灯はわずかに吹き込む風にゆらぎ、ふわりと香の匂いを鼻腔に運ぶ。 小さく灯ったその灯だけが光の発生源で、当然部屋は暗い。 ただふたりはお互いを手探りで確かめ合い、うすい皮膚を触れ合わせてお互いを感じていた。 子上のひんやりした肌は子元のわずかに高い体温の肌にぴったりとくっつき、心地よい熱をお互いに供給している。 兄弟、という家族系列上の名義は彼らの関係を絶つには十分ではない。 子元は子上の髪の毛をくしゃりと指で掬い顔をうずめ匂いをかいだ。 くすぐったそうに子上が身をよじらせる。甘い匂いがするような気がして子元はその匂いに夢中になる。 「あに、うえ」 「子上はいい匂いがする」 「くすぐったいです」 弟の細い首筋にそっと口づけをしてやれば、子上はぎゅ、と子元の首に腕を回してきた。 細くはかなげで、今にも壊れてしまいそうな、繊細な弟だ。 子元とは二つ三つくらいしか違わないはずなのに、その体格差といい性格といい全然違うのだ。 少女めいたちいさな顔ににこにこと笑みをうかべて子上は子元の胸に頬をすり寄せる。 「今度は私が兄上に甘える番です」 滑らかでふわ、とした髪を手櫛で整えてやり、頭を撫でてやる。 髪の感じさえも違う。短く切りそろえてある硬い子元の銀髪と違ってゆるやかに伸ばした細くて柔らかい黒髪を子上は持っていた。 本当は血のつながりなどないのかもしれない、と思ったこともある。 けれど彼らはいつも一心同体であるかのようにつながっていた。親愛の情がこのふたりを彼らだけの世界の中にとらえるかのようにゆるく縛っていた。 「昭は、」 「うん?」 子上はその小さな身体を兄に預けながら嬉しそうに笑う。 「父上より母上より、兄上が好きなのです」 「…そうか、私も子上のことが好きだ」 「本当ですか?」 「私が嘘を付くと思ったか?」 「いいえ。ただ…私は変なのでしょうか、両親より兄上の方が好きなんて」 「変じゃない。…私たちは兄弟なんだから」 この二人は自分たちの関係に疑問を持ったことなどなかった。 ほかのきょうだいたちも彼らのことを普通だと思っているし、他の家の兄弟のことなど知らない。 たとえこの関係が許されざるものではないと知っても、絶つことなどできない。 ゆるやかだが消して逃れられない愛に縛られて、この二人はここにいる。