽子を脱ぎ笑顔を見せながら仕事を中断してアカリの方へ近づいた。

  ちょうど、7mほどにショーが近づいた時

 「どうしたんだ? アカリちゃん。」

  ショーは、アカリに声を掛けた。 

  それに対して、アカリが大声で話す。

 「ここ、どこですかあ!?」

  ショーが、大声で返す。

 「ここはな、俺の牧場だ!」

  また、アカリが大声で話す。

 「あなた、だれですかあ!?」

  ショーが、大声で返す。

 「ロバート=ショーだ!!」

  ショーが、アカリのいる窓に間近くまで迫った。

 「完全に元気になったようだな。」

  ショーが、笑顔を浮かべた。

 「あなたが、私を助けてくれたんですか?」

 「今の状況を見れば、俺は見事にお嬢ちゃんを助けた事になるな。」

 「ちょっと、恩返しさせてくれませんか。」

  アカリとショーの会話にアカネが目を覚ました。

  そして、下着姿のままアカリの付近に近づいた。

 「アカリ、大丈夫か?」

  アカネが、アカリに声を掛けた。

  今度は、笑顔を見せながらショーが言う。

 「おい、下着姿のままで人と話していいのか?」

 「べつにいいじゃない、私もショーの真似をしたいのよ。」

 「さすが、俺を好きになったことはあるな。」

 「それは、言わない約束だろ。」

  ショーは、アカネ達に背を向けた。

 「早く服着ろよ。

  ちなみに、朝飯があるから食っていいぜ。」

  ショーは、タバコを口にくわえて仕事場に戻った。

 「ねえ、お姉ちゃん。

  恩返しで、しばらくここで働きましょうよ。」

 「そうだな、私もここにしばらく居たいしな。」

 「ところでさあ。」

  アカリは、アカネに尋ねた。

 「ショーさんと、なにがあったの?」

 「ちょっとな。」

  アカネは、服に着替え外に出る準備をした。

 「大変そうだから、手伝ってくるよ。」

 「朝食は?」

 「手伝う方が先だ。」

  アカネは、ショーの方に向かった。

 (何かあったのかなあ・・・)

  アカリは、アカネにいつしか疑問を持つようになった。

 

