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つぎのやすみは


紗夢が炎天下の路上にしゃがみ、まずはその倒れている男の顔を味見する。 まあ悪くは無い顔だが、いかんせん客の娘達を惹き付けるような「影」が無い。
「生きてるアルカ?」
熱気に風景も揺らめく飯店の前には人は少なく、地面を焼く日差しが暑い。昼食時の客のピークも過ぎ、飲茶の用意を始める時間である。 いつもと同じ時間の流れ、いつもと同じ場所。 1つ違うのは、図体のでかい男が店の前でこれ営業妨害と倒れている事だ。

しかし変な格好のオトコ。
一言で言えば露出狂。
邪魔。
ウェイター向きの顔では無いし、働かせても皿洗いや力仕事が良い所だろう。 女性客の集客を見込んでいる今、助けてもあまり得にはならない、か。これがハーフの美形なら喜んで助けるのだが。 店の用心棒ぐらいならどうにか筋骨隆々とした体格は活かせるだろうか。 暑苦しいけど。

しゃがみ込んで色々と画策していると、男がゆっくりその目を開く。
「……誰、だぁ?お前さん、……」
人懐っこそうに見上げる表情と緊張感の無い声に、悪人では無さそうだと思う。 なつかれたらなつかれたで面倒だが。 さっさとライバルのあの飯店の前に投げ捨てて来れば良かった。

「……スマン、見えちまった、……白、色……ごふッ!!?」
「コノ変態ッ!!」
その腹に鉄拳がめり込み、男はしばらく息を吹き返す事は無かった。


意識の無いその男を店の厨房に引きずり込む。まずは口止めだ。 うっかり手を出した以上、炎天下に男を放置したまま暴力店長紗夢さんとしてご近所に名を売るのは御免である。
「……腹減っ、……た……」
厨房の片隅の椅子の上で、うわごとのように男は言葉を吐いている。
「ちょと待つネ。起きたら舐めとくヨロシ」
この炎天下では熱射病にもなりかねない。卓上に水と小皿に盛った塩を置く。 得体の知れない男だが、腹を空かせた者に悪人も善人も無い、それが料理人としての志だ。 恩を売っておけば大食漢の常連客がまた1人増えるかもしれない。

ちょうどランチの残りが大量に有った。 今日は平日、明日は定休日だ。少ない客足は見えている、余り物は使っておくにこしたことは無い。 炒飯を炒め直す中華鍋に勢い良く炎が上がり、食欲を誘う胡麻油の香りが厨房の中に立ちこめる。



「いやー美味かった!恥ずかしながらこの御津闇慈、身銭に困り路頭に迷った次第。誠にかたじけない、この礼は必ず!」
目を覚ました後、物凄い勢いで目の前の料理をたいらげた男は、今は頭を卓上にこすり付けている。
「口先だけの礼なんテ無駄ヨ、無駄」
義理には固そうだが無一文のこの男に、紗夢が軽くため息をつく。 空の皿が散乱した木のテーブルの上に腰掛け、問いかける。
「それよりアンタ、カラダに自信有るカ?」
「はぁ!?」
形の良い唇から漏れる予想もしない言葉に、眼鏡の奥の視線は一瞬たじろいだ。 視線の先では、足が組み変えられる度に、チャイナドレスのスリットから白い肌がのぞく。
「ってぇと、その、だな、……身体で払えってぇ事?」
直後、闇慈の淡い期待は木っ端微塵に打ち砕かれた。 たった食事1食で格好の労働力が手に入った事に、紗夢が悪魔の笑みを浮かべる。
「明日、山までついて来るヨロシ」


翌日山での龍狩りに付き合い、日がとっぷりと暮れるまで山中を走らされ紗夢にこき使われたその男は、 後に紗夢の店の食い逃げ・ツケ踏み倒しの常連として店内に名を馳せる事となる。

〜続く(かも)〜



本館闇紗夢100質リクお答え第1弾、得票が多かったQ6の闇紗夢はじめて話です。 リクエスト下さった方、ありがとうございました! 題名は懐かしのドリカムの"晴れたら良いね"の歌詞、「山へ行こう、次の日曜〜」から。

闇慈さん尻にひかれました。しかもお呼びでなかったらしいです。 そしてはとやの脳内闇慈はいつもはらぺこです。この後山で因縁の生龍VS絶龍直接対決。 バカギャグ漫画にしたくなって来ました。 とにかくお客さんのおねえちゃん達をきゃあきゃあ言わせたいらしいです、紗夢さん。 夢は世界にはばたけ、「ホストクラブ生龍焼」。 闇慈、ホスト……ある意味天職かも。しゃべりと酒豪で問題無。2003/07/10

闇慈色だった背景を明るめな色に変更しました。炎天下っぽく。そして紗夢さんお色気ショットを何気に追加(笑)2003/07/11

素材提供 Simple@Ism:司馬様

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