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森の奥の魔女
SIS/文
じょん/画


 ――さぁ、いらっしゃい……。

 ――お前は他の連中とは違う…………。

 ――お前にぴったりの世界がここにはある………………。

 

 「最近、おんぷちゃん、付き合い悪ぅなったよなぁ。特に」

 「んん〜? 仕方ないって! 芸能界とかってぇ、忙しいうちが花ってヤツなんじゃないのっ?」

 「……でも。なんかちょっと違う感じが……」

 

  新月。晴れた夜に満天の星空。箒に乗った紫の人影が、スっと夜空を横切る。

 「この胸騒ぎ……」

  その少女は瀬川おんぷ。芸能界きってのチャイドルである傍ら、魔女見習いの一人である。

 「なにが不安なんだろう……」

  明るさと理知的な魅力を兼ね備え、自信に満ち溢れているはずのこの少女。それが今、怯えと言っていいほどに青ざめている。

 「何かが……わたしを……」

  自分の内側から湧き上がるような不安。言いようもない理由もない絶対的な黒いものが、彼女を急き立てている。

  こんなことは初めてだった。心を鷲掴みされるような、どこにも逃げ場がないような巨大な、そして漠然とした不安。

 ――初めて……? あれ……前にもあったような……。

  思い出せない。その正体も分からないまま、おんぷは飛び出した。行く当てもなく、ましてや何をしたらよいのか分からないまま。

  しかし、迷わなかった。一筋の道を行くかのように、おんぷは「そこ」にたどり着く。

 「ここ……?」

  どうやって来たのかも、どんな道をたどって来たのかも分からない。しかし、いつもたどり着く。

  小さな胸の中で、鼓動が高鳴る。あたかも警鐘が鳴り響くかのように。

  ゴォッ……と暗闇の中で風が走り抜ける。周りの枯れた木々がガサガサと一斉にざわめく。

 「……こくん」

  のどが小さく鳴る。恐怖とも何ともつかない何かが彼女を押し潰そうとしている。芯まで冷え切り震えが生まれる。

 ――こっち。

  いつもの声が聞こえる。それは今のおんぷに与えられた一筋の光。迷うよりも前に、すがるように歩みを始める。

  その声は、森の奥へおんぷを誘う。呪いの森の奥へ。

 

 

 『よく来たね、おんぷ……』

  呪いの森の最深部で「影」の声が響き渡る。声はおんぷの心にも直接響き、それだけですべてを支配してしまう。

 「……わたし……あの……」

  逆らえない。足がずるずると「影」に近づいている。おんぷの五感が精一杯の警報を鳴らしている。でも足は止まらない。

  この畏怖の根源が「恐れ」であることは、頭の中ではおんぷにも分かっていた。しかし、未知の相手への恐怖、それも圧倒的な相手には何もかも萎縮してしまう。

  鼓動はさらに早くなり、息も荒くなる。

 「ハぁ……ハぁ……」

 『もう興奮しているのかい……?』

  その「恐れ」は、相手に対するものだけではなかった。それはおんぷ自身の変化。自分が何かに影響を受けている。

 「あなたは……あなたは一体誰なの……? わたしに何を……」

  「影」がおんぷに纏わりはじめる。黒い霧がおんぷの周りを渦巻く。

 「あなたは……はぁはぁ……あなたは先々代の女王様じゃない……だれ……?」

  触れるか触れないかのようなザワつく感触。肌を撫でるような刺激は、幼いおんぷの体に官能の刺激を刻んでいく。

 「や……やだ」

 『もういい加減、慣れたらどうなんだい? 瀬川おんぷ……』

  ズキンっと胸を打つ。

 ――そう。わたしは瀬川おんぷ。

  瞳から力が抜け、肌も顔も赤らんでいく。名前を呼びかけられたとき、おんぷのすべてがこの闇に取り込まれていた。

 ――「この人」の前では無力なわたし……。

  ポロンが手からこぼれ落ちる。抵抗は無駄。崩れるように膝をつく。

 『さあ、おんぷ』

 「……はい」

 『今日はどんな物語を語ってもらいたい……?』

 

 

 ***

 

 

