(何で俺は此処にいるんだろうか……?)

 

 冷静にそんな事を考えているのは、決して現実逃避では無いと思いたい。

 ―――思わせてください。

 

「どうしたの?」

 

 さくらのそんなあどけない言葉に、俺は軽く首を振る。

 その行動に意味など無いが、とりあえずはさくらを安心させたかった。

 俺の意図を感じ取ったのか、それとも間違えて取ったのかは分からないが、さくらは俺に微笑むと作業の続きに入る。

 

 ……本当に、どうして俺は此処にいるんだろうか?

 

「んっ……んっ……ん……」

 

 純粋な水音とも違う、何処か―――いや、何とも言えない音が辺りに響き渡る。

 まだまだ深夜になるには早い時間……っというより、夜真っ最中だ。

 深夜にならないとはいえ、まだ春先だとはいえ、この季節の陽が落ちるのはまだ早い。

 窓から差し込む光は月明かりになり、少し離れた道路からは車のエンジン音と空気を切り裂く音が時々聞こえてくる。

 

「さくら、大丈夫か?」

 

 大丈夫も糞もないが、今俺が言えるのはこれくらいしか無かった。

 ―――いや、俺がやらせてるんだから……希望したのだから、元を正せば自業自得なのかもしれないが……。

 

「んっ……はぁ……んっ、大丈夫だよ」

 

 本心かどうか俺には分からないし、知る術もない。

 只、俺が知りうるさくらの表情の中でも、最高級の笑顔がそこにはあったのだけは確信できた。

 

 俺は作業を再開したさくらの頭を撫で、同時に髪を指で梳く。

 暖かな体温と同時に、零れ落ちるような繊細な相変わらずの髪質に俺は何度もそれを繰り返す。

 

「ンンッ……はぁ…くぅっ……ンンぅ……」

 

 まだまだ慣れていないその動作……正直気持ちが良いとは言い難いが、それでも強弱を付けたり奥まで飲み込もうとしたりと、さくらなりの工夫に腰が浮きそうになる。

 尤も、イクとかの話では問題外かもしれないが……今の俺には、こっちの方がさくららしく何処か微笑ましく思う。

 

 まだ慣れていないせいで、顔を時々顰めながらもそれでもゆっくりと、確実に俺のモノを上下に揺らしてシゴク。

 っとはいえ、それも……一生懸命になるのも最初のうち……。

 

 いつしかその動作を繰り返す内に、さくら自身の頬が上気し何処か憂いを帯びた目で俺のモノを見つめる。

 上下させていた口だけでなく、右手で俺のモノを固定し、もう一方では動かしやすいように身体の位置を可変的に固定するために使っている。

 

「ふぅぅ……んっ、はぁっ、んっ……ぁあっ……ンンっ……ンンァ……」

「さくら……くっ、いいぞ……」

 

 此処まで来たら、照れも何も無いと思うなんて、最初の俺なら考えすらしなかっただろうと、何処か遠い部分で考える。

 

 俺はさくらの髪を梳いてた手を止めると、右手でさくらの頭―――後頭部に添えると、さくらの速度に合わせて後押しするように上下させる。

 さくらを……身近にいる幼なじみの少女を……可愛い彼女を……この手で、自分の欲望のままに従わせる……。

 そんな、さくらの事を『道具』と考える自分に嫌悪する自分と、それに快楽を示す自分……。

 尤も、こんな時に正常な思考等出来るわけがないので、どちらも俺の本心であり、同時に本心でもない事くらいは分かっている。

 

 背をかけるような快楽……。

 頭ではなく脊髄反射で行動するのを実感するかのような感覚が支配する。

 

 イクとかの話では問題外と言ったが、それでも繰り返されれば別だ。

 人とは不思議なもので、愛のない単調な動作でもする事が出来る。

 まあ、愛のない行為なんてのは人によっては最低なのかもしれないが……まあ、『種』の保存と『主』の生存が本能レベルで働いているから致し方ないのかもしれない。

 

「さくら……そろそろ……」

「んっ……」

「っ……」

 

 返事をしたのだろうが、その返事の時にでさくらの舌が丁度亀頭に当たり、低く唸ってしまった。

 さくらは一度俺のモノをくわえるのを止めると、固定してた右手でシゴキながら今度は真っ赤な舌を伸ばし、ペチャっと舐め始める。

 ピチャ、ペチャっと、いやらしい水音が響く合間にも、シュッ、シュッっと空気を駆ける摩擦音が交互に入る。

 

「ンンっ……はぁっ、ンンっ……ぁっ……あぁ……はぁ……」

 

 紅葉のように色づいた舌が、絡みつくように筋を、裏を、亀頭、尿道とあらゆる所に這い回る。

 頭の芯が痺れてくる……俗に言う射精感が高まるのが驚くほど敏感に脳に伝達される。 

 

「くっ……さくらっ!……ンッ、出るっ!!」

「んっぅ!……ふぅ、ぅううっ……ンンっ……ぅ……ふぅう……ンンッ……」

 

 さすがに外だと……顔にかかると後が大変だと思い、瞬時に口内へと切り替える。

 俺のモノがさくらの暖かい口内で、ビクビクと未だに震えている。

 ビュッ、ビュッと吐き出されるたびに細かく震えながら、最後の最後まで俺はさくらの口内に白く濁った液を注ぎ込んだ……。

 

「ぅっ……ンぅ、ッンン……ふぅ、くぅっ……ふぅうっ……」

 

 射精した瞬間は少し驚いたさくらだったが、すぐに穏やかな瞳変わり、愛おしそうに目を細めながらも俺の白濁液をコクッ、コクッと喉を鳴らしながら、ゆっくりと飲み込んでいった。

 まだ飲み慣れていないせいで、何処か必死さが抜けないが、そこまで傲慢に俺は慣れないし強制も出来ない。

 俺だって自分のを飲んだことは無いから知らないが、世間では『苦い・不味い・臭い』っというのが一般論だしな。

 

「ンン……ふぅ、ンンッ……ぅっ、ンッ……」

「……大丈夫か?