  アカネが牧場の畑を耕すのに使っていた桑は、汗が大量に染み込んでいた。

  太陽は、沈みかかっている。

 「ふう。」

  アカネが、笑顔を見せながら手で額の汗を拭く。

  ショーが、アカネに声を掛けた。

 「そろそろ、晩飯にしようぜ!」

   家の中にて・・・。

 「はい、どうぞ。」

  アカリの手料理が食卓に並べられた。

  食欲をそそる匂いが、食卓のある部屋を包み込む。

  ブルマン、ショー、アカネは、息を呑んだ。

 「おいしそうだ。」

  真っ先に、フォーク・ナイフを持ったのはショーだった。

  そして、一口食べた。

 「おいしいぜ。」

  とショーは、アカリの食べ物に手をつけていき、全員もそれにつられていくように

  食事に手をつけていった。

  こうやって、雑談がありながら素敵な夜を過ごす事になるのだが・・・。

  楽しく雑談を交わしているアカリに銃弾が発射された。

  銃弾が、軌道を描きながらアカリに襲いかかった。

  この時は、あの時のアカネでも雑談に夢中で、全然、外の様子を気にしなかった。

  やがて、窓ガラスを破りアカリに銃弾が当たった。

  アカリの顔にかすり傷がにじみ出る。

  やがて、全員が気付いた。

 「なんだ!?」

  そして、今度は激しい銃弾の雨が降り注がれた。

 「伏せろ!!」

  ショーが、食卓を銃弾避けの盾にすると、全員そこに隠れた。

 「何だ!?いったい!?」

  アカネは、分けもわからず銃に弾薬を込める。

  ショーは、壁に飾っているライフルを手に取った。

  ブルマンも、銃に弾薬を込め、戦う準備をする。

 「私は、何をすればいいのでしょうか?」

  アカリは、おどおどしながら弾薬を込めているショーに話しかけた。

 「傷があるから、薬塗っとけ。」

  そして、激しい銃弾の雨が止んだ後、アカネ、ブルマン、ショーはゆっくりと窓に近づいた。

  外には、人数を示す松明が灯されている。

  20、松明が見える。

 「どうする、ショー?」

  アカネが、話しかけた。

 「応戦しかねえじゃねえか!」

  アカネは、松明に向かって二発撃った。

  馬に乗っている一人が落馬するのが見えた。

  また、銃弾の雨が降り注がれた。

 「早く、反撃しようぜ。」

  ショーの呼びかけに、全員が頷く。

  一つの窓から、さっきの銃弾の雨に劣らず、大量に銃弾が相手に向かって撃ち込まれた。

  こうして、11人が銃弾の餌食になった。

  浮き足立った相手達は、牧場から離れて行った。

 「何なんだ、あれは!?」

  アカネの問いかけにショーが首を横に振った。

 「見当も。」

 

  そして、朝を迎えた。

  全員は、家の修理をしていた。

  銃撃戦で損傷を受けたのは、窓二枚と表ドア。

 「あの連中はいったい誰なんですか?」

  アカリが、ドア修理しながらショーに話しかけた。

 「なんでもいいから、早く直せ。」

  ちなみに、アカネとブルマンは町で材料を調達するために出かけている。

  そこに、5人の保安官が牧場の前に立ち止まった。

 「何だ?」

  ショーが、作業を中断した。

  アカリも、持っていた道具を地面に置いた。

 「敵じゃない、保安官だ。」

  ショーが、に静止させた。

  そして、保安官がショーの方に近づいてきた。

 「俺は、町で保安官をしているレフォーズだ。

  ちょっと、ロバート=ショーは町までついてきてもらう。」

 「何用で俺はいかなけれならない?」

 「昨日の暴徒についてだ。」

 「俺もここを襲われた。」

 「町も、襲われた、強盗に。

  まあ、その強盗の首謀者は、お前かもしれないんだ。」

  ショーは、笑った。

 「俺が、首謀者だと?」 

  そして、レフォーズが近くにいる五人の部下達に合図を出した。

 「連れて行け。」

  ショーは、抵抗したが保安官達に捕縛されてしまった。

 「やめて!」

  アカリは、保安官達に説得したがレフォーズに

 「だまれ!」

  頬を殴られ意識を失ってしまった。

 「貴様!!」

  ショーは、保安官達の一瞬の隙を付きレフォーズの首を掴んだ。

  保安官達も、五人がかりでショーを抑える。

 「町に戻ったら、吊るし首にしてやる。」

  レフォードは鬼の形相で睨んだ。

  ショーも、負けずに睨み返した。

  この後ショーは、町に連れて行かれる事になる。

 

  これより後。

  アカネは、ブルマンと共に材料を調達した後、牧場に向かっていた。

  馬の手綱を持ちながらブルマンはアカネに話しかけた。

 「どこか、いきたい所あるか?」

 「ポリビアに行きたい。」

 「ポリビア?」

  ブルマンは、首を傾げた。

 「国の名前だよ、バカ。

  南米にあるらしい。」

 「メキシコは?」

 「疲れるだけで金にならないさ

  今がゴールドラッシュならカルフォルニアに行くだろ 。」

 「しかし、ボリビアって金になるのか?」

 「ああ。金がたんまりあって

  銀に銅やスズがたんまりある。」

 「計画は任せるよ。」

 「楽しい未来が待っている。」

  そして、一行は牧場についた。

  ちょうど、正午だ。

  しかし、牧場には重い空気が流れている感じがする。

  二人は、馬から下りると家に向かった。

 「おい、ショー。」

  アカネは、ショーを呼んだが返事がない。

 「変事ぐらいしろよ。」

  アカネは、直しかけているドアを開けようとしたときに倒れているアカリを発見した。

 「おい、どうした?」

  アカネは、アカネの頬を叩いた。

  アカリが、目を覚ます。

 「ショーさんが連れて行かれた。」

 「何だって!?」

  ブルマンとアカネは、驚きの表情を隠せなかった。

 「誰にやられた!?」

  アカネが、アカリの頬の傷を見ながら言う。

 「保安官に連れて行かれて、私も殴られて気を失ったの。」

  アカネが、呆然と立っているブルマンに話しかけた。

 「町に行こう。」

 