  政治家だか実業家だか分からなかったけど、とにかくこの業界に大きい権限を持つ人だってことは聞いたことがある。少なくとも瀬川おんぷにとっては、それで十分だった。その人がこのドアの向こう、スウィートルームで彼女を待っている。

  この業界にいるのも長いし、子供と言われないような年齢にもなったおんぷには、さすがにコレがどういうことなのか分かってしまう。ただ現実に、しかも自分の身に降りかかってくるなんて、思ってもみなかった。

 「誰だ」

 「瀬川おんぷです……。あの……来ました」

  部屋にいたSPに紹介状を渡し、簡単に持ち物検査や確認のやり取りをすると、すぐにもその「おエライさん」と二人っきりになった。

 「はじめまして、おんぷちゃん。いつも見ていたんだよ、キミのことを」

 「えと、それは……。ありがとうございます」

 ――知ったことじゃないわ。

 「そのブレザーもかわいいねぇ。学校の制服かい?」

 「はい……学校帰りに来たので」

  ウソである。このオトコが制服に興味があるからと、わざわざ学校の制服を着てくるよう指示されていたのだ。

 ――わたしは、こんなこと決してやらないんだから……。

  おんぷは自分の仕事に絶対の自信を持っていた。それは彼女が自分で身につけてきた実力によって裏付けされているものであり、芸能人としての彼女の評価も、すべて正当に汗水で稼いだものだったからだ。決して安易に「買った」ものではない。

 ――こんなエロ中年の気を惹くために、わざわざ学校の制服を着てくることなんてっ……。

  今のおんぷは、今までの努力を踏みにじる行為に手を染めている。ましてやこれから、努力どころかおんぷそのものをも穢していくことになるかも知れない。

 「ココに来て、なにをするのか知っているね?」

 「……あの」

  ヘヘっ、とニヤついた中年男には邪な熱気が体全体に溢れていた。

 「では早速……」

  オトコはおんぷの小さな手を掴むと、グイっと自分のほうへ引き寄せる。

 「きゃっ」

 「んふふ……いい匂いだ……」

  抱き寄せたおんぷの髪の毛に顔を埋めて、匂いを嗅ぐ。おんぷにとっては、汚らわしいものが自分の髪を荒らしているようにしか感じられない。

  オトコはおんぷの腰を片手でつかみ強く抱え込むと、もう片方の手でブレザーの中に手を差し入れ、シャツの上から胸を蹂躙する。

 「やだっ! 放してぇっ!!」

 「かわいいなぁ、おんぷちゃん……」

  おんぷの小さい体を抱え込んだまま、一緒に豪奢なベッドに倒れこむ。二人の体に比して巨大な寝台は、そんな衝撃もやんわりと受け止める。

  必死になって逃げようとしても、オトコの大柄な体がおんぷ全体に覆いかぶさって、手足も満足に動かせない。オトコはすでに興奮していたのだろう。その体から発散される汗というか、湿った異臭のこもった暑苦しさが、彼女の顔といい体といい押し付けられる。

 「ぷぁっ、かはぁ!」

  息継ぎするように中年の肉塊から顔だけ抜け出すとオトコの顔が密着し、熱く臭い息がおんぷの顔に吹きかかる。アルコールとタバコと中年オトコの独特の汗の、ムっとした臭い。

 ――クサいっ!

 「ハぁはぁ……おんぷちゃんの体は小っちゃいなぁ……」

 「ヤダ、ヤダ、やだやだやだあああぁぁっ!!」

  顎の下あたり、首筋からうなじに這うように舐めるオトコの舌。たっぷりと乗った唾液は、おんぷの顔にネバついて残る。

  おんぷはオトコの顔を少しでも遠ざけようと、ヒジで押し戻そうとする。その抵抗力が、そして体全体を圧迫していたオトコの体の重みが、ふと軽くなった。

 「……え?」

  と、思ったのもつかの間。

  ブツぃっ……!

