眠り姫は、王子のキスで目を覚ます
眠り姫
「今度の学園祭で、うちのクラスは劇をやることになりました。演目は『眠り姫』です」
1ヶ月後にやる学園祭。
中学最後だから、もの凄く期待してたのに・・・・・・・
なんだ、劇かYo!
・・・・・・・・・・・・・やるなら絶対王子役だな。
「配役を決めるので席順にくじを引きに着てください」
最後の自分の番が来て、ダルい体を起こしクジの箱に手を突っ込んで4つ折のちいさい紙を1枚とる。
「じゃ、取ったから全員開けよ。文句と交換はナシだよ?」
一番最後のあたしの号令で、みんなが一斉に中を開けだす。
あたしの紙には、真ん中に王子と書かれてあった。
「やたっ!あたし王子!!は?」
「私、裏方。照明だってさ。」
ペラリとあたしの前に照明と書かれた紙を見せた。
残念・・・・・・オーロラ姫やってくれりゃよかったのに。
「え〜・・・ちゃん王子なの〜?」
突然、隣から声が聞こえた。
「何よジロー。あたしが王子じゃ不満?」
「俺が王子やりたかったC−!」
「残念ね。もう、決まっちゃったもん」
王子と書かれた白い紙を、ジローの前にヒラヒラさせる。
「ねぇ、ジロー君は何役なの?」
あたしの後ろから、がヒョコッと顔を出した。
「ん〜・・オーロラ姫ぇ〜」
え・・・・・・・・
って事はあたしの相手役・・・・・・・・・
「・・・・マ、マジで?」
「マジマジ。ホラ」
今度はジローが、あたしがやったようにオーロラ姫と書かれたクジをヒラヒラさせた。
「ウソでしょーーーーーー!!!」
「だから、マジだってば〜」
フワァ〜と、ジローは呑気にあくびをして机にうつ伏せて寝始めた。
コ・・・・・・・コノ野郎!!!!
「な・・・何でジローがお姫様なのよ!」
確かにいつも寝てるからピッタリだけどさ・・・・・・・・・・
姫≠ネんだから女子にやらせろよ!!!!!
↑ そういうお前は女子なのに王子
「あきらめちゃん。クジ引きは絶対なんやし文句、交換はナシって言うたのちゃんやろ?」
後ろの席の忍足が仲裁に入ってきた。
「う゛・・・・・・・」
「テメェは王子なんだから文句言うんじゃねぇ!!!」
その隣の跡部まで。
あんた、そんなに王子やりたかったの?
「俺なんか妖精やで?・・・羽ついたピンクのヒラヒラ着てステージで杖振んねんで?」
「まだいいじゃねぇか忍足!!!俺なんて魔女だぜ?魔女!!!この俺様が魔女・・・・・・!!
ちくしょう・・・・・・何で王子じゃねぇンだよ・・・・!!」
ていうか・・・・・
どっちもどっちだろ、このバカ共が。
練習は個人練習で、リハーサルなしの本番一発で通すらしい。
皆着々とセリフを覚えてる・・・・・・・・・けど
ジローは寝ている姿しか見た事がナイ。
オイオイオイ!まだ劇始まってねぇよ!!!
ジロー・・・・・・よりによって、何であんたがオーロラ姫引いちゃうのよー!!!!
「ジローのヤツ、まだ寝てるよ・・・・」
ていうか、本番15分前。
他の人は裏方やステージにスタンバイ中。
なので、舞台袖にいるのはあたしとジローのみ。
・・・出番まだとはいえ、衣装とかセットとかあるし起こした方がいいよね?
「ジロー、もうすぐ本番。寝るならせめてドレス着てウィッグつけてから寝ろ。」
「ん・・・・もう始まるのぉ?」
「あと15分で始まる。衣装裏にあるから着替えて髪セットしてきてもらえ」
「わかったC−」
そしてしばらくしてから、ビーーーーッというブザーが聞こえ幕が開いた。
さぁ、眠り姫の始まり始まり・・・・・・・・
『昔、ある国に王様とお妃様がおりました。2人には何年も子供がありませんでしたが、ついに1人のお姫様を授かりました。』
「着替えてきたC−」
しばらくして、ドレスを着たジローが戻ってきた。
ウィッグもちゃんとつけて・・・・・・・へぇ、結構似合ってんじゃん。
「なら、大人しくココでスタンバイしてろ。出番になったらあっち側の袖に行けよ?」
「はぁーい。」
あたし達はそっと舞台袖から劇を見た。
『そして妖精達も、姫の誕生を祝いにやってきたのです』
「あ、忍足だC−!!」
ジローがステージの忍足を見つけたようだ。
「え?どこどこ?」
「あの一番端っこの、羽ついたピンクのヒラヒラ着てる奴」
「うわー!別人!!はっきり言ってキモイな」
思いっきり似合ってないよ、うん。
なのに、客席からは「忍足君可愛いー!!」などの騒ぎ声が聞こえる。
・・・・・・・・どこが?
