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二夏侯×護衛武将 〜エンパイアーズでいこう〜
<準備>
妙才おじ様の姪の夏侯秋です。 おじ様に天下を取ってもらうため、張将軍と共に一所懸命戦います。 天下取りの戦に護衛武将は連れて行けないので、此度は私も一人の将として戦場に赴きます。 敵陣に飛び込んで肉弾戦になる時、今までのように援護の弓だけじゃ心もとないので お城の武器庫の中からいい得物を探しています。 斧なんかは重すぎるし、大きな剣や長い槍は扱いにくいし……どれにしよう?
「秋、何やってんだ?」 「あ、妙才おじ様。ちょっと武器を……」 「水臭えなあ、相談してくれりゃ良かったのによー そんなら俺の得物使ってみるか?突いてよし、叩いてよし、振り回してよしの万能武器よ!」
なるほどこの金棒は剣と違って刃こぼれする事もないし、鎧の上からでも打撃を与えられる。 夏侯淵の言う通り大変実用的ないい武器だ…… だが、秋は愛する叔父と同じ武器を手にすることを躊躇った。 夏侯秋も武人の端くれとして、戦場において通り名で呼ばれるほどの将になりたいと思っているが 妙齢の女子でこんなものを振り回していてはいい所「撲殺天女」だ。 それはあまりにも……と戸惑う夏侯秋の元に、張コウが足取りも軽やかにやって来た。
「私の鉄爪は如何ですか? 身の軽い秋殿ならきっと使いこなせるはず! さあ、早速身につけてみるのです。ためらうことはありません。さあ!」
見た目こそ変わっているが、自分の手の一部のように使えそうな武器だ。 舞うような動作で素早く繰り出される斬撃は敵の反撃を許さないほどだろう。 しかし夏侯秋はまたもや手にすることを躊躇った。 美しさを追求するあまり道を誤ってしまいそうな気がしたからだ。
結局、夏侯秋は軽くて扱いやすい細剣(盾付き)を選んだ。 しかしその後初陣に何を着ていくかで散々迷ったのはまた別の話である。
<初陣> 夏侯淵達はまず近くの小国を攻める事にした。 二手に分かれて拠点を潰しながら敵本陣を包囲する形で進軍する。 総大将は戦いながらも状況に応じて味方に指令を出さねばならないため大忙しだ。
「いけない!本陣に敵が迫ってるわ!!」 「秋、お前が撃退しろ!!」
分かった!と細剣を振り果敢に立ち向かう夏侯秋。敵将が気炎を上げる。
「敵に突っ込み、存分に揺さぶってやれ!!」
夏侯淵は踵を返し、秋に襲い掛からんとする敵将を後ろから金棒でぶっ飛ばした。 そのまま空中に浮いた敵将に追い討ちをかけるように連続攻撃に持ち込む。 再び地に脚をつくことすら許されず、浮かされたまま殴られ続ける敵将。 そんなにぶん殴ったら骨も残らぬのではないかと思うほどの暴行に秋は言葉も出ない。 虫の息の敵将の胸倉を掴み、無理矢理起き上がらせて凄まじい剣幕で怒鳴る。
「この野郎! 秋にそんな真似をしやがったらこんなもんじゃ済まねえからな!!」
(おじ様……多分あなたが思うような意味で言ったんじゃないと思うの……)
<防衛戦> 夏侯淵の覇業は順調に進んでいった。 領地が広がるにつれ孫家の面々や袁紹、祝融や趙雲など頼りになる配下も増えた。 そんな折、領地に攻め込んできた一軍があり、撃退せんと近くの者が洛陽に集められた。 旗上げ以来初の防衛戦に緊張したりワクワクしたりする一同。 とりあえず虎牢関の城門の上から敵陣を偵察すると、軍を率いていたのは君主のよく知った人物だった。
「げえっ 惇兄!?」 「伊珠殿もいるわ!」
夏侯惇とその護衛武将の伊珠の姿を見て、夏侯淵の士気が大幅に下がった。 乱世のならいとは言え、従兄弟同士で敵対する日が来ようとは……
「まさか元譲おじ様が攻めてくるなんて……」 「兵力は互角だが……身内が相手となると精神的に来るな」 「何であらかじめ同盟を結んでおかなかったんだい」 「こいつはしんどい戦になりそうだぜ……」 「弱音など似合いませんよ」
夏侯淵を励ましたのは、先日大都督に任命されたばかりの張コウだった。
「こんな事もあろうかと、とっておきの美しい策を用意してあります」
どのような策を使ったのか、城下に点在する拠点にはどちらの軍の旗も立ってはおらず 兵が不在でもぬけの空だという事を示していた。 以前張コウが策のためと多額の軍事予算をせがんだ理由を夏侯淵は理解した。
「さあ!華麗に勝利するのです!!」
神速の用兵は夏侯淵の得意とする所。 的確な指揮に応え、配下は空の拠点を次々と制圧して味方を引き入れていく。 この電撃戦に体勢を立て直す間もなく夏侯惇軍は包囲されてしまった。 勝利した後、夏侯淵は張コウにどうやって拠点から敵兵を退かしたのか訊ねたが 張コウは優雅にはぐらかすだけで、結局質問には答えなかった。