 「きゃああっっ!」

  ボタンが弾けとび、ブレザーの下のシャツが力ずくで開かれる。白い清純そうなブラの上から脂ぎったオトコの手のひらが、おんぷの胸を掴むようにいじくり回す。

 「ははははぁ……おんぷちゃんのブラぁ……。Cぐらいかなぁ?」

 「さわるなぁっ、この変態ぃっ!」

  部屋に反射するくらいの大声を叫ぶ。一瞬の静けさ。おんぷ自身をも驚かせるようなその声に、オトコの猛攻はピタと止まる。

 「……変態って私のことか……?」

 「え……? あ、あの……」

  突然、オトコの声が変わったかと思ったら、おんぷの胸を蹂躙していた手が上がると、ビシっ!と顔に殴りつけられる。

 「かふっ……!」

 「答えろよ、私が変態だってっ? ええっ!?」

 「ひっ……かっ……いたっ!」

  ビシっ!、バシっ!、ビシっ!……。何度も何度もおんぷは殴られる。それが平手であっても力に容赦はない。

 「いたいっ……やめてっ! やめてよぅっ! くふっ……! 顔はっ……」

 「顔っ? 貴様の代わりなんて誰でもいいんだよっ、芸能界はな! イラつかせるなっ!」

  嫌悪の対象であった中年男が凶暴性を露わにし、恐怖の対象へと変貌する。暴力の嵐。無数の痛撃。それはおんぷに誰も助けてくれないことを刻み込み、追い詰めていく。瞳から涙が溢れる。

  でも必死に耐える。何発も、何発も殴られても。キっと睨みつけて。そんな必死な怒りに満ちたおんぷの顔は、決してテレビで見ることが無い、おんぷの素の怒り。そんな表情は、幼さを残して美しかった。

