自己満足の殿堂 the小 説


 【逆 転】

Last Up Date 02.03.04

 

街へと続く街道を足早に歩いて行く青年がいる。歳の頃は二十歳ばかりか。
見事な黒髪を洒落た簪で頭の高い位置にまとめている。
彼がこの街に戻ってくるのは二十日ぶりのこと。久しぶりに会う恋人、田村三木ヱ門の待つ家へ、逸る気持ちを抑え歩いている。


いつもは二人で仕事に出るが、今度の仕事は滝夜叉丸一人で出かけた。
それというのも前回の仕事で、ある城から戦をしている敵陣中を混乱させる任務を請け負った二人だったが、調子に乗った三木ヱ門が手製の爆発威力を上げた火薬を使い、誤って自分もその煽りを受け足に火傷を負ってしまった。歩けなくなった三木ヱ門を背負い、滝夜叉丸は命辛々逃げ伸びた。
やっとの思いで隠れ家までたどり着き、滝夜叉丸は三木ヱ門の火傷の手当をする。火傷はさほど酷くはなかったが、感染症が怖い。

「どうして貴様はそう後先を考えず行動するんだ!!」

黒曜石のように黒い瞳にいっぱいの涙を溜め滝夜叉丸は目の前にいる人間を怒鳴りつける。

「うまく行くと思ったんだけどなぁ。次は別の火薬でやってみようかな?」

怒鳴られていることよりも爆発威力が計算違いだったことが気に懸かって上の空。
滝夜叉丸は火傷の手当をしながら、言い足らないことが有り早口にまくし立てる。それだけ心配したという証拠だが。

「それに、敵陣中でも貴様の背後は隙だらけで、私が側で注意していなければ…!」
「え、なに?俺が最高に好きだからチュウしてくれって?もちろん良いぞ!ん〜…」

何を聞き間違えたのか、にっこり笑って唇を突き出す三木ヱ門に滝夜叉丸は怒り心頭、側に置いてあった包帯やら手桶やら、いろんな物を投げつけた。

「何を聞いているんだ!この大馬鹿者!!」

最後のとどめにでっかい罵声と痛烈な拳を一つお見舞いする。


 三木ヱ門は一晩掛かって滝夜叉丸をなだめ、ようやく仲直りが出来た。
それでもまだ虫の居所が悪そうな滝夜叉丸の機嫌を伺いながらおそるおそる尋ねる。

「滝、明日からの仕事はお前一人で行くだろう。」
「当然だ。今の貴様は足手まといだ。」
「今度の仕事は長いよな。」
「三週間程はかかるだろう。」
「だからさぁ…」
「何だ。」
「滝ぃ〜…」
「何だと言うんだ。」
「解らないかなぁ〜。」
「解るか!」


甘えた声で猫のように滝夜叉丸の膝にすり寄ってくる三木ヱ門。滝夜叉丸にも三木ヱ門の言いたいことは充分解っている。成りあまれる処を以ちて、成り合わざる処に刺して塞ぎたい…と、多少表現は違っているがそう言うことだろう。

「たぁ〜きぃ〜…」

恨めしい声で懇願してみるが無駄なようだ。「しつこい!」と切って返された。だが

「私が帰る頃にはその傷も治るだろう。そしたら三木の満足のいくまで相手をしてやるから、今は火傷を大事にしろ。無理をしたら痕になってしまう。」

そう優しく甘い言葉でなだめられたらウンとしか言いようがない。三木ヱ門は体よく丸め込まれた。
 

 久しぶりに三木ヱ門の元へ帰るので何かみやげでも買って帰ろうか。
そう思い立った滝夜叉丸は街の市場へ寄り道をした。にっこり微笑んで「お帰り」と言ってくれる顔を思い浮かべながら市場を見て回った。
必要な物を買い揃え、表通りから路地一本入った処にある小さな宿屋の前を通りかかった時、のれんの影でなにやら囁き合っている男女の声がした。
恋人同士の睦言か、と聞かぬ振りで通り過ぎようとしたが、その声はよく知った人物の物であった。
咄嗟に滝夜叉丸は身を隠しその二人の様子を伺い見る。男の方を見ればやはり三木ヱ門だ。
火傷は完治している様子だが、なぜこんな処で楽しそうに女と話し込んでいるのか。女の方を見れば色白でとろけるような黒髪の、歳の頃は二十七・八位の艶っぽい女だ。三木ヱ門の厚い胸に軽く手を架けて柔らかく微笑んでいる。滝夜叉丸はその女の馴れ馴れしい態度を見てピンと来るものがあった。