  ところで、連れて行かれたショーは保安官達によって監禁され取り調べを受けていた。

 「俺は、やっていない!」

  ショーは、保安官達に昨日の暴徒の関係について質問されているが

  首を縦に振らなかった。

  怒ったレフォーズは、ショーの腹に蹴りを入れたり

  頬に拳を叩きこんだりという繰り返しが続いていた。

 「釈放してやれよ。」

  入り口のドアに背をもたつかせながらレフォーズに声を掛けたのは

  保安官のリョーガ=ヒビキ(響 良牙)だった。

 「何、言ってやがる!こいつが犯人だ!」

 「たしかに過去の経歴から見ると、ロバート=ショーは容疑者かもしれないが

  決定的な証拠がないじゃないか!

  しかも、過去の誤認事件もすべてお前せいじゃないか!」

  レフォーズが怒鳴り散らした。

 「貴様、誰に食わせてもらってる!」

  これ以上言った所でムダだと分かったリョーガは部屋を出ていった。

 「邪魔者は、消えたな・・・。」

  レフォーズは、不気味な笑顔を見せる。

  しかし、ショーは弱気を見せつけない。

  そこは、昔の若い自分の悪党の姿が脳裏に浮かんだからだろう。

  

  ショーは、多くの見物人の前で処刑されることになった。

  吊るし首である。

  町から村から大勢の人々がおしかけ大変な騒ぎになった。

  レフォーズが、大声で見物人達に言った。

 「ついに、昨日の暴徒の犯人が捕まった!!」

  縄で縛られているショーが保安官達によっていすに上がらされた。

 「この犯人の死によって、この町にも平和が訪れるのです!!」

  そして、ショーの首が縄でくくりつけられた。

  やがて、レフォードが、判決文を懐から取り出し、見物人によう聞こえるごと

  ゆっくり、読み上げた。

 「インディアン達に町を襲うように命令したロバート=ショーには

  見せしめのため、縛り首を申し付ける。」

  レフォードが判決文を読み終わると、今度は回りの見物人が

  保安官達に

 「早く、殺してしまえ!!」

 「そんな奴は、生きている資格なんかねえ!!」

  そして、ショーの乗っているいすが蹴られた。

  椅子が、倒れた。

  ショーが、宙ずりなった。

  ショーは、苦しんでいるせいか必死にもがく。

 「早く、死んじまえ!」

  と言う言葉が保安官と見物人達によってショーに与えられた。

  もがく動作が、小さくなっていった。

  やがて、あたりが静まり返った。

  ロバート=ショーも動かなくなった。

  雨が、降ってきた。

  町に入ったアカネ=テンドーが、この光景を目にするのは二時間後であった。

  リョーガ=ヒビキも、見物人に扮して見てたのだがその後

  バッジを、レフォーズに返し出奔してしまうのである。

 

  アカネ達は、ショーの家に帰っていた。

  時計は、夜中の二時を過ぎていた。

  牧場には、ショーの遺体が埋葬されている。

  外は、いまだ雨の勢いは止まっていない。

  昨日の食卓のにぎわいも、葬式みたいに静まり返っていた。

  アカネは、一人食卓にいる。

  コップに一番高い酒を入れ、一気に飲み干す。

  その光景を、アカリとブルマンは見ていた。

  アカリが、アカネに声を掛けても

 「しばらく、一人にさしてくれ。」

  アカネは、ショーがプロポーズのために歌ってくれた時に使ったギターを持ち出すと

  雨の中、外に外に飛び出し、ショーの遺体が埋葬されている所に向かった。

 「ふぅ。」

  アカネは、ため息を漏らすと近くの切株に腰を下ろした。

  アカリやブルマンは、哀れな目でアカネを見ている。

  この時、アカリはわかったのだ。

 (ショーさんを愛していたのね・・・。)

