聖鬼翔様からの賜り物

通り雨
〜もう一つの愛〜

利吉は大きな荷物を背負いながらある場所へと向かっていた。


ある場所とは、いつもの通りの忍術学園。
父である山田伝蔵が職務に付いているいわば忍者の学校。
その学園に向かう途中、突然の雨にでかわした。
どんよりとした部厚い鉛色の雲から溢れ出るかのような雨。
利吉は冷静に背負っていた荷物の中から雨傘を取り出した。
それは母から父へと贈る「妻の愛」の傘。
しかし利吉はあっさりとその傘を広げた。
「まあ急な雨だから別に良いか」
心持ち背負った荷物側に傘をさし、利吉は学園へと向かう山道を進んだ。


山道の途中。
利吉は思わず我が目を疑いそうになった。
山道のほぼ中腹あたりには御茶屋があるのだが、その茶屋の前。
崖側にある大きな木の下。
その場所にあの人が居た。



父が職務についている忍術学園の事務員、小松田秀作。


マニュアル小僧と言われ、マニュアル通りにしか動けない人。


ドジでマヌケでおっちょこちょいで、失敗した数は底知れず。


よく失敗しては泣いていた。


それでも笑った顔がとても可愛いと思ったのはいつの事だったか。


入門表を掲げて自分を見つめて微笑む顔にホッとした。


安心できる場所が出来たと思っていた。


縁側でお茶を飲みながら会話し微笑む顔に何度となく救われた。


心がキレイな人間もまだまだ居るんだとホッとしていた。


いつもいつも自分に微笑みかけてくれる彼がいつから自分にとって大切な存在となったのか。



しかし、今の彼の顔はその面影は無く、青白く今にも泣いてしまいそうに表情は歪んでいた。
雨に打たれ冷えて震える体をギュッと抱き締めていた。
まるで誰かを待っているかのようで、その証拠に視線はずっと同じ場所を見つめていた。


薄々気付いていた。
自分に向けられる笑顔はただの”憧れ”というものを。
でも利吉は認めたくなかった。



彼に想い人の存在があるという事を・・・。



しかし事実は事実で、彼の真紫に染まった唇からは決して言って欲しくなかった人物の名が零れた。





「伊作くん」





利吉は傘を持つ手にギッと力を込めた。

彼の口から零れた名に首を振り、利吉は意を決して一歩前へと進んだ。


「小松田くん?」


自分でも驚くほど冷静で静かな声だった。
当然小松田は驚きゆっくりと後ろを振り向いた。
「あ、やっぱり。どうしたんだい?こんな所で」
ゆっくり小松田に近寄りながら利吉は問う。
しかし心の内ではその理由を話して欲しくは無いと思っていた。
小松田は呆然と利吉を見つめていた。
しかしその表情は複雑で、安心したようでそれでいて悲しそうな表情だった。
何かを言おうとして口を開いた瞬間、小松田の体が揺らぎ崩れた。



「小松田くんっ!?」



利吉は慌てて小松田の体を抱え支えた。力無く小松田は利吉の腕の中へと倒れこんだ。
水気を吸った小松田の服が自分の服をも濡らして行くのも構わず、利吉は小松田を抱え直した。
これ以上雨が当たらないようにと、小松田へ傘を向ける。


「す・・・すみません・・・・・・」


「大丈夫かい?・・・もしかしてこの雨の中ずっとこの場所に?」


我ながら陳腐な問いだとは思った。
ずっとこの場所に居たであろう事は、雨で濡れた小松田の服から見て取れる。
しかもさっきまでずっと見ていたではないか。
ゆっくりと頷ずく小松田に、利吉は少し顔を顰めた。


触れている箇所が熱い。


利吉は方ヒザを付くと、雨で張り付いた小松田の前髪を左右に払い額に手を置いた。
青白い肌とは対象にその額は熱かった。
何時間雨に打たれていたのかと問えば、昼前ぐらいからと返って来る。
これだと風邪を引くのは確実と、謝る小松田を抱え直した。


「仕方ない。・・・・・・確か今来た道にお堂があったな」


荒れ果て伸びきった草木に囲まれ、良く見ないと分からない程ではあったが。
利吉の腕の中で小松田は慌てた。
自分をほっといて欲しいと言っているかのようだった。
とうぜん利吉はそんな事が出来るわけもなく苦笑した。