 別に無理には飲まなくても良いんだぞ?」

 

 そう言いながら、俺はさくらの頭を出来るだけ優しく撫でる。

 しかし、今更ながらよく考えれば、飲まなくても良いのなら俺がどうにでも出来た話であって、全く持って矛盾している事に気が付く。

 ―――まあ、これからのことを考えるとさくらの口内に出した方が良いんだが……これはこれで、駄作のAVのようにはいかないものだ。

 

「ンッ……はぁ、はぁ……大丈夫だよ、祐。

 祐のせいで、何度も飲まされてきたから」

 

 そう言って笑顔で非難するが、少しむせたようで「けほっ、けほっ」と可愛らしく口を押さえながら小さく咳き込む。

 さくらは誤魔化すように笑みを浮かべると、飲み込みきれなかった液や舐めていた時に付いた唾液等諸々を、取り出したハンカチで拭き取っていく。

 俺はそんなさくらを見ているうちに、何故か温もりが恋しくなった。

 手を伸ばしこちらに引き寄せるように手を掴むと、さくらも意図が分かったようで、立て膝のまま少し歩いた後、ぽすっと俺の胸に納まるように倒れてきた。

 

「……あったかい……」

「そっか……」

「祐……心臓がドキドキいってる……」

「まあ、疲れたしな」

「疲れたのわたし……」

「…………まあ、大変だったな〜……」

「棒読み……」

「…………」

「むぅ〜……ゆぅんっ!?」

 

 いい加減この押し問答も疲れてきたので、俺は手っ取り早く上目遣いに見ていたさくらの口を塞ぐ事を脳内可決した。

 もちろん、両手はさくらの拘束に必要なので使えない。

 俺は撫でていた手を止め、さくらの腕の上から少し強めに抱きしめ、そのままさくらの熟れた果実に吸いついた。

 

「んっ……ふぅ……くぅ……。

 んんっ……ふぁ、ンンッ……」

 

 この状態で普通のキスで収まるわけがないので、当然舌を入れる。

 さくらも慣れてきたようで、両目を瞑り俺の舌を受け入れ、絡ませてくる。

 息継ぎの度に……唇を離すたびに、艶めかしい銀の橋が架かり、同時に熟れた溜息が漏れる。

 

「ふぁ……んんっ……ぁっ、ンンっ……んっ、ぅう、ンッ……」

 

 ピチャ、ピチャっと唾液の絡まり合う音がやけにうるさく聞こえる。

 胸に押しつけてくる柔らかな膨らみと、リンスの香りが俺の思考を堕としていく。

 

 暫く飽きもせずにディープなキスを繰り返すと、今度はさくらの唇と距離を取ったまま舌だけを絡み合わせる。

 瞑っていた目を開け、パッチリとした大きな瞳を細めて舌を動かし、俺の舌に万遍なく這わせる。

 さっきまで俺のモノをくわえて、そして飲み込んでいたさくらの口と舌……だが、そんな事は既に俺にとってはどうでも良かった。

 

「はぁ、はぁ……ンンっ、んっ……はぁ、はぁ……」

 

 虚ろな目―――いや、盲目的に俺の舌の動きを確かめては自分の舌を動かしていくさくら。

 その献身的、盲目的な姿に頭が真っ白になり、体中の血が沸騰するかのように感じた。

 

 ―――っとはいえ、さすがにこのままでは問題だ。

 俺はさくらの舌が絡みついた時を狙って、もう一度深くキスをする。

 

「んんっ……はぁ、ぅう、ンっ……ふぅっ、ンンっ……」

 

 舌だけを最後まで絡ませながら俺はさくらとの距離を空けていくが、銀の糸はいつまでも俺とさくらを繋がせていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うう……やっぱり恥ずかしいよ……」

「まあ……そりゃな……」

 

 真っ赤に染めた頬を両手で冷やしながら仰向けになっているさくらがそう言うが、俺はそんな曖昧な返事しか出来なかった。

 現在の状況。

 俺、春物の私服。

 さくら……高校時の制服。

 

 そりゃ、いろんな意味において恥ずかしいと、男の俺でも思う。

 只、そんな俺の心境とは別に、俺のイチモツははち切れんばかりに元気だった。

 

「……祐の変態……」

「マテ――っというか、マッテクダサイ。

 そもそも……元はといえば、さくらが言ったんだろ?」

「うぅ〜……言ったけど、この格好でするとは思わなかったんだもん……」

 

 そう言って、プイッと顔だけを横に向ける。

 相変わらず赤く火照ったままの頬と顔の横に投げ出した両手が艶めかしく、ゴクッと自然と喉が鳴ってしまった。

 

 俺は捲れてお腹が見えているさくらの制服に無言で手をかけると、ゆっくりとたくし上げていく。

 肌に触れた瞬間、少しビクッと震えたがすぐにそれも無くなる。

 さしたる抵抗もなかった為、あっさりと目標の膨らみが見えてきた。

 