  アカネは、ギターを弾き始めた。

 「まだ、あなたに歌を歌っていないね・・・。

  今から、あなたに歌を捧げる・・。

  私が、仇を討ってあげる・・。

  そして、静かに眠って・・・。

  ゆっくりと、ぐっすりと・・・。」

  そして、ショーに歌が捧げられた。

 「街中が涙さ 頬をつたう雨に滲むおまえ♪

  転がったアンブレラ 差しかける人もいないから

  そう 素直じゃないって わかってても

  言葉に出せやしないのさ Tenber Rain

  寒さで凍えそうな雨でも 心より暖かい November Rain

  涙 消え去るまで 止まないで♪」

  ここで歌は終わった・・・。

  音が飛びながらも、不器用にギターを弾きながらも

  まだ、歌の続きがあるのだがアカネは止めてしまった。

  そして、雨は悲しみの涙に変わっていた。

  アカネは、ギターを埋葬された場所に置くとびしょ濡れで家に入った。

  そんなアカネに妹のアカリが心配そうに声を掛ける。

 「大丈夫?お姉ちゃん?」

  アカネは、身体を拭きながら言った。

 「大丈夫さ、泣いてスッキリしたぜ。

  ショーのためにも仇を討つつもりだ。」

  ブルマンも、頷く。

 「俺も、アカネに協力するぜ。

  ショーさんの仇をとるのに協力する。」

 「アカリはどうだ?」

  アカネは、アカリに意見を聞いた。

 「もちろん。」

  アカリは、頷く。

 「ちょっと、待てよアカネ。」

  何者かが、家に入ってきた。

  服装からして保安官だ。

  そして、アカネは保安官に銃口を向けた。

 「自ら出向いて来るとはいい度胸じゃない?」

 「俺は、保安官じゃない。

  君の見方だぜ。」

  アカネが、銃をしまった。

 「俺の名はリョーガ=ヒビキ。

  バッジは、今日返してきた。」

  アカネは、リョーガに尋ねた。

 「ショーを殺した犯人は誰だ?」

 「ここの主任保安官レフォーズだ。」

  アカネは、椅子に腰を下ろして言った。

 「明日、保安官を殺しに行くけど、ついて来る?」

  リョーガは、首を横に振った。

 「お前、一人だけでやった方が怪しまれないですむ。」

 