『オーロラ姫、私からは気高さと美しさを』
『私からは誰にも負けないすばらしい歌声を』
『姫、私からは・・・』
忍足が続きのセリフを言おうとしたとたん、パッと照明が消え1人の人物にスポットライトが当たる。
そう、跡部=魔女の登場だ。
『オーッホッホッホッホ。今日はなんてめでたい日なのかしら』
うわっ!こっちは、キモイけど逆にしっくりきてるよ!!!!
全然違和感ないんだけど!!!!!
でも、キモイな。(どっちやねん)
「ちゃん・・・あれマジで跡部?」
「そうだけど」
「なんか・・・キモイC−。」
「だよなっ!あたしもそう思った」
『オラ、テメェら!!黙って聞いてりゃキモイキモイ言いやがって!!』
ステージの跡部がこっちを向いて叫んだ。
お前こそ、マイクつけたまま喋るなっての!!!
客席にマル聞こえだアホ!!!
「わ、何?あいつ聞こえてんの?」
「跡部地獄耳だCー」
『チ・・・終わったら覚えてやがれ。オーロラ姫、今日はお前の誕生日だ!俺様から一つ贈り物をやるぜ。』
「・・・もうなんか滅茶苦茶じゃない?」
「跡部あれは絶対素だよね〜」
『テメェは16歳の誕生日に糸車の針で指を刺して死ね。これが俺からの贈り物だ。ありがたく思いな!』
め・・・命令形?!!!
ていうか、死の宣告とかありがたくねー・・・・・・
「し、死ねって・・・・・ここののセリフは「死ぬ」で断定じゃなかったっけ?」
「スッゲー跡部らしいC−」
劇は滅茶苦茶なのに、会場からは声援の嵐。
「跡部様素敵ですー!!」とか「私も呪ってー!!」なんて声がチラホラ聞こえる。
『野郎共、俺様の呪いに酔いな!!!』
そして、ステージのド真ん中でパチンと指を鳴らそうとする跡部をあたしが引きずって退場させ強制終了。
「あそこで、あの恥ずかしい氷帝コールやられちゃたまんないC−」
「そうそう!氷帝の恥さらすなってカンジ。他校の友達とかきてんのにさ」
『王様、お妃様。まだ私の贈り物が残っています』
「見かけはキモイけど忍足って結構演技うまいね」
「部活の時とかも結構練習してたC−」
「妖精の中じゃ一番重役だもんな」
『オーロラ姫、あの魔女の呪いの通りあなたは16歳の誕生日に糸車の針で指を刺すでしょう。でもそれはただ眠るだけ。
魔女を倒し、姫のことを真に愛する者のキスであなたは目覚めるのです。』
キラキラ〜っという効果音が流れ忍足がライトアップされた。
・・・・前言撤回(ぇ
ダメだ、ライトアップしたらキモくなるって!!!NGだNG!!このシーンはカットカット!!!
そして幕が閉まり、ジローは向こう側の袖に移動した。
『オーロラ姫や。』
『なんでしょうかお父様』
お、ジローの登場だ。
やっぱり会場からは「ジロー君可愛いーーーー!!」などの声が聞こえる。
まぁ、ジローは似合ってるからよしとしよう
『今日はそなたの16歳の誕生日。何か欲しいものはないかね?』
『いいえ。お父様とお母様がいつまでも元気でこの国が・・・・あれ?なんだっけ?』
オイオイ、「平和で豊かなら何も欲しいものはありません」だろ?