「三木。あいつ…。」

そう思った途端、身体の奧から熱い固まりがこみ上げてきて、二人に気付かれぬようその場を去り家へと帰っていった。
家へ帰る間も、今し方見た光景が頭の中でぐるぐると回っている。楽しそうな三木ヱ門、誘うように微笑む女、二人で何を語り合っていたのか、二人で何をしていたのか、二人の関係は。
考えれば考えるほど良からぬ事ばかり浮かんでくる。
家へ着き戸を開けても、当然迎えてくれる者は居ない。部屋はしんと静まり返り、狭い部屋なのにとてつもなく広く感じ、夏も近いのに寒気を感じた。
暗い部屋の真ん中でぺたりと座り込んだ滝夜叉丸は、唇を真っ赤になるまで噛み締め、眉間には皺を寄せ、肩を震わせ涙を堪えている。眼を閉じれば先程の二人が楽しそうに笑い合っている姿しか浮かばない。久しぶりに眼にした恋人の笑顔は自分に向けてではなく見知らぬ女に向けられていた。

ダンッ!! 

無言で拳を床に打ち付ける。何度も何度も。そして涙がぽろぽろと流れ落ち、拳を濡らしていった。
しばらくして滝夜叉丸は大きく息を付いて起きあがり、井戸へ行き水を汲んできて盥の中を満たす。
服を脱ぎ盥の中で身体を、髪も顔も綺麗に洗った。着物も真っ白な襦袢の上に薄紫色の薄衣を重ねて着る。鏡に向かって髪を綺麗に結い上げ、緋色の絹の元結いでまとめ、朱色の簪を挿す。それだけでもあでやかな装いの上に、薄くかすかに紅を引き、鏡に向かいにっこりと微笑んでみる。
その出来映えに満足したのか、今度はいつもの不敵な笑みを浮かべた。



 陽も傾き掛けた頃三木ヱ門が戻ってきた。自分の居ない間に戻ってきていた滝夜叉丸を見て嬉しそうに微笑む。

「滝、戻っていたのか。済まない、ちょっと用事で家を空けていた。」

いつもの屈託のない明るい笑顔で滝夜叉丸に詫びる。滝夜叉丸の方も「構わないさ」と、微笑んでみせるが瞳の奧には炎を燃やしている。三木ヱ門はそれに気付くが、自分が家を空けていたことにちょっとだけ怒っているのだろうと思った。
華美ではなく清楚に美しく装っている滝夜叉丸を見て、三木ヱ門は三週間前の約束を思い出し草鞋を脱ぐ手も煩わしく、こそこそとそばへと寄って滝夜叉丸の肩に手を掛け、耳元で囁く。

「滝、三週間前の約束忘れてないよね。いいだろ?」

その美しい装いは三木ヱ門のためであり、その美しい物を手荒く壊したい。滝夜叉丸の一番美しい一瞬は自分だけしか知らないのだ。


確かに装いは三木ヱ門の為であったが趣旨が違っていることは気付かなかった。
滝夜叉丸は三木ヱ門の頸にスルリと腕を絡ませて、胸に体重を預ける振りをして心臓に耳をぴたりと当てる。上目遣いに三木ヱ門を見上げて優しく静かに、すねたように甘えた声で問う。


「三木、今まで何処に行っていたのだ?」
「あ・あぁ、街へな、頼んでいた火縄銃の部品が入ったかなぁと思って。」
鼓動が少し早まった。
「誰かと一緒にいたんじゃないのか?」
「まさか!俺一人だよ。」
更に鼓動が上がる。
「三木…。唇に紅が付いているぞ。」
「えっ!?」


不意に言われて咄嗟に袖口を唇にあててから、三木ヱ門はしまったと思ったが遅すぎた。滝夜叉丸を見れば背後に炎を背負い、暗い部屋の中で瞳が光を放ったように見えた。


「誰なのだ?あの女は…」

口調は静かだが、重く腹の底へ響くような凄みを持って滝夜叉丸は言葉を発する。

「お・・・おんなぁ?何の事を言ってるんだか、わっかんないよ…。」

こちらはあくまでシラを切り通そうと必死であるが今更何になるだろうか。
すると滝夜叉丸の瞳が哀し気な影を作った。それを見た三木ヱ門はハッとして滝夜叉丸を抱き締めようと手を伸ばしたがその手は滝夜叉丸に弾かれた。

