トゥスクルとサマイクルが一線を越えそうでなかなか越えられず暖かい温泉の側で
ややトゥスクルに主導権を取られつつ、うじうじもじもじと乳繰り合っていたその頃。
ひっ攫われたカイポクは(全裸)オキクルミに寒い雪原に押し倒されていた。
せっかく湯につかり芯から温まったのも酷く昔の事に思える。
それに、どうして目の前の幼馴染はふんどし一丁なのだろう。
(オキクルミ、ふんどし赤色だったんだ…)
たなびくそれをぼんやりと眺めていると、いきなりむんずと胸を掴まれた。まるきり無い訳ではないが
やや小ぶりのそれを乱暴に揉みしだく手を、やめておくれよ、と現実に引き戻されたカイポクの手が払う。
だがオキクルミは止まらない。
なおも抗弁しようとする唇を乱暴に塞ぎ、舌で彼女の歯列をなぞりあげる。
苦しさにカイポクはオキクルミの胸をどんどんと叩くが、彼はなかなか離れない。
ようやく唇を離してもらえたと思ったら、今度は首筋に口付けられた。
どうやら何を言っても無駄なようだという嫌な予感を抱きつつ、
カイポクは尋ねる。
「…オキクルミ。アンタひょっとしてここで…その、する、つもりかい?」
辺りは一面の白い雪。衣をたかだか数枚敷いたとしても雪の冷たさは防げず、
触れ合う肌からぬくもりは伝わるがそれは微々たるものでしかなく吹雪いてはいないとはいえ
その寒さは中ツ国の比ではない。
「寒いか?」
「当たり前だろ!!万年半袖のアンタじゃないんだから!・・・せめて家の中に戻ってから…」
「だが断る」
そんな、という悲痛な呟きは風に流されて消えた。
「そもそもお前が悪いのだ。俺という夫がありながら他の男をその胸の間に挟むとは!」
「まだ婚儀はあげてないからアンタは夫じゃないしコロボックルに嫉妬されても困るし、
そもそも私が一方的に悪いような言い方は止めとくれるかい!?」
カイポクの言い分は十二分に正しい。
だが、一度思い込むとどこまでも突っ走りどん底に落ちてもなかなか他人の言う事を聞かないという
悪い性癖を持つオキクルミにどこまで通じているか…。いや、むしろこれ幸いと事に及ぼうとしている節がある。
「なにを言うカイポク。コロボックルとはいえ男は男。これは俺に対する裏切りだ」
故に俺は夫としてお前に罰を与えねばならん、というその容貌は、黒い色に彩られていた。
完全に鬼畜モードまっしぐらのオキクルミに、カイポクは色を失う。
「な、なにをすればいいんだい?」
心なしか震える想い人の声に、ニヤリと笑うとオキクルミはどこからともなく「巷説:夜伽桃色草子」
と銘打たれた一冊の本を取り出した。
…絵師が初代、2代目天道大師、執筆者が「好色2代男」で有名な井原東鶴を初めとする豪華陣で
ナカツクニで知らぬものは居ない、その道では有名な艶本だ。
まさか遠く離れたこのカムイにまで普及していたとは。
というかなんでしおりの代わりに押し花ならぬ押しヨモギが挟まっているのだろう。
まさかサマイクルもこれを読んでいたのだろうか。
オキクルミとサマイクルが仮面の下でニヤニヤと笑いながらこの本を読んでいるいやな場面を想像し、
カイポクは顔をひくつかせた。大体2人ともムッツリの気があるような気がする・・。
「カイポク」
ここの場面を再現すれば1回だけで許してやろう、と言われ、カイポクは不承不承指し示された場所に眼を
通す。オキクルミの思惑通りに動いているような気もしないが、野外で、しかも村人に目撃されるかも知れない
状況下で、彼が満足するまで相手をするよりは遥かに、ずっと、ましだ。
諦めてカイポクは肝心な場面に眼を通す。何が哀しくて読まなければならないのだろう。
豊満な身体を持つ女性の上に、9つの尻尾と獣耳を生やしているという以外は女性と瓜二つの妖艶な女性が
圧し掛かっているという絵が挿絵として描かれており、左下の部分には【一寸】という判が押されている。
〜以下本文より抜粋〜
『「ふふ、ツヅラオよ。何をそんなに驚く?我はあらゆるものに化けれるのだぞ。女の身体に魔羅をはやす事など
造作でもないわ」
「き、狐!わ、我の顔と体で喋るでな…っあん!」
尼僧―ツヅラオは悔しさに歯噛みをする。
尼僧でありながら、人―自分の姿をしているとはいえ、討伐すべき妖魔王に良い様にされるなど。
法力を奪い、姿を映し、組みしいたそんな相手を九尾は面白そうに眺める。
完全なる敗北を喫しながら、それでも気高く美しい。故にとことんまで汚し抜かなければ。
栗の花を嬲る尻尾の数を増やしつつ、九尾はたおやかな手を尼僧の胸へとのばした。次の瞬間、
胸の部分を隠す部分を勢いよくはだけられ、押さえつけられていた豊満な胸がぶるん、と勢いよくまろび出る。
その両の胸の間に、九尾の一物が挟まれた。口元まで届くそれにおののく尼僧を尻目に、美しき獣はその胸で
己の其れを挟みあげ、舌舐めずりして命じた。
「舐めよ。」
瓜二つの美貌が嗜虐的な色を浮かべ、舌なめずりする。
(だ、誰がこんなものを!)
しかし不思議と口は開き、華奢な身体に不釣合いな大きさを持つ其れの先を含む。
「ふぁん、ぁ、ふぅ・・」
自分のものではないかのように舌が其れを執拗に舐め上げる。最初のうちこそ抵抗していたが、いつの間にか
ツヅラオは自発的に、憑かれたようにそれを愛撫しはじめる。そんな彼女の様子を九尾は、満足そうに眺める。
(ふふ、貴様に成り代わる前に十分に嬲りつくさせてもらうわ)
神聖な暗刻寺で妖の宴が始まろうとしていた。』
〜抜粋終了〜
「・・・・こ、」
「これを私にしろというのかい!?オキクルミ!!!!!」
「無論だ」