『可愛い姫や。さぁ、今夜のパーティーのために着替えてらっしゃい』
だからあれほど覚えろって言ったのに・・・・・・・
ジローが退場して舞台のセットが変わった。
『オーロラ姫が自室に戻ると、なぜかそこには糸車が置いてありました』
『まぁ!あれは一体何かしら?』
『オーロラ姫がそっと近づき、糸車を見つめるとどこからか怪しい声が聞こえてきました』
『針を触ってみな。・・・・・・・・・・おい、とっとと触りやがれ!!!』
アナウンスで跡部が言った。
『跡部せっかちだC−』
『オーロラ姫は言われるがまま針を触ってみました。すると、姫はたちまち眠りについてしまったのです。』
劇をじっと見守っていると、後ろから肩を叩かれた。
「さん、そろそろ衣装に着替えなよ」
「ん?あ、はーい」
そういえば、着替えるの忘れてたな・・・・・・・
あたしはテキパキと王子の衣装を着た。
『それまで、国中の人を眠らせましょう』
『呪いを打ち破り、姫を目覚めさせてくれる若者が現れるその時まで。』
効果音が鳴り、幕が閉じた。
いよいよ、あたしの出番だ。
『そして月日が過ぎこの国に1人の若者がやってきました』
「ここか、眠りに着いた不思議の国は」
『彼は、隣の国の勇敢な王子様でした。眠った国があるという不思議な噂をきいてやってきたのです。』
『王子様、お待ちしておりました』
「そなたたちは、一体何者だ?」
『私たちは妖精でございます。』
『この国に、あなたのような人が現れるのをずっと待っておりました』
プ・・・クク・・・・(笑)
近くで見たらホント笑えるな、忍足(ヒド
『この国には、一人の美しい姫が魔女の呪いの所為で眠り続けているのです』
「姫が?それは大変だ。私が魔女を倒し、姫の呪いを解こう」
『お気をつけて王子様。城には魔女の手下が見張っています』
「大丈夫だ。剣の腕には自信がある。必ず、姫の呪いを解き目覚めさせて見せよう」
あたしがそういうと幕は閉まりセットが変わる。
よし出番終了だ。とりあえず、とちらなかったな。
成功成功大成功★
『勇敢な王子は、次々と魔女の手下を倒していきました』
「オラオラー!!テメェら雑魚に用はねぇんだよー!!!」
『うぎゃあー(さん本気入ってる・・・!!)』
と、剣をぶんぶん振りまくって雑魚を倒していった。
「さぁ掛かって来い、魔女!!」
ヤバイ・・・こっちもやばいぞ!!!
顔、ニヤけてないかなあ・・・・・・
これでも頑張って耐えてるんだけど!!!
『く・・・・おのれ・・・・王子め・・・・!!』
あたしが王子を倒したとたん、会場から悲鳴が
あのなぁ・・・・・これじゃあたしが悪者じゃない!!!
「おお・・・・・なんと美しい姫君だ」
『あなたが真に姫を愛するなら、姫の唇に口付けを』
・・・・・・あ!勿論マネだけよ、マネ!
打ち合わせじゃあたしがジローを・・・ってコイツホントにイビキかいて寝てやがる!!!
「ジ、ジロー!起きて!!今本番中だよ!!」
「zzzzzzz・・・zzzzzz」
どうしよう・・・揺すり起こすわけにはいかないしなぁ・・・・
悩んでいるうちに会場がざわついてきた。
ヤバイ・・・何とかしないと!!!
「ジロー、起き・・」
瞬間、パッと視界が暗くなった。・・・・・・・・停電だ!
よし、ナイス停電!!!!
「オラァ!ジロー起きろ!!今本番中・・」
グィッと誰かに腕を引っ張られて気付いたときには、もう唇が柔らかいものに触れていた。
まさか・・・・・・・これって・・・・・・・・・・
キス?!!!!!!!!
頭がぐっちゃんこになって動揺していると、パッと明かりがつき
もうジローは何事もなかったようにニッコリと微笑んで目覚めていた。
の野郎・・・・・・・・・・!!
怒ろうにも、本番中なので怒れない・・・・・・・・・・!!
そしてハプニングもあったが無事ハッピーエンドを向かえ、眠り姫は幕を閉じた。
◇舞台裏にて◇
「王子にキスする眠り姫がいるかーーーー!!!!」
「えー・・だってちゃんがしてくれないんだもん」
「マジでするかよ!!フリに決まってるでしょ!?」
「俺のこと嫌い?俺はちゃんの事好きだCー」
また、にかっと微笑んでそう言った。
ムカつく・・・・・・・・・・・・・・
コイツに好きって言われてうれしいあたしががムカつく・・・・・!!
「す・・・っきに決まってんだろ!!あーもー!!言っちまった!!!」
「じゃあ、いいじゃん。両想いなんだC−」
「だからって公衆の面前でやるな!!」
停電してたとはいえ、スッゲー恥ずかしいんだよ!!!アレ!!!
その後、あたし達が付き合い始めたのは言うまでもない。
そして、あの停電はの仕業だったと知るのはもう少し後の話。
コメント
ふぅ・・・・長かった。
原話はオフ友のKに手伝ってもらいました。
ありがとうK!
一度書いてみたかった眠り姫ネタです。
全員王子でパロってのも考えてたんだけど
それじゃBBとかぶるかなって思ってこっちにしましたv
楽しかったv