「三木ヱ門、私たちの生業は人を欺き騙すことが常だから、せめて二人の間だけは嘘を付かないと約束したのを忘れたのか?」
「もちろん覚えている。」
「だったら本当のことを言えよ。」

今にも泣き出しそうな瞳に見つめられると、女と浮気をしたことを隠していることよりも嘘を付いていることの方が重罪に思えて三木ヱ門は、素直に本当のことを話し始めた。

「その・・・宿屋の女将と会っていたんだ・・・女将は裏の情報屋なんだよ。時々足を運んじゃいろんな話を聞いてさ。お前が居ない間火傷で何かと不自由してさ、ちょっと世話になっている内に、その…なんて言うのか…ああぁ…つまり、早い話が・・・」
「寝たんだな。」
「・・・はぃ・・・」

滝夜叉丸の心臓がドクンと波打ち、怒りで顔が真っ赤に染まる。それを見ていた三木ヱ門はただひたすら謝りに徹するしかない。
下手をすれば命が危ない。
いやそれよりも、別れ話を持ち出された方が、三木ヱ門にとっては辛い仕打ちだ。

「ごめん、滝!でも、本当に一度だけの過ちなんだ、ちょっとした好奇心だったんだ、もう、二度と女にうつつを抜かしたりしないから、今回だけは許して!何でも言うこと聞くから、ホントに反省しているから。俺は本当にお前のことだけが好きなんだ。ね・・ねぇ、滝・・・。」

浮気のばれた男はかくも情けなく、恥も外聞もなく言い訳をする。

「『何でも言うこと聞く』?三木ヱ門、それは本当か?また嘘をつくのじゃないか?」
目線を落として、泣きそうな声を震わせて問いかける滝夜叉丸に三木ヱ門はそんなことないと言い張る。
滝夜叉丸が三木ヱ門と呼んでいる内はまだ怒っている証だ。

「本当だ。別れ話以外だったら何でも滝の言うこと聞く。」
「ホントだな。」

そう言ってにっこり笑った滝夜叉丸の瞳の奧に、妖しい光を見た三木ヱ門は、早くも後悔を始めた。








格子窓からわずかに差し込む月明かりが、薄暗い部屋の様子を微かに浮かび上がらせる。
部屋には二人の影、三木ヱ門は座って壁に背を預けて、滝夜叉丸は跪き三木ヱ門の下腹部に頭を埋めている。

「っはぁっ・・はぁ・・滝ぃ、頼む…もう、我慢できないよ。なぁ…。」
「まだだ。我慢しろ。」

三木ヱ門は焦らされ続け我慢も限界に来ていた。それでもまだ精を吐き出すことは滝夜叉丸が許してくれない。

たった一言、苦し紛れの言い訳に使った「何でも言うこと聞く」その言葉が三木ヱ門を苦しめている。
「浮気を許す代わりに、私が良いと言うまで絶対約束を守れよ。」
そう言って滝夜叉丸が出した約束とは「私に手を触れるな」であった。当然、三木ヱ門は反発した。
「そんなぁ、じゃ、今日はお預けなのかぁ?!それは・・・。」
滝夜叉丸は駄々をこねる子供を諫めるように優しく諭す。

「安心しろ。お前は私に手を触れてはいけない。ただそれだけ守ればいい。」
そう言いながら三木ヱ門に口付けをし、舌を絡める。いつもの通りの甘く熱のある口付けだった。




唇を合わせたまま滝夜叉丸は三木ヱ門の服を襟元から肩口へ手を入れするりと脱がせる。三木ヱ門の逞しく厚い肩と胸が露わになる。
唇から首筋へ、そして鎖骨へ下を滑らせ小さな赤い印を残す。

「あ…こら、痕が残るだろう。」
「浮気した罰だ。」

罰だと言いながらクスクスと笑い囁き合う。
全く甘い罰もあったものだ。しかしこれはまだ上辺だけのこと、滝夜叉丸の罰はこれから始まる。
三木ヱ門の胸の小さな赤い珠を舌で転がしながら軽く吸うと、途端に熱い溜息が漏れる。
だんだんに堅くなっていく珠を片方は指先で擽るように、もう片方は湿った音をわざと響かせ舌先であそぶ。
微かなくすぐったさと心地よい快感に三木ヱ門は滝夜叉丸の背中に手を伸ばし抱き寄せた。
すると胸に顔を埋めたまま目線をだけを上げて滝夜叉丸が戒める。

