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やがて夜が来た。 その日も変わらず秋は張飛の寝室を訪ねたが、いつものようにお話をねだる事はなく 思案にふけるように静かに良人に寄り添っていた。 秋がずっと抱えていた問題もなくなり、張飛もそれを受け入れて 何の心配もなくなったはずだったが、二人は何故か黙って牀に並んでいた。 物憂い空気の中、しばらくして秋が口を開いた。
「……ねえ、翼徳さま」 「何だ?」 「私たち、まだ夫婦がするべき事をしていないのよね?」 「いや、何もすぐしなきゃいけねえ訳じゃ……」 「今、したいの」
あまりに直接的で積極的な台詞に張飛は驚いて隣の秋の顔を覗き込んだ。 秋は恥ずかしそうに目を伏せ、そっと良人の大きな手に自分の手を重ねる。
「翼徳さまが『秋がどこの誰だって構わない』って言ってくれた時、すごく嬉しかった。 ずっと黙ってた事、許してくれてほんとにありがとう」 「馬鹿野郎、許すも許さねえもあるかよ……俺は、お前に惚れたんだからよ」
張飛の真摯な眼差しに射られ、秋の黒い瞳が潤んで揺れた。 私も翼徳さまに惚れてる、と小さな声で言うと張飛の顔は朱を注いだようになった。
「だからね、私の事もっと翼徳さまに知って欲しいの。もっともっと惚れて貰いたいの」
秋は張飛の背に腕を回して抱きついた。 胸板に耳を押し当て、どきどき言ってる、と呟いて目を閉じる。 秋の小さな体は腕の中にすっぽり収まってしまい、あまりに柔らかくて細くて 無理に抱き締めれば折れてしまいそうに思えて、張飛は何もできずにいた。
「お前……どういう事か、分かってんのか?」 「分からない。でもいい事なんでしょう?」
どんな事か、何をするのか、一番大好きな翼徳さまに教えて欲しいと秋は言った。 その言葉だけで張飛は脳天が沸騰しそうになったが、秋の薄い肩の弱弱しさが 辛うじて理性を保たせた。 張飛は散々逡巡した後、遂に覚悟を決めて秋を抱き返した。 ――こんな小娘一人抱くのに、何て様だ―― 例え十万の敵を相手にしても、これほどまでに緊張する事はないだろう。
「……途中で泣いちまっても、知らねえぞ」 「お手柔らかにお願いします」
そう照れ隠しのように言って、膝の上で悪戯っぽく微笑む。 帯を解いて夜着を肩から下ろしてやると、秋は少し恥ずかしそうに身を硬くした。 暗がりに浮かび上がる華奢な裸身は、羽化したばかりの真っ白な蝶のようだった。
「お前は本当に別嬪だなあ」
感嘆したように張飛が漏らした言葉に、秋の首筋まで薄桃色に染まった。 この人の言葉に虚飾や嘘などという物は無い。ただ思った事をそのまま口にするだけなのだ。 今はそれが嬉しくもあり、恥ずかしくもあった。
「目、瞑ってろ」
秋は素直に目を閉じて、張飛のするに任せた。 真っ暗な中で良人の息遣いと熱だけを感じ、何故かどきどきした。 いつものように、寄り添って一緒に眠るのとは違う事が始まるのだ、と思った。
「すぐに良くしてやるからな……」
熱い掌が体の稜線を確かめるように肌を這う。 今まで良人にこんな風に触れられた事はなく、怖くなって体を引こうとしたが 張飛の腕からは逃れられず、秋はどうしようと困惑した。 触れてくる掌は心地良く、決して不快なものではないが なんだかむずむずするような、落ち着かない感覚が肌の下に蠢いている。 目を瞑ったまま手探りで太い首に縋ると、いきなり口付けられて舌を吸われた。 秋は驚いて目を見開き、張飛の腕の中で少し暴れたがすぐに大人しく受け入れた。 貪るような口付けに息を切らしながらも、秋は自分からも舌を絡ませた。 はしたないかしら、と思ったが良人がしてくれた事を自分もしたかった。 張飛は秋が積極的なのを嬉しく思い、柔らかな耳朶を甘く噛んで息を吹き掛けた。
「んん!!」