  次の日・・・。

  アカネは、愛銃コルト45の銃口を掃除していた。

  アカリは、声を掛けた。

 「今から町にいってくるんでしょ?」

  アカネは、銃をテーブルの上に置いた。

 「そうだ。」

 「ついて行っちゃダメ?」

  アカネは、首を横に振った。

 「許してくれ、今度ばかりはダメなんだ。」

 「ブルマンさんやリョーガさんにはなんて言えばいい?」

  アカネは、考えた末

 「その場その場で、考えてくれ。」

  そして、アカネは壁に飾ってある手斧を手に持つと馬に乗り牧場を後にした。

  アカリは、手を振りながら無言で見送った。

  無事を祈りながら。

  アカネは、数十分で町につくと保安官事務所に向かった。

  場所はリョーガから聞いている。

  そして、アカネは保安官事務所についた。

  そこは、保安官達が働いているところであるが、今日は仕事上の都合で三人しかいない。

  アカネは、手斧を持った。

  出て来る者を切り殺す為に。

 「じゃ、出かけてくる。」

  保安官が言った。

  アカネが待ち受けているとは知らずに・・・。

  そして、出て来た保安官の腹にアカネの手斧がふかぶかと食い込んだ。

 「!」

  保安官の口からは何もでなかった。

  いや、でなかったより出せなかった方が近い。

  アカネは、さらに力を振り絞って手斧を食い込ませた。

  そして、どす黒い血と共に臓物が飛び出し保安官は倒れた。

  アカネは、死体と化した保安官を踏み越え中へ入った。

  中は、そんなに広くなかったが牢に一人、閉じ込められている。

  お目当ての保安官は、二人いる。

 「お邪魔するよ。」

  アカネは、持っていた手斧を捨て素早く愛銃コルト45の引き金を引いた。

  保安官は、銃を抜く暇もなくアカネの銃によって撃ち倒された。

  もう一人も、銃弾によって銃を弾かれている。

  そして、アカネが地面に落ちている手斧を手にした。

 「ちょっと、聞きたい事がある。」

  アカネは、保安官を椅子に座らせた。

 「私の質問に答えろ。

  答えられなかったら、ペナルティーとして手が手斧によって一本ずつ減っていく事になる。」

  アカネは、銃をなおした。

 「レフォーズはどこだ?」

 「レフォーズ?」

  手斧が、保安官の指を骨ごと切り落とした。

 「ぎゃああー!」

 「早く話せよ。」

  アカネは、手斧を上段に構えた。

 「わかった!話すよ!」

  アカネは、手斧を下ろした。

 「今は、この町にいない。

  でも、明日ここに戻ってくるよ!」

  アカネは、顔を近づけた。

 「本当だな?」

 「ああ。」

 「わかった。」

  アカネは、手斧を保安官の側に置き背中を向けて事務所を去ろうとした。

  しかし、保安官は切り落とされていない左手を使い、そばに置いていた手斧を投げ返した。

 「死ね!!」

  そして、手斧が風を切りながら背を向けているアカネに襲いかかった。

 「!」

  アカネは、素早く振り向くとアカネは素早く銃を抜き、飛んでくる手斧に向かって撃った。

  なんと予想もしなかった事に、弾が手斧を跳ね返し、保安官に戻ってきた。

 「うわああああ!!」

  断末摩の声と共に、保安官の首が切り落とされ事務所内は血のりだらけになった。

  それを見届けたアカネは、銃をしまい事務所を後にした。

 

  アカネは、夕陽が傾きかけた頃に牧場に帰って来た。

  時間は、6:00を指している。

 「いい度胸じゃねえか、不意討ちとはよ。」

  帰ったアカネを迎えたのはリョーガだった。

 「まあな。」

  リョーガは笑いながら、馬に乗っているアカネに近づいた。

 「お前みたいな女、どこでもかしこでもいないぜ。」

  アカネは、不気味な笑みでリョーガに言った。

 「まだまだ、これは復讐の序曲・・・。」

  リョーガは、背筋を凍らせながらその場を後にした。

  そんなリョーガにアカネが

 「今、レフォーズはここにはいない。

  だが二日後、奴は戻ってくる。」

  アカネは、愛銃コルト45を回しながらアカネは、口を開いた。

 「私と一緒に来る?」

 「レフォーズを殺る心がまえはできてるのか?」

 「ああ。」

 「ならば、俺も協力させてもらうぜ。」

 

  ショーの家にて。

  アカネはワインのボトルを食卓をとりまくランプの光にかざした。

  そのボトルは、つい十分前、アカネに空けられたのだ。

  アカネは、時計を見た。

 「そろそろ頃合だな?」

  アカリは全員のグラスを用意しながらアカネに言った。

 「うん、ワインは空気にさらして飲むとうまいよ。」

  そして、アカリは皆のグラスにワインを注いだ。

 「ところでさあ・・・。」

  アカネは、頬杖をつきながらリョーガ、ブルマンに話した。

 「あいつ(レフォーズ)は、明日ここに戻ってくる。」

  リョーガは、アカネの話に耳を傾けながら飲み干したワインを再び注ぎアカネに言った。

 「まあ、人数は30人と考えたほうが良いな。」

 「そうだな。」

  アカリも口を開いた。

 「銃や弾薬はあるの?」

  ブルマンは、アカリに

 「大丈夫さ、ショーさんの銃や弾薬がある。」

  アカリは、安心した。

 「ダイナマイトは?」

  ブルマンは、笑みを浮かべた。

 「昔、ショーさんが使っていたのが残っている。

  いったい、何に使うんだ?」

 「いかくだ。」

  アカネは、それから2時間ぐらい計画を話したところで

  計画に不満なアカリも首わ縦に振った。

  こうして保安官を襲撃する計画ができ、不思議なほどに風がなまぐさく外は静かだった。

 

