覚悟だなんて、そんなもの。

―――――とっくにできていた、はずだった。






膝を抱えて、泣くことができたら。
そしたらどんだけ楽だったか知れない。
手のひらで視界を遮って、いい加減かなり見飽きた、どこもかしこもただ白い病室の様を締め出して。
何となく、さっきの大佐の顔を思い出した。
思考が迷宮をさまよう。
俺よりよっぽど痛そうだった。
覚悟は決まってたはずなのに、後悔なんてしてないのに、それでもこんなに痛くて、行き場がなくて。
けど大佐は。
あんたの方が、俺よりもずっと。
いくら考えたって、きっと答えなんか出ないけど。
堂々巡りを繰り返して深みにはまるだけだって、そんなことはとっくに分かってるけど。




喪う覚悟はあった。
自分が死ぬ覚悟、仲間が部下が時には上官が死ぬ覚悟。
それから、奪う覚悟も。
他人を殺す覚悟だけじゃない、俺の命令で部下が命を失うかもしれない覚悟、そんな命令をそれでも出す覚悟。
怖かろうが嫌だろうが、どんな仕事だろうと結局のところ軍人には必須。
大佐を喪う覚悟は持ってない。
それだけはあってはならないし、その覚悟だけは絶対にしちゃいけない。
だって、俺は大佐の護衛だ。

だから。
まず思ったのが「護れなかった」。
目が覚めて大佐の顔見て、あぁ、生きてたんだってとりあえずほっとして、次いで自分の不甲斐なさを反省する。
自分がどんな怪我をしてしまったのか知ったのは、大分経ってからで。
そんで、ついさっき、気持ちの整理なんてもちろん付かないで、ただ激情のままに、大佐を思い切り罵った。
その顔は、あまりにも痛そうで。

本当に、何て顔してたんだろ、あの人。
大佐だって部下を失う覚悟は持ってるはずなのに、そう思って不意に気付く。




あぁそうだ、俺は、命の覚悟はできてたけれど、役割を失う覚悟は持ってなかったんだ。




何だ。結局全然足りてなかったんじゃねぇか、俺の覚悟。
いつの間にかループを抜けてたらしく出てきた結論は情けないもので我ながら呆れたけど。
そのまま考えを止めるのは、何だかもったいない気がした。
大佐は。
命は永らえた、でも役割を失ってしまった部下も、ちゃんと切り捨てる覚悟があったんだろうか。
すぐに考え直す。
あるわけねぇよな、だったらきっと、あんな顔するはずがない。

後から来いと言った。
置いて行くと言った、その舌の根も乾かないうちに、だから追い付け、と。
切り捨てろって言った俺を捨てる覚悟もできないで、逆にそんな部下までも抱え込もうだなんて。
無意味な駒さえ捨てられない、けどそのリスクを自分で何とかするってことで。
それは捨てる覚悟よりもずっと大変なことだってことぐらいは俺にも分かる。
分かるけど、足りない覚悟を埋めるのに、代わりにもっと大変な覚悟を決めるって、無茶苦茶な。
今の俺を抱え込んだって役立たずなことも、実際俺が治って追い付ける可能性なんて低いことも、
分かってて敢えて言うあたり、相変わらずいい性格だし。
まあ、そんなこと、とっくに知っていたけど。
大佐の無茶苦茶なんて、今に始まったこっちゃないけど。
本当にどうしようもない人だ、中尉だって大変なのに。




ただの苦笑だったけれど、あの日から初めて俺は本当に笑えて、それに気付いて、
それで昨日よりちょっとだけ前向きに考える。
どうやって追い付いてやろうか。
あれだけ言われて追い付けないのは悔しいから。
追い付く覚悟ができるだろうか。







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かなりしつこいと思いつつまたしてもハボ
そして無駄に長い(短く分かりやすくまとめる才能なんて持ってません)
ハボがうにょうにょな思考回路ですみません←うにょうにょなのはお前だ

05.02.20
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