「フリルの白……」

「えっち……。

 ……祐は嫌い……?」

「いや……さくらに合ってて良いと思うぞ?」

「……遠回りに子供って言ってる?」

「―――黙秘権を行使します」

「むぅ……」

 

 いつになっても、俺達は変わらない実感させられる。

 でも、それが俺とさくらであり、これからもずっとこんな感じでやっていくんだと思うと、心が温かくなっていく気がした。

 

「んっ……はぁっ……ゆうぅっ……」

 

 零れるさくらの吐息……。

 俺はそれに僅かに耳を傾けたまま、手にフィットする双丘を揉みしだく。

 真新しいフリルの冷たい手触りと、相反する露出した肌の体温の感触が気持ちいい。

 

「はぁっ……んんっ、くぅぅ……はぁ、はぁ……」

 

 さっきとは別の意味で頬を真っ赤に染めるさくら。

 投げ出していた両手は堅いマットを掴むことは出来ないと悟ると、俺の腕へを伸びてきてギュッと袖を掴む。

 

 俺はさくらの感触を生で味わうために、ブラジャーを取らずにそのまま上にあげる。

 主張するかのようにさらに小さな膨らみがツンッと、痛いくらいに空に伸びていた。

 

「さくら……痛いくらいにたってるぞ?

 ……そんなに気持ちよかったのか……?」

 

 俺は戯けながらそう言うと、下からこねあげる様に揉みながら、その先端の突起をくわえる。

 そして、そのままキュッと軽く歯で挟む。

 

「きゃぅっ……!!

 はぁ……はぁ……だめ……んんっ!

 ゆう、かんじゃだめぇ……!」

 

 さくらの甘い声……。

 手にフィットするくらいの丁度良い大きさの胸をゆっくりと下から揉みながら、俺は突起をしゃぶり続ける。

 時々甘噛みしたり、吸ったりと、転がしたり……強弱をつけながら、じっくりとさくらの味を堪能する。

 余ったもう一方の手を反対側の突起に持ってくると、きゅっとつまむ。

 

「はぁんっ、ぁあっっ……ゆうっ、ぁあっ……!

 ……いいよぉ……んっ、はぅっ……そこ、んんっ……!」

 

 これでも、さくらと身体を合わせるのはかなりになる。

 まあ、向こうに行ってたときの分を取り戻そうと、連日連夜やった時もあるが……まあ、それなりの数をこなしてきたつもりだ。

 元々幼なじみなさくらだ。

 弱いところだって分かるし、どんなところが感じるかは数回身体を重ねればすぐに分かってきた。

 もしかすると、さくら自身より分かっているかもしれない。

 

 さくらの大きすぎず……だからといって小さくもない胸が、俺の指によってマシュマロのように形を変えていく。

 その度にさくらの甘い声が響き、いつの間にか俺の首回された手に力がこもる。

 それに逆らわず、俺はさくらの胸に顔を埋めると、突起を必要以上に舐め続けた。

 

「やぁ……んんっ、はぁ……」

 

 荒い吐息に合わせるように、さくらの身体が熱く火照ってくる。

 俺は少し止めると、首に回された腕の力が弱まるまでしばらく待つ。

 双丘の間に頭を沈め、さくらが落ち着くまでじっくりとその体温を、心音を自分の身体に刻み込む。

 

「はぁ……はぁ……ゆう……すき……はぁ……好きだよ、祐……」

「……ああ、俺も好きだぞ。

 さくらを壊したいくらい愛しくて……好きだぞ……」

 

 そう言ってから、自分の嗜虐性が含まれた言葉に少し嫌悪し、疲れているんだと納得させる。

 ふぅ……どうも、俺はこういう場合、あまり強くないらしい。

 

 俺はさくらが落ち着いたのを見計らって、グッと両腕に力を入れ身体を離れる。

 捲られた冬服の紺の制服と白のコントラスト、そして月夜の輝きがさくらをより一層幻想的に見せる。

 渡さない―――いや、渡したくない。

 そんな事をこんな時なのに思ってしまう。

 

「……祐?」

「さくら……好きだから……ずっと好きだからな……」

「うん……。

 私も……ずっと好き……。

 ずっと……ずっと……ずっんんっ……」

 

 俺は喋っているさくらの口をキスで塞ぐ。

 ピチャ、ペチャッ……そんなありふれた擬音――陶酔の音が耳をざわつかせる。

 柔らかな口内に舌入れその隅々まで味わう為に、息継ぎするのさえもどかしく感じる。 

 

「はぁ、んっ……んぅっ、ぅんんっ……はぁっ、んんぅっ……ハァッ……」

 

 さくらの唇を深く奪い、お互いの舌を絡ませながら、唾液を交換し合う。

 同時にさくらの胸の愛撫も忘れずに、突起を重点におきながら揉みしだく。

 時々そそり立った突起に当たるたびに、さくらの口から一際甘い吐息が漏れる。

 

「ひゃっ、はぁっ……!」

 

 驚きと歓喜を足したような声が、密室の倉庫に響く。

 俺の指がさくらの大事な場所へと触れたせいだろう。

 まだ恥ずかしさがあるのか、時々足がそこを隠そうと閉じてくるが、俺の身体が邪魔でそうすることも出来ない。

 

 こちらも白のフリルで揃えた下着の上から、俺はさらにさくらの部分を指の腹で擦りあげる。

 指の上下によって捲り上げられたスカートの裾……その中途半端さが、俺の欲をさらに沸き立たせる。

 

「はぁ……ぁあ……ぁっ……!