「病人をほっとけるほど薄情でもないさ。それに行こうとしているのは忍術学園だからね」


忍術学園へ連れて行こうと思えば連れて行ける距離である。
だが、利吉自身もそうなのであるが、小松田は戻りたくなさそうだった。
何かあったはずなのに、利吉はお堂へと向かう間何も話さないでいた。
一言でも言葉を発すれば、この人を傷つけてしまいそうだったから。


利吉は腕の中で眠る小松田の顔に寂しく微笑むと、微風のように小松田の額に口付けた。

荒れ果てたお堂の中は以外にもしっかりしていた。
所々修理された箇所が目に付く。
おそらく立ち寄った人たちが少しずつだが直したのだろう。
まあこの山の中じゃここくらいしか休める場所はないからな。
利吉はお堂内を見回すことを止め、ゆっくりと小松田を床の上へ降ろした。
小松田は荒い息の中、苦しそうに顔を顰めた。

雨に濡れた髪が、額に浮かぶ汗に吸い寄せられるかのように張り付いていた。
利吉はソッとその前髪を梳き、後ろへと流した。


「んっ・・・」


小さな喘ぎと共に小松田の顔が利吉へと向いた。



上気した頬。


熱を含んだ赤い唇。


その隙間から覗く滑らかな赤い舌。



その味は甘味?



利吉は押し寄せては泡立つ感覚に首を振って反した。
今は熱を下げる事が先決だ。
利吉は後ろ髪を引かれる思いで、それでも懸命に手荷物の中から解熱剤を取り出した。


粒化状の解熱剤。


そのままでは決して小松田は飲めないだろう。
ましてや意識が戻っていないのに飲める訳がない。
利吉はどうしたものかと、何か湯呑みでもと手荷物を探した。
しかしそれは出てくる事はなく、利吉ははぁっとため息をついた。
このまま飲まない状態でいたら、小松田の熱はドンドン上がっていってしまう。
悩む利吉の前で、小松田は再度唸りながら利吉へと顔を向けた。
薄く開いた唇からは苦しい息と共に甘い香りがした。



利吉はゴクッと喉を鳴らした。
そしてごく自然に、尚且つ冷静に利吉は解熱剤を口に入れ、水筒の水を含んだ。
鼻に付く苦みに微かに顔を顰めつつも、利吉はゆっくりと小松田の顎に手をあてた。

ちょっと持ち上げれば開く赤い唇。

利吉はゆっくりと小松田に顔を近づけた。



そして触れる熱さ。



ゆっくりと薬水を押しやれば自然に口内に入り込んでしまう己の舌。
微かに触れる熱い舌の感覚に理性を失いそうになる。
それでも利吉はゆっくりと薬水を送り続けた。

「ん・・・」

小さな声を上げて、小松田の瞼が動いた。
そしてゆっくりと開く双方の潤んだ瞳。
小松田はゴクリと音を立ててその薬水を飲み込んだ。
それでも飲み込まれなかった薬水は、唇の合わさった箇所のほんの少しの隙間から溢れでた。
ゆっくりと唇を離した利吉に小松田は言った。


潤んだ瞳で、熱っぽいその瞳で。


ゆっくり開いた艶やかな唇で。




「・・・伊作くん・・・・」


利吉は血が逆流する思いをした。


ここにいるのは私なのにっ!!


利吉はギュッと両手を握り締めた。
爪が食い込むほどに握り締めた。
小松田は薄っすらと開けた瞳で利吉を・・・いや、伊作の影を見つめていた。
ふいに小松田の瞳からは細く、真珠のように輝く涙が溢れ出た。
しかしそれは今は居ない彼の思い人に対してのもの。
利吉は今の自分の存在は、小松田にとっては全くの皆無に等しいものなのだと痛感した。
しかし、胸の奥に沸き滾るドロドロとした感情は消える事なく、むしろその領域を広げていた。


「・・・伊作くん・・・。僕ね・・・僕・・・・・・。本当は謝りたかったんだ・・・」


小松田は涙を湛えた瞳で利吉を・・伊作を見つめていた。


「伊作くんが悪いんじゃないのに・・・伊作くんのせいじゃないのに・・・。ゴメンね・・・」


横たわったまま小松田は伊作に・・・利吉に手を伸ばした。
熱を持った熱い手が、利吉の手に触れた。


「ゴメンね・・・伊作くん・・・」


途切れる事なく溢れる涙がその量を増やして行った。
ギュッと握り締められた手に、自分を見つめていないその双方の瞳に、そして自分の名を
呼ばないその赤い唇に・・・。
利吉は胸の奥から押し出されたドロドロとした感情が体全体を覆う感覚を覚えた。
握り締められた手とは逆の手で、ソッと小松田の頬を撫でた。
まるで幼子をあやすかのように優しく優しく撫でた。
小松田もその手にうっとりと目を細めた。
が、その瞬間小松田の意識が覚醒した。