ほんのりと熱く、弾力のある耳朶を食む。いっその事食ってしまいたいほどに愛しかった。 首筋にも食いついて歯を立て、まっさらな素肌に跡を残した。 捕食するような荒っぽい愛撫ではあったが、秋は確実に昂められていった。 硬い髭が柔肌に擦れてくすぐったい、その感触さえも秋の熱を煽った。 まだ肉付きの薄い胸も存分に可愛がってやろうと思い、 膨らみかけの乳房を揉んでみると、力が強すぎたのか「痛い」と眉を寄せた。 慌てて掌でさするようにすると、眠たい時のようなうっとりした表情で見つめてくる。 脇腹から尻にかけて撫で下ろされるのが好きらしく、切なげに体を震わせて息をついた。 汗ばんで上気した肌は掌に吸い付くようで、浅く息をつく半開きの唇が艶かしい。 不器用ながらも一生懸命な愛撫に秋の体は徐々に蕩け出し、受け入れるための準備を整えつつあった。
「ん……翼徳さま、なんだか、かたいのが……」
張飛はぎょっとした。秋の媚態にしっかり股間が反応し、下衣の布地を押し上げている。 しかも、膝に乗せて抱き合う姿勢のせいで秋の恥丘にまともに押し付けられていた。 まさかこれから自分を貫くものとは思わず、秋は不思議そうに見ている。 興味津々の様子で小さな手で布越しにそこに触れる。 何も知らない少女が自分のものを弄っている淫らな光景に頭の芯が熱くなり、 張飛は秋の腰を持ち上げて膝立ちにさせた。 秋は戸惑いながらも張飛の肩に掴まり、尻を突き出した体勢を少し恥ずかしいと思っていたが お返しだ、と秘処を後ろから太い指に探られて思わず声を上げた。
「あ!! やぁっ……翼徳さま……!!」
ふっくらした花弁の間に分け入ってきた指先が蕾をかすめ、甘い刺激が走る。 秋はその時、初めて自分の秘処がぬるぬるに潤っている事に気付いた。 ぬめる指に割れ目をなぞられて腰が浮いてしまう。 大事な処を弄られながら、もっと奥の方で何かが疼くような感じがした。 ふいに、帯を解く衣擦れの音がした。 見てみると下衣を下ろし、剥き出しになった肉矛が脚の間に屹立している。 秋はそれを肩越しに見下ろし、大きな蛇のよう、と思った。 特に恐ろしさは感じなかったが、これを一体どうするのかという疑問が浮かんだ。 何かを探すように、押し付けられた先端が秘処のまわりをさ迷う。 やがて入り口を見つけたらしく、一気にそこに押し入って来た。 突然の事に秋の体が強張り、声にならない悲鳴を上げる。
「…………!!!」
辛い思いをさせることは分かっていたが、張飛は止まらなかった。 力ずくで腰を引き寄せ、無理矢理押し込むようにした。 秋は腰を捩って逃れようとしたがそれは敵わず、肉矛は容赦なく未通の門を抉る。 余りの苦痛に秋は張飛の肩に食い込むほど爪を立てた。 ゆっくりと下から貫かれるのは、慣れた体なら法悦の極みだろうが 秋にとってはそれこそ刃で貫かれるに等しい責め苦だった。 やがて、これ以上はどうしても入らない所まで収まり、秋が肉矛の上に座り込むような形になった。 小さな体には相当な負担だったらしく、背中を汗で濡らし、荒い息を吐いている。 下腹が重苦しい。張飛が身じろぎすると秘処に裂ける様な痛みが走った。
「い……痛いっ……」 「済まねえ……」
秋の切羽詰った声と辛そうな顔に、ひどく無理をさせているのだと罪悪感が募る。 何だか苛めているようで気まずくなるが、股間の方は一向に萎える気配が無い。 こんなつもりじゃなかったんだけどな、と思いながら睫毛に溜まった雫を指で拭ってやった。
「翼徳さま……」 「何だ、秋」 「……手を」
手を握って欲しいと秋は言った。 こんなに深い所で繋がっているのに、まだ足りないように切なげな顔をしている。 言う通りにしてやると、秋は張飛の手をきゅうっと握り返して深く息をついた。
(翼徳さまのが、今お腹の中に入ってるんだ……)