 「反抗的な目だね、おんぷちゃん。気に入ったよ……」

  手を止める、そのオトコ。少女の気高さに思わずゾクりとしたのだ。

 「その力強い瞳が崩れていくところが見たいなぁ……ゾクゾクする」

  半裸のおんぷに馬乗りになったまま、オトコは注射器を持ち出す。すでに液体に満たされているそれは、軽く押すと数滴ほどぴゅっと飛び出す。

  おんぷの中に生まれた怒りは、その注射器の登場によって急速にしぼみ、それどころか一瞬にして青ざめる。

 「……な、なによ、それ」

  オトコは何も言わず、おんぷのシャツを大きく裂いて、腕を無理やり引っ張り出す。露わになった手触りのよいプニっとした白い腕に、注射器の針が冷たく触れる。

  得体の知れない薬と注射器――理性が底なしの恐怖を誘発し、少女の芯を奥底まで冷えさせる。

 「ゴメンなさい、ゴメンなさいっ! もう、もう言わないからぁっ……」

  プライドと自信に満ち溢れていたおんぷ。それが崩れた。今の彼女は、涙目で懇願するだけの女の子に過ぎない。

 「お願い、そんなの入れないでっ!……」

 「ダメ」

  プっと針が肌に突き立てられたかと思うと、些かの遠慮もなく液体が彼女の体内に注入される。

 「イ、イヤぁぁっ! ……ぁ、ぁ」

  悲鳴も最後まで続かなかった。クラっと脳が揺さぶられたかのように、意識が混濁し始める。

 「アルコールだよ。血管に直接打たしてもらった……どうだい、グラグラくるだろう?」

 「……あ……あれ……」

  オトコの陵辱に抵抗していた手足から力が抜ける。顔も肌も赤く火照り、呼吸も動悸も荒くなる。吐息も熱い。急激に酔いが回ったおんぷにオトコが再び密着する。

 「ようやく大人しくなったねぇ、おんぷちゃん」

 「ゃ……ゃぁ……」

  オトコは手際よく、スカートを脱がしていく。ブラも捲りあげられ、桜色の先端と共に小さい丘のような胸が外気に触れる。

 「小ぶりだねぇ、おんぷちゃんのおっぱい……」

  ナメクジのようにヌラヌラと這うオトコの舌が、おんぷの肌を濡らしていく。胸のあたりは特に丹念に塗りこんでいく。

 「ひゃはぅっ?」

 「乳首が弱いのかぁ……んちゅぅ」

 「ひああっ!」

  その先端に舌がベットリと舐めたと思ったら、オトコの唇で摘まれる。鈍くなった意識の中、その刺激だけが鋭くおんぷを揺るがす。

  過剰なまでに大量の唾液はおんぷの胸から腹まで、露出した肌をトロつかせる。舌がゆっくりとおんぷの体を濡らしながら南下し、ブラと同じような白いショーツにたどり着く。

 「ここもおんぷちゃんの匂いでいっぱいだね」

 「そんな……ぁぁ……」

  オトコの片手はおんぷの太ももを抱え込み、右手は胸をまさぐり続ける。目の前に開かれたおんぷの股間に、オトコは布地の上からむしゃぶりつく。

 「ひゃはああっ!」

  その場所の刺激。体の中心へ直接届くようなその刺激は、小用を足すときのあの感覚にも似ていながら、ぜんぜん違っている。

 「汚いっ……ヤメっ……ああっ!」

 「おんぷちゃんの汚いところかぁ……」

  オトコの舌はさらに激しくなる。おんぷの酔いはさらに回り、ぐるぐる回る頭の中にその性的な感覚だけは鋭く伝わってくる。「女」としての感覚がおんぷに芽生えてくる。

  唾液塗れになったショーツからオトコが離れたときには、おんぷの体はすでに汗と熱気を発するようになっていた。紅潮した顔に霞がかかった瞳。無理やり欲情を掘り起こされた少女は息も絶え絶えになっていた。

  着乱れたブレザーと左右に開かれた薄手のシャツ。ブラはたくし上げられ露出した胸。スカートも外されて、濡れ濡れとなった下着。そして何よりも淫らに「女」として開発されようと赤く熱を持った体。

  清純派アイドルである瀬川おんぷの乱れ姿。その肢体はどんな男でも淫らな欲情をかきたてられるだろう。

 「さぁて、おんぷちゃんも私も気持ちよくなろうねぇ……」

  いつの間にやら裸になったオトコはローションをおんぷの体に塗りたくると、中年太りが始まった肉体をおんぷに密着させる。ぬちゃぬちゃと液体がオトコと少女の肌に絡まり、滑らかにしていく。

 「ぁぁぁ……ゃぁぁ……」

 「おおおお……。気持ちいいかい? おんぷちゃん……?」

  少女の小さい背中に手を回し、顔は小さい胸に押し付けておんぷを貪るオトコ。酔いが完全に回ったのか、次々に導かれる「女」への快楽に翻弄されているのか、おんぷはロクに抵抗できない。

 「おんぷちゃんの唇はどんな味かなぁ?」

 「んぅ……んぐっ……ぷちゅ……ぅ」

  キスというよりも唇を蹂躙して、嘗め回されている。口の中も外も男の唾液塗れになる。

 「いいよぉ、おんぷちゃん……ミルクのような味だぁぁ……」

  オトコの唾液の糸……を通り越して垂れている濃い粘液が、小さい顔を陵辱していく。おんぷ自身もよだれを唇の端から漏れていたが、ふき取る気力もなかった。

 「ハぁ……ぷハぁ……ハぁぁぁ……」

 ――こんなの……なんで……ヤダぁ……。

  自分の身に降りかかった災難に対し、思考も逃避していた。汚らわしい陵辱。淫らな性感。自分の体に沸き起こる「女」。抵抗も諦めも無い。ただ人形となって蹂躙されるがままになってしまう。

  オトコはおんぷの体で自分が一方的に気持ちよくなれれば良かったのだろう。しばらく玩んでいたが、股間の疼きがおんぷへの放出を欲求し始めていた。

 「さて……おんぷちゃんにも忘れられないくらいの快感を教えてあげよう」

  麻薬。水で溶いた悪魔の薬を小さい浣腸器に溜め込む。オトコの顔には異常の興奮が広がっている。それは倫理を犯した陵辱を楽しみとする異常者のソレであった。

 「さぁ、お股を開こうねぇ……」

  無抵抗のおんぷはトロンとした表情のまま、オトコのされるがまま足を開かせられる。ショーツもすでに取り除かれ、淡い茂みのそこはオトコのトロみのついた唾液でいっぱいに滴っていた。