「三木、約束。忘れたのか?」

はっと思い出し、慌てて手を引っ込める。尚も胸の珠を吸い続ける滝夜叉丸を見下ろしながら、
(たまにはこういうのも良いかも、滝の怒りも収まったようだし。)
等と呑気に構えている三木ヱ門だった。

胸から腹へ、つつっと舌を滑らせる。壁を背に座したままの三木ヱ門は、滝夜叉丸の唇が次は何処を攻めてくれるのかと期待の面もちで上から見下ろしている。袴の脇からスルリと手が滑り込み、既に堅くなっている三木ヱ門自身を優しく掴み、ゆっくりと掌で擦り上げる。
それに合わせて三木ヱ門の息使いも少しづつ深く、荒くなっていく。動かす掌はそのままに、滝夜叉丸は唇を三木ヱ門の耳元に寄せそっと囁く。
甘く優しい柔らかい声音で。

「三木…。お前は何処が一番弱かったっけかな?」
「んん、ソコソコ。今、滝が触ってるトコ。」
「これだけで気持ちいいのか?」
「うん。」
「舐めて欲しいか?」
「うん、うん。」

熱に浮かされた目で、こくこくと頷く三木ヱ門に答えて滝夜叉丸は袴を脱がした。下帯は取らないまま、その上から優しく口づける。
白い布の下で堅く熱くなっているで有ろうモノを、滝夜叉丸は時間を掛けて布地の上から唇で優しくなぞる。
その焦らす愛撫に三木ヱ門は我慢成らずに催促する。

「滝、コレ…早く取ってさぁ…。」

直接口に含んでくれ、と言う間もなく、滝夜叉丸は三木ヱ門の下帯を取り払い顔を出したモノを口に含む。
深くまで飲み込んで舌を動かし口の中でそれを弄ぶ。

気持ちはいいが刺激の少ない愛撫に三木ヱ門は腰を浮かして催促する。それに答えて滝夜叉丸は手を添え、唇と舌と共に手でも三木ヱ門を擦りあげる。しばらくはそれで満足していたようだが少しずつ焦れてきた三木ヱ門はとうとう滝夜叉丸に懇願した。

「滝、もういいだろう、なぁ・・・。」
「うるさい奴だな。次はどうして貰いたい?」
「滝に・・・」
「私に、なんだ?」
「ぶち込みたい。」

露骨な表現で思わず赤面してしまったが、滝夜叉丸はこんな事で動揺していられない。まだまだ罰は終わらない。
三木ヱ門の上に跨り、着物の裾を股までたくし上げ、自分の秘所へと三木ヱ門を導く。だが解されておらず、湿っても居ないそこに、人よりも大きい三木ヱ門を迎え入れるのには滝夜叉丸とて躊躇される。

「滝、いくら何でもイキナリは無理だよ。俺が柔らかくしてやるからさ、後ろ向いて。腰を上げて。」
「指を入れちゃ駄目だぞ。舌だけだからな。」
「強情だなぁ…。」

尚も強く釘を差す滝夜叉丸に三木ヱ門は愚痴るが、弱みが有る以上逆らえない。

ぬめりとした感触が滝夜叉丸の双丘の奧にある秘所を優しく湿らせる。四つん這いになり、腰から力が抜けそうになるのをじっと耐える。
なま暖かい舌と吐息をそこに感じながら滝夜叉丸は背筋を駆け上がるゾクゾクとした快感に、本当は指を入れて掻き回して貰いたいのを必死で堪え、声を殺す。
不意に先をとがらせた三木ヱ門の舌が滝夜叉丸の中に入り込もうとする。しかしきつく締まったそこには、そう易々と侵入を許してもらえるはずもなく、ほんの少し先端だけが潜り込んだにすぎなかった。しかしそのもどかしさが滝夜叉丸をかえって焦らし欲情させた。思わず声が漏れ腕から力がガクリと抜ける。

「は、ぁっ・・・・、ぅんっ・・・・ぁんっ…ぁあっ・・・。」
その声を聞いて三木ヱ門がクスリと笑う。

「なぁ、滝だってもう我慢できないんだろう。指の方が絶対気持ちいいって。」
「ダメ…だからな、絶対、…あっ…ダメ。」

頑なな態度を崩さない滝夜叉丸に、三木ヱ門はわざと音を出しながら舌を這わせる。その淫靡な音の響きが滝夜叉丸の耳を刺激し悩ませる。

「三木…き・・さま・・わざと音・・・ぁはっ…出してるだろう…。」
「滝が腰を動かすから音が出るんだよ。それにさ、いくら手を触れちゃダメだからって、恥ずかしくないの?この格好。服を着たまんまで、下だけ丸だしで。これじゃまるで犯して欲しくて我慢できないみたいじゃないか。俺の方からはいい眺めだよ。」