「あっ・・・利吉・・・さん?」


潤んだ瞳はそのままで、伊作じゃなくちゃんと利吉を見つめる双方の瞳。
でもそれはかの少年を見つめる時のあの熱い眼差しとは違う別の眼差し。



ただの憧れ。



利吉は黙ったままその手を小松田の首筋に這わせた。と同時に利吉の唇は小松田の唇を奪っていた。

「利吉さ・・・んんっ!!」

鼻に付く甘い声で小松田は鳴く。
利吉は深く深く小松田の口内をまさぐった。
あてがう唇の向きを何度となく変え、その都度漏れる小松田の声に利吉は完全に理性を失った。

いや、もうすでに失っていたのかもしれない。

口付けを交す最中でありながらも、手馴れた手付きで雨に濡れて張り付いた着物をいとも簡単に
剥ぎ取り、その熱い身体に手を這わせていた。



「あっ・・・んんっ!!」


身体の下で小松田の身体が小さく震えた。
利吉の手は小松田の薄い胸に咲く淡い蕾を抓んでいた。
ほんの少し力を込めれば捩る身体。
先端を爪先で引っかけば仰け反る身体。


「ああっっ・・・やっ・・利吉さ・・・・!!」


抵抗する小松田を押さえつけ、利吉の手は小松田の身体を這った。
月の出ていない暗闇の中でさえも白く淡く光る小松田の肌。
熱を持ったその肌は濃艶に見えた。


「あ・・・んっ・・・」


小さく喘ぐ小松田。
慌てて口を塞ぐが、既に遅い。
利吉は暗闇の中無表情のまま小松田を見つめた。

「もうこんなになってるんだ?凄いんだな」

そう言って利吉の手が布越しに小松田自身を握った。



「やっ!ああっっ!!」



恐らく他人にこうされるのは初めてなのだろう。
幾ら自分で慰めていたとしても、それとこれとは違う。
利吉はもう片方の手で小松田の両手を頭上で固定した。
そして、一瞬のスキを見て履物を剥ぎ取った。もちろん褌も。

「り、利吉さんっっ?!!」

小松田は慌てた。
しかしそれでも体格も力も全くかなわない相手にどうする事も出来なかった。
利吉の手が布越しではなく直に触れて来る。

特別な事をされているわけではない。たまにする自虐行為と同じ動作だ。

ただ違うのはそれを他人がしているという事で・・・。

当然の如く小松田の息は荒く、熱っぽくなった。
利吉は小松田の手を開放すると、その手で小松田の胸に咲く蕾を抓んだ。


「あっ・・・んんっっ!!」


下半身からの刺激によって敏感になっている身体は、ほんのチョット触れただけでもその身体を
震わせた。
利吉はもう片方の蕾に口付けた。
舌先で舐めたり突付いたり。歯を立てたり、吸ってみたりと・・・。
その都度仰け反る身体が愛らしくて、利吉は唇を下へとずらして行った。
薄い腹筋を一つ一つ丹念に舌でなぞり、ヘソの周りを舐めあげその中へと舌を這わせた。
小松田は次々と来る快感に口に手を当てる事さえ出来ないでいた。