 「ぁ……ぁ……なに……」

 「おんぷちゃんも気持ちよくなれるクスリ。もっともっと気持ちよくなれるよ……」

  そこに浣腸器を突き刺す。ぴゅ……と注ぎ込まれる冷たい感触。少女に後戻りが効かない魔の薬が注入される。

 「くぁ……」

 「後ろもだよ」

  同じように尻にも液体が注がれる。

 「ひあっ……」

  理性もドロドロに溶かされた頭の中で、警報が鳴り響いている。しかし、おんぷの小さい体は、もう動けないくらいにまで蹂躙されていた。そして。

 「さぁ。入るよぉ……」

  オトコの体がのしかかる。がっちりと押さえ込まれたおんぷは身動きできないまま、為すがままにオトコに侵入されていく。

 「くあぁっ……あああっ!」

  瞬間、意識がクリアになる。嫌悪も倫理も理性も一斉におんぷの中で蘇る。

 「ヤダぁ! イタい、ヤメテええっっ!!」

 「ほほぉ……キツいよぉ……いいなぁ」

  必死のおんぷの抵抗も、力ないばかりでオトコの挿入の妨げにならない。さらに奥へ奥へと進んでいく。

  ブツっ……。

  おんぷの中で何かが切れた。

 「イタぃっ……!」

  それだけしか言えなかった。麻薬のせいでそこだけ鋭敏となっているため、破れた痛撃は呼吸を止めるほどの激痛だった。

 「かっ……かはっ……」

  涙も止まるくらいの痛さ。大人になる行為としては異常なそれが、瀬川おんぷの初めてであった。血がぽたぽたと垂れる。

 「最初は痛いけど……ぉ、ぉ、ぉ、ぉぉぉ」

  オトコが動き出す。ベッドとオトコに挟まれて圧迫されているおんぷは逃げることもできないまま、内側から連続する激痛に身をさらす。

 「ぐっ……かっ……が……」

 「お、お、お、おおお……」

  早くなる蠢動。オトコもそのときが近い。

 「お、お、お、おぅ!」

 「い……キひぃっ……ヤぁっっ!」

  体内での爆発。体の中でなにか弾けたような感触。激しい痛みの中、その異様な感覚がおんぷを刻んでいく……。

 ――あぁ……なに……コレ……。

  オトコのイチモツが小柄な体から抜け出ると、ビっと残りの濃い汁が飛び出てブレザーや胸に付着する。

 「はぁ……はぁ……はぁぁぁぁ……」

  激しい痛みの嵐から、おんぷはようやく解放された。しかし、アルコールによる酔いはまだ残り、刻み込まれた痛みも性感も彼女の体の内外に残留している。余韻にボォっとしている。吐息も熱く、荒い。

  オトコの方はよほど気持ちよかったのだろう。さすがに軽く脱力していたが、次のコトも考えていた。

 「少し休むけど、キミはまだ頑張れるよね?」

 「……ぇ?」

 

 

  びぃぃぃ……。

 「ん……んふっ……んぐぅっ……」

  鈍いモーター音が部屋に鳴り響く。シャツとブラが残ったまま後ろ手に縛られたおんぷは、足首を左右に開くように固定され、ローターを前後に入れられていた。その格好になって、何十分経ったのだろう。

  小刻みで微々たる振動は、貫かれたキズにジクジクと痛みを与えていたが、それよりも未知の快感をおんぷにコクコクと注ぎ込む。特に尻に異物を入れられるコトなど、おんぷにとっては倫理以前のなにか人間的な掟に反するようなことだった。それが淫らな器具を挿入され、奥に届くような振動を与えている。

  口には轡を銜えさせられて、口内に溜まる唾液はタラタラと垂れ落ちる。

 「ふぅー……。んふぅぅー……」

  先ほどの痛みに耐えていた息の荒さではない。別種の、艶が含まれた吐息。先ほどまで受けていた加虐の余韻に加え、粘膜から吸収されたクスリが少女の体を侵食し、おんぷの体は中から切なさも疼きも越えて燃えるように求めている。それがローターによる責めによって結びついたとき、淫らな熱が一気に広まっていた。