熱に浮かされたようにぼうっとする頭で、それだけやっと認識する。 自分の体にこんな事が出来たのが俄かに信じられず、脚の間に力を入れてみると 太いものが自分の内部を圧迫しているのが感じられた。 苦しい事は苦しかったが、其処が大好きな人で一杯になっているのに何となく満足した。 動いてもいいかと良人に尋ねられ、小さく頷く。 幼い子供をあやすようにゆっくり腰を揺らされると、繋がった所が擦れ合って もどかしいような切ないような感覚を覚える。 二人の体温がひとつに溶け合う心地良さと、肉と粘膜が触れ合う生々しさ。 いつしか秋は揺らされながら、知らず声を上げていた。
「ん、ぅっ、はぁあっ……」
張飛は小さな秋を壊してしまわないか不安だったが 秘処自体が受け入れたがっているように、秋の中は物欲しそうに蠢いていた。 試しに深く突いてみると、息をつめて強くしがみ付いてくる。 そこを狙って何度も突き上げ、腰を動かすたびに秋の軽い体が跳ねる。
「やぁ、あっ、わたし、もう……!!」
甘い喘ぎに煽られ、一層動きを早める。最奥を突かれて秋は初めての絶頂を迎えた。 胎内の疼きに合わせて肉矛が震え、どくどくと熱い子種を吐き出す。 秋は朦朧とした意識の中で、逆流した精が秘処から溢れるのを感じた。 初めての房事に疲れたのか、まだ繋がったままうとうとし出した秋の髪を 不器用だが優しい手が労わるように撫でた。
張飛は眠れず、牀の中で寝返りばかり打っていた。 すぐ横で丸くなっている秋の寝顔を何度も覗いては溜息を漏らす。 薄闇の中でもわかる安らかな表情は、ほんのりと艶を帯びているように思えた。 自分を求めてくれ、受け入れてくれた娘がこんなにも傍にいる。 嬉しいやら幸せやらでとても眠れそうになかった。 ふと、行方知れずの二人の義兄の事を思い出し、幸せな自分の立場を少し済まなく思う。 何年も前、桃園で誓い合った頃が懐かしい。あの時から桃の花は張飛の一番好きな花になった。 今なら山でも町でも盛りの季節だろう。そこまで考えて、張飛はにやりとして牀から身を起こした。 ちょうど眠れないのだ、ひとっ走りして調達してこよう。それも一番見事に咲いたやつを。 城の前にあれば、兄者達へのいい目印になるかも知れない。 それに――、かわいい妻のために何かをしたくて仕方がなかった。
浅い、幸せな眠りから覚めると、隣に良人の姿がない事に気付いた。 夜明け前の薄暗い中どこに行ったのか、すでに牀の温もりさえ消えていた。
「翼徳さま……?」
秋は牀を抜け出し、夜着のまま寝室を出て消えた良人を捜した。 城のどこにも姿は見えず不安になって外に出ると、不意に現れた艶やかな眺めに目を奪われた。 満開の花をこぼれんばかりにつけた、大きな桃の木が城の前に立っていた。 枝の先までいっぱいに花を咲かせている様は、さながら桃色の雲のようだ。 昨日はなかったはずなのに、と驚いて近づくと、木に張飛が寄りかかって大鼾をかいていた。 張飛の手が泥だらけで根元の土が新しい所を見ると、どうやら何処からか 桃の木を丸ごと掘り返して来てここに植え直したようだった。 翼徳さまならその位やりかねないわ、と秋は思わず微笑んだ。 どこからか風がざあっと吹いて花弁を散らし、張飛が大きなくしゃみをする。 自分のくしゃみで目覚めた張飛に、風邪を引きますよと秋は笑いかけた。
「お前に見せたくてよ、持って来ちまった」 「ありがとう、翼徳さま……」
きれい、と呟く秋を見て、名こそ涼しい季節のものだが春の花もよく似合うと張飛は思った。 花の天蓋の下、二人はあたたかな春の匂いに包まれる心地がした。
「そういや秋、知ってるか?」 「?」 「ずうっと前、俺の兄者から聞いたんだけどな、桃ってのは子宝に恵まれる木なんだ」
秋は一瞬眼をぱちくりさせ、にっこり笑って良人に抱きついた。 満開の桃花にも勝る笑顔に張飛は見とれ、体勢を崩してまともに後ろに倒れた。 二人の笑う声に誘われるように、雲雀の歌が花の間に響いた。
三義兄弟が再び集結するのはそれから数日後の事であった。 この時の桃の木のせいかは定かではないが、秋はその後まもなく母になり 張飛との間に女児を設けたという。
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