  次の日・・・。

  四人は、昨夜の計画通り町に来ていた。

  まちの名物、時計搭には朝の七時半を指している。

  頃合を見計ってリョーガとブルマンはショーの愛銃ライフルを手に持ち

  保安官達を狙い撃ち出来る所、すなわち建物の屋上に移ったのだ。

  アカリも、最初は嫌がっていたが、ダイナマイトを銃数個持つと

  リョーガ達とは、隣り合わせの建物の屋上に行くと保安官達を待った。

  これでも、アカリ、リョーガ、ブルマンは上からの援護という役目である。

  大勢の保安官達を相手するのだからこの計画には事欠かせない。  

  なんとアカネは、道の真ん中で愛銃コルト45を手で触れながら保安官達を待った。

 (大丈夫なのかな? お姉ちゃん。)

  姉を心配する妹の姿が、対面している建物にいるブルマンやリョーガの脳裏に浮かんでいた。

 「さあ、来い。」

  アカネは、背伸びをしながら保安官達を待った。

  しばし、沈黙が流れた。

  やがて、時計搭の針が八時をちょうど指した時、どこからといもなく僅かなひづめの音が聞こえた。

 「来たな。」

  アカネは、不気味な笑みを見せた。

  やがて、ひづめの音が大きくなっていく。

  そして、馬に乗った保安官達がアカネ達の前に現れた。

  アカネは、おかまいなしに道の真ん中に立っている。

  先頭の保安官が、アカネに向かって言う。

 「どけ、アマ!」

  しかしアカネは、退く気配がない。

 「退いて欲しかったら、レフォーズを出せ!」

  アカネは、勝てる自信があった。

  なぜなら、保安官達は広く展開していなかったからだ。

  せいぜい、広く展開してても三人であり、列は細長く伸びている。

 (これなら、勝てる・・・!)