  熱いばかりの吐息。内側の疼き。汚辱に晒される背徳……。

  太ももはもじもじと擦り合わさり、そこはヌトつくように濡れこぼれていた。エグられた痛みも治まっていくと、逆に快楽の炎となっておんぷを中から責めていく。

  今、瀬川おんぷという少女は、淫猥に目覚め始めている。

 「いい表情だよ、おんぷちゃん。コレが見たかったんだよ」

 「ん〜……ふぅ〜……」

 「小さい体いっぱいに欲情して……イヤらしいなぁ」

  朦朧とした意識は快楽に犯されている。禁断の悦楽は精神をも侵食する。瞳も快楽に蕩けている。疼きは刻一刻と大きくなり、耐えられなくなる。理性を上回る肉欲。

  おんぷのそんな様子は、オトコを悦ばす材料だった。

 「さぁって、何して遊ぼうかおんぷちゃん?」

 「ぷは……ほごっ……」

  轡を外されると、大量の唾液がこぼれ落ちる。息も大きく吐かれる。

 「かっ……ぁぁ……」

  両手の拘束も外されると、おんぷの手はもじもじと自分の股間に誘われる。

 「見せてよ、おんぷちゃんの恥ずかしい姿を……」

  じゅ……とソコが指先に触れると、ビクンっと背筋を貫くような強烈な刺激が走る。

 「きゃはぁっ!」

  ローターの上からおんぷの指先を、オトコの手がさらに押さえつける。

 「動かすんだよ、そのまま」

  刺激を求めるまま、指が動く。白魚のような細い指が、淫らな刺激を求めて蠢く。おんぷも自ら快楽を求めている。

 「あぁっ、はあっ! やぁぁ!」

  オトコの目の前で、喘ぎも大きくその姿はあられもない。麻薬に犯された瀬川おんぷという存在は、穢され欲望に染まった天使であった。

 「ああぁっ、きひっ……イイっ!」

  動かすごとに湧き起こる情欲。さらに求めるように、指は奥へ、激しく動く。掻き混ぜられてぐじゅぐじゅと猥雑な音が部屋にくぐもる。

  快楽に溺れるおんぷ。数時間前の清らかさ・気強さは払拭され、淫ら色の表情は、今までに無いおんぷだった。

  オトコはしばらくおんぷの自慰を楽しんでいたが、ふとその手を掴み、中断させる。

 「きゃ……ぁ……」

  突然、不完全な状態で悦楽を中断されたおんぷ。その小さい手にはべっとりとネバついた液体でいっぱいだった。

 「ふふ……すっかりエッチになって。満足したかい?」

  満足なわけは無い。肉体の熱も欲求も止まらない。もうローターだけの愛撫では耐え切れないくらいに溢れている。表情も瞳も蕩けきって快楽に潤んでいる。

 「う……あの……ぁ……」

 「また、ココに欲しいのかい?」

  オトコの指がじゅくっとローターごと貫く。

 「ひぎぃっ!」

  指が離れると、反動でそこの欲求が暴走する。すべてを売りつくしても、そこが欲しい……。

 「お……お願い、します……」

 「何をだい?」

 「入れて……ここに……」

  男の体にもたれかかる、おんぷの小さい体。クスリに汚された淫らな血はおんぷの体中に溶け込んでいた。その血が、おんぷを操る。

 「ならば、自分でやってみて」

 「……はぃ」

  オトコはベッドに腰掛けている。その重心には、オトコの淫猥の象徴が醜くそそり立っている。ソレを見つめるおんぷの瞳には怯えが浮かんでいる。ただ、それを上回る期待と胸に湧き上がる欲求にドキドキしていた。

 ――あんなイヤらしいものが、わたしの中に入ってくるの……。

  ツバをコクンと飲み込む。

 ――さっきの……エグるような貫きが……。

  また味わえるのだ。と、思うと疼きがいっそう大きくなる。もう止まらない。オトコの胸あたりに体重を預け、自ら手でイチモツを支えて、自分の腰を、ソコを誘導する。前に刺さっているローターを取り外し、にちゅ……と秘部とモノが触れる。

 「あっ……。ハぁぁぁぁぁ……」

  大きなため息。それは快楽から出てくる心からのため息。ずぶずぶと沈んでいくと、なにもかもソレに溶け崩れていく。

 「あ……あ、あ、あ……」

  少しずつ少しずつ侵入してくるオトコ。迎えるようにおんぷの襞もざわめく。クスリによって蕩かされる一方で、鋭敏に快楽を伝え、襞の一枚一枚の刺激までも味わうように、その動きが伝わってくる。