 ゆう……はぁっ……ゆうっ、んっ……」

 

 薄布を指で押し上げるように刺激していく。

 生暖かい湿った感じと、何処か汗のような粘った感触を感じつつ、俺は指をさらに深く押し上げていく。

 刷り上げる指とは別の指に触れる、サワサワとした感じや肌の体温、薄布の心地よさ等……あらゆる感覚が敏感に感じ取れ、それでいて俺の男を刺激していく。

 

「んっ、はぁっ……わたしぃ……こんな……んんっ……!

 はぁ……はぁ……やっ、だめぇ……こんなにっ……はぁっ……」

 

 先ほどまでの下着の感触が無くなり、代わりに湿り気を多分に持った感触が大きくなる。

 ベトベトしていて、それでいて吸い付き絡まるような感触……。

 きっと、今下着を見れば、本来の役目を放棄し、湿り気を帯びた下着は透け、その奥のさくら自身までくっきり見えるだろう。

 

「ゆうっ……ぁあっ……だめぇっ……わたしっ……もうっ、はぁっ……おかしくっ、んっ……なっちゃう……はぁっ……ぁあっ……。

 んっ……はあっ、わたしぃっ……あぁっ……がまんできっ……はぁっ……」

 

 俺はそんなさくらの声に指の動きを止めると、そっとさくらの耳に顔を寄せる。

 そしてさっきまでさくらの部分を擦り上げていた、濡れた指をさくらに見えるように視界の中へ持ってくる。 

 

「さくら……こんなに濡らして……あれだけで気持ちよかったのか……?」

「いやぁ……ゆう、だめだよぉ……。

 そんなのみせちゃ、だめぇ……」

 

 顔をさらに真っ赤に火照らせると、フイッと俺から――俺の指から視線を逸らすさくら。

 俺にはそんなさくらが愛おしく、そして可愛いかった。

 

「……んっ……はぁっ、ぁっ……ンンっ……はぁっ……」

 

 さくらの耳から唇へ移動し、徐にそれを奪い口内へ侵入する。

 先ほどまで拗ねていたような瞳だったのが、すぐにとろんっとした……恍惚そうな瞳に変わり、俺の舌を絡め、離さないかのように求めてくる。

 

「さくら……いいか……?」

 

 橋が架かったままの状態でそう言うと、さくらは息を絶え絶えにしながらもコクンと微笑み頷いてくれた。

 俺はゆっくりとさくらから離れ、そして下着に手をかけ―――

 

 

 

 

キキッ!!

ボッボッボッ……

ヴヴヴゥゥゥ……

 

 

 

 

 ―――って……はあ〜……ジャストでミートなタイミングで邪魔しちゃってくれたの何処のどなた?

 

「はぁ……はぁ……なに……?」

「車……みたいだけど……」

 

 落ち着きかけているさくらの言葉に返事をしつつ、俺の頭には車から連想されるある一筋に可能性が出てきた。

 どうもこういう時、人というのは普段あたらないくせに、何故か高確率であててしまう。

 それにしても……正直、これが当たると不味い……。

 

 俺はさくらに静かにするように言った後に、唯一の窓に手を掛け、そっと音がしないようにロックを外し窓をゆっくりと開けていく。

 カラカラっと音はしたものの、外のエンジン音の方が遙かに五月蠅いため問題ないだろう。

 こちらにライトが向いていないのが幸いだったが、それでも防音効果を1つ解除したことにより、先ほどよりも室内の騒音度は上がって五月蠅かった。 

 先ほどの静けさとシチュエーション、加えてムードを返せと叫びたいが、明らかにそれは自分に不利にしかならないので自重する事にした。

 

「……っ……はぁ〜……やっぱり当たったか……」

「……祐?」

 

 俺の盛大な溜息と言葉に、さくらは服を整えるのも忘れて、こちらを振り返る。

 露わになったままの胸をスカートから除く白いフリルが目に付き、このまま押し倒して最終カットへ突入したいのだが……生憎そうもいかなくなってしまった。

 ―――いや、ある意味此処で分かったら救いかもしれない……。

 

 俺はとりあえずさくらにシーっと人差し指をたてて合図をする。

 何故かさくらが、俺と同じ様に人差し指をたててシーっと真似をする。

 そんな、さくらに俺の焦る心は不思議と静まり、冷静な頭が戻ってきた。

 

(単純だな……俺も……)

 

 俺はそう思いながらも、窓をゆっくりと戻しロックをしっかり掛けるとパンッ、パンッと音が響かないように小さく手を叩く。

 そして、上半身だけ起こしているさくらの前で立て膝を付くと、そっと頬に手を添え触れるだけのキスをする。

 先ほどまでの濃厚なキスとは違い、俺の頭を冷静にさせてくれる……。

 

(―――さてどうするか……)

 

 俺は、頬をほのかに染め相変わらず意味を掴みかねているさくらから視線を外し、迫り来る恐怖にどう対処しようかその頭をフル回転させた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……祐……」

「大丈夫だ……」

「でも……」

「俺が信じられないか?」

「そうじゃないけど……でも……」

「良いから……大丈夫だから……。

 それに、いざとなっても俺が側にいる。

 だから、信じろよ」

「うん……祐の事は信じてるよ、最初から。

 でもね……」

 

 僅かに光の漏れる隙間から、さくらの顔に殆ど等間隔に光と影の短い横縞が幾つか出来る。

 勿論さくらの真後ろというほぼ同じ位置にいる俺にも、多分同じような位置に横縞が出来ているんだろうと思う。

 ―――実際にはさくらが壁になっているから、殆ど暗闇に支配されてるが……。

 