  リョーガと、アカリ、ブルアンも、アカネの援護をする準備はできている。

  先頭の保安官がアカネに言う。

 「撃つ準備をしているのか?」

 「お前らが、私の言う事に従ったら、銃を抜かなくていいんだけどな。」

 「そんな、甘っちょろい手で銃を使えるのか?」

 「最低でも、お前らよりも銃を扱える。」

  保安官は、目くじらを立てた。

  そして、銃を抜こうとした。

  しかし、アカネの方がワンランク速くコルク45が火を吹いた。

  そして、銃の音に先頭の馬が驚いたのか、棹立ちになり

  撃たれた先頭の三人の保安官は馬から落馬した。 

  アカネは、すばやく物影に隠れる。

  やがて、後ろの保安官が反撃に出る。

  しかし、リョーガ達は反撃を許さなかった。

  ライフルから放たれる弾丸の雨が、保安官の列を襲った。

  後ろの列にいるレフォーズは、歯軋りした。

 「くそ! ハメられた!」

  レフォーズの横にいる保安官がレフォーズに言った。

 「ここは、物影に隠れた方が・・・!」

  レフォーズの近くにいる保安官の指示で、レフォーズは物影に隠れながら

  反撃の機会を疑った。

  一方、アカリの方は屋上から一個ずつダイナマイトを投げていった。

  アカネも、物影で隠れながら応戦している。

  すでに、アカネの銃によって九人、あの世に行かせている。 

  もう、弱気になっている者は、逃げ出す有り様である。

  列が、壊滅するのも時間の問題だが、アカネは必死に飛来してくる弾を避けながら

  レフォーズを探していた。

 「どこだ・・・?」

  アカネは、なかなか見つけだずにいたが物影から見動きできずにいた。

  しかし、アカネを狙撃しようとする魔の銃口が向けられていた。

  多少の物音があったが、銃の音に消されてしまっている。

  この事に真っ先に気付いたのはアカリだった。

  やがて、アカネに向かって引き金に手を掛けた。

 「危ない! お姉ちゃん!」

  銃の音をもかき消すこの音は、標準をずらしてアカネの頭をかすめる。

  アカネは、とっさに振り向き影に向かって一発撃った。

  二発目を撃とうとしたが弾は、切れてしまった。

  しかし、影は反撃しようとせずうずくまっている。

  戦闘も、終わりを告げ保安官のわずか数人が生き延びた事で残りの二十数は名銃やダイナマイトの

  えじきになっている。

  そして、アカネは、不意討ちをした影に近づいた。

  近づいたアカネを見たのは、レフォーズだった。

 「お前が、レフォーズか?」

 「そうだ。」

 「強盗を放ったのはやっぱりお前か?」

  レフォーズは、かすかに首を縦に振った。

 「なぜ、私を大切にしてくれた人を殺した?」

 「ショーは、俺にとってはやっかいな存在だったからな。」

 「だが今は、おまえが一番やっかいなんだ。」

  ちょうど、アカネが撃った弾丸はレフォーズの胸に命中していた。

  レフォーズは、息が途切れ途切れで話した。

 「そうか、お前の恋人だったのか・・。」

 「お前に生きている資格はもうない。

  災難だと思ってあきらめな。」

  アカネは、レフォーズの銃を手に取りレフォーズの顔に狙いを定めた。

  そして、引き金を引いた。

  一発の銃声と共に、レフォーズの顔はトマトを潰した音と共に肉片がアカネの顔に飛び散った。

  すべてが、終わった・・・。

  アカネは、レフォーズが死んだ事を確めると愛銃コルト45を拾い上げ

  近くにあるベンチに腰を下ろした。

  やがて、アカリ達がアカネの所に集まる。

 「大丈夫? お姉ちゃん。」

  アカネが、口を開いた。

 「かすり傷を負っただけさ。」

  次にブルマンが大笑いしながら言った。

 「アカネ、すごいじゃねえか。見直したぜ。」

 「ざっと、こんなもんさ。」

  リョーガは、ライフルに弾を込めながらアカネに言った。

 「早く戻ろうぜ。人に見られたら面倒だ。」

  町人達は、この光景を見て唖然としている。

  こうして、アカネ=テンドーは荒野に名を轟かせることになった。

 

  再びショーの家・・・。

  すでに、太陽が沈んでいる。

 「これから、どうするんだ?」

  リョーガが、酒を注ぎながらアカネに言った。

 「さあな。」

  アカネはアカリが料理した飯に手をつけず虚空を見つめている。

  なお、アカリは疲れたらしく寝室で寝ている。

  ブルマンは、立ちあがって窓を見つめながら言った。

 「追ってくるぞ、保安官達が・・・。

  今度は、向こうが俺達を殺しに来る。」

  リョーガが、銃口を掃除しながら言った。

 「早く、ここを出よう。」

  アカネは、ショーが愛用していたライフルを手に取り言った。

 「ポリビアに行かないか?」

 