 「あぁっ……ひぃっ! 奥っ……」

  ズシンと奥にまで届く。それは新たな快楽を開発されたように、おんぷが全てを受け入れる。

 「んひぃっ! イイっ、いいよぅっ! 気持ちいいのっ!!」

 「お、おう、おうっ、おうっ……」

  オトコも耐え切れなくなったのか、激しく動き出す。おんぷも歓喜で応える。おんぷはオトコの肩に手を回し体を密着し、オトコはそんなおんぷの唇を貪るように奪う。

 「んむぅ……ぴちゅ、くちゅ」

 「むぐぅ……くちゅ、くちゃぁ」

  唾液が混ざり合い、喉にコクコクと流れ込む。舌も絡み合い、互いの味を味わいつくす。

  まだ尻穴に刺さったままのローターのスイッチを最強に入れる。そのままオトコの指がローターを穴の奥に押し込む。

 「んんっ……あぎぃっ……」

 「ココも……はぁはぁ……気持ちよくなるんだよ……」

  後ろも前も中から挟むように責め立てられ、おんぷはもう何もかも考えられなかった。ただただ、この快感を貪りつくす。自分ですすんで快楽を求め、肉体を開発していく。

  そして、その終末も近づいてくる。先ほどとは違う絶頂がすぐソコまで来ている。

 「あ、あああっ、もうダメっ……もうっ……」

 「お、お、お、お、おお、おおおお!」

  びゅくっ!

 「ああああああああっ…………!」

  中で、体の中心線で注ぎ込まれた液体。おんぷはそれを悦びでもって受け入れる。

 ――入って……くるよぅ……。

  襞も、膣の収縮も、その液体を奥へ流し込むのを助けるように、自在に動く。

  自分の体がこんなになる……おんぷは絶頂と、その余韻の中で初めて知った。

 「今度はまだ続けられるよ……」

 「え? ……あひぃっ! ひぃぃっ……!」

  再び始まる中年男と年端の行かない少女の穢れた情事。オトコの欲望を受け止めるおんぷには、もうためらいは無かった。

 

 

 「んぐ……ぷちゅ、ぴちゅ、うむん……」

  おんぷはオトコのモノを一心不乱に舐め続けていた。自分の体液と唾液、オトコの汁でヌラヌラと照り輝くオトコのペニス。

  舐め尽すように舐めていると、胸の鼓動も大きくなりドキドキしてくる。官能のときめき。淫らな期待。

 「ちゅぷ、ぷあっ……」

 「お、出るっ……」

  オトコの手によって奉仕が中断させられると、おんぷの小さな口からニゅぷと巨大なイチモツが抜かれる。その瞬間、ピっ……と濃い白濁液がおんぷの顔に引っかかるように汚していく。

 「あ……ぁぁぁ……」

 「おんぷちゃんの大好物をあげるからねぇ……」

  白い粉が放出後のペニスに塗される。それを見つめるおんぷの瞳には淫らな悦びの光が輝き始める。

  清楚だった国民的アイドル・瀬川おんぷ。あれから何回もオトコに貫かれる悦びを教え込まれた今のおんぷは、クスリと淫欲の虜になっていた。

 「あぁ……ありがとうございますぅ……」

  再び舌を這わせて、粉を舐めとるようにペニスを濡らしていく。その悦びに満ち溢れ精液で濡れた少女の表情は、今までに無いくらい妖しい微笑に包まれていた。

 

 ***

 

 「ハァ……ハァ……あああぁぁぁぁっ!」

  くて、と倒れこむ。度重なる絶頂に、おんぷは蕩けきっている。小さな顔は欲情に満ちて赤く熱に浮き、よだれがスジを作って垂れ落ちる。その可愛らしい口から熱い吐息があふれ、中指と薬指が唾液に絡んでくちゅくちゅと音を鳴らしていた。もう片手は股間に伸びて、彼女自身の淫欲の証である粘り気の液体で濡れたパンツの中で貪るように動いている。