三木ヱ門の言葉の攻めに滝夜叉丸の顔は真っ赤に染まる。改めて考え直すと今の自分はなんという体勢をしているのだろう。常には隠している部分を全てさらけ出し見せている。そう思うと与えられる快感がより一層増し身体を走り、顔は羞恥で紅くなる。このままでは流されて形勢が逆転されてしまうかも知れない。


忍同士、どんな場においても常に相手の弱みを見つけ、そこを攻めることを忘れない。



その間にも三木ヱ門の舌は、滝夜叉丸の秘所からゆるゆるとした動きで果実の入った袋を弄び、更にその先へと伸びようとする。

「滝、もう少し足開いてよ、頭が入らないと届かないよ。」
「届かなくて・・いぃ…あっあっ…もう、やめぇ…。」

三木ヱ門は滝夜叉丸の足の間に潜り込み、堅くそそり立つ滝夜叉丸自身に舌を這わせる。その先端からしみ出た透明のヌルリとした液体を舌でゆっくりと広げ、そして口中に深く浅く含んで行く。滝夜叉丸は力抜けて肩を床に落とし、腰だけを高くあげたまま、小刻みに震えてその快感に耐える。

「ぁっ、あぁっ・三木、三木、もぅ…だめっ、出ちゃうっ!」

滝夜叉丸の限界を感じて三木ヱ門は吸い上げる力に強さを増し、喉元深くまで呑み込む。普段なら手で扱いてやるところだが、今は手を触れるなとのお達しがあるので、頭の動きと唇だけで滝夜叉丸を追い込む。きつい体勢ではあるがそれを楽しんでいる風もある。

「ぁあっ、三木ぃっ…―――――――――っ!!」

滝夜叉丸の声が喉の奥で響き、三木ヱ門にだけしか聞こえない声が聞こえた。

三木ヱ門の口の中に微かな甘みを伴う暖かい液体が吐き出された。
それを口に含んだまま三木ヱ門は滝夜叉丸の足の間から頭を出し、自分の掌に口の中の液体をトロリと吐き出すとそれを滝夜叉丸の目の前へ突きつける。滝夜叉丸は自分の吐き出したものから眼を反らそうとするが三木ヱ門はそれをとがめる。

「ほら、滝、ちゃんと見てよ。こんなにお前の身体から出たんだよ。溜まってたのか。」
力無く首を横に振り腰を落とそうとする滝夜叉丸に三木ヱ門が厳しい口調で言う。
「滝、そのまま!腰は落とすな。」
「貴・・様…私に命令できる立場じゃ…」
「命令じゃない、お願いだよ、滝。」

三木ヱ門はにこりと微笑むと、滝夜叉丸の白い液体を、大きくそそり立った自身に満遍なく塗りつけた。

「三木、何して…」
「仕方ないだろ、滝が手を触れるなって言うから、こうして抵抗を少なくする方法を取らなくちゃね。」
後ろから滝夜叉丸に覆い被さり、自分の手で自身を滝夜叉丸の秘所へと導く。

「行くよ、滝には触れないから自分で上手く動くんだよ。」
「ばか、な…あぅっ!!」
三木ヱ門の方を振り向き、文句を言おうとした滝夜叉丸にはお構いなしに三木ヱ門は自身を突き入れた。

三木ヱ門の突き上げる力に押され身体が離れそうになると、滝夜叉丸は自分から腰を擦りつけ三木ヱ門を求める。いつもはしっかりと抱きすくめられ、三木ヱ門の動きにより自分も快感を得られるが、今は支えがない為に身体が不安定になり思うように快感を貪れない。
三木ヱ門はそれを承知で腰を動かす。自分の動きに滝夜叉丸が狂ったように腰を擦りつけて、無心で自分の動きに着いてこようとする様が愛しくて仕方がない。
空気を求め苦しげに開いた口からこぼれる、苛立って燃え切らない声が鼓膜を擽る。

綺麗な愛しい者が乱れるその様をもっと見ていたい。
だがこちらの方ももう限界、熱を放出したくて仕方がない。

「滝、もう許してよ。お前に触れてもいいだろう、手を使ってもいいだろう。」
その問いかけに滝夜叉丸は夢中で頷いていた。
「いいよっ・・・三木・・・早く・・いいから・・あぁっ・・・。」

