第九幕

夏侯淵、秋の初花を散らし
また夏侯惇、遂に伊珠と結ばれる

*****

引き裂かれるような破瓜の痛みに、秋は精一杯悲鳴を押し殺した。
眼をきつく瞑っても歯を食いしばっても苦痛は消えず、熱と共に秋を苛んだ。
その苦痛を与えている男の背に縋り、もっと先を促す行為の二律背反に彼女は気付いていない。

「ゆっくり息吐いて、力抜いてろ」

辛そうな秋を気遣い、彼女の呼吸に合わせてできるだけゆっくりと腰を進める。
口付けと愛撫で強張った体を解してやり、長い時間をかけてようやく全て受け入れた頃
秋の小作りな顔からは血の気が引き、大きな瞳は涙で濡れていた。

「よく頑張ったな、秋」

労いの言葉と共にあたたかな手で頭を撫でられ、秋はほっとしてまた泣きそうになった。
息をつく度にさっき見たものがお腹の中で脈を打っているのが分かり
苦痛こそあったものの、あれほど太いものを収めてしまう自分の体が不思議だった。

「お前の中、温ったけえな」
「妙才おじ様のも……あったかい……」

冷えた秋の体が夏侯淵の高い体温で温められるにつれ、少しずつ肉と粘膜とが馴染んで
秋の辛そうな表情も大分和らいできたように思える。

「動いて大丈夫か」
「うん……多分」

幼いとさえ言える秋の、まだ未熟な女の箇所が自分のもので一杯になっている。
その痛々しさに罪悪感と共に一種異様な興奮を覚えたが、最早歯止めは効かなかった。
余りに窮屈なため、夏侯淵もごくゆっくりとしか動けなかったが
しばらくするうちに、受け入れるだけで精一杯だった器官が中を押し広げるものを味わおうと蠢き始めた。
緩慢な動きでは物足りないとみえて、秋も焦れたように甘く息をつく。
軽く突き上げてやると、高い声を上げて肩にしがみ付いてきた。

「あ、やぁ、だめ、おっきい……!!」

自分でも知らなかった所を刺激され、秋の内部がきゅうっと収縮した。
それに煽られ、夏侯淵がより深く腰を入れると張り出した雁首がごつごつと狭い奥に擦れる。
泣き声のような高い喘ぎに、痛かったのかと秋の表情を伺ったが
彼女の顔はいつものあどけないものではなく、一丁前の女の表情をしていた。
上気した頬や艶めいた唇が無意識に夏侯淵を誘うようだった。

「おじ様……私、大丈夫だから……いっぱいちょうだい……」

女になったばかりの体で、初めて愛した男を受け入れようと一生懸命になっている。
無理にすれば壊れてしまいそうで恐ろしかったが、できる限り望む様にしてやりたくて
秋をしっかりと抱き締め、ゆっくりと揺さぶった。
熱と圧迫感、そしてあまりの心地良さに秋は息を弾ませ声を上げる。
抜き差しされる度に敏感な部分を擦られ、羞恥に彩られた快感に酔った。
夏侯淵はそこが良い所であると察したらしく、角度を変えて突いてきた。
ここが良いのか、と訊かれてひどく恥ずかしかったが、それがかえって秋を熱くさせた。

「ん……! もっと、してぇ……」
「しょうがねえなぁ」

唇まで熱に浮かされたようで、もう言葉にならなかった。
噛み付くような激しい口付けの合間に荒い息と嬌声が響く。
まだ愛し合う事を知ったばかりの秋だったが、一番大好きな人と初めて交わる幸せを小さな体いっぱいに感じていた。

「あ、っああぁ……!!」

絶頂は突然に来た。初めての事でそれが何かは分からなかったが
どこまでも堕ちていくような感覚に、秋は体の芯が痺れるようだった。
自分を抱き締める腕の力が一際強くなり、最奥に温かな体液が放たれた。
徐々に二人分の息遣いが静かなものになり、控えめな衣擦れの音も囁き声もやがて聞こえなくなる――――


薄闇の中、すっかり満たされた顔で眠る秋に腕枕をしてやりながら、
こいつに他に惚れた男が出来たりしたら俺マジで泣いちまうかも、と夏侯淵は思った。

*****

珠のような怜悧な美貌が官能に蕩ける、その表情の変化を愉しみながら
夏侯惇は伊珠の中に深々と突き入れた。

「……ん……はぁぁっ」

熱っぽい粘膜が剛直を包み込み、逃がさないようにと吸い付いてくる。
伊珠は上気した顔を俯かせ、男根を腹の中で味わうように深く息をついた。
腰を浮かそうとしてわずかに身じろぎし、体を震わせて切ない顔をする。
咥え込んだまま動くに動けないようだった。

「ま、まだ……動かさないで下さい……」

腰をさすってやりながら、形のいい臍と整えられた茂みの間の陶器めいた白い下腹を見下ろす。
この中に自分の竿が収まっていると考えると何やら妙な気分だ。
掌で腹を軽く押してみると伊珠が声を上げた。
外から胎内が圧迫されて余計に存在を感じるのか、押すたびに締め付けてくる。
苦しい、と潤んだ眼で睨まれて夏侯惇は悪戯をやめた。
伊珠が自ら快感を貪る様が見たくて、わざと突き放すような言葉を口にしてみる。

「良いように動いてみろ」

おずおずと腰を浮かし、途中まで抜いてまたゆっくりと押し込む。
反りが柔らかな粘膜に擦り付けられ、亀頭が良い所を突き上げてくる。
同じ動きを繰り返すにつれ伊珠の息は上がり、たわわな胸が目の前でぷりぷりと揺れた。
気持ち良さそうな伊珠を見るのは愉しかったが、一人で昇り詰めさせるのはあまりに惜しい。
夏侯惇は伊珠の腰を掴み寄せ、より奥を突き上げた。