「あ・・・やっ・・・んあっ・・・・・・っ・・・ふぁっんっっ!!」


甘く艶やかに喘ぐ声に利吉の唇は遂に其処へと辿り付いた。


「あっ・・・利吉さ・・・んんっっ!!」


既に先走りでグチョグチョに濡れた小松田自身と利吉の手。
それを如何にも飲み込んでしまいそうに利吉は口に含んだ。


「あ・・んんっっ!!」


利吉の頭が上下に動き、小松田を扱く。
仰け反る小松田の身体に合わせて利吉は尚も執拗にそこを攻め立てた。


「あっ・・利吉さ・・・離して・・・離・・ああっっ!!」


小松田の身体が一際大きく震え仰け反った。
と同時に利吉の口内には生温かいモノで溢れた。
荒く息を吐く小松田はぐったりとして呆然と天井を見つめた。






――― ゴクッ・・




下から聞こえた音に小松田はゆっくりと顔を向けた。

「・・・結構溜まっていたんだ?」

そう言って口元を拭う利吉が、おそらく小松田が目覚めてから初めて微笑んだ。
小松田は耳まで赤く染め上げ利吉から顔を背けた。


「小松田くん?」

利吉はソッと小松田の顔を覗き込んだ。


「・・・・・・・・・・・・・・か?」


「え?」


利吉は首を傾げた。
小松田はゆっくりと顔を持ち上げ言った。


「何で私なんですか?利吉さん程の人なら私じゃなくても他にもたくさん居るじゃないですかっ」


そう言って小松田は息を呑んだ。


悲しい・・・と言うより、寂しい表情。
未だかつて利吉と出会ってから今日まで、何度となく顔を見合わせていたのにも関わらず、
こんな表情をした利吉を見た事は無かった。
いつもは強きで勝気な顔ばかりで、時折見せる優しさが印象的だった。
仕事柄辛い事も沢山あったはずなのに、それを表に出すことは全く無い。
いつもいつもその苦しみを胸の内に潜めて隠して居た。


たまには吐き出してしまうのも良いのに・・・。


そういつも思ってた。



「利吉さ・・」
「君には分からないよ」



「え?」



「彼を・・・善法寺くんを見つめるような目で、私は君を見ていたんだから」


「伊作くんを見つめるような目・・・・ええっ?!」



利吉の言葉を繰り返し呟いた小松田は、ようやっとその意味を理解した。
瞬時に顔を赤らめ俯いてしまった。
そんな小松田に小さく笑い、利吉は言葉を続けた。

「いつも学園に入る時、入門表を掲げて笑いかけてくれる君に惹かれてた。
ほんの少し話すだけで微笑んでくれる君が嬉しかった。たまに縁側でお茶を飲んだりしてる君を見て、
私は心が温かくなるのを知った。いつもいつも仕事で疲れきった体と心を君の笑顔が癒してくれた。
僕は学園に向かう度に君が好きになって行くのを知った」

利吉は其処まで言ってニッコリと微笑んだ。
その笑顔は今までに見た事が無いような清々しいものだった。
しかし、その笑顔は一瞬の間に消えうせてしまった。

「・・・でも。君のその瞳には私は映っていなかった。その心にさえ残っていなかった」
「そんな事っ・・・!」

小松田は身体を起こし、声を上げた。

「そんな事ないですっ!利吉さんは強くて優しくて心の広い方なんだといつも思ってましたっ!
いつもいつも私は利吉さんに憧れてたんですっ!!」
「でもそれはただの憧れという分類にしか入らない」
「それはっ・・・・・・」

利吉は薄く微笑むとそっと小松田の頬を撫でた。


「本当に君は優しい人だな」
「利吉さん・・・・・・」




「でも、それが憎らしい」

「利吉さ・・・・・・つっ!!」



小松田は突然の頬の痛みに顔を顰めた。
利吉の爪が小松田の頬を引っ掻き切ったのだ。
小松田の頬にはジンワリと紅い血が滲み出た。


「“愛しさ余って憎さ百倍”とは良く言ったものだよ。私は君が愛しい位に憎いんだから!」


語尾を強めた口調で利吉は再び小松田を床に押し倒した。
抵抗する間も与えずに利吉は小松田に次々と快楽にも似た苦痛を与え続けた。


「あっ・・・やっ・・・利吉さっ・・・んんっっ!!」


合わせた唇から漏れる小松田の声に何の感情も見出せぬまま、利吉は事を進める。
泣いて、声を上げて、力の入らない手で必死になって利吉の背を叩く小松田。





「嫌っ!利吉さ・・・・やあああああっっ!!!」





未だ降り鳴り続けている雨音すら二人の耳には入って来ては来なかった。






腰を押し進める利吉。


苦痛に耐えようとする小松田。





明り一つも無いお堂の中で、二人の荒い息遣いと粘膜と粘膜が擦れ合う音だけが響いていた。





小さく鳴く小鳥の群れ。

利吉はきっちりと着物を整えた。
そして未だ眠る小松田の頭を愛しい者のように何度も何度も撫でた。


情事で濡れた身体を拭き、利吉は持って来ていた荷物を解いて母から父へと贈るはずだった着物
を取り出して、小松田に着せた。濡れた着物を再び着せる訳には行かない。
小柄な彼には大きな着物。それでもきっちりと前を合わせ、腰紐で留めた。