 『どうだ? これが人間界の欲望。淫らに汚れきっている視線が、お前に注ぎ込まれているのだ』

 「ああ……はぁ……」

 『今までもお前にいろいろな黒い欲望を見せてやった。すべてがロクでもない代物だ』

  何回も、何回も。おんぷは人間の邪な欲望を、この呪いの森で見せ付けられていた。それは醜い淫猥さが詰まったものばかりで、感触も味も伴って幼いおんぷを揺さぶってきた。

  AVに出演させられる瀬川おんぷ。ストーカーにレイプさせる瀬川おんぷ。乱交に悦びを見出した瀬川おんぷ……。

  どれもどれも、芸能人・瀬川おんぷ。ファインダー越しの表面だけの彼女の姿を、自分勝手の妄想と己の欲望で一方的に染め上げたものばかり。

  それらを体験させられたおんぷは、心身ともにボロボロに磨り減っていた。そして闇の快楽に溺れつつある。

 『こんな人間界も、そしてそれを許容している魔女界も、淘汰すべき』

 『お前に力を与えてやる……。お前が力を得れば、魔女界も人間界も統べることができる、絶大な力を』

 『お前こそ、本当の魔女にふさわしい……。人々にとって、力強く、恐ろしく、淫らな、暗黒の存在。絶対的な支配者……』

 「あぁ……ぁぁ……」

  おんぷの心の中で暗黒の雲がぐるぐると渦巻いている。まるで全世界のドロドロとした憎悪や欲望が集合体となったように、具現化した塊となって、おんぷ一人を蝕んでいく。

 『お前は虐げる悦びを知っている……』

  ズキンっとおんぷを貫く。

 『見下すことに僅かでも快感を感じていたのだろう? 熾烈な競争に勝ち残ってきたとき、どこかにそれを感じていたはず』

 『心のどこかで、お友達をも見下していた。違う?』

 ――そんな……わたし、みんなを……そんな目で……。

  まとわりついていた闇がおんぷと同化する。せわしくなる指の淫らな動き。指摘されたことから逃避するように、悦楽を自ら貪っている。

 「はぁ……はぁ……はぁぁぁ……」

  闇の魅力。魔のささやき。心が穢された今、おんぷはその誘いに抗いきれなくなっていた。そして受け入れることに悦びまで感じている。

 『だからこそ、お前を選んだ』

 『受け入れなさい……この力を……』

 「ああっ……! わたしは…………」

 

 

 ***

 

  闇の奥で、女が喘いでいる。

 「くふ……んう……あんっ……」

  呪いの森の勢力は加速度的に拡大していた。

  それはすでに先々代の女王一人の怨念だけではなく、他の負の感情も全て引き寄せて、暗黒そのものの空間と化していたのだ。ただ、今までは中心となるべき支柱が無く、図体がでかいだけで力を持て余している存在に過ぎなかった。

  それが今。森の奥で新たな指導者が生まれていた。その絶対的な暗黒の力によって、魔女界を覆い尽くすことも人間界に侵出することも近い日となっていた。

 「んふふ……上手よ……そこ……ん」

  呪いの森の魔女と化した瀬川おんぷ。露出が強調された妖しげな黒い革の衣装を身にまとい、淫蕩な笑みを浮かべながら無数の魔物から愛撫を受けて悦楽を味わっている。

  そこにはかつての瀬川おんぷはいない。闇に堕ち妖艶な色香を放つ、暗黒の女王がいるだけだった。

 


解説

 こんばんは、SISです。

 えっと自分でも書くことになるとはまったく思ってもいなかった「おジャ魔女」です。瀬川おんぷです。

「ティアリングサーガを書かないで、ナニ別のを書いてやがんだ」とか文句が来たりして……って、そこまでの作品でもないですが(笑)。

 でも「懐にしまってあるFE紋章のカチュアものを早く書きやがれっ」とか言ってくる人はいますが。ええ、誰とは言いませんが。ねぇ、心当たりのある方(笑)?

 実は別のHPの絵師の方と交換条件を交わしまして。こちらに掲載させて頂いている自分のティアサガ小説「奥の花は手折られて」の挿絵をお願いする代わりに、おんぷたんの小説を書くということでして。

 いや、ホントにもうエッチなイラストを描いていただきました。ティアサガだけではなく、この小説の挿絵まで。

 この場をお借りして、じょんさま、本当にありがとうございます。

 また感想や指摘なども、できたらよろしくお願いいたします。

 それでは。

 


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