 ……締め切った室内の温度は正直暑い。

 僅かな隙間しかない『此処』に風通しが期待出来るわけもなく、そもそも密閉に近い状態だ。

 元々『先ほどの場所』だって窓は1つしかないし、その窓にしたって声が漏れないように締め切っておいた。

 

 さっきの光景を見た後、俺の脳は咄嗟に此処に隠れろと命令を出した。

 他にももっと良い案が―――それこそこの場から撤退するのが一番良かったのかもしれないが、もうどうにもならない。

 『此処』は『先ほどの場所』とは違い、露骨には見つからない。

 只、用心深く……っというか、それなりに注目して見るとあっさりバレル。

 

 そもそも、人にとって都合の良い場所というのは、大抵が状況が逆になると不利になる事が多い。

 まあ、利便性とセキュリティとの相乗りは不可という世間的な常識の1つだけどな。

 

 何を言っているのかは分からないが、壁一枚――正確には2枚――向こうに話し声が聞こえてくる。

 閉まっていた扉は開かれ、OFFだったスイッチは押されている。

 正直、さっきとは別の汗が流れ、テンションも下降気味だ。

 ―――尤も、人というのはピンチになればなるほど、興奮する場合が多い。

 恐怖、畏怖等の場合は別だが、この場合は興奮する要素が多分にある。

 

 ―――っとでも言って納得しないと、俺が只の変態になってしまう。

 

「祐?」

「んっ、どうした?」

 

 声が漏れないように極力絞った音量で俺に問いかけるさくら。

 俺はその声に、視線は外に向けつつも同じように小声で答えた。

 

 さくらを後ろから抱きしめて俺の足の間に体操座りでいる格好上、さくらは振り向きながらの上目遣いで見る必要がある。

 肌と肌の触れあう感触、生暖かい吐息、僅かな風に乗って流れてくる髪の匂い、少し早くなっているお互いの心臓の鼓動……状況が状況なだけに、普段興奮すべき材料が、逆に落ち着かせてくれる。

 

「……大丈夫、かな……?」

「多分……。

 こういうときは、普段の行いがモノを言うからな……大丈夫だろう……」

「うーん……そうかもね。

 だって……」

「「私(俺)がいるからね(な)」」

 

 重なるさくらの俺の声に、俺たちは声を殺して笑った。

 長年付き合っている幼なじみ……こういうとき、凄く気持ちいいと感じる。

 家族とも違い、赤の他人とも違う関係。

 『幼なじみ』……たったそれだけの言葉の繋がりが、何よりも脆く、そして屈強に思う。

 尤も、今は『恋人』という糸で強度を増しているが……。

 

 ガラッガラッガラッ……

『んっ……はあっ……。

 片付けくらいしといて欲しいよね……』

 バンッ!

『さてっ……まずは……ボールだよね。』

 ガッ、ガシャッ!

 ガシャッ!

『はあ……何でこんな奥にあるかな……』

 

 そんな声と響くような振動が続いた中、しばらくすると何も聞こえなくなる。

 どうやら、ボールの入っているカゴを出そうとして他のモノに引っかかった模様。 

 

『っ……もうっ!

 ……まあ、まだ時間あるし後でいいか……』

 

 そんな声と遠ざかる足音を最後に、先ほどと同じような静寂が戻ってくる。

 同時に、横縞になっていた光のラインが消える。

 どうやら扉は閉められ、ついでにスイッチもOFFにされたようだし……まあ、しばらくは来ないという事だろう。

 

「はぁ〜……。

 何とかばれなかっキャむっ!!?」

 

 大きな声を出しそうだったさくらの口を俺が手で塞ぐ。

 多分……っというか、絶対に俺のせいなのだが、ここで声を出されると非常に不味い。

 

 俺は左手でさくらの口を塞いだまま、右手で素早くかたくし上げ、露わになっている胸を揉みしだく。

 狭い空間で密着しているせいか、じっとりと汗をかいているそこが必要以上に手に張り付き、何処か興奮させてくれる。

 

「ぁんっ……むッ……んんッ……」

 

 ダメ……そう言えないからだろうか、さくらは俺を濡れた瞳で見上げ首を横に振る。

 尤も、その瞳を向けられたところで、止める奴などいない。

 口では止めろと言っておきながら、瞳では相反する光を宿している……そんな時には……。

 

「声出すなよ?

 聞こえても良いなら……別だけどな……」

 

 普段なら絶対しない威圧的、加虐的な態度でさくらにそう言うと、塞いでいた手をどける。

 それと同時にさくらは俺の手に重ねていた手とは逆の手で、自分の口を塞ぐ。

 

「ダメ、祐……。

 こんなの変だよぉ……」

 

 さくらの言うことは分かるし、俺だって理解してるつもりだ。

 ―――尤も理解してるだけなのかもしれないが。

 

 俺はさくらの両手の下から手を回し、後ろから胸をこねる様に愛撫する。

 緊張していたせいか、途中で行為を止めたせいか、先ほどまで自己主張を止めていた先端が、すぐにたってくる。

 

「はぁんっ、ぁあ、ゆうっ……んっ、ぁっ……!!」

 

 手で抑えてはいるモノの僅かに漏れてくるさくらの声に、俺のモノがそそり立ってくる。

 一歩間違えればそこは地獄となる。

 でも、だからこそなのか……俺のモノは今にもジーパンを破りそうなくらいになっている。

 