先程の行為を忘れた訳ではない。

性欲に負け、快楽を求め、自分は彼を汚した。

払いきれぬ、拭いきれぬ、後悔という波が胸の内で何度も何度も満ち引きを繰り返していた。



「すまない・・・」



ポツリと零れた言葉はどこに届くとも分からずお堂の中で響いて消えた。



「すまない・・・」



深く眠るであろう小松田の耳に、心にその言葉が届いているのか。
利吉はギュッと手を握り締めた。
手の平に刺さる爪。流れる赤い血。
それでも利吉は力を込めた。

見上げれば窓の向こうに広がる晴れ渡った茜色の空。
後悔という念に狭まれ利吉は目を伏せた。







「・・・利吉さん・・・」


低く掠れた声で小松田が呟いた。
ゆっくりと身体を起こし、利吉を見つめる。
・・・しかし利吉は目を伏せたままだった。
小松田は一言一言をはっきりと、それでも優しく話した。

「私は伊作くんが好きです。好きになったきっかけは本当に些細な事なんですが、好きになるの
には充分すぎるぐらいの出来事だったんです。今でもその瞬間は覚えているんですよ」

目を伏せたままの利吉に小松田は微笑んだ。

「少しの差かもしれませんね。利吉さんと出会った頃には【伊作くん】という存在が既に目の前に
あったんですから。伊作くんは利吉さんよりまだ弱いかもしれません。知識もまだ乏しい。
でも、私は心優しい伊作くんを見つけてしまった。・・・・・・でも、もし伊作くんより利吉さん
と先に出会っていたら違っていたんでしょうね」


小松田は伏せたままの目にソッと手で触れた。

ビクリッと震える身体。

小松田の指先は熱く濡れた。


「利吉さんはステキな人です。ずっと私を想ってくれて本当に嬉しかった」


そっと瞼を拭った小松田の指に熱い雫が溜まった。

ゆっくりと伏せていた目を開けた利吉は、悲しいような、それでいて嬉しいような、そんな
不思議な微笑を浮かべていた。

「実は伊作くんと話してたんですよ。『利吉さんみたいになりたいな〜』って。
いつも乱太郎くんたちと遊んでいる利吉さんを見ながら言っていたんです。
『利吉さんみたいに、力も心も強い人になりたい』って」

小松田はニッコリと今度はちゃんと利吉の開いた目に向かって微笑んだ。

「私も、伊作くんも。ずっと利吉さんの姿を見ているですよ。後を追っているんです」


でもそれって愛情とは言いませんよね・・・やっぱり・・・。


しゅんと伏せた目が愛しくて、あんな事をしたばかりだというのに自分を責めない愛しき人に、
利吉は笑った。
大きく笑った。心のうちで涙を流しながら・・・。







「もう少し寝てて。ちょっと近くを見てくるから」
そう言って小松田を寝かしつけた利吉は、ゆっくりと立ち上がり締め切ったお堂の戸を開けた。
暗闇に入り込む一筋の赤い光。
その中で利吉は胸のうちにある寂しさを払うかのように微笑んだ。







伊作にこの場所を教え、一緒に来ていた立花仙蔵と七松小平太、潮江文次郎の三人にお団子を奢り、
戻ってきた二人の姿を少し寂しそうに見つめながら微笑んだ。


謝る二人に、手を振って苦笑い。


そして嫉妬した伊作の些細な意地悪の為、利吉は再びこのお堂へと戻って来た。


利吉は荷物を背負い、再びお堂内を見渡した。


あの時の事は決して忘れられないだろう。

二度とこの場には近寄らないと胸に誓い、利吉は目を伏せた。

そして再び目を開いた時には、既に足はお堂の外へと向かっており、二度と振り返ることは無かった。




―終劇―





Doramiさんっ!!

遅くなってしまって申し訳ありませんでしたっ!!
しかも長いしっ・・・(−−;

しっかし、通り雨なのに一晩分を書いてる気分でしたわ・・。
こんなんでも宜しかったら貰ってやって下さい(^^;


長らくつき合わせてしまい大変申し訳ありませんでした(滝汗)


聖鬼様のサイトでやっとの思いでもぎ取ったキリリクvv
やったぜりっき〜、やられた小松田!
ダークな利吉が熱くてラヴです、ラブ!
聖女のように心清らかで愛らしい小松田君にあんな事、
こんな事しちゃってもう!あんまりおイタが過ぎると
おねい様方が悦びますぜ!
聖鬼様、どうもありがとうございました!!


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