<捕縛> 「ごめんなさいね、元譲おじ様」
捕縛された夏侯惇・伊珠の二将は夏侯淵の前に引っ立てられ、これまでの経緯を話していた。 危ない橋を渡って国を大きくした事、人材捜索で曹操を探したが未だ見つからない事、 いつも支えてくれる伊珠を軍師に取り立てた事…… ひとしきり語り終えた後、夏侯惇は照れ臭そうに呟いた。
「腕を上げたな、淵よ……ふん、お前に仕えるのも悪くないな……」 「ありがてえ! 惇兄が一緒なら百人力だぜ!」
また頼もしい仲間が増えると喝采を上げる一同。 早速登用の手続きをしようとした夏侯淵の手が止まった。
「…………登用する金が足りねえ…………」
そう、新しく武将を登用するには相応の金がかかるのであった。 いくら親族とは言え、いやだからこそ無給で召抱えるようなわけにはいかない。 予算を全て軍備に回してしまったが為の失策であった。
「淵よ…………」
「すまねえ惇兄、本当にすまねえ……」 「くよくよする姿は似合いませんよ」 「いつかきっといいことあるよ おじ様」
夏侯惇と伊珠は解放され、野に下って行った。 最近届いた書簡によると初子を設け、達者で暮らしているらしい。
<善政皇帝への道> 夏侯淵は大陸の半分を治め、ついに王の座を手に入れた。 日々城下を視察し、民に気前よく施しを与え善政を布く様はまさに名君と呼ぶに相応しいだろう。 順風満帆の日々のはずであったが、臣下の張コウ、夏侯秋の二人はそんな夏侯淵を心配そうに見ていた。
「おうおう、皆楽しそうじゃねえか……民の湿気た面は見たくねえからな……」
そう言って民に手を振る君主の顔は土気色をしていた。足取りも生気が感じられず、頬もこけている。 交易で稼いだり産業振興によって得た金を民にそのまま還元しているため 贅沢できる余裕どころか軍費に回す金もない、薄い刃の上を渡るような日々である。 隣国とは同盟を結んでいるため攻め込まれる心配はないが、それでもいっぱいいっぱいだった。 君主である夏侯淵は自ら、食費やら何やら限界まで切り詰めた生活を送っており日に日に痩せ細っていった。
「将軍……お体の方は大丈夫ですか?」 「ああ? 俺様はいつでも元気一杯だぜ……」
空元気を張る夏侯淵だが、彼が昨夜も水ともやししか口にしていない事を張コウは知っていた。 その上戦場でも兵力が減るとか何とか言って肉まんを口にしないため、いつも満身創痍なのだ。 急激な減量によって肌は荒れ、顔色も悪い夏侯淵の姿は美しいとは言い難い。 新野で燻っていたころの劉備軍でもこんなにひどくはない筈だ…と嘆息する。 夏侯秋はもっと深刻だった。夜の房事がここの所すっかりご無沙汰なのだ。 最後に閨を共にした時、随分と体から肉が落ちているのを見て驚いたが今はそれ以上だ。 秋は叔父の丸っこい腹周りを懐かしく思い出していた。
夏侯淵は礼金目当てで同盟国の援軍を引き受け、奮戦していた。 しかし日頃の栄養不足のせいかいつもの力の半分も出せず、 矢一本も勿体無くおいそれとは射れないため、あっという間に瀕死に追い込まれた。 拠点に備蓄してある肉まんに手を伸ばしかけるが、引っ込める。 空腹と疲労の余り意識が朦朧としかけた夏侯淵だったが、駆けつけた民兵の声に振り向いた。
「お前ら……」 「殿様ー!! そんなにしてまでおら達のために……!」 「これ、おらがこしらえて来た肉まんです!!どうか召し上がって下され!!」 「殿様にもしもの事があったら、おら達は……!」
民の声に押されるようにして、夏侯淵は久し振りにまともな食事を口にした。 その晩、秋も久し振りの房事を楽しんだことは言うまでもない。
<娘と> 夏侯秋の人材捜索によって見つかった新しい仲間・星彩が登用された。 愛想がいいとは言い難いが、見るからに冷静でしっかりした印象の少女である。 戦は強いがちゃらんぽらんな気質の将が多い夏侯淵軍には珍しいタイプだ。 夏侯秋は彼女に国費の管理を任せようと思っていた。 今まで丼勘定だったせいで、肝心な時に武将の登用費がなかったり 戦場策の準備ができなかったり、ギリギリの兵力で戦に出なければならなかったのだ。 しかしそんな無計画な日々とはもうおさらばだ。 この娘ならば一枚の銭も無駄にせず几帳面にやり繰りしてくれるだろう。
「うちの軍へようこそ。これから宜しくね星彩殿!」 「ええ、宜しく………………母上」 「!!!???」
(※星彩の父は張飛・母は夏侯淵の姪)
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