  ある町の市場にアカネ達は向かった。

  すでに牧場から、20キロは歩いているが、そろそろ昼飯時になってきている。

  そこで、アカネは、馬上から通行人に尋ねた。

 「どこか、おいしい店はあるか?」

 「ああ、一番おいしい店しってるよ。」

  七十代の老人に連れられてさびれた広場に店を構える所にやってきた四人。

  老人は、ここの店の主人らしくアカネ達を大歓迎した。

 「おい、馬を頼む。」

  少年は、目を細くしながらアカネを見つめた。

 「どうしたんだい?」

  アカネが少年に話しかけた。

 「いいツヤしている。」

  アカネが笑顔で答える。

 「どうも。」

  少年は、馬を移動させた後、この町の保安所に駆け寄った。

 「ギャレッドさん! お尋ね者の女ガンマンが!」

  ギャレッドは、驚いた表情で言った。

 「何!? 本当か!?」

  その頃アカネは、いつまでたっても料理がこない事に苛立ちを感じていた。

 「おそいぜ! この店はいったい何やってんだ!」

  リョーガは、新聞を読みながらアカネに言った。

 「さっきからグチばっかり。」

  そこに店の主人が料理を持ってきた。

 「この料理は、うちの自慢料理なんだ。

  足りなかったらどんどん頼んでくれ。

  わしが、おごるよ。」

  メキシコ風の料理だ。

  アカネは、ためしに肉をナイフで切ってみたが・・。

 「この肉動いているぜ。」

  と言い、ナイフを地面に叩きつけた。

  リョーガとアカリとブルマンは無言で食事を始めた。

  どこからともなく一発の銃弾がブルマンを襲った。

  ちょうど、心臓を貫通して、肉片が料理に入った。

  ブルマンは、即死した。

  その後、二発発砲されたが弾は外れた。

  アカネ達は、慌てて近くにあるほったて小屋に身を隠した。

  アカネは銃を抜きリョーガに尋ねる。

 「相手は、一人だろ?」

  広場には発砲に驚いた町人が逃げ今は誰もいない。

  アカネは、撃ってきた保安官をものかげから探したが見当たらなかった。

  アカネは弾を込めながらリョーガに言った。

 「相手は、一人だ。」

 「じゃ、試してみろよ。」

  アカネは被っていたハットを広場に向かって投げた。

  無数の銃弾が帽子にハチの巣を作った。

 「思惑【おもわく】が外れたな、アカネ。」

  そうこう言っている間に保安官が、アカネ達に向かって発砲してきた。

  弾は外れ、そくざにアカネは素早く引き金を引き二発の弾が保安官を撃ち倒した。

 「早くここから脱出しないと袋のねずみだぞアカネ。」

 「そうだな。」

  アカネは立ち上がった。

 「裏手に回ろう。」

  三人は、裏手に回った。

  そこに、保安官がいるが五人と少なくこちらを撃つために銃口を向けている。

 「私が援護する!」

  アカネは、怯えているアカリを守るようにリョーガに言うと

  自分は銃で保安官に攻撃した。

  まず、保安官がアカネの背後から撃ってきたが弾は外れ

  アカネは、素早く反転して保安官を撃ち倒すと

  保安官が狙い撃ちしてきたのでアカネは地面に素早く伏せ

  三人の保安官達を撃ち倒した。

  しかし、アカネは、立てなおそうとした瞬間・・・。

  銃声と共にアカネの腕が出血した。

  リョーガは、撃った保安官を殺しアカリはアカネの元へ駆け寄った。

 「大丈夫!? お姉ちゃん!?」

  アカネは、首に巻いていたバンダナを外し

  撃たれた左腕に巻きつけた。

 「ぐずぐずしているヒマはねえ!

  早くここを出よう。」

  リョーガの意見にアカネが

 「私は、ここで保安官を食いとめるからアカリと一緒に逃げてくれ。」

  アカリが涙目でアカネの襟首を掴んだ。

 「何いってんの!? お姉ちゃん!?」

  アカネは、笑みを浮かべた。

 「優しかったお前がこんな事をどこで覚えたんだ?」

  アカリは襟首を離した。

 「実は腕を貫通して、腹も銃弾を受けてしまったんだ。」

  アカリは、アカネの胸の中で泣き出した。

  そんなアカリを見つめながらアカネはリョーガに言った。

 「もう、妹の姿をみるのはこれで最後になりそうだな・・・。」

 「アカリは俺にまかせろ。」

 「ありがとう。」

 「いくぞ、アカリ。」

  アカリは無言のまま馬に乗った。

  アカネは、馬に乗った妹の姿を見るのはこれで最期になったのである。

  アカネは、愛銃コルト45を地面に置きほったて小屋に戻ろうとした。

 「アカネ、待て。」

  リョーガ達が行った後、間を置いてギャレッドがアカネに銃口を向けた。

 「地面に伏せろ。」

  アカネは無言で地面に伏せる。

 「そうしとけよ。」

  しかし、アカネは何を思ったのか痛みをこらえて逃げ出そうとしたのである

  そして、ギャレッドの銃がアカネに向かって火を吹いた。

  アカネは、仰向けで倒れた。

  ギャレッドは、落ちていたアカネの銃を拾った。

 「・・・。」

  アカネにも、ようやく人生の静脈が訪れたのである。

  時に十六歳・・・。

  顔には笑みが浮かんでいた。

 

 完

 


解説

 おもしろかったですか?

 ごくフツーのウエスタンになってしまいました・・・。

 そんな僕の小説を読んでくれてありがとうございます。

 またいろいろ企画に参加する予定なので皆様よろしくお願いします。


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