「んんッ……はぁッ、はぁ、んんっ……ぅんっ、ぁっ……」

 

 さくらの手を外し、その代わりにと深いキスをする。

 声が漏れないように、完全に口を塞ぐと、舌をさくらの奥深くまで飲み込ませる。

 奥歯、歯の裏側、外側、舌の奥……届く限りの場所まで突き、舐め合う。

 水音さえも出さないくらい口づけあい、しばらくして舌を出しながら離れる。

 銀色にかかった橋が僅かな光に辺り、先ほどよりも何処か綺麗に見える。

 

「はぁ、はぁ……酷いよぉ……」

 

 揉んでいた両手を止めると、さくらは非難の瞳に俺を映す。

 少し涙目になっているが、その息遣いが荒いのと頬に指した照れとは違う赤みで罪悪感が薄れてしまう。

 

「悪い。

 でも……満更でもなかったようだけど?」

「うっ……」

 

 非難の目を一転させるが、さすがに恥ずかしいのだろう……頬に赤みを差したまま、俺の視線から逃れるように横を向く。

 そして小さな声で「……ばか」っとだけ呟いた。

 俺はそんなさくらに苦笑しながら、揉んでいた左手を離しさくらの頭を撫でる。

 

 ―――っと同時に、空いた右手を下へと持っていく。

 

「祐……んっ!?」

 

 さすがに分かったのか視線を戻そうとするが、撫でていた左手を瞬時にさくらの口へと持っていき塞ぐ。

 閉じようとする前に滑り込ませた手がじっとりと触れた布地に触れると、ビクッとさくらの身体が震えた。

 

「むっ、んんっ!」

 

 止めろと言っているのか分からないが、まあ抗議の声というのだけは分かった。

 っとはいっても、此処までやってお預けをくらうのは俺としても我慢できない。

 ちなみにさっきのも合わせて二度目だ……。

 

「さくら……あんまり声出すと、気づかれるぞ?」

「んっ……ふぅ、んんっ……ぁぅっ、んんぅ……」

 

 さすがに俺の言葉には納得したようで抵抗の言葉は引っ込める。

 俺はそれを聞きながら、右手で布地を僅かに横に退けると、その露わにされた秘部へ指を這わせる。

 

「ぁあ……はぁっ、んんっ……はぁんっ……ぁあっ……!」

 

 声を全体的に落としているモノの、それでも多分静かにしていれば聞こえるであろうさくらの声。

 俺は塞いでいた手を胸へを持ってくると、突起に指を這わせ軽くつまんだり、押したりと、痛くないように弄ぶ。

 

「ぁあっ……ぁっ、んんっ……」

 

 控えめな声……我慢してるだろうからそうなんだろうが、俺としては何かもの足りない感じがした。

 まあ、だからといって声を出させるわけにはいかないが……。

 這わせていた指を秘部に入れ、ゆっくりと感触を味わうかのようにかき混ぜていく。

 手前に引くたびに、手が濡れ、空気に音が触れる度に軽い水音が繰り返される。

 

「やぁっ、んっ……はぁっ……んっ、祐の指……っ……気持ちいい……ぁっ、んっ……」

「さくら……すごい濡れてるぞ?」

「祐だから……はっ、あっ……ぁっ、祐だからっ、だも……ぅっ、んんっ……!」

 

 その言葉に何処か安心し、それでいてもっとさくらの声が聞きたくて指の動きを早めていく。

 

 先ほどボールのカゴを取りに来た女らしき人が扉を閉めたのはカモフラージュで、実はまだ『此処』の外……つまりは板一枚向こうの『場所』にいるのかもしれない。

 ―――いや、もしかしたら俺たちの情事を見て、今まさに1人でしているのかもしれない。

 

 何故かそんな事が急に思い浮かんできた……。

 もしかしたら、心の何処かでそれを望んでいる自分がいるように思えた。

 可愛いさくらを俺のモノだと見せつけたい。

 いや、さくらをもっと感じさせたい……と……。

 

 ―――だが、それは僅かな邂逅に過ぎず、すぐに冷静な自分が出てくる。

 ……どうも、ヤッテる最中は何処かの回線が壊れている気がする……。

 

「さくら……いいか?」

「はぁ、はぁ……うん………………って、此処で!?」

 

 恍惚の瞳で俺を見上げながら肯定したさくらだったが、しばらく間を空けた後に状況を思い出したようだ。

 俺はそんなさくらに、今出来る最高の笑顔を向け、しっかりと首を使い大きく頷く。

 ちなみに、ちゃんとお互いに声を抑えているのはデフォルトだ。

 

「ダメ」

「are you ready?」

「英語でもダメ。

 それに何か違う気がするし……」

 

 それは俺も思う。

 だが、正直2度目のお預けはゴメンだ。

 ―――っと言うことで、男は時には強引さも必要なのだ。

 

「さくら……」

「駄目だからね、ぜったっんんっ!」

 

 俺はさくらの唇を有無を言わさないように塞ぐ。

 ぴちゃっと漏れる水音……。

 

「ンンッ……はぁっ、ゆうっ、だめっはっ、んっ……ぅんっ……」

 

 口を離しては、また口づける……そんな単調な行為を何度も繰り返す。

 それでいて、同時に止まっていた両手を再開させる。

 

 形を変え、突起を摘み、押し、挟み、こねくり回す。

 くちゃっ、くちゅっと柔らかい秘部から出される愛液に、指が先ほどよりもスムーズに出入りする。

 少し乱暴にかき回せると、俺の両手にさくらは手を重ね、可愛く震わせる身体を預けてくる。

 