その言葉と同時に、三木ヱ門は滝夜叉丸の腰を両手でがっしりと掴み、激しく自分の腰を打ちつけた。
切なげに啼く滝夜叉丸の声がより大きく、熱く部屋に響き三木ヱ門の理性を吹き飛ばす。

肉と肉のぶつかり合う音が響き、それに呼応するかのごとく滝夜叉丸の濡れた声が室内に響く。その肉のぶつかり合う音が更に大きくなり、その代わりにゆっくりと深く滝夜叉丸に三木ヱ門が抜き差しされると同時に、滝夜叉丸はきゅぅぅっと三木ヱ門を締め付け、三木ヱ門は低く小さなうめき声を上げ、滝夜叉丸を白く汚した。



お互いに深く息をつく音だけが暗い部屋の中に聞こえる。三木ヱ門はそっと滝夜叉丸に囁きかける。
「滝、滝、愛しているよ。お前だけなんだ。」
「貴・・様なんぞ・・・、嫌いだ。きらい・・・。」
「それでも俺は滝を愛しているよ。」
「嫌いだ・・・。嘘つき。」
「嘘つきは滝のほうだろう。」
「嫌い・・・。」
「ホントに?」
「・・・・・。」





目を覚ますと三木ヱ門が滝夜叉丸の身体を清めていた。冷たい手ぬぐいで顔を拭いてやりながら、三木ヱ門は低く小さな声で話し掛ける。

「ごめんよ、滝。」
「何に対して謝っている。」
「色々と・・・・独りで仕事に行かせたのと、女の事と、手を使った事と、あと・・・・。」
「あと?まだ何かやったのか?」
「滝が寝てる間にもう一度やってしまった。」
「え!?本当に・・・気付かなかった・・・・。」
「ああ、違うよ、滝の寝顔を見ながら独りで・・・・・こう・・・・。」

軽く拳を作って上下に振る仕草をする。
あきれた滝夜叉丸は、大きくため息を付いて罵る。

「変態。」
「滝が俺を変態にするんだよ。」

悪びれもせず楽しげに答える。


「あの女の前でも変態振りをさらしたか?」
「いや、まぁ・・・普通だったか?滝、なんで女将の事そんなに気にするんだ。俺には滝が一番だって解らないか。」

滝夜叉丸は目線を落とし心配そうな表情をする。それは酷く弱々しい顔だった。

「女が敵となると・・・不安だ。」
「不安?俺が女なんかに惚れ込むなんてこと・・・・。」
「そうじゃない、そうじゃないんだ三木。私達には未来が無い。先を託すべき子が残せない。もしお前が未来を望んで女を選んだら、私はどう太刀打ちできる?強くなれと言われればいくらでも腕を磨く。でも子を欲しいといわれたら・・・こればかりは私にはどうしようもない。」


弱々しく潤んだ瞳で見つめられるとどうにも弱い。ちょっとした浮気のつもりがこうまで滝夜叉丸を追い込むとは思っても居なかった。
反省して今後は女に手を出さないと約束したが滝夜叉丸はあっさりそれを拒否した。
浮気をしたければすればいいと言う。


「浮気ならいい。相手が女でも構わん。」
「どうしてさ。さっきはあんなに怒ってたくせに。」


   たまには・・・。

 なに?


   あんな逆転もいいかも。
 

頬を赤らめて小さく呟く滝夜叉丸を抱きしめて三木ヱ門はそうか、そうかと大笑いする。
大笑いしても心の底では三木ヱ門にも不安はある。
未来を残せない。
それを思い悩んでいた滝夜叉丸が不憫でならなかった。子を残せない自分は見限られるのでは無いかと滝夜叉丸を不安にさせた事が情けなかった。


「俺は今が在れば良い。滝と一緒の今がいい。」
「うん・・・・でも・・・。」
「なんだ?」
「浮気されたことは忘れないからね。」


しっかりと釘を打たれた三木ヱ門はそれから平謝りに徹した。
久しぶりに睦み会った二人の夜は更けていく。





・・・fin・・・



2002/03


あふ〜。やっと終わったぁ。これ2001年3月から書いてました。いいかげん終わらせたかったんだよね。
結局なにが書きたかったのかは今となっては解らなくなりました。三木くんの浮気が書きたかっただけじゃなかったかなぁ。うん、そんなトコ。
滝ちゃんは自分の美しさに自信があるってこと。なんかよくわかりません。




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