「ああぁぁっ!!」

硬く大きなものに最奥を陵辱され、伊珠はたまらず夏侯惇の背に爪を立てた。
そのまま揺さぶられて、あまりの刺激に危なく気をやりそうになる。
今にも内から溶けてしまいそうだった。
身を焦がさんばかりに荒れ狂う熱は、かつてどんな交わりでも感じた事のないものだった。
体だけでなく、心までもこの男に抱かれている。
伊珠は自分の全てを夏侯惇に奪われてしまいたいとさえ思った。

「い……いけません、お怪我が……」

動いたせいで傷が開いたのか、肩口の包帯に血が滲んでいる。
夏侯惇はかまわん、とだけ言って伊珠の唇を塞いだ。
互いに舌を絡め合い、口と口でも深く交わる。
何度も突き上げるうちに伊珠の内から湧き出した蜜でより具合が良くなり、
温かい内膜は夏侯惇の猛攻を柔軟に受け止めて包み込んでくる。
その度に絶妙な緩急で締め付けてくるのでたまったものではない。
寄せては返す波のような応酬に双方とも昂められていく。
子宮口を何度も突き上げられ、激しすぎる責めに耐え切れず伊珠は達してしまった。
ほとんど同時に夏侯惇にも限界が来た。

「……あぁ……!!」
「く……出すぞ、伊珠!」

どくどくと音がするほどの勢いで多量の精が吐き出される。
胎内に熱い迸りを感じ、伊珠は声にならない声を上げた。
最後の一滴まで胎内に注ぎ込まれ、伊珠は放心した様子で夏侯惇の肩に突っ伏した。
荒い息をつく伊珠の汗ばんだ髪を撫でてやると、何となく満足げな顔でこちらを向いた。

「……はぁ……とっても素敵でした、元譲さま」
「……お前もな」

夏侯惇が照れながらそう言うと、伊珠は少女のように無邪気に微笑んだ。
情事の余韻を惜しみながらしばし戯れていたが、やがてどちらからともなく言い出した。

「「……もう一度、しても――」」

二人が同時にそう口に出し、顔を見合わせる。
あっけにとられた表情の伊珠を見て夏侯惇は吹き出した。

「ははは……この好き者め」
「何をおっしゃいます。元譲さまだってまだこんなに……」
「む……」

伊珠が内腿に力を入れると、胎内にあるいまだ硬いままの男根がぴくりと震える。
してやったり、という顔の伊珠に夏侯惇は苦笑し、腕の中の女を抱き寄せた。

(……元譲様の笑ったお顔、初めて見ましたわ)
(……全く、どうしてこうなってしまったのだ。 だが……悪くないな)


窓から差す月明かりの下、二人は密やかに口付けを交わした――――

第十幕

二護衛、愛する者の傍に咲き
二夏侯、守護天使と共に戦場に赴く

*****

――潼関――
曹操軍と連合軍との熾烈を極める戦は、残雪をも溶かす程だった。
二手に別れての挟み撃ち戦法で、夏侯淵軍は潼関の正面に布陣し大立ち回りを繰り広げていた。
大勢の将兵を相手取り、一歩も退かずに奮戦していたが徐々に疲れが見え始め
敵将ホウ徳の双戟捌きにさすがの夏侯淵も防戦一方だった。
鋼鉄の双戟が頭上に振り下ろされんとしたその時――

「ぬう!!」

一矢が風を切りホウ徳の腕に命中した。夏侯秋の絶妙な援護射撃だった。
夏侯淵はその隙を見逃さず反撃し、辛うじてホウ徳を撃退した。
秋がこちらへ駆けて来る。

「おじ様! 大丈夫!?」
「おう! お前のお陰だぜ。また腕を上げやがったな!」
「ふふ……私、ちょっとは護衛らしくなった?」
「いや、それ以上に女らしくなったと思うぜ。ほれこことか」

夏侯淵の視線が自分の胸に向けられているのを見て、もうおじ様ったら、と秋が笑う。
二人の世界の周囲を何十匹もの蝶が舞う。異様な光景に敵兵も近づけない。

「戦場に咲く恋の華……美しいですね」

張コウがうっとりした様子で二人を遠巻きに見ていた。

*****

暮れなずむ合肥の戦場は夕陽と血煙で赤く染まっていた。
魏軍と呉軍の乱戦の中、遼来来の悲鳴が上がる。

「ふん……始まったか。相変わらず華のある戦をする漢だ」

張遼の猛攻に押され、呉軍の陣は乱れつつあった。
その様子を遠目に、夏侯惇は馬上で麒麟牙を構え直す。

「俺の戦に華はいらん……振るった刃が孟徳の階になればそれでいい」
「あら、私は華ではないとおっしゃるのですか?」

振り向くと伊珠がいた。夏侯惇の死角である左側を庇う様に立っている。
いつも通りの優雅な姿。戦塵も返り血もその美貌を損ねる事はできないようだった。
一瞬伊珠に見とれた事を気取られぬように、夏侯惇は再び前を見据えた。

「そうだな、お前はすぐに散ってしまう儚い華などではない」

含みのある言い方に伊珠は小首を傾げる。
夏侯惇はにやりと笑い、伊珠を鞍の上に引っ張り上げて直接耳に囁いた。

(――永劫に変わらぬ、輝きを放つ珠だ)

眼をぱちくりさせる伊珠よりも、言った本人である夏侯惇のほうが照れていた。
夕陽のお陰で頬が赤いのには気付かれなかったが、その事を察した伊珠はにっこり微笑んだ。
燃えるような落日が、敵陣へと駆ける馬上の二人を照らしていた。

 

 

 

 

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