「悪い、さくら……」

「え……ひゃっ……。

 ……ゆう、なに―――あぁんんっ!!」

 

 最初に謝っておくのは卑怯だと思うし、こういうやり方も最悪だと思う。

 俺もあまり―――いや、かなり嫌いだと思っていた。

 強引でかつ傲慢。

 自分の思いは、相手と同じ……。

 そんな風に思っていたが……実際はどうだか……。

 

 ―――とりあえずは、後で全力で謝ろう。

 ―――残りは愛でカバーしておこう。

 

 暖かい―――いや、熱くさえ感じる秘部に包まれているモノを感じならがら、冷静な頭の一部分でそう考える。

 同時に、外界から熱く湿った溜息が聞こえてくる。

 

「ぁんっ……ゆう、こんな格好恥ずかしいよ……」

 

 あの体勢、および俺たちの今の状況を考えると、この体勢しか入れることが出来ないから、仕方ないと言えば仕方ない。

 俺は両手で支えているさくらの太股と、自分の腰を軽く上へ突き上げる。

 当然反動もあり、さくらは上下運動をさせられる。

 

「あぁぁっ!

 くっぅぅ……うぅっ……」

 

 突き上げた時に露わになったモノに空気が触れるが、それが妙に冷たく感じ、またすぐにさくらの体内に戻り熱くなる。

 その交互の独特の感じと、さくらの締め付けに今すぐに出もイキそうになる。

 

「っあ、あぁ!

 ふぁ……駄目だって……んぁっ!

 聞こえ……ぁっ、ちゃうから……」

「大丈夫だって……さっきから誰も来ないし……。

 それに光も消えてるからな……きっと何処か行ったんだよ」

「くぁぅうぅっ……ぁぁぁあっ……ぁっ、で、でも……ふっんぁっ……誰か……くっ、ぁあっ……いる、かも……」

「大丈夫……。

 俺を信じろよ……」

 

 俺はそう言うと、さくらの首筋を舐める。

 急な感触に思わず「あっ」っと声を大きめに声を漏らすさくらだが、すぐに自分で口を塞ぎ声を漏らさないようにする。

 そんな姿を何ともなしに見ながら、俺は口を使ってさくらの肩が見えるように制服をずらすと、そのまま舌と口を這わせ濡らせていく。

 そのまま軽く吸い付き、舌と頬を使って何度も吸い上げる。

 

「んっ、ああっ……くっ、うぅ……」

 

 そんなさくらの喘ぎ声に俺は調子を上げるとくっきりと赤みが差し、完全に内出血を生ませる。

 俺は暗がりの中目視で確認すると、そのまま別の場所へ舌を這わせながら移動していく。

 勿論その間も腰と腕を使い、下からさくらを突き上げ続けるのは忘れない。

 

「ぁあっ……んぁうぅっ……ん、んぅぅ……ぁぁ……ああっ……」

 

 しばらくその行為を繰り返していくが、さすがの俺もそろそろ限界だ。

 お預けをくらいったというのもあるのだが、最近そもそもヤッていない。

 

 俺の家に帰ればあいつらがいるし、さくらの所もあすか姉がいる。

 安全な時間帯には用事がある事が多いし、嫌いだが勉強もある。

 加えて最近では周囲が目ざとくなった事もあり、あまりヤッていない。

 

 ―――だからこそ、こんな場所にいるんだが……。

 

「ぁあっ……ふぅあっ……だめぇっ……んっあっ、わたしっ……もうっ、はぁっ……気持ち、んんっ……良すぎて……ぅあっ……あぁあんっ……。

 んっ……はあっ、がまんできないっ……はぁっ……」

「さくら……俺も……」

 

 さくらの声に答えるように、俺は肩から舌を離すと両手に力を込め、腰を先ほどまでとは違い、より一層早く動かす。

 血液が逆流し、身体中の熱を一カ所に集める。

 拭い切れない……耐えきれない快楽が、俺を背を這い上がっていく。

 

「さくらっ……いくぞ……」

「いいよ……わたしの、なかに……っあ……。

 だいじょうぶ、だから……はぁぅっ、ぁっ……んぁうぅっ……ゆうっ……」

 

 柔らかい、それでかつ堅い肉体同士がぶつかる音、粘着質の液が挟まれ弾ける音、それと同時に絶え間なく続く熟れた吐息……。

 そんな中でも、俺の耳はさくらの声だけをはっきりと捕らえていた。

 

「……っ!

 さくらっ―――」

 

 這い上がる射精感に息が詰まる。

 そして、全てを押し出すような快楽―――衝撃。

 

「くっ、うっ!」

「ふぁっ……あっ……あぁぁあぁっあぁっっ!!!」

 

 俺はさくらの肩に顔を埋めながら、何時までも白濁液をさくらのなかに大量に注ぎ込んだ…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ……」

「何溜息付いてるんだ?」

 

 学校からの帰り道、俺は深刻そうに……っというより、疲れた顔で溜息を吐くさくらにそう答えた。

 春とはいえ、まだ4月前半……さくらが散るくらいの風は吹く。

 

「さくら?」

「祐に襲われちゃったよ……」

「モウシワケゴザイマセンデシタ、サクラオジョウサマ……」

 

 俯き、表情を隠したままそう言ったさくらに、俺は壊れた機械のように返事を返した。

 いくら往来の少ない所といっても、ここは住宅街。

 車は少なく街灯の多いこの路は結構歩行者にも愛用されており、地元の安全道の一つになっている。

 そんなわけで、俯いて俺の服の裾を掴むさくらに視線を向ける、すれ違いざまの幾多のカップル様方……。

 その視線の意味が非常に痛く、俺は今にもさくらを抱えて帰りたかった。

 

「そもそも、最初に学校へ行こうと言い出したのは誰だ?」

「祐」

「即答かよ!

