光
ざざあ、ざざあ、と絶え間なく耳にきこえるのは浜に打ち寄る波の音。
空には鴎、眩しい日差しと鼻を付く乾いた潮の香り。
白い砂浜は永遠の時を数え、波に洗われた貝の骨は幾つの年尽きを経たのか僕には知れない。
山を一つだけ越えただけの小さな漁村の外れ。
右に首を捻れば同級生達の笑い声と走り回る姿。
そして左には、眩しそうに眼をしかめながら眠る同じ顔の君が。
大きな因果を背負って居るのだろうに、そんな事は微塵も感じさせずに、
ただただ陽の光だけを疎ましそうにしていた。
眩しそうな君の顔を覗き込んだら、君の顔に影が掛かった。
すると君の表情は穏やかな寝顔に変わった。
それは単なる身体の反応だと解っていたのだけれど、まるで光の元では生きられない、
影でのみ存在を許される君そのもののようで。
光を疎み、闇に住まう忍そのものの姿のようで。
僕はなんだか哀しくなってしまったんだ。
お題100