 しかも俺だし!」

「お姉ちゃん」

「それも違う!」

「それじゃ…………私?」

 

 本当に分かってないのか、わざとなのか……いや、嘘だと分かってるんだが、こう返されると雪の街でさらに強化された俺の芸人根性が刺激され、ついツッコンでしまう。

 いや、確かに何だかんだ言って俺も承諾しちゃったのも悪いと思う。

 

 ―――最終工程に進んだのは、誰がなんと言おうと俺のせいだしな……。

 

 事の発端はさくらの一言だった。

 『久しぶりに、学校に行かない?』

 

 どういう意図があったのかは分からないが、俺はそれに賛同した。

 一年ぶりに訪れる母校。

 さくらとの思い出の詰まった場所。

 付き合い出すきっかけになった高校……。

 

 俺としても一度は行くつもりだったし、別に問題はなかった。

 

 ―――さすがに、祐も制服で行こうと言われたときは拒否したが……。

 

「大体、制服で行く必要があったのか?」

「情緒が分かってないよ、祐は」

「いや、学校に情緒を求められても困るんだが……」

「だって、祐との思い出だもん。

 学校……祐と行くの、一年ぶりなんだよ?」

「まあ、それは分かるが……制服は必要ないと思うぞ……」

「えー、学校に制服は普通だよ」

「いや、そう言う問題じゃなくてだな……」

 

 さくらの言いたいことは分かる。

 分かるんだが……まあ、いいか。

 結果的に俺はさくらと一緒には――側では卒業できなかった。

 その事実と過去はどんなに贖っても変わらない。

 

 桜が咲く路すがら、俺とさくらはのんびりと歩いていた。

 まだまだ夜桜には早い時間……そんな中を寄り添い、腕を取られ歩いている。

 裾を離し、腕に組み替えた俺たちの姿は、すれ違うカップルと何ら変わりはなかった。

 

 桜は春に咲き、そして散っていく。

 また会うには一年間待たなければならないのは当たり前であり、周知の事実だ。

 でも―――

 

「俺の『桜』は一年中咲いてるな」

「……祐、口に出てるよ」

「出してるからな」

 

 俺の言葉に、ギュッと組んでいた腕が一層強くなった。

 今横を見下ろせば恥ずかしそうにしているさくらの顔が拝めるだろう。 

 

「そういや、今日はどうする?」

 

 さすがに恥ずかしかったので、話を逸らすことにした。

 さくらも分かったのか、それとも俺と同じ気持ちだったのか……口に指を持っていき、「うーん」っと可愛らしく考えている。

 

「今日は止めておくよ」

「了解」

「あっ……でも、祐が浮気しないか心配だし……」

「するわけないだろ」

「でも、襲われないとも限らないし……」

「……『襲う』という選択肢じゃないんだな……」

 

 俺の言葉にさくらはクスクスと笑うと、そのまま俺の腕を引っ張る。

 ―――合図。

 それに応えるかのように、俺は立ち止まると少し背を丸めた。

 

 残ったのは甘いさくらの味だけだった。

 

「桜……」

「ん?」

「桜……花見したいね」

「そうだな……。

 散る前にはみんなでするか」

「うんっ」

 

 桜は散ってしまう。

 桜を見ると、ふいにそう思ってしまう時がある。

 でも、僅かな間だから……一年越しだからこそ、桜は綺麗で、人を魅了するのかもしれない。

 

「それじゃ、帰るか。」

「うんっ」

 

 桜は散ってしまう。

 桜を見ると、ふいにそう思ってしまう時がある。

 でも、俺のさくらは散らない。

 いつも側にいて、思い出と安らぎと……色々なモノをくれる。

 だから、俺はさくらが望む限り側に居続けよう。

 

 

 

 このさくらが散ってしまわないように……。

 このさくらが枯れてしまわないように……。

 このさくらが折れてしまわないように……。

 

 ずっと……ずっと、側に居よう……。

 それが……それが年中咲き続ける、俺の『桜』の奇跡……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<おまけ>

『コト』の後に外へ出たら、入り口のドアに張り紙がしてあった。

要約すると、『○○ホールへ変更しました』との事らしい……。

 

……正直、助かったと今更ながらに思った。

もし、変更がなかったら……―――今更ながら背筋に冷や汗が出てきたが前向きに考えることにした。

 

同時に、今度からは気をつけようと、再確認した一日だった、マル。

 


<あとがき>

 

『2つの道、1つの選択』の番外編を作らせた加害者APです(^^;。

いや、ホント冗談交じりの感想での1コマを覚えて頂いてありがとうございました、REDさん。

ホントは『あすか姉×祐一』のつもり……いつの間にか『さくら×祐一』になっちゃいましたヽ(゜▽、゜)ノ。

―――まあ、前者はそのうちって事で(苦笑。

 

<PS>

シリアス風味(?)な終わりになっちゃいました……ギャグのはずが……(マテッ。

 

<PS2>

ヤッてる場所ですが、分かり辛い&分からないかもしれません…………が、仕様です(゜□゜;。

なお、本SSに追加機能も増設スペースもありません。

―――ので、ヤッてる場所の明確な文章的増設はできません ( ̄□ ̄;。

 

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